2018年05月23日公開
2018年05月23日更新
アダルトチルドレンの特徴や原因とは?親はどうすればいいの?
アダルトチルドレンとは、子供の頃に育った家庭環境やしつけられ方にトラウマを負った成人のことをいいます。自己認識による状態を指すものであり、医学的な精神疾患ではありません。ここでは、アダルトチルドレンの特徴や二次的精神疾患、克服法などを解説していきます。
目次
アダルトチルドレンとは?
アダルトチルドレン(AC)とは、子供の頃に家庭内で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えられる成人のことを指します。
一般的なトラウマの体験としては、身体的・精神的な虐待やネグレクト(育児放棄)、過剰なしつけ、親のアルコール依存症や薬物依存症など、いわゆる機能不全家族の元で育つことなどが挙げられます。
このアダルトチルドレンと呼ばれる人の多くは、対人関係や社会性、二次的な精神疾患の発症など、様々な面で独特の傾向が出てきてしまうため、生きづらさを感じてしまうこともあるのです。
アダルトチルドレンの特徴とは
家庭内でのトラウマを負ったアダルトチルドレンは、自尊感情の低い人が多く見られます。
常に親の顔色ばかり伺っていたり、過剰なしつけや暴力に怯えて緊張状態にある生活を送ってきた場合、成人しても人に嫌われることを極端に恐れたり、他人を信じることができなくなってしまうのです。
アダルトチドレンは、自分の考えや思考が当たり前だと思い込んでしまうことが多いため、一人での克服や治療が困難です。そのため、周りのサポートも必要となってくることもあります。
その他にも、アダルトチルドレンは以下のような特徴が見られます。
- NOと言えない
- 自分の意見を言えない
- 自分の考えは全て間違ってると感じる
- 被害妄想が強い
- 感情をうまく表せない
- 常に何かが不安
- 孤独を感じやすい
- 楽しむことができない
- 人と仲良くしようとすると依存的になる
- 失敗を極端に恐れる
- 自分の性格に自信がない
このように、機能不全家族によって受けた心の傷は、成人後の思考や性格を大きく左右してしまい、時には二次的な精神疾患を発症してしまうこともあるのです。
アダルトチルドレンのタイプ
アダルトチルドレンの中にも、育ってきた環境やしつけられ方、その人自身の性格などによって、「ピエロタイプ」や「ロストワンタイプ」など、様々なタイプが存在します。
ではここで、大きく6つに分けたアダルトチルドレンのタイプをそれぞれ紹介していきます。
ピエロ
ピエロとは、「道化師」という意味で、アダルトチルドレンの中の「おどけ役」を意味しています。
ピエロタイプのアダルトチルドレンは、明るく笑顔で立ち振る舞いながらも、必死で家族を繋ぎ止めようとするのが特徴です。自分の考えや感情を後回しにして、穏やかな雰囲気を守ろうとする優しい存在です。
なので、周りからのピエロタイプの性格や印象は、「優しい性格の人」「人気者」「愛されキャラ」などと感じ、マスコット的な存在やアイドル的な存在に映ります。
しかし、内に秘めた本当の寂しさや悲しみや怒りは、笑顔と明るさによってひた隠しにしているのです。
ヒーロー
ヒーロータイプのアダルトチルドレンは、まさしく機能不全家族のヒーロー(英雄)で、頑張りと功績によって家族に希望をもたらし家族を支えようとするのが特徴です。
親から示された期待と理想を、絶対の使命として受け取ってしまい、周囲の期待になんとしても応えようと必死で努力しようとします。
その結果、ヒーロータイプは成人後も周りから「努力家」「完璧主義者」といった性格に見られることが多いです。
ですが、正義感が強いが故に、期待に答えなければというプレッシャーに押しつぶされそうになってしまう場合があります。
ケア・テイカー
ケア・テイカータイプのアダルトチルドレンは、別名「リトルナース」とも呼ばれ、「ケアをする人」「面倒やお世話をする人」といった特徴があります。
機能不全家族を献身的にサポートすることで相手にも喜んでもらえることを期待し、それが自分の存在価値を感じる手段となっているのです。
なので、周りから見たケア・テイカータイプの印象や性格は、「過保護、過干渉な人」「おせっかい」「寂しがり屋」のように映ります。
このタイプのアダルトチルドレンは、お世話をし続けないと不安や寂しさを感じてしまうので、お世話をできる相手を確保しようとします。全身全霊に尽くそうとする為、相手もそのお世話に安易に甘えてしまうと、結果お互いに依存しあう(=共依存)の状態に陥ってしまうこともあります。
プリンス・プリンセス
プリンス・プリンセスタイプのアダルトチルドレンは、自分の意思を封印し、まさに人形のように振る舞うのが特徴です。
親からは人形のように溺愛されますが、自分の意思は全く無視され、親の望む通りの行動をとらなくてはならない為、自由でのびのびとした子供時代を過ごすことができません。
こうしたアダルトチルドレンは、「誰かの望む通りにしないと嫌われる」と感じ、常に自由であることに不安を覚えます。
