保険料控除申告書の書き方を解説!控除額の計算方法も!【年末調整】
年末調整の時期になると頭を悩ませるのが「保険料控除申告書」の書き方です。手続きを会社に一任している方は良いですが、自分で保険料控除申告書を作成して申請しなければならない方もおられます。そこで今回は、保険料控除の手順や書き方、必要な書類等を紹介します。
目次
保険料控除申告書とは?
今この記事をご覧の方は、「年末調整」や「保険料控除」について調べられておられるかもしれません。会社に勤めている方であれば、年末調整を行う年末から年始にかけて誰もが一度は目にするのが、「保険料控除申告書」という書類です。保険料控除申告書は年末調整における「所得控除(=年間で払いすぎた所得税の還付を受ける)」を行うために必要な書類です。
今回はその年末調整に必要となる保険料控除申告書について、基本的な書き方や申請方法、記入の際の注意点など様々な点を取り上げていきます。これから行うという方や、書き方が分からないという方はぜひご覧ください。
保険料控除を申請するメリットは?
まず書き方よりも先に、税金の基本的なことについておさえておきましょう。私達が納めるべき税金には「消費税」「住民税」「所得税」などの種類がありますが、「保険料控除」に関わってくるのが「所得税」や「住民税」という種類の税金です。
企業に勤めておられる方や個人事業主であればすでにお分かりの通り、「所得税」は所得に対して一定率が給料から天引きされる税金です。所得が多ければ大きいほど、必然的に納める所得税や住民税も大きくなります。一般的に課税対象となる所得のことを「課税所得」とも言います。
この課税所得において、保険加入者は税金の控除を受けることができるしくみが、「保険料控除」なのです。本来の給料が減るわけではありませんが、いわゆる「見かけ上の所得」が減額されることにより、課される税金も少なくなるのです。
保険料控除申告書の申請時期
では、生命保険に加入していたとして「控除」の手続きはいつ行えばよいのでしょうか。「生命保険料控除」の手続きは、会社に勤めている方であれば年末調整と同時に行うことになります。また、自営業(個人事業等)をされている方は年末調整ではなく個人で「確定申告」手続きを行う必要がありますので、確定申告と同時に行う必要があります。
【生命保険料控除申請を行う時期】
- 会社勤めの方:会社が行う年末調整と同時
- 自営業の方:確定申告と同時
万が一、年末調整や確定申告を通常行う時期に申請をし忘れても、確定申告の期限までに自ら源泉徴収票から抜け落ちていた分を別途確定申告することによって、生命保険料控除を反映させることは可能です。
しかし、手続きを複数回行ったり繁雑になることを避けるために、可能な限り申請時期を忘れずに年末調整や確定申告と同時に手続きを行うようにしましょう。
保険料控除の申請方法
年末調整で保険料控除申告書を提出し保険料控除を受けるためには、正しい計算が行われなければなりません。そのために申請する側は正しい手順に沿って申請を行う必要があります。そこで次からは保険料控除を受けるための方法について説明していきます。
会社員の場合
会社に所属する会社員の場合、年末調整の際に保険料控除申請を行うことになります。年末調整を会社が行ってくれる場合には、「保険料控除申告書」を会社に提出することになります。提出する前に記入事項をすべて記入したうえで提出します。
パート・アルバイトの場合
では、パートやアルバイト勤務をしている方の場合はどうなるのでしょうか。パートやアルバイトの場合も、年末調整を会社が行ってくれる場合は、「保険料控除申告書」を提出することによって生命保険料控除を受けることが可能です。
フリーランスの場合
特定の会社に所属していない方、個人事業主の方、フリーランスの方は個人で確定申告を行う必要があります。一般的に、給料を2カ所以上からもらっている場合は、フリーランスによる所得が経費を差し引いて20万円を超えている場合には確定申告を行います。
保険料控除申告書に記入する保険種類
保険料控除申告書には、保険料控除を受けるために以下の4種類の保険に関して記入することができます。
- 生命保険料:加入している生命保険に支払っている保険料の合計額
- 地震保険料:加入している地震保険に支払っている保険料の合計額
- 社会保険料:健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料、国民年金基金など
- 小規模企業共済等掛金:加入している小規模企業共済の掛金
生命保険料
「保険料控除申告書」記入種類の1つ目である「生命保険料」には、現在加入している生命保険に支払っている保険料を記入することになります。この金額は生命保険会社より発行される「生命保険料控除証明書」に記載されている金額のことであり、1年分の保険料額を記入することになります。この金額が、保険料控除額として反映されます。
地震保険料
「保険料控除申告書」記入種類の2つ目である「地震保険料」には、現在加入している地震保険に支払っている保険料を記入することになります。この金額は地震保険会社より発行される「地震保険料控除証明書」に記載されている金額のことであり、1年分の保険料額を記入することになります。この金額が、保険料控除額として反映されます。
「控除証明書」は、本来は保険証書と一緒に保険会社より送付されてくる書類ですが、保険内容をウェブ上で確認できるサービスを利用されており書面での保険証書を持っていない(または紛失した等)方は、別途保険会社に連絡して控除証明書をもらう必要ががあります。
社会保険料
ここで言う「社会保険」には、以下の種類の税金が含まれます。
