こけしの由来は怖い?『子消し』が語源なの?地域別のこけしの特徴も!
日本の伝統工芸品こけしについて、どれくらいの知識をお持ちですか?こけしという名前の由来やその意味、地域によってどんな違いがあるのかなど、知らない方も多いのではないでしょうか。この記事ではそんなこけしの種類や由来、気になる子消しの噂についてもご紹介します。
目次
土産物屋でよく見るこけしの歴史が気になる!
現在東京でも土産屋で販売されている工芸品のこけしですが、最近では若い女性や海外からの旅行客のあいだでも人気があるようです。丸い頭と円柱型の胴でできた同じような作りの木製人形ですが、実は産地によって様々な由来や種類があり、表情や模様、胴のかたちに違いがあります。こけしの歴史は古いと言いますが、一体いつ頃どんなふうにできて広まったのでしょうか。
こけしの由来は?どこの地域で生まれたの?
こけしは江戸時代の末ごろ、東北地方の温泉地で湯治に訪れた人への土産物として販売されたのが由来とされています。宮城県蔵王連峰の遠刈田(とおがった)で作られたものが最古だとされていて、その後福島県の土湯でも作られるようになったそうです。
今までお椀やお盆、仏器などを作って暮らしていた木地師が、湯治に来る農民たちに需要があるのではないかと作り始めたものが広まったという由来、そして他にも、江戸幕府が定めた桃の節句で、裕福な商人が豪華なひな人形を飾るようになり、庶民は手軽に買えるこけしをひな人形として飾るようになり広まったという由来など、地域によって少し違いがあるようです。
こけしが持つ役割とは?どんな意味があるの?
①縁起物やお守りとしての役割
湯治に来ていた客の多くは農民で、日ごろの厳しい農作業で疲れた体を少しでも癒すためにと訪れていました。そんな農民たちはこけしを心身回復や五穀豊穣の縁起物と考え、土産として持ち帰るようになったそうです。その由来がこけしに特別な意味を与え、今でも縁起物やお守りとして販売しているところがたくさんあります。
②子供のおもちゃとしての役割
日本の山間部では、こけしを子供のおもちゃとして作り始めたのが由来とされている地域があります。胴を赤ん坊の握りやすい大きさに作り、おしゃぶりやおもちゃとして子供に与えていたということです。こけしの由来はさまざまですが、どれも本当にありそうな話として感じられるのが面白いですね。
こけしの語源が『子消し』って本当?気になる由来を解説!
こけしには様々な呼び名や当て字があった
こけしは、地域によって様々な呼び名がありました。そこに特別な意味があるというわけではなく、例えば木で作った人形なので木偶(でく)と呼び、ここから「きでこ」「でこころ」「でくのぼう」、赤ちゃんがハイハイする様子を指す這子(ほうこ)という言葉からは「きぼこ」「こげほうこ」などと様々に変化しながら呼ばれていたようです。
加えてこけしには、由来とは関係なく実にたくさんの当て字がありました。こちらも意味というよりは音で、「木偶子」「木形子」「木芥子」「木削子」「小笥子」などの当て字が戦前まで使われていたようですが、1940年に東京こけし会総会が開催され、ひらがな3文字の「こけし」に統一されることが決まりました。
『子消し』の語源は創作童話がはじまりだった!
こけしに「子消し」という字を当て、こけしが貧困のために堕胎した子供を慰霊するためにつくられたのが由来だとする説が、1965年ごろから人々の口に上るようになりました。実はこの「子消し」由来説、詩人の松永伍一が創作童話の中で唱えたもので、物語がとても悲しく強い印象が残ったために勢いよく広まってしまったようです。「子消し」説を裏付ける事実は存在していないので、民俗学的には「根拠のない俗説」とされていますね。
「子消し」という言葉はあまり素敵な当て字ではないので、根拠がない由来という回答でほっとした方も多いのではないでしょうか。
こけしには2つの種類がある!現代で人気なのはどっち?
