手がけた物件の現在は?姉歯事件の概要とその後

あの「姉歯事件」から10年以上が経ちました。皆さんは、あの耐震偽装問題で建築業界と世間を揺るがした事件を覚えているでしょうか。この記事では姉歯事件の概要から、事件を起こした人物たちの判決、防止策などを記事にしました。忘れてはいけない事件を振り返りませんか。

手がけた物件の現在は?姉歯事件の概要とその後のイメージ

目次

  1. 1姉歯事件って何?
  2. 2姉歯事件の関係者と事件のきっかけとは?
  3. 3姉歯事件後「家族」はどうなった?
  4. 4姉歯事件後「物件」はどうなった?
  5. 5姉歯事件と建築基準法改正の関係とは?
  6. 6姉歯事件の判決はどうなった?
  7. 7姉歯事件の再発防止対策はどうなったのか?
  8. 8偽装問題がなくなる事を願って

姉歯事件って何?

2020年の東京オリンピックを控えて、建築業界は需要が盛り上がっています。オリンピックの建築について様々な問題がある中で、建築業界の「あの」事件を思い出す方もいるのではないでしょうか。あの事件とは「姉歯事件」です。10年以上前に起こった事件は、「構造計算書偽造問題」あるいは「耐震偽装問題」とも言われています。

2020年を目前に控えた今「姉歯問題」を振り返ります。

「姉歯事件」はいつ起こった?

2005年11月「姉歯事件」は国土交通の発表により、世間に知られることとなりました。もともと事件の発覚は、東京都足立区に施工予定のマンション「グランドステージ北千住」の施工担当者の気づきにより「姉歯事件」は幕を開けます。

「姉歯事件」の発覚

足立区のマンション施工担当者が、マンションの鉄筋量が極端に少ないことに気づいたのです。その後、調査機関による調査が始まり、構造計画書偽造が発覚しました。調査の結果、偽造が行われていたすべてのマンションの建築設計には、姉歯秀次元建築士が関わっていたのです。

姉歯元建築士の偽装とは?

姉歯事件の最初に発覚した物件を手掛けたのは2003年~2005年からでした。なんと、2年間事件が発覚していなかったのです。しかし、後日調査の結果事件の中心人物である姉歯秀次(元1級建築士)は、1996年ごろから構造計算書偽造に手を染めていたと言われています。

当時、連日ニュースで耳にしていた、神奈川県藤沢市のマンションや東京都足立区のマンション、ホテルなど複数の建築物に関する構造計算書を、虚偽のデータに基づき作成していました。

姉歯事件の関係者と事件のきっかけとは?

姉歯事件に関わる企業とは?

姉歯事件には複数の会社と人物が関係していました。最終的に姉歯事件は姉歯元建築士の個人犯罪と判決が下っています。しかし、当初姉歯事件は「組織ぐるみ」の犯行ではないかとも言われていました。

【姉歯元建築士以外の主要企業】
・建築確認をする検査機関/イーホームズ、他自治体
・建築主/株式会社ヒューザー、株式会社シノケン
・建築主から設計施工等を請負/木村建設
・建設会社から設計受注/設計会社(姉歯元建築士)

姉歯事件は発覚からその後、姉歯元建築士と主要企業社長等については、国会での証人喚問が行われました。

姉歯元建築士の事件に関する発言

姉歯元建築士は国会の証人喚問にて、以下のように発言しました。

「コスト削減の圧力をうけた。」「鉄筋量を減らし耐震壁でも十分耐震性に優れているので偽装と思っていない。」「耐震に関しては震度7、8にも耐えられるほどの強度は保っている」「病気がちな妻の為に収入を減らすわけにはいかず葛藤した」

姉歯元建築士の発言に反して、木村建設元社長やヒューザー元社長などは、「圧力をかけた覚えはない。」「構造計画書に偽装があるとは知らなかった。」と発言していました。しかし、結果として偽装を知りながら物件を引き渡したり、建築代金をだましとったとされています。

「姉歯事件」はなぜ起こったのか?

「姉歯事件」について証人喚問では、姉歯元建築士は罪を逃れるために様々な発言をしました。しかし、実際は、鉄筋量を減らしコストを削減、設計業務の迅速化を狙い耐震偽装を行っています。設計業務の迅速化が可能になれば、姉歯建築設計事務所の評判が上がり収益にに繋がると考えた結果ではないかと言われています。

一方で、姉歯元建築士は入退院を繰り返す病気がちな妻のために、収入を減らすわけにはいかなかったのでしょう。鉄筋量を減らさなければ、今後の仕事への影響、更には収入、家族への影響まで考え偽装に及んだのではないでしょうか。どんな事情があるにせよ「偽装」という事実に間違いはありません。

姉歯事件後「家族」はどうなった?

