2021年05月20日公開
2021年05月20日更新
冤罪だったのに死刑が執行された事件一覧
冤罪なのにも関わらず死刑が執行された有名な事件をご存知でしょうか。現代ではDNA検査などの捜査技術が大きく発展したのにもかかわらず、依然として冤罪となる事件が多く存在します。ここでは、そのような冤罪だったのに死刑が執行された有名な事件を紹介していきます。
目次
冤罪で死刑執行された有名な事件①(日本編):「飯塚事件」
久間三千年(くま としみつ)
1992年、日本の福岡県飯塚市で事件は発生しました。飯塚市に小学校に通う2名の女子児童が行方不明になり、その後、飯塚市の山中で死体となって発見されました。
その後、現場に残されていた犯人のと思われる体液をDNA鑑定したところ、同じ福岡県飯塚市に住む日本人「久間三千年(くま としみつ)」のDNAと一致し、彼は逮捕されました。
久間三千年は判決の結果、「死刑」を言い渡されることになります。
疑問の多いDNA鑑定
飯塚事件の犯人として「久間三千年」が逮捕された決定的な証拠はDNA鑑定による証拠です。
被害者の女子児童についていた毛髪や指紋などいくつかの証拠件数をDNA鑑定した結果、同じ飯塚市内に住む、久間三千年(くま みちとし)のDNAと一致したと判断され、彼は逮捕されました。
しかし、このDNA鑑定にはいくつかの疑問点が挙げられます。
第1に、DNAの鑑定方法に欠陥がある可能性があったことです。DNA鑑定は「MCT118」とよばれる検査方法によって行われました。しかし、このDNA検査「MCT118」は現在の鑑定技術に比べると、検査方法が非常に大雑把で欠陥があるとされており、証拠とするには疑問であるという声があがっています。
第2に、鑑定者の技量も疑問視されています。鑑定者が鑑定に使用する毛髪・血液などのいつかのサンプル件数を必要以上に使用し、再度鑑定することができなくなっていたのです。事件の有力な証拠件数が鑑定者の技量不足によって損失してしまったのです。この鑑定者の技量不足から、そもそも本当にしっかりと鑑定が行われていたのかも疑問視されています。
これらの疑問件数によってDNA鑑定が本当に正しかったのか疑問が強まっており、「冤罪の可能性が高まっています。
不確かな目撃証言
飯塚事件にはDNA鑑定以外の物的証拠に乏しく、久間三千年を犯人だと決定づけるのにはまだ十分な証拠が揃っていませんでした。
そこで証拠として「目撃証言」を収集します。しかし、裁判では「飯塚事件」が起きてから数か月後にとられた、不確実で不鮮明な証言を証拠として取り扱ったのです。そのため、目撃証言としては合理的でなく証拠として認めていいのか疑問視される事例になっています。
目撃証言がときには「冤罪」を生んでしまう事例とも考えられます。
死刑の執行
以上のように「DNA鑑定」「証拠不十分」「不明確な目撃証言」など様々な不確定要素があったのにも関わらず、「死刑」の判決を覆すことはできませんでした。
久間三千年さんは、逮捕された当時から無罪であることを主張し再審を求めていました。しかし彼が生きている間の最後まで再審で無罪が判決されることはありませんでした。
結果的に日本で起きた「飯塚事件」は久間三千年が犯人であるとされ、2009年9月に死刑が執行されました。
日本の冤罪事件のなかでも有名な事例になります。
冤罪で死刑執行された有名な事件②(海外編):「警察官殺害事件」 トロイ・デービス
トロイ・デービス
1989年年8月19日、アメリカ南部ジョージア州ので警官が殺される事件が起きました。
犯行現場はハンバーガー店の駐車場。トロイ・デービスは警官のマーク・マクフェイル(27歳)を拳銃で銃殺したとされ逮捕されました。
証拠は目撃証言のみだった