【種類①】伝統こけし
伝統こけしとは、こけしが誕生した時の、昔ながらの様式に従って作られたこけしの種類を指します。名前の通りの由来ですね。こけしには頭と胴を一本の木でつくる方法と、別々に作ってから頭の方にあけた穴に胴を差し込んで作る方法があります。伝統こけしは定番品として今でも人気です。時代が回り、歴史や由来の古いものが逆に斬新な印象を与えることもありますよね。
【種類②】新型・創作こけし
新型こけしは、全国の観光地で定番のお土産物として販売されるようになったこけしの種類を指します。名前の由来は、地域別の特徴にこだわらずに作った、新しい形のこけしという意味です。それとは別に、現代の感覚を創作に反映し、個性的な表現をしようと試みた種類を、創作こけしと呼ぶようになりました。創作こけしには伝統こけしに比べて独創的なものが多く、こけしに対しての固定概念のない若い世代や、海外からの購入者に人気があります。
【地域別】こけしの特徴をご紹介!11個の系統を知ろう
①福島『土湯系』
土湯は伝統こけし三大発祥の地として有名な温泉地で、土湯系という名前の由来も地名です。こけしが土産物として販売されているのはもちろんのこと、モニュメントとしても使われています。頭に蛇の目の輪が描かれており、前髪と鬢の毛のあいだにカセと呼ばれる赤い模様があるのが特徴です。はめ込み式の作りで、胴の模様は主に線の組み合わせで描かれます。
②宮城『弥治郎系』
弥治郎系の初期タイプは手書き模様が中心でしたが、ロクロが導入されてからはロクロによる太い幅の色帯で彩色するようになりました。はめ込み式の作りで、くびれのある胴に比べて頭が少し大きめです。全体的に色鮮やかな印象です。
③宮城『遠刈田系』
伝統こけし三大発祥の地のひとつです。遠刈田も温泉地名が由来ですね。遠刈田系のこけしははめ込み式で、大きめの頭になで肩の細い胴が特徴です。模様は手描きの花模様、図案化された菊や梅が多いですが、木目模様などもあります。華やかさにおいては一番とも言われます。
④宮城『鳴子系』
鳴子系も、伝統こけし三大発祥の地のひとつです。名前の由来も、もちろん温泉地名ですね。大きな特徴は、首を回すとキイキイ鳴ることです。胴は肩の部分が盛り上がり、中央で一度細くなってから裾に向かってまた太くなります。模様は、横から見た菊の姿を重ねて描いた「重ね菊」と、正面から見た大輪の菊を描いた「菱菊」が代表的です。こちらもはめ込み式となっています。
⑤宮城『作並系』
作並系は、遠刈田から伝わった技術をもとに山形系の影響を受け、発展したのが由来とされています。差し込み式の小さな頭と細い胴が特徴です。作並系の細い胴は、かつて子供が握って遊んだ名残だと言われています。
⑥山形『肘折系』
山形県の肘折系は、鳴子と遠刈田が混じり合って発展したと言われています。はめ込み式の頭にはにんまりとした表情が描かれており、肩の張った直胴が特徴です。
⑦山形『山形系』
木地師が作並で学んだ技術が由来だとされる山形系は、作並系同様、小さな頭と細い胴のはめ込み式です。顔には特徴的な割鼻が描かれています。
⑧山形『蔵王系』
山形生まれの蔵王系は、遠刈田の影響を受けています。胴はずっしりと太め、はめ込みの頭は大きく、赤い放射状の飾りにおかっぱ頭のデザインが多いのが特徴です。
⑨秋田『木地山系』
秋田の木地山系最大の特徴は「作り付け」です。「作り付け」の意味は、頭と胴を一本の木から作るということ。頭はラッキョウ型、どっしりと太い胴には縦縞の着物に梅の花の前垂れ模様が描かれています。
⑩岩手『南部系』
岩手南部系は、はめ込み式の頭をわざとゆるくしてあるので、グラグラと揺れるのが特徴です。南部系のこけしは子供のおしゃぶりが由来だとされていて、素朴で簡単な作りのものが多いです。
⑪青森『津軽系』
津軽系は作り付けのこけしで、頭と胴が一本の木で作られています。裾が広く胸の膨らんだ胴が特徴的で、津軽藩の家紋である牡丹模様やアイヌ模様、ねぶた絵が描かれているものもあります。
こけし好き必見!宮城県で開催される『こけし祭り』とは?