家族に対するマスコミの過熱報道があった?

姉歯元建築士は、国会の証人喚問にて「妻は病気で入退院を繰り返している」という発言をする一方で、連日マスコミやネットなどでは全く別の報道や噂が立ちました。「自宅は豪邸」「奥さんは毎晩豪遊」「ブランド品の大量買いをしている」

しかし、事実は異なっており噂とは真逆であったという話もあります。最終的に「姉歯事件」の判決については、噂と言われていた件が一部事実であったような判決となりました。

過熱報道の結果「家族」のその後は?

姉歯元建築士には妻と2人の息子がいました。しかし、当時のマスメディアの加熱報道により、家族はかなりのストレスを抱えたのでしょう。姉歯元建築士の妻は、2006年3月28日、自宅マンション7階から飛び降り自殺をしてしまいました。

自殺の原因は「姉歯事件」による過熱報道ストレスともいわれていますが、事件発覚前から病気を患っていた為、その影響により自殺したのではないかとも言われています。

「家族」は今どうなっているの?

「姉歯事件」当時、息子2人については一緒に暮らしてはおらず、仕事にも就いて居なかったと報道されています。姉歯元建築士の妻が亡きあとは、自宅で2人静かに暮らしていたでしょう。今現在は、自宅には誰も住んでおらず、姉歯元建築士と2人の息子はどこで生活しているのか情報はありません。

息子2人については何の罪もありませんが、世間の目を気にして苗字を変えているのではないかとも言われています。「姉歯事件」から10年以上が経ち、姉歯元建築士はとっくに刑期を終えています。息子2人については事件に関係もありません。詮索せずに、そっとしていたほうがよいのではないでしょうか。

姉歯事件後「物件」はどうなった?

偽装のあった物件数はどのくらい?

「姉歯事件」で計画書偽装の報告があった建築物は、当初マンションとホテルで計21件に上りました。その中でも、既に竣工されていた物件は14件というのですから、利用者は気が気ではなかったでしょう。工事中や未着工の物件は7件で、工事停止や着工停止になりました。

しかし、事件発覚以前から偽装をしていたため、調査や証人喚問を行うにつれ計画書偽造の建築物件数はどんどん増え、最終的には90件を超えてしまったのです。

偽装された物件に住んでいた人々の苦悩とは?

「姉歯事件」で偽装の被害にあい、連日メディアで取り上げられた神奈川県藤沢市のマンションについては、入居者は退去せざるおえませんでした。退去理由は、藤沢市が建築基準法に基づき使用禁止命令を出したためです。しかし、退去、移転等に伴う敷金や家賃については1年上限の減免という対応のみでした。

入居者に対しての全額補償は賠償能力がなく、退去した入居者は泣き寝入りするしかなかったのです。中には民事訴訟をおこした入居者もいたと言われています。

偽装された物件は再建へ

「姉歯事件」で偽装された藤沢市のマンション物件は、耐震基準を満たしていないため「取り壊し」もしくは入居者負担による「建て直し」のいずれかとなりました。建て直しするにも、入居者は、現マンションのローンと建て直しの費用で二重ローンとなり相当な負担です。協議の結果、入居者の一部が「再建」を決定します。

しかし再建について藤沢市が出した条件や入居者の金銭工面など課題は山積みだったようです。さらに、その難題によって再建を請け負う開発会社もなかなか決まらなかったといいます。

偽装被害の物件は現在どうなっている?

姉歯事件の被害物件として数々のメディアに取り上げられた、神奈川県藤沢市の「グランドステージ藤沢」を始め、他県内の4物件については「再建」が決定されました。様々な課題がある中、再建を引き受けたのは「株式会社リッチライフ」でした。そして、姉歯事件から5年後、2010年にマンションすべての建て替えが無事終わったのです。

再建後は、新たなマンション名となり心機一転スタートしました。この改修工事では、マンション住居者の二重ローンという負担軽減にも対応した再建計画だったので、入居者も姉歯事件以降やっと安堵できたのではないでしょうか。しかし、この再建例は一部で、未だに対応しきれない姉歯事件の物件は残っているといいます。

姉歯事件と建築基準法改正の関係とは?

姉歯事件前の建築基準法改正とは?

