『あぶくたった』の遊び方は?歌詞の由来も解説!【伝承あそび】
子どもも大人も楽しめる伝承あそび。誰もが子どもの頃に一度は遊んだことがあると思います。「あぶくたった、煮えたった」という歌詞から始まる『あぶくたった』の遊び方や、楽しく遊ぶための工夫を紹介します。深く知るとちょっと怖い、その歌詞の由来についても解説します。
目次
伝承あそび『あぶくたった』ってどんな遊び?
「あぶくたった、煮えたった、煮えたかどうだか食べてみよう」
そんな歌い出しから始まる遊びを一度はしたことがありませんか?『あぶくたった』は、子どもたちが手をつないで輪を作り、輪の中に入った鬼役の子の周りを歌いながらぐるぐる回るという遊びです。小さい子どもから、その歌詞の意味を知れば大人でも楽しめる『あぶくたった』の遊び方・由来を解説します。
『あぶくたった』の遊び方を4ステップで紹介!
①鬼を一人決める
まず、鬼役を一人決めます。決め方はじゃんけんでも立候補でも自由です。大人と子どもが混じってやる場合は、最初の鬼は大人がやると遊び方が分かりやすくなります。
②鬼はしゃがんで両手で顔を隠す
鬼はその場にしゃがんで、周りが見えないように両手でしっかり顔を覆い隠します。人数に応じて、鬼以外の人が輪を作れるようなスペースのあるところにしゃがんでください。
③鬼以外の人は鬼を囲んで手をつなぐ
鬼以外の人は、鬼を中心として輪を作り、手をつなぎます。これで準備が整いました。
④歌を歌いながら動く
いよいよ、歌を歌いながら鬼の周りを回ります。具体的な動き方を動画でみてみましょう。
鬼を煮る
「あぶくたった~たべてみよう」の部分は、歌に合わせて手をつないだまま、時計回りに鬼の周りをぐるぐる回ります。
「むしゃむしゃむしゃ」の部分は、みんなで鬼のところへ行って「むしゃむしゃ」と言いながら食べる真似をします。鬼を触ったり、頭をぐしゃぐしゃにしたりしてください。このときはつないでいた手を離して大丈夫です。
最初は「まだ煮えない」と言って元の場所に戻り、手をつなぎ直して「あぶくたった~」に戻ります。この流れを何度かくり返してください。あらかじめ3回くり返すなどと回数を決めておくと遊びやすいですね。
好きな回数くり返したら、食べる真似をしたあと「もう煮えた」と言います。
鬼を戸棚にいれて寝る
「戸棚にいれて、カギをかけて~」みんなで鬼を離れたところへ連れて行き、戸棚にいれてカギをかける真似をします。もちろんこの間、鬼は両手で顔を隠したままです。みんなは元の場所に戻って歌の続きです。「ご飯を食べてむしゃむしゃむしゃ、お風呂に入ってごしごしごし、おふとんしいてねーましょ」それぞれ歌いながら、ご飯を食べる真似、お風呂に入って体を洗う真似、布団を敷いて寝る真似をしてください。
この部分は、地域によっては省略されていることがあります。小さい子どもが多いときは省くなど、状況に応じて変更してください。
鬼が動き出す
みんなが寝たら、鬼が動き出します。鬼は戸を叩く真似をして「カタカタカタ」と言います。みんなは「何の音?」と尋ねます。鬼は適当にごまかしてください。犬の音、時計の音、雨の音など、みんなが寝ていてもよさそうな理由を考えましょう。みんなは「あーよかった」と言って、また寝る真似をします。
これを何度かくり返してください。この回数は鬼が遊びながら自由に決められます。そして何度かくり返した後、何の音か尋ねられたら、鬼は「おばけの音!」と答えましょう。みんなは寝る真似をやめて、悲鳴を上げていっせいに逃げ出します。鬼は逃げ出した人を追いかけます。つかまった人が次の鬼になり、輪の中心に入ります。
『あぶくたった』をより楽しむポイント2つ!
鬼がみんなに回るようにする
「おばけの音!」と言ってみんなが逃げ出した後は、鬼ごっこになります。これでは、足が遅い子、逃げるのがへたな子ばかりが鬼をすることになりがちです。また、足が遅い子が鬼になったとき、なかなかつかまえられずにつまらない思いをしてしまうかもしれません。鬼がみんなに回るように、遊び方を工夫してみましょう。
たとえば、鬼ごっこを参考にして、遊び方にルールを追加する方法があります。鬼の足が速いなら、ここまで逃げ込めば安全というエリアを設ける。鬼の足が遅いなら、2人以上で手をつないで逃げたり、影を踏むだけでもOKというルールにしても面白いですね。
寝るまでのストーリーを自分たちで考える
鬼を戸棚にいれてカギをかけたあとは、ご飯を食べて、お風呂に入って、布団を敷いて寝ることになっています。ここのストーリーを自分たちで考えてみましょう。
たとえば、歯を磨いたり、テレビを消したり、布団じゃなくてベッドに入ったり、みんなの生活によっていろんなストーリーが考えられます。最近では、寝る前にタブレットパソコンで動画やゲームを楽しんでいる子もいるようです。子どもに寝る前にどんなことをしているのか尋ねると、現代の子どもならではの意外なストーリーができるかもしれませんね。
『あぶくたった』の歌詞の意味や由来とは?
