医療費控除は確定申告で!妊娠・出産費用で控除の対象となるのは?
妊娠・出産の費用が医療費控除の対象となることをご存知ですか?出産後は何かと大忙しなので、出産前にできる限りの準備をしておきましょう。医療費控除と聞くと病院や薬局に支払った費用だけと思いがちですが、交通費等も場合によっては対象となります。確定申告に備えましょう。
目次
出産した年は確定申告をしよう!
家族の一大イベントである出産には、かなりの費用がかかります。国からもらえる出産育児一時金では賄えない場合もあり、出産費用をどうにかを抑えたいところです。今回は、出産にかかった費用を医療費控除として確定申告することで出産費用を節約する方法をご紹介します。
確定申告と医療費控除について解説!
確定申告とは
確定申告とは、個人がその年の1月から12月までを課税期間として、その期間内の収入・支出、医療費や扶養親族等の状況等から所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定させることです。
控除とは
税金は前年分の所得に対して課されるものですが、受け取った給与すべてが所得として計算されるものではありません。すべての人が対象となる基礎控除、各種保険を対象とする生命保険料控除、そして医療費などが太守となる医療費控除など、生活に必要な支出を「控除」という形で収入から差し引くことができます。こうして、収入から各種控除を差し引いて残った金額が所得となり、その所得をもとに翌年度分の税金が課税されることになります。
医療費控除
医療費控除とは、1月から12月までの1年間に支払った医療費の自己負担額が10万円(※)を超えたとき、超過分をその年の所得から差し引ける制度です。病気やケガの治療にかかった費用は医療費控除の対象となります。出産も医療費控除の対象となり、費用も高額なため医療費控除の条件をクリアしやすいです。なお、医療費控除は生計を一にする配偶者や親族も対象となるため、子どもが小児科や歯科で治療を受けたという場合はその費用も一緒に計上することが可能です。
(※)所得金額200万円未満の場合は所得金額の5%が基準になります。
出産費用で医療費控除を受ける3つのメリット
①還付金を受け取れる
出産その他により医療費控除を受けると、支払った医療費の一部が還付金として返ってきます。全額ではなく一部が返ってくるので、間違えないようにしましょう。
②次年度の税金が安くなる
出産その他により医療費控除を受けると所得が下がるので、次年度の住民税などの税金が安くなります。毎月支払う税金が下がるというのは、想像以上に効果が大きいです。
③保育料軽減の可能性
出産その他により医療費控除を受けて前年度の所得が一定額より低くなった場合、保育料が軽減される制度があります。条件はそれぞれの地方自治体で異なるため、住んでいる市区町村のホームページを確認してみるといいでしょう。
医療費控除を受ける際に準備するもの3つ!
①確定申告書
出産その他による医療費控除を受けるために必要な確定申告書は最寄りの税務署または国税庁のホームページからダウンロードすることが可能です。なお、確定申告書にはA様式とB様式があり、会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者はA様式を利用します。
②医療費の明細書
出産その他による医療費控除を受けるためには医療費の明細書が必要です。明細書と聞くと堅苦しいイメージを受けるかもしれませんが、要はかかった医療費のリストのことです。手書きでもエクセル等で作成したものでもよく、何を書けばいいかわからないという場合には国税庁のホームページからテンプレートをダウンロードすることができます。
③勤務先でもらう源泉徴収票
年末に会社から渡される源泉徴収票が必ず必要です。出産その他による医療費控除を受けるためにはなくてはならないものです。なくしてしまったら勤務先に再発行してもらいましょう。まずは、受け取ったらしっかりと保管しておくことが大切です。
医療費控除の還付金受け取りまでの流れ5ステップを解説!
①1年分の領収書を集める
生計を一にする家族全員分が医療費控除の対象となりますので、出産費用だけでなく自分と家族が1月~12月までに支払った医療費の領収書を集めます。領収書を病院や薬局、交通費がある場合はタクシー会社ごとに分け、それぞれの小計を出します。
②医療費を合算して控除の対象になるか試算する
①をもとに医療費の明細書を作成し、合計金額を算出します。
③確定申告の書類を準備する
会社から配布された源泉徴収票をもとに、確定申告書を作成します。
④税務署に提出する
出産その他による医療費控除に必要な書類一式を税務署へ提出します。提出方法は、直接持ち込みでも郵送でも可能です。
⑤銀行口座にお金が振り込まれる
後日、還付金が指定の口座に振り込まれます。税務署の手続きのスピードにもよりますが、大体の目安として1ヶ月から1ヶ月半後くらいに振込が行われます。還付金額が決定すると税務署から「国税還付金振込通知書」が届きます。金額はそこに記載されています。
妊娠・出産費用で控除の対象になるもの9つ!
