『だは』は『だわ』の誤用?『だわ』の意味や使い方を紹介!方言なの?
「だわ」と「だは」の違いについて、自信を持って答えられる人はどのくらいいるでしょうか。毎日のコミュニケーションツールとして使っている日本語の仮名遣いについて説明します。また、その意味や使い方と、方言の「だわ」と「だは」についても紹介します。
目次
語尾につける『だわ』は女性言葉?方言なの?
古い小説などを読んでいると「まあ、きれいだわ。」「この間会ったばかりだわ。」といった台詞を見かけることがありますが、この「だわ」は女性特有の言葉なのでしょうか。「ああ今日も残業だわ。」「明日は約束があるんだわ。」と男性が使うこともありますから、女性特有とはいえなさそうですね。では、この「だわ」はどこからきた言葉なのでしょうか。日本各地で使われているように思われる「だわ」について、意味や使い方を紹介します。
『だわ』の意味とは?
そもそも「だわ」とはどのような意味なのでしょうか。「だわ」は語尾にくる「だ」「だよ」「だね」と同じ意味があります。「だ」で終わる断定口調を避け、和らげたり強調したりする表現のほか、反論や謝罪にも使われています。
『だわ』の使い方と例文
それではわかりやすく例文を使って「だわ」の使い方を見ていきましょう。ここで使われる「だわ」は女性だけではなく男性も使うことができます。その際「わ」を下げて発音します。
物事を強調するとき
自分のしたことを強調したり、考えを主張したりする表現のときに「だわ」を使います。「なんか居心地がいいなと思ったら、私が掃除したんだわ。」のように、「私が掃除したから居心地がいい。」を強調するときに使います。この使い方は「掃除したからだ。」と言い切るよりも優しく聞こえます。
物事を断定するとき
「だわ」は、物事を断定するときにも使います。安心感や確信が感じられる使い方で、「嫌われたと思っていたけど、違ったんだわ。」のように「違った」ことを断定して使うのですが、ここでも「違ったんだ。」と言い切るよりも聞き手に与える印象を和らげる効果があります。
物事に反論するとき
また、「だわ」は特定の物事に反対するときにも使うことができます。例えば「あの子、動物嫌いだよね?」という質問に対して「そうともいえないんだわ。確かにあまり見向きはしないけど、家で猫を飼っているんだわ。」のように使って答えられます。この場合、最初の「だわ」は反論、二つ目の「だわ」は断定です。「そうともいえない。」と答えると、少し突っぱねたように聞こえてしまいますが「だわ」を使うことで「強調」「断定」の使い方と同じように柔らかい雰囲気になります。
謝罪するとき
何か相手に謝罪したいときにも「だわ」を使うことができます。やんわりとあまり悪く思われないように伝えたいとき、語尾に付けます。「探していた書類、私が預かってたんだわ。忘れててごめんなさい。」のように、謝罪の理由を伝えるとき、「のに」を使うよりくだけて柔らかく聞こえます。そのため改まって謝りたいときには向かないので、注意が必要です。
『だわ』はどんな言葉として使われる?
「だわ」と聞いたとき、みなさんが思い浮かべるのは女性でしょうか、それとも男性でしょうか。昔の小説に出てくる女性には「だわ」を使う人もいましたが、女性だけの言葉とはいえません。ここでは「だわ」はどんな言葉として使われるのかを見てみましょう。
女性言葉
「だわ」の使い方と例文でも説明した通り「だわ」には柔らかい印象があり、昔の女性もよく使っていました。女性言葉として使われる「だわ」の最期の「わ」は高く上げて発音します。しかし、もともと「だわ」は女性のみの言葉ではなく、話し言葉で断定口調を和らげるときに使っていたものです。ですから、女性特有の言葉ではありませんし、その場合は「わ」を下げて発音します。
男性言葉
それでは、「だわ」は男性言葉なのでしょうか。直接的ないい方をして相手と衝突することを避ける日本人が断定を避け、柔らかい表現にするために「だわ」を使っていたのだとすれば、女性のみならず男性でも使っていたはずです。また、話の内容をより強調したり印象を強める効果もあるので、男性が物事を大きく印象付けたいときにも使われていたようです。
名古屋弁
意外かもしれませんが「だぎゃあ」「~みゃあ」で知られている名古屋弁にも「だわ」が昔からあったのです。今やほとんど使われることの無くなった女性言葉としての「だわ」の代わりに、昔からあった名古屋弁の「だわ」が目立ち、影響を及ぼしたといわれています。
『だわ』の語源は?名古屋弁?
それでは、「だわ」は名古屋発祥の言葉なのでしょうか。答えは「イエス」です。もともと方言だったものが全国で使われ、共通語になった例です。名古屋弁での「だわ」は、女性言葉の「わ」が高いこととは反対に、音を低く下げて発音します。現在男性にも使われている「だわ」と同じです。他にもあるいろいろな方言の中からなぜ「だわ」が全国に広まって使われているのでしょうか。はっきりとした理由はわからないものの、おそらく使いやすく便利だったからだといわれています。
織田信長も語尾に『だわ』を使っていた?!
