2021年11月29日公開
2021年11月29日更新
手がけた物件の現在は?姉歯事件の概要とその後
あの「姉歯事件」から10年以上が経ちました。皆さんは、あの耐震偽装問題で建築業界と世間を揺るがした事件を覚えているでしょうか。この記事では姉歯事件の概要から、事件を起こした人物たちの判決、防止策などを記事にしました。忘れてはいけない事件を振り返りませんか。

目次
姉歯事件って何?
2020年の東京オリンピックを控えて、建築業界は需要が盛り上がっています。オリンピックの建築について様々な問題がある中で、建築業界の「あの」事件を思い出す方もいるのではないでしょうか。あの事件とは「姉歯事件」です。10年以上前に起こった事件は、「構造計算書偽造問題」あるいは「耐震偽装問題」とも言われています。
2020年を目前に控えた今「姉歯問題」を振り返ります。
「姉歯事件」はいつ起こった?
2005年11月「姉歯事件」は国土交通の発表により、世間に知られることとなりました。もともと事件の発覚は、東京都足立区に施工予定のマンション「グランドステージ北千住」の施工担当者の気づきにより「姉歯事件」は幕を開けます。 「姉歯事件」の発覚足立区のマンション施工担当者が、マンションの鉄筋量が極端に少ないことに気づいたのです。その後、調査機関による調査が始まり、構造計画書偽造が発覚しました。調査の結果、偽造が行われていたすべてのマンションの建築設計には、姉歯秀次元建築士が関わっていたのです。 姉歯元建築士の偽装とは?姉歯事件の最初に発覚した物件を手掛けたのは2003年~2005年からでした。なんと、2年間事件が発覚していなかったのです。しかし、後日調査の結果事件の中心人物である姉歯秀次(元1級建築士)は、1996年ごろから構造計算書偽造に手を染めていたと言われています。 姉歯事件の関係者と事件のきっかけとは?姉歯事件に関わる企業とは?姉歯事件には複数の会社と人物が関係していました。最終的に姉歯事件は姉歯元建築士の個人犯罪と判決が下っています。しかし、当初姉歯事件は「組織ぐるみ」の犯行ではないかとも言われていました。 姉歯元建築士の事件に関する発言姉歯元建築士は国会の証人喚問にて、以下のように発言しました。 「姉歯事件」はなぜ起こったのか?「姉歯事件」について証人喚問では、姉歯元建築士は罪を逃れるために様々な発言をしました。しかし、実際は、鉄筋量を減らしコストを削減、設計業務の迅速化を狙い耐震偽装を行っています。設計業務の迅速化が可能になれば、姉歯建築設計事務所の評判が上がり収益にに繋がると考えた結果ではないかと言われています。 姉歯事件後「家族」はどうなった?家族に対するマスコミの過熱報道があった?姉歯元建築士は、国会の証人喚問にて「妻は病気で入退院を繰り返している」という発言をする一方で、連日マスコミやネットなどでは全く別の報道や噂が立ちました。「自宅は豪邸」「奥さんは毎晩豪遊」「ブランド品の大量買いをしている」 過熱報道の結果「家族」のその後は?姉歯元建築士には妻と2人の息子がいました。しかし、当時のマスメディアの加熱報道により、家族はかなりのストレスを抱えたのでしょう。姉歯元建築士の妻は、2006年3月28日、自宅マンション7階から飛び降り自殺をしてしまいました。 「家族」は今どうなっているの?「姉歯事件」当時、息子2人については一緒に暮らしてはおらず、仕事にも就いて居なかったと報道されています。姉歯元建築士の妻が亡きあとは、自宅で2人静かに暮らしていたでしょう。今現在は、自宅には誰も住んでおらず、姉歯元建築士と2人の息子はどこで生活しているのか情報はありません。 姉歯事件後「物件」はどうなった?偽装のあった物件数はどのくらい?「姉歯事件」で計画書偽装の報告があった建築物は、当初マンションとホテルで計21件に上りました。その中でも、既に竣工されていた物件は14件というのですから、利用者は気が気ではなかったでしょう。工事中や未着工の物件は7件で、工事停止や着工停止になりました。 偽装された物件に住んでいた人々の苦悩とは?「姉歯事件」で偽装の被害にあい、連日メディアで取り上げられた神奈川県藤沢市のマンションについては、入居者は退去せざるおえませんでした。退去理由は、藤沢市が建築基準法に基づき使用禁止命令を出したためです。しかし、退去、移転等に伴う敷金や家賃については1年上限の減免という対応のみでした。 偽装された物件は再建へ「姉歯事件」で偽装された藤沢市のマンション物件は、耐震基準を満たしていないため「取り壊し」もしくは入居者負担による「建て直し」のいずれかとなりました。建て直しするにも、入居者は、現マンションのローンと建て直しの費用で二重ローンとなり相当な負担です。