自分の意思が伝えられず、断ることのできない性格の為、モラハラやDVなどの被害に合いやすいと言われています。
スケープ・ゴート
スケープ・ゴートとは、「犠牲の山羊」という意味で、アダルトチルドレンの中で「身代わり」や「自己犠牲」を意味します。
このスケープ・ゴートタイプのアダルトチルドレンは、家庭内での暴力や衝突、親から受けた冤罪など、自分に一切落ち度がなくても自ら犠牲になることで、機能不全家族を懸命に支えようとするのが特徴です。
中には、あえて自ら問題を起こそうとし、家庭内や学校でトラブルメーカー的存在になってしまう子も多く見られます。意識的には、親から見捨てられることを恐れ、問題を起こしてでも親からの注目や愛情を欲しているのです。
このように、自ら悪者となってしまうスケープ・コートタイプは、自分や世間に対して悲観的な性格になりやすく、自傷行為やアルコール・薬物依存症、年少妊娠などの非行に走りやすくなります。
ロストワン
この「ロストワン」は、アダルトチルドレンの中でも一番よく聞く用語ではないでしょうか。
ロストワンとは、「迷子」や「いない子」という意味があり、家庭や集団の中でおとなしく、存在感が薄いのが特徴です。
他のアダルトチルドレンのタイプのように、目に見えた行動をしようとはせず、自分の気持ちを押し殺すことで、家族の負担を減らそうと考えます。
ロストワンタイプは、親からすれば「手がかからない」「しつけの必要がない」「大人しくていい子」に映るのですが、ロストワン自身としては「自分なんてどうでもいいでしょ」といった意識が根底にあります。
「誰かに必要とされている感」を感じず、見捨てられたような気持ちを感じやすくなっているのです。
アダルトチルドレンと精神疾患は関係があるの?
アダルトチルドレンは、あくまで状態像の用語であり、精神疾患などの医学的用語ではありません。
しかし、親の虐待や過度なしつけなどが原因でアダルトチルドレンになってしまうことによって、二次的に精神疾患を発症してしまうケースがあります。
二次的な精神疾患とは、例えばうつ病やアルコールや薬物などの依存症、ひきこもり、摂食障害などが挙げられます。このような精神疾患を患ってしまうと、その精神疾患への治療も要する事になるため、アダルトチルドレンへの克服に時間がかかってしまいます。
アダルトチルドレンを克服するための治療方法
上記で説明した通り、アダルトチルドレンは正式な病気や診断名ではありません。
機能不全家族が原因で、性格の歪みだったり心の未熟さが生じている状態のため、病院で薬を処方してもらうなどの確立した治療法は存在しないのです。
なので、アダルトチルドレンを克服する為の第一歩としては、自分が育ってきた環境や感情を客観的に振り返り、「自分はアダルトチルドレンかもしれない」と認識することが大事です。そこから初めて、治療方法を見出していけるのです。
自分がアダルトチルドレンだと認識した時、その治療法や克服法をいくつか紹介していきます。
カウンセリングを受ける
アダルトチルドレンの原因は、機能不全家族のもとで育ったことによって感情を自由に表現できなかったことにあります。特に、「寂しさ」「悲しみ」「怒り」「不安」などのネガティブな感情を抑えてきたので、心にストレスが溜まっている状態です。
二次的な精神疾患を発症してしまう前に、カウンセリングによる治療を受け、自分の思いや感情を吐き出したり、自分の考えを見つめ直すなどして、心のストレスを少しづつ発散するように治療していくのもいいでしょう。
支援グループに参加する
支援グループでは、機能不全家族の元で育ったことによる生きづらさや、家庭内での苦しみ、さまざまな依存症、DVや性的な被害など、それぞれの悩みに共通した仲間たちと分かち合うことができます。
セミナーなども開催され、アダルトチルドレンの原因や治療と克服法、体験談などを聞くことができます。特にロストワンタイプのアダルトチルドレンは、常に強い孤独感を感じているため、他の人と共感する事でネガティブな気持ちが軽くなるかもしれません。
悩んでいるのが自分だけではないということ、克服できた人がいるんだということを知ることだけでも、治療の手助けとなるはずです。
自分で向き合ってみる
自分がアダルトチルドレンかもしれないと自覚できた時、まずは自分の過去や家庭環境を見つめ直してみて下さい。過去を振り返ることに苦しさを感じる人もいるかもしれませんが、原因を探ることができれば、克服することに繋がります。
アダルトチルドレンの治療や克服で一番重要なのは、自分がアダルトチルドレンであるという自覚をすること、そしてその原因となる家庭環境を改めて客観的に分析し、「おかしいことだったんだ」と気づくことなのです。
自分がアダルトチルドレンであると気づいても、「このままじゃだめだ」と焦らず、ゆっくり自分のペースで克服していきましょう。
アダルトチルドレンになってしまう原因
アダルトチルドレンのタイプにも様々な種類があったように、アダルトチルドレンになってしまう原因にも、様々な要素があります。