①妊婦健診費
妊娠と診断されてから出産までの定期健診や検査などの費用は控除の対象になります。
②分娩・入院費
その他妊娠・出産に関わるトラブルでの受診や入院費も含まれます。
③通院時の公共交通機関の運賃
通院や出産に関わる交通費については領収書のないものが多いですが、家計簿などに記録するなどして実際にかかった費用について明確に説明できるようにしておけばよいとのことです。ただし、里帰り出産のためにかかった交通費(新幹線代や飛行機代)は医療費として認められません。
④出産時のタクシー代
出産で入院する際に、電車・バスなどの通常の交通手段での移動が困難なためタクシーを利用した場合、そのタクシー代は医療費控除対象の交通費となります。
⑤入院時の病院での食事代
出産後病院に対して支払う入院中の食事代は、入院費用の一部として支払われるものですので、一般的には医療費控除の対象となります。しかし、他から出前を取ったり外食したりしたものは控除の対象になりません。
⑥妊活・不妊治療費
医師が必要と認めた通常の不妊治療であれば該当します。判断が難しければ担当医にご相談を。妊娠検査薬は医療費の対象となりませんのでご注意ください。
⑦赤ちゃんの入院費
出産後の赤ちゃんの入院費は医療費の対象となりますが、入院中の紙おむつ代、予防接種代は控除の対象となりません。
⑧産後1か月検診の費用
赤ちゃんの1か月検診の費用は医療費控除の対象となります。
⑨乳腺炎などの治療費
出産後に多いのが母乳に関するトラブルです。場合によっては医師の証明書が必要です。
妊娠・出産費用で控除の対象にならないもの4つ!
①自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代
自家用車を使用した場合のガソリン代や駐車場代は医療費控除の対象となる交通費に含まれません。また、入院している家族の世話のために通院した交通費も対象になりません。
②医師や看護師への謝礼
感謝の気持ちを形にして伝えることは大切ですが、医療費控除の対象とはなりません。
③入院時の個室での差額ベッド代
入院時に自分で個室を希望した場合、差額ベッド代は医療費として認められません。
④入院準備で購入した着替えや洗面用品代など
自分の入院のために準備したパジャマや洗面道具のほか、出産準備品の購入代金なども医療費の対象になりません。
医療費控除額の計算方法を解説!
医療費控除の計算方法と計算例
医療費控除を受けてどのくらい還付金がもらえるかは、次の手順で計算します。
- 医療費控除額=(医療費控除の対象になる医療費-保険金や助成金などで補填された金額※1)-10万円(※2)
- 還付金額=医療費控除額×所得税率
なお、医療費控除の上限額は200万円です。
(※1)差し引くのは、保険金・助成金給付の目的となった医療費の金額が上限。差引ききれない金額があっても、他の医療費からは差し引かない。
(※2)所得金額200万円未満の場合は、所得金額の5%
還付金の計算方法と計算例
例えば、医療費控除の対象となる医療費が合計40万円、保険金・助成金などで補填される金額が特になく、課税される所得が360万円(所得税率20%)という方を例にしてみましょう。この方が医療費控除を受けたとき、
もらえる還付金={(40万円-0円)-10万円}×20%=6万円となります。
医療費控除を受ける際の3つの注意点とは?
①領収書は保管しておく
領収書は確定申告の要です。うっかり紛失してしまわないように保管しておきましょう。また、領収書は最低でも5年は保管しておかないといけません。確定申告が終ったからといって捨ててしまわずに保管しておきましょう。
②保険金や補助金は差し引く
自分の財布から出ていくお金のことばかりに目が行きがちですが、保険金や補助金・助成金を受けた場合はしっかり自己負担額から差し引いて計算しましょう。
③セルフメディケーション制度との併用不可
2017年度から医療費控除の特例としてセルフメディケーション制度が利用できるようになりました。これはドラッグストアなどで購入できる指定医薬品の年間費用が12,000円を超えた場合に適用できる制度です。金額を見ればわかる通り、医療費控除よりもハードルが低いメリットがあります。しかし、このセルフメディケーション制度は医療費控除との併用ができません。出産した年はセルフメディケーション制度を利用しないように注意しましょう。
出産費用で医療費控除を受ける際のお得な豆知識を4つ紹介!
①5年前まで遡って申告が可能
医療費控除の申告を忘れてしまったり、そもそも知らなかったという方もいるかと思います。しかし、領収書さえとってあれば医療費控除は過去5年分まで遡って申告することが可能です。
②共働きの場合は所得の高い方が申告する
医療費控除は夫婦どちらが申告しても問題はありません。もし夫婦が共働きなのであれば所得の高いほうが医療費控除を受けたほうがお得です。
③同じ年に家族の治療も済ませる
医療費控除は生計を一にする家族の医療費を申告するものです。そのため、出産を控えた年に家族で治療が必要な人がいるのであれば、一緒に済ませてしまった方がお得です。家族の治療費もまとめて申告したほうが、返ってくる還付金も増えるからです。
④時間がなくてもe-Taxで申告できる
忙しくて税務署に行っている時間がないという人はe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用しましょう。パソコンやスマートフォンから手軽に確定申告の書類が提出できるので、日中わざわざ税務署に行く必要がないというメリットがあります。
出産した年は確定申告の準備をしよう!
いかがでしたか?出産の前後はなにかと慌ただしいものですが、妊娠や出産でお金がかかった時に受けられる医療費控除は所得税の負担を軽くしてくれる家計の味方です。早め早めの準備で、確定申告に備えましょう。交通費などは特に細かいルールがあり、医療費控除の対象になるのか曖昧で迷ってしまうこともあるかと思います。そういう場合は「治療目的の費用か」を判断基準にすると良いでしょう。病院や薬局で質問したり、税務署に問い合わせてみるのも手です。