姉歯事件の報道で口々に言われていた「建築基準法」とは、建築物の設備や使い道などについて最低基準を定めた法律です。基準対象は、他に、土地や敷地、構造にまで亘ります。この法律自体は1950年に制定され、その後、何度か新しい規定を導入し改正が行われました。1981年6月には、日本で起こりうる大型地震に備え、新耐震基準が施行されました。

その内容とは「震度5に耐える設計での建設」という義務です。姉歯事件では、この新耐震基準の義務を果たさなかった結果なのです。

姉歯事件で起こった建築基準法の詳細

姉歯事件は、1981年に定められた建築基準法「震度5に耐える設計」という義務に反しました。姉歯事件で発覚した物件は、調査の結果、震度5で崩壊する事実が判明したのです。姉歯事件は必然だったと言われます。それは、構造計算や法も含め、偽装されても見抜けないような抜け道がありました。

コンピューターのプログラムにて構造上、鉄筋量を減らす設計ができたのです。設計上で気づくのでは?と考えられましたが、実際の審査には検査結果のみを確認するという認可だったため、審査機関の確認をすり抜けられたのです。

姉歯事件の判決はどうなった?

姉歯事件の逮捕者は?

姉歯事件による逮捕者は全員で8名でした。罪状は、建築基準法違反や建築業法違反、詐欺罪など他複数に上ります。姉歯事件が発覚した当時、建築業界で前代未聞の逮捕者数となったことに世間は驚きを隠せませんでした。

姉歯元建築士対する判決は?

最終的に姉歯秀次(元1級建築士)への判決は、懲役5年、罰金180万円の有罪でした。当時の裁判長は「建築業界や国民の信頼を低下させる、無責任な行為である」として実刑判決を下したのです。罪名は、構造計画書の偽造による建築基準法違反と、議員証言法違反(偽証罪)の2つの罪でした。

「圧力があった」などと発言した件や「病弱な妻の通院費」と称して不正利益の一部を交際費などに充てたという理由です。

姉歯事件以外の姉歯の罪とは?

姉歯元建築士は、姉歯事件で起こした罪以外にも「1級建築士の名義貸し」を行っていました。名義を借りた人物は、無資格にもかかわらず、設計監理や工事監理を請け負い建築士法違反の罪(建築士法違反幇助)に問われ、有罪となりました。もちろん、姉歯元建築士は姉歯事件の件も含めて、1級建築士の資格は剥奪されました。

姉歯事件での実刑判決は?

姉歯事件で、姉歯元建築士以外4人が起訴され実刑判決が下りました。懲役はそれぞれ1年~3年、執行猶予は3年~5年という判決でした。

【判決】
・ヒューザー元社長/詐欺罪
・木村建設元社長/詐欺罪、建設業法違反
・木村建設元東京支局長/建設業法違反
・イーホームズ社長/電磁的公正証書原本不実記録

詐欺罪の判決をうけたにも関わらず、木村建設の元社長とヒューザー元社長は、詐欺罪を否定していました。

姉歯事件の再発防止対策はどうなったのか?

偽装事件を防止する策とは?

姉歯事件を教訓とし、偽装再発防止のため建築基準法が改正されました。そして事件から1年半後の2007年6月20日に改正建築基準法が施行となりました。その改正内容とは、建築確認に関する手続きを厳格にするものでした。改正前の姉歯事件までは、建築基準法の穴、コンピュータープログラムでの容易な偽装が出来ないよう強化したのです。

建築士法についても、設備設計1級建築士制度と構造設計1級建築士制度が創設されました。

設備設計1級建築士とは?

偽造再発防止のために創設された設備設計1級建築士制度とは、3階以上かつ床面積の合計が5,000平方メートルを超える建築物の設備設計は、設備設計1級建築士への確認が義務づけられました。もしくは、設備設計1級建築士の資格を持つ建築士自体が設計を行うこととしています。

構造設計1級建築士とは?

偽造再発防止のために創設された構造設計1級建築士法とは、一定規模以上の建築物について規定適合性の確認をすることが義務づけられました。規定の確認がされていない場合は、申請不受理となるため、この段階で不正を防ぐことができます。もしくは、構造設計1級建築士の資格をもつ建築士自体が設計を行うこととしています。

計算プログラムの強化とは?

建築基準法の改正前は、設計図面はコンピュータープログラムにて行っており、鉄骨量を減らす高度な技術についてもコンピューターで容易にできました。審査については、鉄骨量が減らされた図面自体は確認することなく、入力された条件と計算されたデータ結果を確認するだけとなっていたのです。

そのようなコンピュータープログラムの穴をついた偽装とも言えるのではないでしょうか。残念ながら、姉歯事件で偽装を見抜くことができなかったのです。建築基準法の改正後、コンピューターへ偽装防止のプログラムを搭載することにより、データ改ざん、偽装の対策を行いました。

偽装問題がなくなる事を願って

姉歯事件から12年経過し、あらためて事件を振り返りました。姉歯事件は、私たちが安心して暮らせる住まいの「偽装」という事件であったため、記憶に残っている方も多かったのではないでしょうか。安心して暮らせるはずの「住まい」が、偽造や不正によって脅かされることなどあってはなりません。

2020年に東京オリンピックを控えた今だからこそ、今後このようなことが起こらないことを願います。

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