陰陽師の呪文の意味や効果を一覧で紹介！「そわか」とは？

映画やアニメなどのキャラクターとして異彩を放つ陰陽師は、平安時代から現代まで実在している存在です。中国の陰陽五行説が日本に渡来し、密教者や修験道と混じり合い独自の発展を遂げた陰陽道に基づいた祈祷や呪術を使う陰陽師はどんな呪文を使うのでしょうか？今回は、陰陽師の歴史や仕事、子孫などについて詳しくお伝えします。

陰陽師の仕事といえば呪術や占いを施したり、最強の式神を操る職業というイメージがありますよね。神社の神主に近い服装ですが、そのルーツや宗教的な意味は神道とは異なります。まずは陰陽師の仕事について分かりやすく解説致します。

陰陽師の仕事は「陰陽道」という哲学や思想に基づいて行われていました。「陰陽道」は、古代中国で誕生した自然哲学思想や陰陽五行説が日本に持ち込まれ、道教や密教などの思想と混ざりあい独自の発展を遂げたものです。

陰陽師の仕事は主に呪術や祈祷、祭祀などを執り行うことでした。その仕事は平安時代には神格化され、安倍清明など式神の使役に長けた最強の陰陽師も生まれましたが、明治時代には禁止となり徐々に廃れていきました。現在も数は減少したものの、職業としての陰陽師は存在しています。

飛鳥時代に律令制の元で誕生した陰陽師の組織・陰陽寮では、天文占や歴占など様々な占術が行われていました。陰陽師による占術は、平安京や平城京の遷都の際にも用いられ、その結果は国の行く末を左右するほどの重要な意味を持っていました。

陰陽師が行っていた占いの代表格が「式占（しきせん）」という占いです。陰陽師は式盤（別名　天地盤）と呼ばれる道具を使って、式占を行いました。式盤とは、東西南北の門や十二支などが彫られた板状の道具で、風水の羅盤の原型ではないかと言われています。

暦占は陰陽寮が部下たちに暦を作らせるほど、陰陽師にとって重要な占いでした。陰陽師が用いた歴占は現代のカレンダーにも記されている「六曜」と呼ばれる占いで、暦に割り当てられた先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口などで、その日の吉凶を占います。

相地とは風水学の「四神相応」に基づく占いで、日本では遷都を行う際に土地の吉凶を占うために用いられました。玄武（北）・白虎（東）・青龍（西）・朱雀（南）をそれぞれの方角の守り神とし、京都に平安京が造営される際にも、相地に基づいた検分が行われました。

陰陽寮は、天文観測により天変地異を予測する天文博士や天文生の監督を担っていました。また安倍晴明は、陰陽道の師匠である賀茂保憲から天文学を学び、安倍家の家学として子孫へと継承していきました。

江戸時代の陰陽師たちが自然災害や社会で起こる出来事を占うために用いていたのが易占です。易占は、儒教の経典「筮竹」に基づいた占いで、主に筮竹という細い竹を用いて未来を予測する江戸時代最強の占いでした。筮竹以外にも、サイコロを使った占術などが用いられ、安倍晴明の末裔である土御門家も、易占を得意としていました。

映画やドラマで陰陽師は公家などに仕え、主の政敵を強力な呪術で呪ったり、逆に呪いを跳ね返したりと大活躍していますよね。呪術で人を呪い殺すことは古代の日本で禁止されており、行った者は厳罰に処分されました。ここから陰陽師が行っていた主な呪術を3つご紹介します。

形代は人や動物を模した呪いやお祓いに使用する呪術の道具です。素材は金属や木製の物がありますが、最も有名なのは紙製の形代です。紙代や人形で呪いをかける時は名前や髪の毛、生年月日などを用いて呪いをかけたと言われています。

陰陽師は、呪術で調伏した鬼神や妖怪を式神として使役したり、自らの思念から式神を作り出していました。最強の陰陽師ほど強い式神を使役することができたと言います。また紙や木で作られた形代に念を込めて、式神として使役し呪いをかけるなどの呪術も用いられていました。

陰陽師が行う呪術の中で最強の力を持つ呪いの一つである蠱毒は、ヘビ・カエル・トカゲなどを一つの容器に収め共食いをさせるという方法で行われていた呪術です。共食いで生き残った生き物から得た毒を呪いをかける相手の敷地内に撒いたり、食べ物に忍ばせるなどして呪いをかけていました。

強力な呪いに対して陰陽師は、仏教をルーツに持つ「真言」を使って厄払いを行っていました。真言は呪文とほぼ同じものですが、仏教では真言そのものが「仏の言葉」として強力な厄払いの効果を発揮すると信じられていました。また陰陽師が使っていた最強の呪文「そわか」も真言の一種です。

ドラマや映画で陰陽師が唱えている呪文と言えば「そわか」が有名ですが、実際の意味はあまり知られていません。ここからは「そわか」など4つの呪文のルーツや意味をご紹介します。

