ひな祭りの歌『うれしいひなまつり』の歌詞には間違いがあるの?
3月3日は桃の節句、ひな祭りです。ひな祭りになるとよく歌われる『うれしいひなまつり』。皆さんも一度は歌ったことがあるでしょう。その歌詞には実は間違っている箇所があるのです。ひな祭りの歌の歌詞と間違っている箇所、歌詞に出てくる言葉の意味等ご紹介します。
目次
ひな祭りの歌の歌詞に間違いがあるって知ってた?
「あかりをつけましょ ぼんぼりに~」という、日本人なら誰でも知っているひな祭りの歌。このひな祭りの歌は昔から歌われてきた歌ですが、実はこのひな祭り歌の歌詞には間違いがあることをご存知でしたか。ひな祭りの歌の歌詞の間違いについてや、ひな祭りの歌詞の意味、ひな祭りの歌の作詞をされたサトウハチローさんについてご紹介します。
ひな祭りの歌の題名
みなさんはひな祭りの歌である「あかりをつけましょ ぼんぼりに~」という歌の正しい題名をご存知ですか。歌詞にはひな祭りのことが歌われているので、『ひな祭り』という題名だと思っている人も多いと思います。また、1番の歌詞に「今日はたのしい ひなまつり」と出てくるので、このひな祭りの歌の題名を『たのしいひなまつり』と思っている人もいるかもしれませんが、それは間違いです。このひな祭りの歌の正しい題名は『うれしいひなまつり』と言うんです。
作詞者「サトウハチロー」のプロフィール
ここで『うれしいひなまつり』の作詞をされたサトウハチローさんのプロフィールについて、簡単にご紹介します。
サトウハチロー(本名:佐藤 八郎)さんは、1903年(明治36年)5月23日、現在の東京都新宿区市谷薬王寺町に生まれました。父は昭和初期に少年小説の分野で圧倒的な支持を受けた「少年小説の第一人者」と呼ばれる、佐藤紅緑(さとう こうろく)さんです。その父の不倫のため、中学時代に両親が離婚し、父への反発から中学を退校、勘当、留置所入りなどを重ねました。
その後、父の弟子である詩人の福士幸次郎の影響を受け、その紹介で西條八十に弟子入りし、童謡を手がけるようになりました。さまざまな同人誌に参加し、処女詩集『爪色の雨』は1926年(大正15年)に出版されました。1930年代からは作詞だけにとどまらず、小説の執筆や映画の主題歌の作詞等も精力的に活躍され、戦後初めての映画『そよかぜ』の主題歌で、サトウハチローさんが作詞した「リンゴの唄」は、戦後のヒット曲第一号となりました。
主な作品
主な作品についてご紹介します。童謡はひな祭りの歌以外にもたくさんの作品がありますし、童謡以外にもたくさんの作詞、小説、随筆等があり、校歌も複数手がけていらっしゃいます。ここにご紹介するのはほんの一部です。
童謡
・うれしいひなまつり
・ちいさい秋みつけた
・かわいいかくれんぼ
・アイウエオの歌 等
歌謡曲
・リンゴの唄
・長崎の鐘 等
小説
・父の顔母の顔
・若者行進曲
・青春五人男
・西遊記 等
『うれしいひなまつり』はひな祭りを歌った歌詞ですが、このひな祭りの歌詞は、1935年(昭和10)年にサトウハチローさんが娘さんに雛人形を買ってあげた前後に作詞されたとされていて、それに河村光陽さんが作曲し、翌年(1936年・昭和11年)1月にレコードが発売されたそうです。
「うれしいひなまつり」を聞いてみよう!
ひな祭りが近づくとあちらこちらで耳にする「うれしいひなまつり」の歌ですが、ひな祭り当日でもじっくりと歌詞を聴くことはあまりないと思います。ここでちょっと歌詞に注目して聴いてみてください。
ひな祭りの歌、1番の歌詞はなんとなく歌える人も多いでしょう。実はこのひな祭りの歌「うれしいひなまつり」は4番まであり、2番以降の歌詞になると、なんとなくは覚えていても、1番から4番まで歌詞を正確に歌える人は少ないのではないでしょうか。
ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」の間違いは2箇所!
