母乳の栄養って減っていくの?不足しがちな栄養を補う方法とは
母乳は赤ちゃんにとって栄養であり、さらにスキンシップを高めてくれるなどさまざまな観点から推奨されています。しかし、初乳の栄養価は評価されていますが、母乳の栄養は減っていく事は無いのでしょうか。栄養ある母乳のためには、どのようなことに気をつければよいでしょうか。
目次
母乳に含まれる栄養成分には何があるの?
母乳は栄養価が高いといいます。しかし、実際にはどんな栄養成分が入っているのでしょうか。また、それらは赤ちゃんの健康にとってどのような効果があるのでしょうか。そしてなくなることはないのでしょうか。
タンパク質
たんぱく質は体の基本となる栄養素です。全ての細胞はタンパク質が基本ですし、免疫力を高めるIgA抗体もタンパク質です。成長の元であり、体を丈夫にするのがタンパク質なのです。
そのタンパク質の主要な成分、「ホエイ」は初乳にたっぷりと、「ガゼイン」は乳汁に多く含まれています。
アミノ酸
タンパク質は多数のアミノ酸が結合したものです。約20種類のアミノ酸からタンパク質は出来ています。さらに、体内で生成できない必須アミノ酸と、生成できるアミノ酸に分かれます。
母乳の中には体作りに必要なたんぱく質の元となる、この必須アミノ酸とその他のアミノ酸がバランスよく含まれています。
ミネラル
ミネラルとは、岩や土などに含まれる無機質といわれる成分で、五大栄養素の一つです。必要量はトータルすれば多くないものの、体内組織を円滑に働かせるためには非常に重要な役割を果たします。(摂りすぎも悪影響を及ぼす可能性のあるデリケートな栄養素です。)
カルシウム、リン、マグネシウムなどのミネラルは体内で生成できないので、外部から摂る必要があり母乳にはちょうど良い量が含まれているのです。ママの食事次第でミネラルはなくなることなく、母乳に入っています。
ビタミン
ビタミンは各種臓器の成長に必要なものです。1歳までめまぐるしい成長を続ける赤ちゃんには、とても重要なもので主にビタミンA(免疫力を高める)、ビタミンD(骨の成長に必要)などが母乳に含まれています。
*ビタミンKは赤ちゃんの血液凝固に関わるビタミンですが、これは母乳ではとりづらく生後1か月ころにシロップで飲ませます。
オリゴ糖
オリゴ糖は腸内環境を整える働きがあります。腸内でプレバイオティクスとして、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を活性化させます。まだ腸内環境が不安定で、下痢や便秘をしやすい赤ちゃんにも大事な栄養です。
このオリゴ糖も母乳の中にしっかり入っています。
炭水化物・脂質
母乳の中の乳糖は、ゆっくり吸収され体を動かすエネルギーとなります。また、乳糖にはカルシウムの吸収率を上げる効果もあります。
脂質として母乳には消化酵素であるリパーゼが含まれます。消化が良くなるということは、母乳から摂った栄養をしっかり吸収しエネルギーに変えられるということです。1歳まで脂質や糖質はなくなるよりふえていきます。
母乳とミルクの栄養の違いは?
母乳とミルクに関して、栄養素はそれほど違わなくなってきているというのが現状です。メーカーによって差はありますが、葉酸・DHA・ヌクレオチド・タウリン・オリゴ糖・βカロチンはほとんどのミルクに入っています。
タンパク質のラクトアドヘリン、必須脂肪酸のアラキドン酸、生理現象に関与するシアル酸などは入っていないメーカーもありますが、しっかり入れているメーカーもあり、ミルクの成分も母乳にかなり近づいてきているといえるでしょう。
免疫力は母乳が勝る
ただ免疫に関する成分は母乳の方が利点は多くなります。特に初乳のIgA抗体などは飲ませることをおすすめします。逆にビタミンDに関しては、ミルクの方が高いという製品も有ります。
母乳の栄養が生後半年以降は減少するってホント?
母乳の栄養はいつまであるのでしょうか。母乳の栄養成分が、生後半年すると減少する、なくなるということを聞いたことはありますか?1歳ころになるともう栄養がなくなるので、断乳するべきという小児科医もいます。
母乳栄養はいつまであるのか、なくなることはないのでしょうか。
母乳の栄養が減少するという根拠は全くない!