伝統こけし三大発祥の地のひとつである宮城県鳴子温泉、鳴子こけしの産地で「全国こけし祭り」が開催されているのをご存知でしょうか。日本各地の伝統こけしが勢ぞろいする「全国こけし祭り」は、1948年に「鳴子こけし祭り」として始まり、1953年には「全国こけし祭り」と名称を変更し、開催を続けています。
「全国こけし祭り」ではこけし供養やこけし奉納なども行っており、各産地の伝統こけしを実演展示販売するなど、見どころがたくさんありそうですね。
こけしについて学べるおすすめ博物館3選!
宮城『日本こけし館』
宮城県大崎市鳴子温泉にある「日本こけし館」は、童話作家の深沢要が、私蔵のこけし約600点を旧鳴子町に寄贈したことから始まりました。こけしの展示を鑑賞できるほか、こけしの絵付けを体験したり由来を学ぶことができる施設です。「全国こけし祭り」に奉納されたこけしが勢ぞろいしていて、ロクロの実演コーナーや絵付けコーナーなどもあります。
福島『原郷のこけし群 西田記念館』
福島県福島市にある「原郷のこけし群 西田記念館」は、こけし研究家の西田峯吉による寄贈品と、その関係書物を収蔵した展示館です。常設展示室では全11系統のこけし全ての描彩や構造などを詳しく紹介し、企画展示室では年三回、テーマを決めた企画展を開催しています。
青森『津軽こけし館』
青森県黒石市にある「津軽こけし館」は、日本全国のこけしが展示されているこけしの展示施設です。約4000本もの伝統こけしが展示されている他、津軽系こけしの製作実演、由来の解説、絵付け体験などを楽しむことができます。日本一の大きさを誇る197cmのこけしも展示してあります。
こけしが買える東京のお店3選!お気に入りを探そう
①西荻窪『西荻イトチ』
東京でこけしが欲しいと思ったら、まずは「西荻イトチ」を覗いてみましょう。こちらは西荻窪駅から程近い場所にある、紅茶とこけしのお店です。ちょっと斬新な組み合わせですが、店内では各地から集められたこけしを眺めながら、こだわりの紅茶とスコーンを楽しむことができます。もちろんこけしの購入も可能です。
②日本橋『日本橋ふくしま館 midette』
東京都日本橋にある「日本橋ふくしま館 midette」は、福島県のアンテナショップで、こちらの民芸品コーナーでもこけしが販売されています。「日本橋ふくしま館 midette」のこけしは、土湯温泉から仕入れているものだそうです。アンテナショップの中でも品ぞろえが豊富なお店なので、東京にいながら福島県をたっぷり味わうことができそうです。
③早稲田『備後屋』
東京都早稲田、若松河田駅近くにある民芸品店「越後屋」は地下1階から4階まであり、陶器や藍染め布、和紙製品などを取り扱っているお店です。こちらの地下1階でこけしを販売しています。「越後屋」はその土地の風土、玩具が持つ意味、その由来や背景を大切に作られたものしか置かないというこだわりのお店なので、東京で特別なこけしに出会えるかもしれませんね。
こけしの歴史は知れば知るほど奥深い!
こけしと一口に言っても、豊富な種類とそれぞれに深い歴史や由来があります。地域の違いを比べてみてもいいですし、時代による移り変わりに視点を置いても面白そうですね。彩色やデザインの由来なども、調べてみれば奥が深そうです。これを機会に日本の伝統玩具、こけしの魅力を深堀してみましょう。観光がてらに「全国こけし祭り」に参加してみるのもいいかもしれませんね。