昔からひな祭りの時期になると歌われてきたひな祭りの歌『うれしいひなまつり』。何の疑いもなく歌ってきたひな祭りの歌ですが、実は歌詞に2箇所も間違いがあるということをご存知でしたか。間違っている2箇所についてご紹介します。
2番の歌詞に出てくる「お内裏様」
2番の歌詞をよく聴くと「お内裏様とおひな様」という歌詞があります。この歌詞には二重の間違いがあります。まず「お内裏様」ですが、この歌詞では男雛(おびな)のことを「お内裏(だいり)様」と呼んでいますが「内裏」とは男雛(おびな)女雛(めびな)両方のことを意味します。ですからちゃんとした意味を考えた時に、後から「おひな様」を歌詞に加えなくても良いということになります。
また「おひな様」という言葉も「おひな様」は男雛、女雛両方のことを意味しますので、女雛を表す意味として「おひな様」と使うのは間違いということになります。
3番の歌詞に出てくる「右大臣」
次にひな祭りの歌「うれしいひなまつり」3番の歌詞をよく聴いてみると、「あかいお顔の 右大臣」とあります。確かにひな壇を正面から見た時に、上から4段目の両端にいる大臣は右にいる人の方が赤い顔をしています。ですが、「右大臣」「左大臣」と言ったときには、お内裏様から見た場合の左右になりますので、赤い顔をしているのは本当は「左大臣」ということになります。
ちなみにひな祭りが近づくとよく聞かれる『うれしいひなまつり』ですが、サトウハチローさんは歌詞の誤りについてとても気にしており、晩年までこのひな祭りの歌『うれしいひなまつり』を嫌っていたと言われています。
ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」で気になる歌詞は他にも!
どんな歌でもそうかもしれませんが、歌詞をよくよく聴いて、意味を考えてみると気になる歌詞がたくさんあります。ひな祭りの歌である『うれしいひなまつり』もまた先に述べた歌詞の間違い以外にも、気になる歌詞がありますのでご紹介します。
「お嫁にいらした」は来た?行った?
ひな祭りの歌『うれしいひなまつり』の2番の歌詞に出てくる「お嫁にいらした」という歌詞はお嫁に「行った」のか「来た」のかどちらの意味を言っているのかということですが、「いらした」というのは「いらっしゃる」の過去形になり、「入(い)らせらる」という言葉が由来です。現在の言葉でいうと「いらした」は「いらっしゃった」「来た」という言葉として使うことが多いかと思いますが、このひな祭りの歌の歌詞の意味としては「入った=行った」と解釈する方が良いようです。
「お嫁にいらした姉様」はサトウハチローの姉のこと?
サトウハチローさんにはお姉さんがおり、そのお姉さんは嫁ぎ先が決まった矢先に結核によって18歳の若さでお亡くなりになります。ひな祭りの歌『うれしいひなまつり』の「お嫁にいらした姉様」という歌詞の「姉様」は、その結核で亡くなったお姉さんのことを思って歌詞に入れたとされています。またひな祭りの歌『うれしいひなまつり』の曲調は短調で、日本の楽曲にはよくありますが、少し寂しいような曲調です。これは、亡くなったお姉さんの鎮魂の意味をこの歌詞に込めているからという解釈もあるようです。
ひな祭りの歌は本当は怖い歌?!
ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」は、本当は怖い歌だという噂があります。2番の歌詞に出てくる「お嫁にいらした姉様」については先ほどご紹介しました。その続きで「よくにた官女の 白い顔」という歌詞に続きます。この「白い顔」が、結核で亡くなったお姉さんの顔が白かったからということから歌詞に入れられたとされ、お姉さんのための鎮魂歌である説が生まれました。さらに鎮魂歌で曲調も短調ということから、この歌詞に登場する人は、皆亡くなっているという怖い噂もできたようです。
ひな祭りの歌に出てくる難しい言葉の意味を紹介!
