エリクソンの発達段階とは?年齢別の課題を乗り越えるアドバイスも!

近年、日本でも発達障害が増加する中で子育てに悩む親御さんも大勢いらっしゃると思います。ドイツ出身の心理学者エリクソンは人間の発達段階を8つに分け、課題と対処の仕方を説明しています。子供が発達障害になった時などに備えて、エリクソンの発達段階を学んでみませんか?

エリクソンの発達段階とは?年齢別の課題を乗り越えるアドバイスも!のイメージ

目次

  1. 1心理学者エリクソンってどんな人?
  2. 2エリクソンの心理社会的発達理論とは?
  3. 3【エリクソンの発達段階①】乳児期(出生~2歳)   
  4. 4【エリクソンの発達段階②】幼児期前期(2~4歳)
  5. 5【エリクソンの発達段階③】幼児期後期(4~6歳)
  6. 6【エリクソンの発達段階④】学童期(6~12歳)
  7. 7【エリクソンの発達段階⑤】青年期(12~22歳)
  8. 8【エリクソンの発達段階⑥】成人期(22~40歳)
  9. 9【エリクソンの発達段階⑧】老年期(65歳以降)
  10. 10エリクソンのおすすめの本5選!
  11. 11【番外編】エリクソンの心理社会的発達理論の覚え方!
  12. 12エリクソンの発達段階を子育てに活かそう!

心理学者エリクソンってどんな人?

エリク・H・エリクソンは1902年生まれのドイツ出身心理学者で、オーストラリアで乳児から幼児までの子供たちの心の治療に当たっていた人物です。第二次大戦以降にアメリカへ亡命したエリクソンは、人間の成長課程における臨床経験と調査研究を重ねて、思春期・青年期以降も人間が社会的に成長することを証明しました。

医者

エリクソンの心理社会的発達理論とは?

エリクソンは生前に「心理社会的発達理論(psychosocial development)」という理論を提唱しました。この理論は、人間が8段階ある発達段階で「心理社会的危機(発達課題)」を克服して力を得ながら成長するという理論です。「心理社会的発達理論」は、日本で発達障害が社会問題化する中で注目を集めています。

【エリクソンの発達段階①】乳児期(出生~2歳)   

エリクソンの心理社会的発達理論は、年齢ごとに8つの発達段階で構成されています。この理論では年齢ごとに心理的課題があり、その課題を乗り越えることで成長するとされています。まずは乳児期(出生~2歳)の心理的課題と乗り越える為のアドバイスをお伝えします。

赤ちゃん

乳児期の心理的課題

エリクソンは心理社会的発達理論で「乳児期における心理的課題は基本的信頼の獲得である」としています。基本的信頼の獲得とは、乳児期に家族を含めた周囲の大人との関係性の中で人を信じる力を培うことを意味します。乳児期に他人を信じる力を得た子供は、同時に自分を信じる力を獲得することができます。

課題を乗り越えるアドバイス

エリクソンの理論に基づけば、乳児期に他者と自分への信頼を獲得する為には、周囲の大人から充分に感情を受け止めてもらうことが大切です。乳児期の子供は泣いたり笑ったりした時、そばにいる大人に満足するまで受け止めてもらうことで、自信と信頼を身に着けることができます。

親子

【エリクソンの発達段階②】幼児期前期(2~4歳)

幼児期前期は歩行やおしゃべりを始める年齢に入っていきます。幼児期の子供は何にでも「イヤ」と言ったり、自分の意思で自由に動き回ることが多くなります。

赤ちゃん

幼児期前期の心理的課題

エリクソンが提唱した理論における幼児期前期の心理的課題は「自律性を身に着けること」です。2歳~4歳という年齢は、それまで親に任せていた着替えや排泄など生きる為に必要な動作を、自分で行う練習をしていく年齢です。

課題を乗り越えるアドバイス

幼児期前期に自律性を育む為には、子供が自分で身の回りのことをやる機会を与えることが大切です。出来ないことは大人がサポートしながら、上手に自律性を育むことが心理的課題を克服することに繋がります。