母乳は血液からできています。ママが食事からとった栄養が消化吸収され、母乳として生成され赤ちゃんが飲んでいるのです。
つまり、血液中にある栄養成分は母乳に受け継がれるため、母乳自体の栄養価がなくなるという考え方は違ってくるでしょう。
いつまでも母乳で良いのか
それでは、母乳だけではいけないのかということになります。まず、母乳の成分は変化していきます。たとえ、赤ちゃんが1歳になっても栄養素や免疫成分は無くなりませんが、栄養素の内容が変わったり性状がサラサラと変化したりします。
また、赤ちゃんは1歳までにめまぐるしく成長します。その成長のためには、豊富な栄養が必要です。カロリーも増やす必要があるでしょう。そうなると、水分中心の母乳では足りなくなってくるので離乳食が必要となるのです。
母乳の栄養成分の変化と不足しがちな栄養素
それでは実際に母乳の栄養成分は、どのように変化していくのでしょうか。また、ママの食事が血液となり母乳となるとすれば、不足しがちな栄養素はあるのでしょうか。
初乳と成乳の栄養素の違いは?
初乳は、出産直後に出る黄色みがかった最初の母乳です。生後、ミルク栄養にしろ混合栄養にしろ、さまざまな事情で選ばれていくと思われますが、初乳だけはしっかり飲ませることをおすすめします。
初乳の成分には、タンパク質やミネラル、免疫成分を豊富に含んだ利点たっぷりの母乳なのです。
移行乳とは?
生後5日目頃には徐々に量が増え、色も白っぽく変化し移行乳と呼ばれ、免疫成分やタンパク質は減りますが、脂肪分や糖分は増えていきます。赤ちゃんが活発になるにつれ、エネルギーをとる利点が増えるということです。
成乳とは?
成乳とは個人差はありますが、生後10日から2週間くらいで白くサラサラした性状の母乳になります。成分として、タンパク質やミネラルが減り、脂質や糖質が増えていきます。
1歳に向けてさらに活発になる赤ちゃんは、パワーがさらに必要です。エネルギー源が増えるということでしょう。
鉄分やビタミンKは不足しがち
このように栄養成分の多い母乳ですが、利点ばかりではありません。不足しがちな栄養素もあります。代表的に不足しがちなのは鉄分とビタミンKです。
鉄分について
鉄分ですが、母乳が血液から作られることを考えると鉄分が不足するのは何故だろうと思うこともあるでしょう。しかし、出産や授乳でママ自体の血液中の鉄分は不足しがちです。
母乳内の鉄分も0.25~0.32㎎とごく微量になってしまいます。赤ちゃんにはそれほど多くの鉄分は必要ありませんが、ママの鉄分不足を考えると母乳内の鉄分を充実させるためにしっかりママは鉄分を摂った方が良いでしょう。(目標7.5㎎ですが、成人女性の一般的な鉄分摂取量は7.0㎎以下です。)
ビタミンKについて
ビタミンKは赤ちゃんの体内では作られず、母乳の中にも非常に微量しか含まれないので、不足しがちな栄養素です。ビタミンKは体内の止血機序に関与するので、不足するとちょっとぶつけただけでも出血が止まらなかったりということが起こります。
頭が重くて転倒しやすい赤ちゃんには、ビタミンK不足はさらに危険性が高いのが分かるでしょう。産後、ビタミンKはシロップで与えられますが、ママからの母乳にもできるだけビタミンKが豊富になるようにしておくことが必要です。
補完するには
ビタミンKや鉄分を補完するには、サプリでも良いですが食事でまずとることがお勧めです。サラサラした母乳のためにも、緑黄色野菜や納豆、海藻類などの食事がビタミン、鉄分、ミネラルの利点が多くあります。サプリは、必要量を守り、摂りすぎに気をつけましょう。
母乳を与え続ける利点は?
