イエナプラン教育とは?特徴・メリット・目指す人物像についても解説!
イエナプラン教育をご存知ですか?日本では普及し始めたばかりなので、聞きなれないかもしれません。オランダではすでに浸透しており、信頼の厚い教育メソッドです。ここではイエナプラン教育の特徴・メリット・目指す人物像について詳しく解説していきます。
目次
そもそもイエナプラン教育とは?
イエナプラン教育の歴史
イエナプランとは、ドイツの教育学者ペーター・ペーターゼン氏が1927年にスイスで開催された教育系の国際会議で発表したものです。その後オランダの数学者ハンス・フロイデンタール氏の妻が積極的にイエナプラン教育の普及に努め、1960年代以降オランダでイエナプラン教育の学校が増えていきました。
イエナプラン教育の現状
イエナプラン教育は、発祥国であるドイツよりもオランダで発展しています。オランダの幸福な民主主義に参加する市民を育てるための教育と、イエナプランの他者を認め共存していける人間を育てるという教育的特徴が共鳴し合っていることが理由であるといえます。
イエナプラン教育の20の原則
イエナプラン教育には20の原則があります。イエナプランの考案者であるペーターゼン氏の著作を、簡潔に言い換えたものになっています。日本イエナプラン教育協会のサイトからの引用の一部をご覧ください。
1.
どんな人も、世界にたった一人しかいない人です。つまり、どの子どももどの大人も一人一人がほかの人や物によっては取り換えることのできない、かけがえのない価値を持っています。
2.
どの人も自分らしく成長していく権利を持っています。自分らしく成長する、というのは、次のようなことを前提にしています。つまり、誰からも影響を受けずに独立していること、自分自身で自分の頭を使ってものごとについて判断する気持ちを持てること、創造的な態度、人と人との関係について正しいものを求めようとする姿勢です。自分らしく成長して行く権利は、人種や国籍、性別、(同性愛であるとか異性愛であるなどの)その人が持っている性的な傾向、生れついた社会的な背景、宗教や信条、または、何らかの障害を持っているかどうかなどによって絶対に左右されるものであってはなりません。
その他にも、社会との関わり方や学習に対する姿勢についての独自の考え方を原則としています。イエナプラン教育に興味がある人はぜひご覧ください。
よく比較されるモンテッソーリ教育との違いは?
イタリアが発祥のモンテッソーリ教育との違いは、イエナプラン教育では対話がとても重要視されており、学校で発表したり話し合う機会が多く設けられている点です。モンテッソーリ教育とは独自の教具を使い、地理・数学・手先の感覚などを養うことを重要視している教育メソッドです。
イエナプラン教育の10個の特徴を解説!
①教室はリビングルーム
イエナプラン教育の学校では、教室をリビングルームとして捉えるのが特徴的です。新学期に担任と異年齢の生徒全員で、教室の内装を整えます。また、学習途中であっても教室の環境をその都度整えていくことが可能です。
②マルチエイジなクラス編成
マルチエイジなクラス編成が特徴的なイエナプランの学校は、4-6歳・6-9歳・9-12歳の3つの年齢グループが混ざり合って編成されます。3年間クラス替えがなく、同じグループリーダーのクラスで年少・年中・年長の学年を過ごし、これを繰り返しながら小学校を卒業します。
③サークル対話
イエナプラン教育では、車座になって話し合うサークル対話が頻度に行われるのが特徴的です。自由に話し合うオープンサークルやみんなで何かを見てそれについて話し合うサークルなど、様々なサークルがあります。
④ワールドオリエンテーション(総合学習)
イエナプラン教育のワールドオリエンテーションという総合学習の形態には7つの経験領域と、時間と空間の特徴的なテーマがあります。これらの学習テーマは、具体的な例をあげ各年齢に合った内容で行われます。
⑤循環させる4つの活動パターン
イエナプランの学校では、仕事(学習)・サークル対話・遊び・イベント(学校行事や祝い事)の4つの活動パターンを繰り返す特徴的な時間割を作っています。イベントは単なる催しではなく、仲間と喜怒哀楽を共有し共に生きる事を学ぶ場であると考えられています。
⑥静かな環境
イエナプラン教育では、ブロックアワーという自立学習の時間を設けるなど、子供達が静かに考えることができる環境を大切にしているという特徴があります。静かな環境で熟考することは、自分で答えを追求し探究心を養うことにつながると考えられています。
⑦ペダゴジカル・シチュエーション(教育学的環境)
イエナプランの学校では教師が教え、子どもが習うという一方通行的な学習形態を否定しています。イエナプランの学校経営者や教員は知識を伝達するのではなく、子供が自発的に学習意欲を持つようになるための適切な環境づくりを重視しているのが特徴的です。
⑧オーセンティシティ(真正性)
イエナプラン教育では人間のあり方と学習の対象に関して、オーセンティシティを重要視しているという特徴があります。教員であっても常に学びの姿勢を忘れない、子供達はできるだけ本物に触れながら学習することなどを意味します。
⑨職員のチームワーク
職員のチームワークを大切にするイエナプランの学校では、クラスごとではなく学校全体の教育計画の枠組みの中でクラスの授業を計画します。年間計画から週間計画まで職員全員が一丸となって話し合い、学校の企画を作り上げていきます。
⑩保護者との協力関係
イエナプラン教育では、保護者との協力関係を重要視しているという特徴があります。これは保護者に対して学校の状況をオープンに伝える、保護者からの質問に対して率直に返答する、学校の活動に保護者が参加することを促すなどを意味します。
イエナプラン教育の7つのメリット!