条件付きの愛情
条件付きの愛情とは、親が望むことをできる子供は愛するけど、できない子供は愛さないという親の条件付きの愛情表現のことをいいます。
条件付き愛情の親の元で育つ子供は、「失敗したら親に愛してもらえない」という恐怖に怯え、親を怒らせてしまったと感じた時は罪悪感を感じ、愛してもらえるように謝り続けます。
その結果、ありのままの自分では誰にも愛されないと思い込み、違う自分にならなくてはならないという縛りを感じながら生きることになってしまうのです。
子供をコントロールしようとする
「子供は親の言うことを聞くものだ」という言葉はよく耳にしますが、それが過剰になっていくと、アダルトチルドレンになる原因の一つとなってしまいます。
親が子供を自由に育てず、しつけだと称して全てをコントロールしようとすることで、子供の心のバランスが崩れてしまいます。親にコントロールされてばかりいると、自分で物事を考えて行動しようとすることができなくなってしまいます。
さらに、喜怒哀楽といった感情をうまく表現できなくなったり、自分の意見が言えなくなったり、情緒不安定に陥ったりすることもあります。
怒鳴る・脅す等して怒る
どうしても言うことを聞かない子供に対して、時には親が毅然とした態度で子供を叱ることも必要です。しかし、中には強く怒鳴ったり脅すなどをして子供に恐怖心を与えることで、子供をしつけようとする親もいます。
親にこうした態度をとられると、子供は親に対して萎縮してしまい、親に本音をさらけ出せないと思い込んでしまいます。
また、「言うこと聞かないと頭叩くよ!」など、脅された教育を受け続けると、表面的には言動が改善されることがあるものの、精神的にはショックが残るため、アダルトチルドレンとなる原因になっていまうのです。
虐待
虐待には、「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「ネグレクト(育児放棄)」の4つの種類に分けられています。そして、いずれのパターンも、子供の人格形成に大きく影響を及ぼします。
虐待をする親の中には、「しつけのためだ」「お前が悪いからだ」「これが愛だ」と主張しながら虐待をする人もいます。これは、自分も子供の頃、親にこのように言われながら虐待を受けてきたパターンが多いのです。
しかし、虐待はしつけや愛情表現ではありません。虐待が原因で心に深く傷を負ったアダルトチルドレンは、何かしらの精神疾患を患うなど、一生その傷と向き合わなければならなくなるのです。
過度な期待
親が子供に対して過度な期待をすることで、子供が少しでもその期待に答えられなかった時、親は大きく失望します。その失望や怒りを、子供は敏感に察知します。
親に愛されるために、「もっといい子でいなくちゃ」「テストでもっといい点とらなくちゃ」などと思い込み、何に対しても必死で親の期待に応えようとします。
このように、親の過度な期待を向けられながら育つ子供は、成人後も「自分はこうでなくてはならない」という脅迫概念にとらわれてしまいがちです。
本当の自分の性格や、心を見失ってしまう原因となってしまいます。
共依存
共依存とは、家族関係や人間関係などの「関係性」にお互い依存する状態にあることを指します。
親子の共依存になる主な流れとしては、
- 親が子供に依存する
- 子供がその依存を受け入れて、子供も親に依存するようになる
- お互いがその依存状態から抜けられなくなる
といったパターンが多いとされています。
また、母親が放任主義なタイプである場合、子供は自立した性格になるか、もしくは自分の存在価値が分からなくなって親に依存するケースもあります。
このように、親との共依存が原因で、成人後も自分の判断がつきにくくなり、誰かに依存していないと不安になってしまうのです。
機能不全家族
機能不全家族とは、家庭内で身体的または精神的なダメージやストレスが存在していることをいいます。例えば、虐待やネグレクト(育児放棄)、子供への過剰な期待などが挙げられます。
アダルトチルドレンとなってしまう原因の根底は、このような機能不全家族にあるのです。
親が偏った考えを持っているような機能不全家族の中では、子供は健全な学びの体得が難しくなります。そういった子供時代の状態によって、アダルトチルドレンは自分自身の思考の歪みや、二次的な精神疾患の発症などの生きづらさを抱えてしまいます。
子供には無条件の愛情を注ごう
アダルトチルドレンの治療や克服は、確立した精神疾患ではないため、非常に辛く困難な事です。
子供をアダルトチルレンにさせないためにも、親はまず子供に対してどのように接しているか、これが本当に正しいしつけになっているのか、改めて客観的に自分を見直す事が必要です。
子供は、どんなに小さくても、大人のようにきちんと心や感情を持っています。親が真正面から子供と向き合ってあげなければ、子供は皆ロストワン(家庭内での迷子)となってしまいます。
まずは子供に対して、無条件に愛情を注ぐ事こそが、子供にとって一番のしつけであり、アダルトチルドレンを防ぐ方法なのです。