- 国民健康保険
- 国民年金
- 厚生年金
小規模企業共済等掛金
「小規模企業共済」という種類の掛金は、まだ設立して間もない、退職金制度が確立されていない企業や個人事業主向けに提供されているものです。加入することにより積立を行い、将来「退職金」等のかたちで受け取ることができます。
「小規模企業共済」においては、毎月支払う掛け金が全額控除対象となるため、税金を節約することが可能というメリットがあります。これは企業向けの保険制度と考えていただければ分かりやすい制度ですが、加入している場合は共済への掛け金を記入することになります。これが、保険料控除額として反映されます。
生命保険料控除申告書の書き方と計算方法
ここまでは、控除の対象となる保険(掛金)の種類について取り上げてきました。では次に、それぞれの書き方と計算方法について取り上げていきます。確かに書き方としては保険料控除申告には加入している保険の保掛金を記入する書き方で良いのですが、ただ単に「支払った金額」を記入すれば良い、というわけではありません。
これから保険料ごとに控除額の対象となる金額を記入する際の書き方や注意点等を取り上げていきます。
一般の生命保険料の書き方と計算方法
まずは、一般の生命保険に加入している方の書き方です。
生命保険に加入している方は、生命保険の保険料を記入することによって所得控除を受けることができます。ただし、控除証明書に書かれている金額には、以下の2種類があります。
- 証明額:証明書発行時点までの保険料支払い済み金額
- 申告額:年間で支払った保険料の金額
計算式は、それぞれの保険において以下の数式に当てはめて計算します。加入時期によって「新契約」ではなく「旧契約」での計算式が該当する場合がありますので注意しましょう。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,001円~40,000円 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,001円~80,000円 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,001円以上 | 40,000円 |
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,001円~50,000円 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,001円~100,000円 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,001円以上 | 50,000円 |
ここから分かる通り、年間で支払っている保険料の金額が多ければ多いほど保険料控除の割合も高くなりますが、支払保険料が一定額を超えると、新契約か旧契約かにかかわらず控除額は一定となります。
介護医療保険料の書き方と計算方法
次に、介護医療保険に加入している方の書き方です。3つ目の事項、「介護医療保険料」という項目があります。これは「介護医療保険」に加入している方が記入する事項です。「生命保険」とどのように違うのかと思われる方もおられるかもしれませんが、そこには明確な違いがあります。
「介護医療保険」には、以下の保険が含まれています。
- 医療保険
- がん保険
- 介護保険
個人年金保険料の書き方と計算方法
次は、個人年金に加入している方の書き方です。将来の資金をためておくための「個人年金」という仕組みがあります。国民年金は60歳代から年金を受給することができますが、その年金にプラスする形で年金を受け取ることができるのが、個人年金保険です。この個人年金に加入している方は「保険料控除申告書」に金額を記入することができますので、控除額に反映されて保険料控除の対象となります。
保険料控除額計算式も、一般の生命保険料控除や介護医療保険における控除の計算式と同じです。
地震保険料控除申告書の書き方と計算方法
では次に、地震保険に加入している方の申告書への書き方です。一般的な生命保険とは異なる計算式が用いられますが、どのように記入する必要があるのでしょうか。
地震保険料控除の範囲
地震保険に加入している方は保険料控除を行うことができます。ただし、地震保険料には「火災保険」などの他の保険は含まれず、控除額の対象となりません。地震保険に加入している方のみ控除額に反映されて保険料控除の対象となりますので覚えておきましょう。
地震保険料控除の書き方と計算方法
保険料控除申告書の中には「地震保険料控除」という記入欄があります。こちらに加入している地震保険の詳細を記入していくことになります。記入する必要がある項目は以下のとおりです。
- 保険会社等の名称
- 保険等の種類
- 保険期間
- 保険等の契約者の氏名および対象者との続柄
- 地震保険料または旧長期損害保険料区分
- 年間で支払った保険料の合計(申告額)
こちらも生命保険料控除と同様に「新契約」と「旧契約」が分かれています。生命保険料控除と異なる点としては、地震保険の場合「旧契約」の対象となるのは平成18年までに契約した保険であり、さらに保険継続期間が10年以上経過しているものとなる、という点です。
地震保険料控除の計算式も、新契約と旧契約それぞれ計算式が異なっています。自分がどちらの契約に当てはまるのかを確認しましょう。
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
50,000円以下 | 保険料支払い金額の全額 |
50,001円以上 | 50,000円 |