①自主性を養う
イエナプラン教育では子供達が受身的に学習するのではなく、自発的に学びたいと思うような教育環境づくりを心がけているので、自発性が育つというメリットがあります。そのために教員達は専門性を駆使し、子供達のために環境を整えています。
②コミュニケーション能力の向上
イエナプラン教育の特徴の1つに、対話があると先に述べました。イエナプランではサークル対話により、個々が自由に発言することを推奨しています。この対話重視の教育により、コミュニケーション能力が養われるというメリットがあります。
③アサーションのスキルが身に付く
日本では馴染みのないアサーションですが、適切に自己主張をするためのコミュニケーションスキルを意味します。イエナプラン教育では対話する機会が多いので、アサーションのスキルが身につくというメリットがあります。
④学ぶ喜びを得られる
イエナプランの学校では、子供達が学ぶ喜びを得られるというメリットがあります。イエナプラン教育では子供達が自発的に学ぶことを重要視しているので、そのための環境設定や教員との関係性がしっかりと整っています。
⑤問題解決能力の習得
イエナプラン教育では対話を重視していると同時に、子供達が静かに考えることができる環境も大切にしています。子供が熟考の末に自分で答えを見つけ出すことができるよう配慮しているので、問題解決能力が習得できるというメリットもあります。
⑥社会性の発達
イエナプラン教育を受けると、社会性が発達するというメリットがあります。イエナプランのクラスでは異年齢やハンディキャップの子供も共に学習するので、お互いの違いをよしとしながら共に学んでいくことができ、社会性も発達します。
⑦豊かな人間性を得られる
イエナプラン教育では、対話中心の教育や共に生きることを具体的に体験する学校行事を通して、自発性や他者とのつながりを育んでいきます。そのため、豊かな人間性が得られるというメリットがあります。
イエナプラン教育が目指す人物像とは?
好奇心を持てる
子供の自発性を大切にしているイエナプラン教育では、常に好奇心旺盛な人間いられるよう心がけています。大人になっても好奇心を失わないよう、できるだけ本物に触れながら学習するなど、子供達の感性を刺激する教育を実施しています。
自分の人生をコントロールできる
イエナプランの学校では、自分の人生をコントロールできる人間になることを目標の1つとしています。そのため子供が自分で考えて答えを見つけ出せるよう、必要な時には一人で熟考する時間を設けるようにしています。
自分の考えが提示できる
コミュニケーションを大切にしているイエナプラン教育では、自分の考えを適切に提示できるようになるための教育を実施しています。サークル対話をはじめいろいろな種類の対話を通して、アサーションのスキルを伸ばしていきます。
幸福で能動的
イエナプラン教育では、幸福で能動的な人間を理想の1つとしています。イエナプランの学校では、子供の自発性を刺激し学ぶ楽しみを見出せるような環境づくりを徹底しています。
全人格的に育っている
全人格的な人間を理想とするイエナプランの学校では、異年齢やハンディキャップの子供が共に学びます。そのため子供達は、早いうちからお互いの違いを認めて協力し合うことを学びます。
責任が持てる
イエナプラン教育では、責任が持てるようになる事も大切にしています。責任感を習得できるよう、遊び・対話・仕事(学習)・イベントという4つのパターンの活動を循環させる教育プランを実施しています。
自分を認めて自立する
自分を認めて自立することを促すイエナプラン教育では、自立学習と共同学習を実施しています。自立学習では教員と子供が相談して時間割を作り、自分で決めて実行することで自立性と責任感を育てていきます。
イエナプラン教育についてよくわかる!おすすめの本3選!
日本にはあまり普及していないイエナプラン教育ですが、イエナプランに関する本が出版されています。おすすめの本3冊をご紹介します。
①公教育をイチから考えよう
日本の硬直した一斉授業や受験のための勉強に関して言及しながら、学校は本来そういう場所ではないということを、世界の教育事情や教育哲学の視点から訴えている内容です。
②オランダの個別教育はなぜ成功したのか
オランダ在住の日本人が、イエナプラン教育の内容や歴史を解説している本です。子供の個性を大切にしながら育むイエナプランが、オランダで普及した理由を詳しく解説しています。
③イエナプラン教育ってなに?
イエナプラン教育について深く知りたいと考えている方のために書かれたものです。イエナプラン教育の実践を分かりやすく説明しています。
日本国内でイエナプラン教育が体験できるスクール
イエナプラン教育のスクールの普及が浅い日本ですが、イエナプラン教育を体験できるスクールが長野県と愛知県名古屋市にあります。
学校法人 茂来学園 大日向小学校/長野県
1つ目のスクールは、長野県にある学校法人 茂来学園 大日向小学校です。誰もが豊かにそして幸せに生きることのできる世界をつくるという精神のもとに2019年4月に開校した、日本で初めてのイエナプランスクールです。
クリエイターが育つ家【クリエイターハウス】/愛知県名古屋市
2つ目のスクールは、愛知県名古屋市にあるクリエイターが育つ家「クリエイターハウス」です。イエナプラン教育を交えた小学生向けのプログラミングスクールです。クリエイターとして社会で役立つの3つの要素である思考力・創造力・コミュニケーション力を高めるための授業やイベントをはじめ、学び方を学ぶための学習を行っているスクールです。
日本ではまだ貴重!注目のイエナプラン教育について知っておこう!
日本ではまだ貴重なイエナプラン教育ですが、大変奥の深い教育です。現在お子さんをイエナプランの学校に通わせるのは難しいかもしれませんが、今後イエナプラン教育が日本でもっと普及していくことを期待します。