分かりやすい遊び方で小さな子どもでも楽しめる『あぶくたった』ですが、歌詞の意味に注目してみてください。煮る、食べる、寝る、そしておばけの出現。ちょっと変わっていると思いませんか。『あぶくたった』は日本で古くから歌い継がれてきた童謡・わらべうたですが、歌詞をよく考えると、そこには意外と深い意味が込められていることが分かります。『あぶくたった』の歌詞の意味と由来を、三部構成にわけて解説します。
『あぶくたった』第一部「煮る(食べる)」を解説!
『あぶくたった』の第一部を解説します。歌詞でいうと、「あぶくたった~もう煮えた」の部分です。
この歌詞、よく意味を考えてみてください。あぶくというのは「泡」のことです。鍋にぐらぐら湯を沸かし、沸騰した泡がぼこぼこしているところで、「何か」をぐらぐら煮るわけです。そして、「何か」が煮えたかどうか「むしゃむしゃむしゃ」と食べて確認しているのです。ここでポイントになるのは、歌詞の中では一度も煮るのが「鬼」だとは言われていないという点です。
地域によっては輪の中心に入る鬼が、豆になったりナスになったりしています。豆やナスなら煮ることに不思議ではありませんが、続きの歌詞では、煮えて戸棚にいれられた「何か」がおばけとなって食べた人たちをつかまえに行くというストーリーになっています。食べ物がおばけになるというのは想像しにくいですね。つまり、歌詞の中で煮るのは、おばけになりそうな「何か」と考えられます。いったい何が煮えているのでしょうか。『あぶくたった』で煮るのは人だという説があります。飢饉で食糧難におちいった村人が、口減らしのために村の人間を殺して食べたことを歌にしたのが由来と考えられています。煮えているのが村のために殺された人なら、おばけになって襲いにくるのも納得できますね。
『あぶくたった』だけでなく、童謡・わらべうたを用いた伝承あそびには、恐怖や畏怖が由来になっているものが多くあります。たとえば『花いちもんめ』は、貧乏な家が口減らしのために子どもを人買いに銀一匁(いちもんめ)で売る際のやり取りを歌にしたものですし、『かごめかごめ』は遊廓から逃げ出そうとした遊女がとらえられたことを歌にしたものだと言われています。
『あぶくたった』第二部「布団を敷いて寝る」を解説!
『あぶくたった』の第二部を解説します。歌詞でいうと「戸棚にいれて~おふとんしいてねーましょ」の部分です。
戸棚にいれてカギをかけた後にご飯を食べていますが、カギをかけた後に皿を洗って片付ける動作になっている地域も多くあります。ふつう、食べ物を戸棚にいれてもカギまではかけません。第一部で、鍋で煮るのは村人ではないかという説を解説しました。よって、ここで戸棚にいれられているのは、鍋で煮られた人、それも食べきれなかった余りということになります。誰かに盗まれるのが怖いというより、それが中から出てこないようにという恐怖でカギをかけていると考えると、この動作にも納得できます。
みんなは布団を敷いて寝ますが、村人を殺して食べた後にまともに眠れるわけはありません。それが、この続きの第三部にも表れています。
『あぶくたった』第三部「おばけの出現」を解説!
『あぶくたった』の第三部を解説します。歌詞でいうと「カタカタカタ~おばけの音!」の部分です。
第三部で、いよいよおばけが出てきます。ふつうに遊んでいたら急に出てきたように感じるおばけですが、第一部、第二部の解説を読めば、このおばけが食べられてしまった村人であることは明らかです。村人を殺して煮て食べた人たちは、戸棚にいれてカギをかけても恐怖でなかなか眠れません。ちょっとした音でも目を覚まして何の音か気にしているところからそれが読み取れます。みんなが寝た後にいきなり襲いかかるのではなく、脅かして、安心させて、また脅かしてと村人の恐怖を煽るような行動をしている点に、殺された村人の恨みを窺い知ることができます。
これが本当に人を殺して食べた歌なのだとすると、その意味するところはなんでしょうか。それは、遊び方を考えてみると分かります。この伝承あそびは、おばけになった人が、自分を食べた人をつかまえて、つかまえられた人は次のおばけになるという流れをくり返しています。つまり、人を殺したり食べたりすると化けて出て襲われる、そんなことはしてはいけない、という教訓になっているのではないでしょうか。
伝承あそび『あぶくたった』で盛り上がろう!
歌詞の意味・その由来を考えるとちょっと怖い日本の歴史がみえてくる『あぶくたった』ですが、分かりやすい遊び方で子どもでも大人でも楽しむことができます。たくさん集まって遊ぶときには、ぜひ『あぶくたった』で盛り上がってみましょう。大人だけで遊ぶときは、この由来を解説すると違った楽しさを味わえそうですね。