裁判ではトロイ・デービスが犯人である物的な証拠がなく、目撃証言という不確実な証拠によって判決の論争が行われていました。
元々「目撃証言」というのは、目撃者の見間違いや勘違い、思い込みなど不確定要素が多く含まれています。しかし、裁判の論議の多くは「目撃証言」という不確定要素が多い証拠をもとに進められていきました。このことが「冤罪」の可能性を強めています。
そのため、判決内容の論争が難航し、最終的な判決に至るまでなんと約20年間もかかっています。
死刑の執行~死刑反対運動の象徴として有名な人物に
最終的に最後まで彼が無罪であることが立証されず、2011年9月21日に薬の投与による死刑が執行されました。
彼は死刑が執行されるまでの20年間無実を主張し続けましたが、その願いが叶うことはありませんでした。 数多くの著名人が彼の死刑執行に疑問を抱いており、米国支部事務局長やジミーカーター元大統領も彼の死刑執行に疑問の声を挙げていました。冤罪の可能性を考える人々が多くいたのです。
彼が本当に警官を殺害したのか疑わしい中で死刑を執行してしまった米国の司法制度を見直す必要があるかもしれません。後にトロイ・デービスは死刑反対運動の象徴ともいえる人物になります。
「冤罪」が注目されることになった事例の1つです。
冤罪で死刑執行された有名な事件③:「ガソリンスタンド殺人事件」カルロス・デルーナ
カルロス・ディーナ
1983年2月テキサス州南部のとある町で殺人事件が起きました。
犯行現場はガソリンスタンド。カルロス・ディーナさんはガソリンスタンドの従業員の女性をナイフで殺害したとされました。
カルロス・ディーナさんは、仮出所中で本来なら禁止されているお酒を飲んでいた為に、警官に逮捕された時にに逃走を図ろうとしました。犯人と疑われるような行動をとってしまったためにさらに彼への容疑を深めることとなってしましました。
容姿が酷似していた
真犯人と容姿が酷似していた事例
目撃者によると、男性とみられる人がガソリンスタンドから「北の方角」」に逃走したと証言。しかし、逮捕時のカルロス・ディーナさんはガソリンスタンドの「東の方角」で捕まっています。
後に明らかになりますが、真犯人とカルロス・ディーナさんは親族でも見間違えてしまうくらいに容姿が酷似していました。真犯人と容姿が酷似していたために誤認逮捕された可能性や確率が非常に高い事例としてしられています。
容姿が似ていることによって「冤罪」となってしまった可能性が考えられます。
真犯人が罪を認めていた
後にカルロス・エルナンデスという人物が他の殺人事件で容疑をかけられます。
そして、その事件で使用した凶器が「ガソリンスタンド殺人事件」で使用された凶器と同じ種類のナイフであることが判明します。
このことによって、以前の事件「ガソリンスタンド殺人事件」もカルロス・エルナンデスさん自身が犯行を認めていました。
死刑執行
「目撃証言の相違」「真犯人が犯行を認める」など、再捜査・再審を行う必要生が非常に高い事例と考えられますが、1989年にカルロス・ディーナさんの死刑が執行されました。
冤罪で死刑執行された有名な事件④:「警察官殺人事件」レオ・ジョーンズ
1981年アメリカのフロリダ州のとある町で、警察官のトーマス・ザフランスキが殺される事件が発生しました。
レオ・ジョーンズはこの警官殺害事件によって死刑の判決を受けることになります。
自白の強要をさせられた
レオ・ジョーンズは一度、自らの罪を認め自白を行います。しかし、その後の裁判で、「警察官に暴行を受け、自白の強要をさせられた。そのため、仕方なく自白を行ったと」証言台にて語ります。
ですが、その証言は認められず自白のみが認められ彼の死刑判決が決定しました。 彼は最後まで無実を主張しつづけましたが、1998年3月24日に死刑が執行されました。