母乳には不足しがちな栄養素があったり、段々とエネルギー不足になったりする要素もあります。それでも、母乳が推奨されるのは何故でしょうか。1歳過ぎても飲ませるべきという根拠はなんでしょうか。
母乳栄養の利点を考えます。
質のいい栄養素を長期間子どもに与えることができる
母乳はタンパク質、ミネラル、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれているとともに、赤ちゃんの時期によって、必要な成分量が変化するという利点があるのです。
生まれたてではじめて空気に触れ、羊水という守るものが無くなった世界で、すぐに病気にならないように成乳には免疫成分が多くあります。
動きが激しくなり、パワーが必要になってくると脂肪分や糖分が増えます。この臨機応変な利点が、長期的な視点で自然に作られるというのが母乳の大きな利点です。
ママの免疫をたっぷり受け取ることができる
ほかに、IgA抗体、白血球という免疫物質も多く、病気の時の回復を手伝ってくれますし、病気自体の予防にもなる利点があります。母乳育児は、急性ならず慢性疾患の発現率も少ないというWHOの発表があります。
スキンシップが減らず、赤ちゃんがぐずった時に対処しやすい
また、母乳の大きな利点としてスキンシップができることです。母乳を順調に進ませるには、ママが出すだけでなく赤ちゃんも頑張って吸ってくれないといけません。ママと赤ちゃんの双方の頑張る期間が、ママと赤ちゃんをさらに密接にしてくれます。
また、ちょっとぐずったときもおっぱいで落ち着く赤ちゃんはたくさんいます。肌と肌がふれあう、終わってみれば短い時間は、赤ちゃんとママの長い人生に影響していくでしょう。
母乳育児中のママに摂ってもらいたい不足しがちな栄養素は?
授乳はおもうよりエネルギーを使います。普段より、食事も意識して栄養素が不足しないようにする必要があります。
不足しがちな栄養素①カルシウム
カルシウムは妊娠~出産を通して、授乳中にさらに不足しがちな栄養素です。さらに赤ちゃんが骨や歯を作っていくのに、非常に重要でもあります。カルシウムの多い食事として、しらすやししゃも、小松菜などがあります。いずれにもご飯にかけたり、味噌汁に入れたり使い勝手の良い食材なのでたっぷりとりましょう。
サプリで摂るときは、カルシウム過剰による障害もあるので、摂る量は決められた通りにします。
不足しがちな栄養素②鉄分
鉄分は、生理がある女性というだけですでに不足するものです。また、食事としてとるのに一工夫必要な食材に多いため、さらに摂りにくくなるのです。
魚類、ヒジキ、小松菜やほうれん草などは調理が必要ですが鉄分が豊富です。意識して摂りましょう。また、のり、納豆などはご飯のお供に常備しておくと自然に摂れそうです。また、抹茶も鉄分が多いので、お菓子を食べるなら抹茶を使ったものにするなども、効果はあるでしょう。サプリで摂ることもおすすめです。
不足しがちな栄養素③ビタミンK
ビタミンKは血液凝固に関与すると共に、丈夫な骨を作ります。骨粗鬆症の治療にも使われるほど、骨の発達にも必要なものです。
ビタミンKは緑黄色野菜や海藻類、豆類や植物油に多く含まれますが、最も多く効果的なのは納豆です。納豆を毎日食べる人は、食べない人の2倍のビタミンKを保持しているというデータもあるのです。
ビタミンKを含む食品は多いですし、成人では腸内細菌でも作られるので欠乏症は比較的少ないので、サプリより日常の食事で摂ることをおすすめします。
栄養ドリンクは成分表示を十分に確認してから!
栄養ドリンクは、一見栄養とパワーをくれる気がします。しかし、サプリとは違いますので成分表示をよく見ましょう。カフェインはわずかな量でも母乳に移行してしまいます。赤ちゃんにカフェインはよくありません。
また、糖分が多いので毎日摂取するだけで糖尿病を発症することもあるのです。赤ちゃんとの日々は可愛くても疲れます。そんないざという時景気づけに!という程度の摂取が望ましいでしょう。
母乳はいつまで飲ませる?