ひな祭りの歌『うれしいひなまつり』の歌詞にはさまざまな言葉が出てきます。現在は使われていないような言葉はどんな意味があるのか、歌詞に出てくる物の由来や言葉の由来等を詳しく見ていきたいと思います。
ぼんぼり
1番の歌詞に出てくる「ぼんぼり」の由来とは何でしょうか。「ぼんぼり」とはお内裏様の両横にある明かりのことを言い、ろうそくを立てる燭台(しょくだい)を紙や絹等の布で覆ったもので、ぼんやりとしたほのかな明かりが特徴です。そもそも「ぼんぼり」という言葉の由来は江戸時代に、「ぼんやりとしてはっきりしない様子」や「物がぼんやりとうっすら透けて見えること」の意味で使われていた言葉です。また”ほんのり”明かりがともる様から「ぼんぼり」に転化したのが由来という説もあります。
昔は結婚式は夜中に行われるものだったため、照明は欠かせないものでした。そのためお内裏様の両側にあるんですね。ちなみにぼんぼりは漢字で「雪洞」と書きます。
官女
ひな壇のお内裏様のすぐ下の段、上から二段目に配置された三人官女。「官女」とは一体どういう人なのでしょうか。「官女」は「女官(じょかん)」のことであり、昔、男子禁制であった後宮(こうきゅう)で君主や后妃の日常のお世話をしていた人になります。
雛段飾りの三人官女は一人だけ座っているものがあり、その人は眉がなく、口元も他の2人とは違います。ちょっと怖い顔になっていますが、これは既婚者であることを示しています。昔は結婚すると眉を剃りお歯黒をぬったことから由来しており、一番年上であるということを意味しています。
白酒と甘酒の違い
白く濁った白酒を甘酒のことだと思っている人もいるかもしれません。しかしアルコール分をほとんど含まない甘酒とは違い、白酒というのは、しっかりとアルコール分が含まれた「お酒」です。桃の節句であるひな祭りに白酒を飲むということの由来は、諸説あり、女性の厄払いのためであったり、江戸時代に人気だった白酒が桃の節句になると売り出されていたため等、いろいろな説があります。
ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」はメキシコでカバーされていた!
日本特有の短調のメロディーであるひな祭りの歌「うれしいひなまつり」は、海外にも渡り、メキシコでロス・パンチョス(Los Panchos)というラテン音楽のグループがカバーしています。ただ歌詞の内容は変わっているようです。
「悲しきみなしご」という歌謡曲にカバー
ロス・パンチョスによって”Pobres Huerfanitos(悲しきみなしご)”というタイトルでカバーされ、ヒットしました。そのためアメリカやメキシコで広く知られるようになりましたが、ロス・パンチョスが曲を出す際に、日本の童謡のカバーであることを表示しなかったため、現地ではメキシコの曲として定着しており、原曲が日本の童謡であることを知らない人が多いそうです。
ちなみにこの「悲しきみなしご」は、ひな祭りの歌とは無関係の歌詞となっていて、”身寄りもなく行くあてのないみなしご達はクリスマスだけがうれしい”というような、ちょっと悲しい歌詞となっています。
ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」は日本人に愛されている!
日本人にとって、とてもなじみ深いひな祭りの歌「うれしいひなまつり」。これまで題名を知らなかった人も、題名を間違えていた人も、これからは正しい題名を伝えることができますね。また雑学としてこの歌の歌詞には間違いが2箇所あることや、それぞれ歌詞の間違った箇所の説明ができるとちょっとハナタカになれるでしょう。
童謡や昔話等は怖い箇所や、怖い裏話等よく言われますが、ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」が怖いとされる噂も、あくまでも怖い噂です。何でも正しい知識で見れば怖いことはありません。3月3日はひな祭りです。大人も子供もみんなで健やかな毎日を祈りましょう。