後に彼が警察署で自白を強要されていたこと、また暴行を受けていたことが判明します。 彼が冤罪であったのにも関わらず、最後には死刑判決が下され最終的に死刑が執行されてしまった。数少ない冤罪事例の1つです。
日本の死刑の流れ
上記では様々な件数の冤罪なのに死刑になってしまった人々を紹介しました。
実際に「死刑」はどのように行われるのでしょうか。
日本の死刑は「絞首刑」になっており、実際に死刑になる予定の人は2017年現在、100件数ほどあるといわれています。
死刑執行の流れはどのようになっているのか、死刑執行当日の流れをご紹介します。
またここで紹介する「死刑」の流れは数ある死刑件数と事例の1つです。他にも様々な流れの死刑方法があります。
・教誨室(きょうかいしつ)へ移動
教誨室
独房から教誨室(きょうかいしつ)と言われる場所に移動します。
ここでは遺書を書くことができたり、お菓子などを食べることができます。死刑囚にとっては、死刑執行前の最後の自由時間です。
・前室へ移動~死刑の言い渡し
前室と執行室
手前が前室、奥側が執行室になります。
死刑執行の準備が行われる「前室」へ移動し、そこで死刑の執行が言い渡されます。
死刑囚に死刑の執行が言いわたされるのは当日です。
つまり、裁判の判決によって「死刑」が言い渡されてから独房で過ごす間、「明日、死刑が行われるかもしれない」という恐怖に怯えながら毎日を過ごすことになります。
死刑の執行が言い渡された後、死刑囚は白装束に着替えます。顔には白い布を被せられるために、視界が遮られます。そして手錠をはめられた後、執行室に移動します。
・執行室~死刑執行の準備
死刑執行室
執行室の中央には、踏み板がありその上に死刑囚を立たせて首に縄を巻きます。またこのとき、足も縄で縛ります。
死刑執行が立っている「踏み板」を外すボタンは、別の部屋にあり、そのボタンを押すことで死刑が執行されます。
ボタンは全部で5個設置してあり、執行者が一斉にこのボタンを押して「踏み板」が外されます。しかし、5つあるボタンの内、「踏み板」が開くボタンは1つしかありません。これは執行者が「自分が人を殺してしまった」という精神的ショックを配慮するためです。
死刑の執行のボタン
踏み台を外すボタンは全部で5個設置してあり、執行者が一斉にこのボタンを押して「踏み板」が外されます。 しかし、5つあるボタンの内、「踏み板」が開くボタンは1つしかありません。これは執行者が「自分が人を殺してしまった」という精神的ショックを配慮するためです。
・死刑執行~その後
最後はボタンによって「踏み板」が開き、死刑囚は落ちていき「絞首刑」が執行されます。
医師によって死亡確認を行い、最後に遺体は遺体安置室へ移動させられます。
なぜ冤罪が生まれるのか
有名な冤罪事件はなぜ起きたのか
「冤罪」が生まれる理由は、裁判において「自白」、つまりは被疑者が罪を認めたことを重要視することに問題があります。
裁判では物的証拠、目撃証言、など様々な証拠によって審議が進められていきます。その中でも、本人(被疑者)が罪を認めること、つまり「自白」が証拠として重要視されています。そのため、証拠が不十分な場合でも判決がくだることさえもあります。
そのため警察や捜査機関は、しばしば高圧的な態度で被疑者に対して「自白」することを要求することが多くあります。
上記で紹介した冤罪の可能性が高い事件でも、警察が被疑者に対して、暴行を加えたり精神的苦痛を与えていたように、違法な取り調べを行うこともあります。
拷問に近いような取り調べに耐えかねた被疑者は、「今は罪を認めてあとで撤回してもらおう」となってしまうわけです。
もし取り調べで「自白」をして自分の罪を認めてしまった場合、あとで撤回しようと思っても「自白」が証拠として重要視される裁判でそれを覆す可能性や確率は非常に低くなります。