子供

【エリクソンの発達段階③】幼児期後期(4~6歳)

幼稚園・保育園で集団生活を送るようになる年齢が、幼児期後期(4~6歳)です。幼児期後期に始まる集団生活にうまく適応できない子供は、発達障害の可能性が疑われる場合があります。

子供

幼児期後期の心理的課題

幼児期後期の心理的課題は「積極性」を育むことです。幼児期後期には自発的に勉強やスポーツなどの課題に取り組むことを覚える年齢です。発達障害の子供の場合、自発的に課題に取り組むことが苦手な場合もあります。

課題を乗り越えるアドバイス

幼児期後期の子供が積極性を身に着けるには、友達と自由に遊ぶ時間が必要です。幼稚園・保育園でお友達と遊ぶことで積極性を身に着けていきます。エリクソンの理論に基づけば、大人はあまり介入しすぎず、子供たちが遊ぶ様子を見守ることが大切です。

また発達障害の子供に対しては、周囲から孤立することがないよう配慮が必要です。ただし発達障害がある場合も、特別扱いは避けつつ適度な配慮を行うようにしましょう。

子供

【エリクソンの発達段階④】学童期(6~12歳)

小学校に通学するようになる6~12歳までの年齢は学童期に当たります。学童期は幼児後期に続き発達障害が発見されやすい年齢で、多動や集中力の欠如が見受けられる場合があります。

発達障害が疑われた場合は、まず専門機関に相談しましょう。ただし子供が大人に比べ若干多動気味なのは自然なことですので、あまり過剰に心配する必要はありません。

少女

学童期の心理的課題

学童期の心理的課題は「勤勉さ」「計画性」です。エリクソンは、学童期には学校の勉強を計画的にこなすだけでなく、友達同士で何を学び合うかが重要であるとしています。また発達障害の子供は、他の子供に比べ計画的に物事をこなすのが苦手な場合もあります。

課題を乗り越えるアドバイス

学童期の子供が「勤勉さ」を身に着けるには、夏休みの宿題など学校から与えられた課題をスムーズにこなせるようやる気を育てることが大切です。与えられた課題に対し、子供が積極性を持てるように周囲の大人がアドバイスや工夫を行っていきましょう。

また発達障害の子供は集中力が持続できない場合もある為、学校の先生と相談しながら適切な対処していきましょう。

勉強

【エリクソンの発達段階⑤】青年期(12~22歳)

12~22歳は子供時代を終え心も体も大人へと成長し、親元から巣立つ為の準備期間に当たる年齢です。青年期を迎えた子供は、親から徐々に自立して別の時間を過ごすことが増えていきます。

教室

青年期の心理的課題

エリクソンの理論では、青年期の心理的課題は「アイデンティティ」の形成とされています。青年期は自分の存在意義について考えたり、他人との違いについて悩むことが多い年齢です。特には発達障害を抱えた人は、自分と他人の違いに悩むことが多くなります。

課題を乗り越えるアドバイス

青年期の心理的課題を乗り越えるには、大人としての責任を猶予されるモラトリアム期間が必要です。特に18~22歳は進路を決める重要な期間ですが、あまり将来の選択を焦ることがないよう気長に見守りましょう。青年期の発達障害については、周囲の配慮や医学的なサポートが必要となる場合があります。

女性

【エリクソンの発達段階⑥】成人期(22~40歳)

22~40歳は成熟した大人として社会に出て、就職・結婚・育児などを経験する年齢です。エリクソンの発達段階では親からの自立を果たし、次世代の育成を始める成人期に当たります。

男性

成人期の心理的課題

成人期の心理的課題は「親密性」を持つことです。エリクソンは、成人期に他者と親密なコミュニケーションを図るには、自分の価値観を客観的に見つめて理解しあう努力をする必要があるとしています。親密性は、恋愛を経て結婚し、子供を育くむ為に重要な課題です。

課題を乗り越えるアドバイス

社会人となり企業で働き始める成人期は、学童期から青年期までに学んだ他者と学び合う関係が活かされる時期です。仕事で円滑なコミュニケーションを図ったり、恋愛でお互いを尊重する関係を築くには学童期から青年期までに多くの人と交流を持つ機会が必要になります。また発達障害がある場合は、職場での配慮が必要となる場合もあります。