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
10,000円以下 | 保険料支払い金額の全額 |
10,001円~20,000円 | 支払い金額×1/2+5,000円 |
20,001円以上 | 15,000円 |
やはり地震保険の場合も、生命保険料控除と同様に支払っている保険料の合計が高くなればなるほど控除額も高くなっており、一定額を超えると控除額は頭打ちになります。
社会保険料控除申告書の書き方と計算方法
次は、いわゆる「社会保険」、国民年金や健康保険に加入している方が申告書に記入する書き方です。どのような事項を記入する必要があるのでしょうか。
社会保険料控除の範囲
すでに取り上げたとおり、ここにおける「社会保険」には主に以下の保険が含まれています。
- 国民年金
- 厚生年金
- 健康保険
- 介護保険
- 労働保険
社会保険料控除の書き方と計算方法
保険料控除を記入する場合は、以下の項目を記入する書き方です。
- 加入している社会保険の種類
- 保険料支払先の名称
- 保険料を負担することになっている人の氏名・続柄
- 本年中に支払った保険料(申告額)
また、生命保険料や地震保険料とは異なり、社会保険料は支払った社会保険料全額が控除の対象となりますので、計算式はありません。
小規模企業共済等掛金控除申告書の書き方と計算方法
では次に、退職金の代わりとして準備できる「小規模企業共済」に関する申告書への書き方です。どのように書き方をすれば控除を受けることができるのでしょうか。
小規模企業共済等掛金控除の範囲
小規模企業共済等掛金控除は、以下における掛金が対象となります。
- 中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
- 企業型年金または個人型年金加入者掛金
- 心身障害者扶養共済制度の掛金
小規模企業共済等掛金控除の書き方と計算方法
小規模企業共済等掛金控除を受ける場合、申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入する書き方になりますが、以下の項目いずれかを記入して控除額に反映させる必要があります。
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金の支払額(申告額)
- 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金(申告額)
- 確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金(申告額)
- 心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金(申告額)
小規模企業共済掛金も社会保険料と同様に、年間で支払った分の掛金全額が控除の対象となりますので、計算式はありません。
保険料控除申告書記入ミスを訂正する書き方
では、もし保険料控除申告書に記入している際に、控除額等で間違った記入をしてしまったらどうすれば良いのでしょうか。その場合は、社内文書や社外文書における修正方法と同様の修正方法で訂正を行います。
方法は、まず間違って記入した控除額等に二重線を引き、同箇所に訂正印を押します。この場合、シャチハタ等を利用するのは不可ですので注意しましょう。単語の中の一文字だけ漢字が間違っているという場合も、間違った文字だけでなく単語全部に二重線と訂正印を行い訂正するようにしましょう。
保険料控除申告書にマイナンバーの記入は必要?
現在、基本的に保険料控除申告書には、マイナンバーを記入する必要はありません。以前はマイナンバーの記入が必須でしたが、現在は「給与支払者がマイナンバーを管理した帳簿を作成している場合」において、マイナンバーの記入が必要なくなっています。
保険料控除申告書に必要な証明書をチェック
「保険料控除申告書」を提出する場合には、そこに記入されている内容が正しいものであることを証明する書類いずれかが別途必要となります。その書類は、以下のとおりです。
- 生命保険料、地震保険料および小規模共済等掛金の支払いを証明する証明書類
- 社会保険料のうち「国民年金保険料」の支払いを証明する証明書類
ちなみに社会保険においては、国民年金保険料以外の社会保険料に関して書類を添付する必要はありません。
保険料控除申告書の証明書を紛失したら?
このように、保険料控除を受けるためにはその根拠となる書類が必要ですが、その証明書を紛失した等の理由で用意できない、という方がおられるかもしれません。そういった場合はどうすれば良いのでしょうか。
証明書が無い場合は、加入している保険会社や日本年金機構、小規模企業共済等掛金であれば「独立行政法人中小企業基盤整備機構」において証明書類を再発行してもらうことが可能です。証明書類の再発行手続きには少し日数を必要とする場合もありますので、証明書に関しては早めに確認しておくようにしましょう。
書き方をマスターして保険料控除申告書を申請しよう!
今回は「保険料控除」に関して、控除を受けるための必要な手順や書類等について取り上げてきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
年末調整は事業者であれば必要不可欠な手続きとなります。特に、特定の会社に所属しておらず個人事業主として仕事をしている方にとっては、確定申告として自分で行わなければならない手続きでもあります。この際に手順をしっかり確認しておき、正しい保険料控除を受けられるようにしましょう。