つまりは、物的証拠や目撃証言よりもを非常に重要視する裁判の傾向に問題があり、「冤罪」が生まれる確率を増やしてしまいます。残念ながら今も「冤罪」の件数がなくなることはありません。
冤罪にならないためには
上記でも紹介したように、警察側は取り調べの段階で被疑者に対して「自白」をさせようとしてきます。
そこで仮に嘘でも自分の罪を認め「自白」してしまったら裁判で撤回することは非常に難しく、結果的に有罪判決になってしまいます。
ですから、取り調べの段階で有能な弁護士についてもらいサポートしてもらうことが重要になります。そうすることで「冤罪」になる確率を減らすことができます。
弁護士は、警察からの高圧的な取り調べにどう対処すればいいのかを教えてくれます。なにより、長期間続く戦いになるので、精神的なサポートを行ってくれます。
また弁護士がついていることも違法な取り調べを行う警察へのけん制にもなります。違法な取り調べがあれば、その証拠を裁判に持ち込むことが可能です。
有能な弁護士についてもらうことが冤罪を防ぐ唯一の方法になります。
「冤罪」にならないためにできることは、「有能な弁護士についてもらうこと」それだけです。そうすれば「冤罪」の確立を低くさせることができるでしょう。あるいみ最後の「壁」ともいえます。
死刑制度廃止の声も・・・
死刑制度廃止の運動
弁護士の間でも死刑制度廃止を求める声がでています。 死刑制度廃止の理由の多くは、「冤罪の可能性・確率もあるから」という廃止理由です。 上記での「冤罪なのに死刑が執行された」人びとのように、裁判で十分な証拠も提出されないまま論議が進められ、ひどい時には「自白」を強要される場合が少なからずあるという現実的な状況があります。 この状況で、死刑制度を行うことは無実の人を犠牲にしてしまう可能性もあるということです。それならば、死刑制度を廃止しようということです。 死刑制度廃止に関しては人の倫理的な問題にも触れるため難しい問題となっています。 あなたは死刑制度廃止についてどう思いますか。
死刑制度は犯罪の抑止になっていない!?
死刑制度に賛成派の意見として、「死刑という刑罰があることで、他の犯罪を抑止できる。」という論理を語る人がいます。 しかし、死刑が犯罪の抑止につながっている統計的なデータは存在しません。よって「死刑」という命を使った刑罰をしたところで、他の犯罪を抑止できるわけではないということです。 また殺人犯の中には「死刑」を求めて無差別に殺人を繰り返す人もいるために、「死刑」が歯止めになっているかというと非常に疑問なところです。 したがって、「死刑」による犯罪の抑制は合理的でない可能性が非常に高いのです。
編集上に下に
身近にある有名な冤罪事件
痴漢
日本人の私たちにとって一番身近な冤罪は「痴漢」
でしょう。
もし「痴漢」だと間違われた時の対処法は「その場から逃げること」と弁護士も言っているほどです。
いったん取調室にいくことになれば、警察官側は犯行を認めたとして判断し「痴漢」を行ったものとして取り調べが進んでいきます。
「痴漢」がによって死刑判決になる確率は恐らくかなり低いでしょう。しかし、仮に冤罪だったとしても本人の社会的損失、精神的苦痛をうける確率は非常に高いと考えられます。
私たちの身近にも「冤罪」は潜んでいるのです。「冤罪」をうけてしまう確率はゼロとは言えません。
なかには示談金目的で「痴漢」をでっちあげする人もいるそうです・・・
冤罪で死刑執行された有名な事件:まとめ
ここでは冤罪だったにもかかわらず死刑が執行されてしまった人々を紹介しました。冤罪事件のほとんどは、検察、弁護士などが十分な働きをしていなかったために起きてしまいました。 このような冤罪事件が起きてしまわないことを願うばかりです。