「だわ」が名古屋発祥であるなら、名古屋(尾張)の有名人・織田信長公も使っていたのでしょうか。この「だわ」が武士も使っていた言葉であれば可能性があるでしょう。今と違い完全な時代の記録が残っているわけではないのが残念ですが、想像してもあまり可愛い印象ではなく、「わ」がグッと下がって少し威厳や威嚇を感じる物言いだったのかもしれません。
名古屋だけじゃない!北海道でも『だわ』を方言としている?
実は「だわ」を使うのは名古屋だけではありません。北海道の方言でも「だわ」があります。北海道といえば開拓者が全国から移住してきた土地です。それぞれ故郷の言葉で話してしまうとお互いに通じないため、標準語を使って話す必要性がありました。ですから現在でも北海道の言葉は標準語に近いといわれています。
とはいえ広い北海道ですから、独自の方言も生まれ使われていました。その中で「だわ」が使われているのはなぜなのでしょうか。「だわ」はもとから北海道で使われていた方言ではなく、東京などから北海道へ移住してきた人々が使っていたことで広められたと考えられています。やはりいいやすかったからなのでしょうか。
『だわ』と『だは』正しいのはどっち?
「だわ」は話し言葉ですが、字で書いても「だわ」のままです。時々「だは」と旧仮名遣いのように書かれていますが、「だわ」は「わ」の字を使うのが正しく、「だは」は誤りです。ではなぜ「だは」と書けないのでしょうか?それは、「は」は助詞で、主語に対する述語として常に文末に来る「だわ」の「わ」は終助詞ですので「だは」とは書かないからです。
例えば「こんにちは」「こんばんは」は、「は」と書きますが、これは「今日は~です。」「今晩は~です。」という文章から独立した言葉です。その助詞の「は」がそのままの形で使われるため、発音は「わ」ですが書くときは「は」と書かなければならないのです。ですから、「だは」は「だわ」の誤用となります。
【番外編】『だわ』と『だは』のように間違えやすい言葉5選!
「だわ」と「だは」のように他にも間違いやすい言葉はあるのでしょうか?ここでは間違いやすい仮名遣いの言葉を5つ選んでご紹介します。
『づらい』と『ずらい』
皆さんは「しづらい」と「しずらい」でどちらか迷ったことはありませんか?実はとても簡単な方法で正しい言葉を見抜くことができるのです。それは、濁音を清音に直すことです。つまり、「〃」をとってしまうのです。すると「つらい」と「すらい」になりますが、「すらい」という言葉は日本語にないため「つらい」が正しいとわかります。
『ずつ』と『づつ』
「ずつ」と「づつ」は、正式には「ずつ」と書くことが正しいとされていますが、文部科学省の通知により現代仮名遣いでは「づつ」も許容されています。どちらを使っても意味は同じで、状況によって使い分ける必要もありません。ですから自分の好みで使ってもいいのですが、ビジネス文書や公共の書類などには「ずつ」を使ったほうがいいでしょう。
(五) この仮名遣いによる表記の仕方は、従来の「現代かなづかい」(昭和二一年内閣告示第三三号)による表記と実際上ほとんど相違がないこと。ただし、「じ・ぢ」「ず・づ」の使い分けのうち、「せかいじゆう」「いなずま」などについては、「じ」「ず」を用いることを本則とするとともに、「ぢ」「づ」を用いることもできるものとしたこと。(文部科学省 昭和61年7月1日 「現代仮名遣い」に関する内閣告示及び内閣訓令について より抜粋)
『こんにちは』と『こんにちわ』
「こんにちは」と「こんにちわ」の間違いは多く見かけますが、「こんにちは」が正しい表記です。これは「『だわ』と『だは』正しいのはどっち?」でも説明をしていますが、「こんにちは」の「は」は助詞です。もともと「今日は~です。」という文章からとった部分ですから、「は」を使うのが正しいのです。
『じめん』と『ぢめん』
さて「じめん」と「ぢめん」ではどちらが正しいのかというと、「ずつ」と「づつ」のように「〃」をとればいいというものでは残念ながらありません。試しに「〃」をとって「しめん」「ちめん」にすれば「地(ち)」と読むので「ぢめん」が正しいように思ってしまうのですが、実は違います。正しいのは「じめん」なのです。これは「地」という字にもともと「じ」という読み方があるからなのです。そして「地(じ)」とは「地面(じめん)」の意味があるからなのです。
『はなぢ』と『はなじ』
では「はなぢ」と「はなじ」で、「血」も「地」とおなじように「じ」という読み方があるのでしょうか?これは「づらい」と「ずらい」のように「〃」をとって「ち」と「し」にすることで正解を見ることができます。正解は「はなぢ」です。「はな(鼻)の血(ち)」となります。「はなし」では、違う意味の言葉になってしまいますので、間違いです。
『だは』は『だわ』の誤用!間違えないようにしよう!
ここまで「だわ」と「だは」のどちらが正しい表記なのかということや、同じように間違いやすい表記の言葉をご紹介してきました。「『だわ』と『だは』正しいのはどっち?」でも説明した通りで、「だは」は「だわ」の誤用です。「だは」の「は」は「助詞」であり、「だわ」の「わ」は「終助詞」ですから使い方が異なります。このような理由なので、名古屋だから、北海道だからという違いもありません。これを機にしっかり正しく覚えなおして、大事なときに自信を持って使えるようにしておきたいですね。