母乳育児が順調でも、1歳くらいになるといつまで飲ませるのか、いつまで飲ませて良いのかは気になります。また、母乳栄養はなくなることはないのかなども検証されていますので、参考にして下さい。
WHOでは、2歳以上まで飲ませることをすすめている
WHOとユニセフは、母乳と新生児保健サービスを提供する保健施設において、母乳育児を拡大するためのガイドラインを2018年4月に発表しました。
そこではすべての赤ちゃんに最初の2年間の母乳育児を行うことで、1年間で5歳未満の子ども82万人以上の命が救えると提唱しています。
母乳は身体の成長だけでなく、心の成長にも必要
母乳の最大の利点の一つは、ママと赤ちゃんの互いの体温を密接に感じ暖かさを共有できることです。それは、赤ちゃんの精神的な安定に繋がり、ちょっとしたことでイライラしない子供になる可能性が高いと言われています。
ただ、この時気をつけてほしいのは、ぜひスマホなどを見ながら授乳をしないで、赤ちゃんがごくごく飲む姿をしっかり見つめて授乳してみてください。なかなか寝てくれない赤ちゃんの場合は、ママもご飯を食べながら授乳することもあるでしょう。それも一緒にご飯ね、美味しいね、などといいながら授乳すると、赤ちゃんの満足度はさらに増すでしょう。
生後すぐから6ヶ月くらいまで
母乳の栄養分はいつまでもというわけにはいきません。免疫成分などなくなる要素もあります。しかし、少なくとも生後すぐから6か月までは必要なエネルギーをすべて賄うことができます。
5か月ころから、離乳食で食事の練習が始まりますから、そこから必要な栄養素を1歳までかけて摂れるようにすればよいでしょう。
1歳から2歳まで
1歳~2歳になっても、まだまだ食事量は安定しないでしょう。その一方で、そろそろお酒も少しは飲みたいし、いつまで母乳をしていていいのかなと悩み出す時期です。しかし、1歳~2歳でも必要なエネルギーの3分の1を母乳で補えます。
また水分摂取もなかなか進まない時期なので、母乳を上げることで暑い時期は熱中症を予防したり、下痢している時の水分摂取にもなるのです。
2歳前に母乳をやめた方が良い場合はどんな時?
やはり楽しく授乳できるときは良いですが、この大変さがいつまで続くんだろう、はやくこの時間がなくなるといい、という気持ちの時は無理しなくても良いでしょう。また、仕事を始めたりなどの諸事情もあれば、スキンシップは他の手段でもとれます。
また、授乳がなくなることで薬やお酒、カフェイン入りのドリンクを気兼ねなく飲めます。その方が、赤ちゃんに機嫌よく接することができるなら、それで良いでしょう。
母乳に不足しがちな栄養素を補えるサプリ3選!
順調な母乳育児に取り入れたいサプリをご紹介します。
母乳パワープラス ピジョン
母乳に不足しがちな栄養素として、鉄分、カルシウム、葉酸などがバランスよく含まれビタミンも10種類、食物繊維も入っています。
さらに保存料や添加物が入っていないので、授乳中でも安心のサプリです。1日3粒飲めばよいので、忙しい日常の中でも無理なく続けられるでしょう。
ママスタイル授乳チャージ 和光堂
DHA、葉酸など授乳中に欲しい栄養素が入っているサプリです。コスト的にも家計にやさしいので、いつまでも続けられるサプリでしょう。また、なかなかとりづらいビタミンがマルチビタミンとして入っているので、ママの美容と健康にもおすすめです。
香料、着色料、保存料の無い無添加で食事でとりづらい栄養素中心のサプリです。
葉酸、鉄、カルシウム 小林製薬
授乳中に食事でとりづらい栄養素の名前をそのまま冠したサプリです。製薬会社のサプリだけあって、医薬品と同じ扱いで製造されているので安心です。また、妊娠中も不足治がちな成分で、妊娠中から授乳がなくなるまで長く飲み続けられます。
母乳は赤ちゃんの重要な栄養源!たくさん飲ませてあげましょう
母乳の良い所に、いつまでのませても、たくさん飲ませても害がないということが挙げられます。ミルクの場合、量をしっかり測る必要がありますが、母乳に関してはいつまででも何回でも大丈夫です。ぐずった時や、外出先でも準備するのはおっぱいだけです。
しっかりした栄養をしかも手軽にあげられる母乳を、もし自分の都合が許すのであれば、なるべくたくさん飲ませてあげましょう。