恋人

【エリクソンの発達段階⑧】老年期(65歳以降)

65歳以降の老年期は、仕事を引退し子育てを終えて残りの人生をどのように過ごすかを考える年齢です。エリクソンは自分自身の老年期に、人生の集大成とも言える論文を発表し、その人生を終えています。

老人の手

老年期の心理的課題

エリクソンの理論における老年期の心理的課題は「人生の統合」です。老年期に成人期の人生を振り返り「幸せで後悔がない人生を送れたと思えることが大切である。」とエリクソンは主張しています。

課題を乗り越えるアドバイス

老年期は孤独感や後悔に襲われやすい年齢でもあります。成人期に十分に仕事で活躍できたか、次世代を育む子育てを納得の行く形で終えることが出来たかなどが、老年期に人生の充足感を感じるために重要なことです。

老人

エリクソンのおすすめの本5選!

エリクソンが人間の発達段階について記した本を5冊ご紹介します。幼児から老年期までのライフサイクル理論が掲載された本や、エリクソンの妻が執筆した論文が掲載された本があります。発達障害の子供の教育にも参考になる内容もありますので、是非参考になさってください。

ライフサイクル、その完結

エリクソン自身が老年期にまとめた学術論文で、8つの発達段階+エリクソンの妻が提唱した9つ目の発達段階「老人的超越」が掲載されています。エリクソンの論文の中で特に難解な内容なので、基本的な心理学の知識を身に着けてから読むことをおすすめします。

アイデンティティとライフサイクル

エリクソンの主要な論文が3つ掲載された本で、自分の内面を見つめ直しつつ、他者への理解を育むために最適な一冊です。「アイデンティティとライフサイクル」には以下の3つの論文が掲載されています。こちらの3冊は、特に発達障害の子供を持つ親御さんにおすすめの本です。
 

  1. 自我の発達と歴史的変化
  2. 健康的なパーソナリティーの成長と危機
  3. 自我アイデンティティの問題

幼児期と社会

「幼児期と社会」は、エリクソンが幼児期の特性を身体的・精神的・社会的な視点で研究を行った論文です。乳児期から老齢期までの8段階の発達段階について書かれており、心理学に詳しくない人でも読みやすい内容の本です。発達障害など子供の教育に悩んでいる方は、まずこちらの本から読んでみましょう。

アイデンティティ:青年と危機

世界中で読まれているエリクソンの著作の中で最も有名なのが「アイデンティティ: 青年と危機」です。アイデンティティの概念を中心に、人間探求を深めた一冊です。青年期の発達障害への対処法としても、参考となる本です。

老年期: 生き生きしたかかわりあい

老年期の人間の心理を考察しつつ、高齢者の社会との関わり方について記した本です。老年期を迎えた人間が子供・孫との関わりを持ちながら地域社会で活き活きと生活するための提言が書かれています。

【番外編】エリクソンの心理社会的発達理論の覚え方!

エリクソンの心理社会的発達理論は、看護師試験など医療系の国家資格試験に必ず出題される重要な内容です。看護師など医療系の仕事は発達障害の子供たちの関わりを持つ事がある為、エリクソンの理論を覚えておく事が重要視されています。

心理社会的発達理論は、それぞれの発達段階の課題とアドバイスをノートに書き出して覚えましょう。身近な人の人生などと当てはめながら覚えると覚えやすいですよ。

エリクソンの発達段階を子育てに活かそう!

今回は心理学者エリクソンの発達段階について詳しく解説してきましたが、如何でしたか?日本でも発達障害の増加などが指摘される中で医療従事者にも注目されているエリクソンの発達段階は、一般的な子育てにも十分活かせる内容です。子育てに悩んだ時は、エリクソンの発達段階を参考にして子供の健やかな成長を見守っていきましょう。

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この記事のライター
夏茜
夏茜と申します。 地域雑誌で記事の執筆や、挿絵を描いております。 読みやすく親しみやすい記事を目標にしています。

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