協議の結果、入居者の一部が「再建」を決定します。 偽装被害の物件は現在どうなっている?姉歯事件の被害物件として数々のメディアに取り上げられた、神奈川県藤沢市の「グランドステージ藤沢」を始め、他県内の4物件については「再建」が決定されました。様々な課題がある中、再建を引き受けたのは「株式会社リッチライフ」でした。そして、姉歯事件から5年後、2010年にマンションすべての建て替えが無事終わったのです。 姉歯事件と建築基準法改正の関係とは?姉歯事件前の建築基準法改正とは?姉歯事件の報道で口々に言われていた「建築基準法」とは、建築物の設備や使い道などについて最低基準を定めた法律です。基準対象は、他に、土地や敷地、構造にまで亘ります。この法律自体は1950年に制定され、その後、何度か新しい規定を導入し改正が行われました。1981年6月には、日本で起こりうる大型地震に備え、新耐震基準が施行されました。 姉歯事件で起こった建築基準法の詳細姉歯事件は、1981年に定められた建築基準法「震度5に耐える設計」という義務に反しました。姉歯事件で発覚した物件は、調査の結果、震度5で崩壊する事実が判明したのです。姉歯事件は必然だったと言われます。それは、構造計算や法も含め、偽装されても見抜けないような抜け道がありました。 姉歯事件の判決はどうなった?姉歯事件の逮捕者は?姉歯事件による逮捕者は全員で8名でした。罪状は、建築基準法違反や建築業法違反、詐欺罪など他複数に上ります。姉歯事件が発覚した当時、建築業界で前代未聞の逮捕者数となったことに世間は驚きを隠せませんでした。 姉歯元建築士対する判決は?最終的に姉歯秀次(元1級建築士)への判決は、懲役5年、罰金180万円の有罪でした。当時の裁判長は「建築業界や国民の信頼を低下させる、無責任な行為である」として実刑判決を下したのです。罪名は、構造計画書の偽造による建築基準法違反と、議員証言法違反(偽証罪)の2つの罪でした。 姉歯事件以外の姉歯の罪とは?姉歯元建築士は、姉歯事件で起こした罪以外にも「1級建築士の名義貸し」を行っていました。名義を借りた人物は、無資格にもかかわらず、設計監理や工事監理を請け負い建築士法違反の罪(建築士法違反幇助)に問われ、有罪となりました。もちろん、姉歯元建築士は姉歯事件の件も含めて、1級建築士の資格は剥奪されました。 姉歯事件での実刑判決は?姉歯事件で、姉歯元建築士以外4人が起訴され実刑判決が下りました。懲役はそれぞれ1年~3年、執行猶予は3年~5年という判決でした。 姉歯事件の再発防止対策はどうなったのか?偽装事件を防止する策とは?姉歯事件を教訓とし、偽装再発防止のため建築基準法が改正されました。そして事件から1年半後の2007年6月20日に改正建築基準法が施行となりました。その改正内容とは、建築確認に関する手続きを厳格にするものでした。改正前の姉歯事件までは、建築基準法の穴、コンピュータープログラムでの容易な偽装が出来ないよう強化したのです。 設備設計1級建築士とは?偽造再発防止のために創設された設備設計1級建築士制度とは、3階以上かつ床面積の合計が5,000平方メートルを超える建築物の設備設計は、設備設計1級建築士への確認が義務づけられました。もしくは、設備設計1級建築士の資格を持つ建築士自体が設計を行うこととしています。 構造設計1級建築士とは?偽造再発防止のために創設された構造設計1級建築士法とは、一定規模以上の建築物について規定適合性の確認をすることが義務づけられました。規定の確認がされていない場合は、申請不受理となるため、この段階で不正を防ぐことができます。もしくは、構造設計1級建築士の資格をもつ建築士自体が設計を行うこととしています。 計算プログラムの強化とは?建築基準法の改正前は、設計図面はコンピュータープログラムにて行っており、鉄骨量を減らす高度な技術についてもコンピューターで容易にできました。審査については、鉄骨量が減らされた図面自体は確認することなく、入力された条件と計算されたデータ結果を確認するだけとなっていたのです。 偽装問題がなくなる事を願って姉歯事件から12年経過し、あらためて事件を振り返りました。姉歯事件は、私たちが安心して暮らせる住まいの「偽装」という事件であったため、記憶に残っている方も多かったのではないでしょうか。安心して暮らせるはずの「住まい」が、偽造や不正によって脅かされることなどあってはなりません。 編集部 この記事のライター Cherish編集部 人気の記事人気のあるまとめランキング
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