陰陽師が唱える呪文の中で最強の呪文として知られているのが「そわか」という呪文です。「そわか」は真言の一種で、呪文の末尾に唱える真言です。「そわか」は仏教の女神svāhā（スヴァーハー）の名前に由来する呪文で、「願いの成就」を意味する呪文です。

公家や天皇家に使える公務員でもある陰陽師は、毎朝呪文を唱えることが重要な仕事の一つでした。毎朝、呪文を唱えることで強力な邪気を払うことで陰陽師は、都の安泰を守る役目を担っていました。

「急急如律令」は元は中国漢代の公文書に記されていた言葉が、密教や修験道の呪文として発展したものです。公文書にあった「急いで律令の如く行え。」という命令文が「悪霊は速やかに退散しろ。」という呪文に変化し、密教の流れを汲む陰陽師へと伝わりました。

九字は、陰陽師が護身術の意味で唱えた真言宗や密教の流れ汲む呪文です。胸の前で手印を切りながら呪文を唱える九字は、陰陽師が主人公の映画やドラマなどで唱える最強の呪文として知られています。以下が代表的な九字の呪文です。
 

• 臨（りん）・兵（びょう）・闘（とう）・者（しゃ）・皆（かい）・陣（じん）・烈（れつ）・在（ざい）・前（ぜん）

日本の歴史上最強の陰陽師であり、強力な呪文や式神の使い手であった「安倍晴明」の母は「葛の葉」という狐の妖怪であったという伝説が伝わっています。では、阿倍晴明自身やその子孫はどのような人物でしょうか？

平安時代に生まれ最強の式神を操る陰陽師として知られた安倍晴明ですが、その出世は遅く大器晩成であったようです。40歳で天文学を学ぶ学生となり、50歳でようやく天文博士の職に任ぜられた清明は、一条天皇を病から救い正五位上の位を与えられ、やがては師匠である賀茂忠行と並ぶ名声を手に入れました。

安倍晴明から14代目の子孫である陰陽師・安倍有世は土御門家を興しました。有世は室町時代に公家社会で陰陽師としての地位を確立し公家の地位にまで登りつめました。現在の土御門家については定かではありませんが、京都に土御門家のお墓が存在しています。

また現在の内閣総理大臣・安倍晋三氏のルーツである奥州（現在の岩手県）の安倍家と、安倍晴明の先祖は同じである可能性があります。

安倍晴明は、平安時代の遷都や疫病の発生、公家の病気平癒などに貢献しました。そのため、都があった京都・奈良・大阪には、安倍晴明ゆかりの神社が存在します。　

京都・晴明神社は安倍晴明の祈祷により病気が治癒した一条天皇が、清明の死後に御霊を祀った神社です。晴明神社は安倍晴明の屋敷跡に作られ、式年祭の度に改修が行われるほど京都の住民に愛されてきました。

安倍文殊院は安倍晴明の先祖と言われる安倍倉梯麻呂（あべのくらはしまろ）が、大化の改新の時に建立したお寺です。安倍文殊院は、安倍晴明誕生の地であるとされ、境内には「葛の葉稲荷」や「安倍晴明堂」などがあります。

鬼神や妖怪を調伏し、最強の式神として操った安倍晴明の伝説は三重県や和歌山県にも伝わっています。和歌山の熊野本宮大社付近には清明が訪れた史跡や、妖怪を退治した猫又の滝などが存在しています。また熊野本宮大社には式神の八咫烏を描いた絵馬や、清明の御朱印なども販売されています。

最強の式神を操る陰陽師は映画や小説などの主人公として、多くの作品に取り上げられています。ここからは、それぞれキャラクターが違う陰陽師の世界観を楽しめる作品を3つご紹介します。

平安京を舞台に繰り広げられる公家の権力闘争による陰陽師の呪術をきっかけに、無実の罪で処刑された悪霊が蘇り都に危機が訪れる物語です。主人公の安倍晴明（野村萬斎さん）と宦官・源博雅(伊藤英明さん)による怨霊討伐シーンは、迫力があり必見です。

結城光流著『天命を覆す 陰陽師・安倍晴明 』は、化物に取り憑かれた姫を助けるために、安倍晴明が使役が困難な十二神将を式神として使役しよう試みる物語です。若き日の清明の物語が描かれており、陰陽師・安倍晴明シリーズの中でも特に人気が高い小説です。

霊的災害が増加し、再び陰陽師が活躍する世界を舞台に安倍晴明の子孫である土御門家の血を引く若者たちの青春を描いたアニメです。ちょっと頼りない土御門家分家の春虎と、本家の娘で次代当主の夏目や式神、陰陽塾の学生たちが大活躍するストーリーです。

陰陽師を主人公とする映画や小説が多いのは、そのキャラクターや世界観が他に類を見ない奥深さを持っているからです。陰陽師の世界観は、日本各地にある神社やお寺などの史跡で触れることができます。天文学や算道にも優れ、日本の歴史の中核を担ってきた陰陽師の世界を、あなたも味わってみませんか。