大阪二児置き去り死事件の概要・判決・死因

2010年に起こった、大阪二児置き去り死事件を覚えていますでしょうか。母親の育児放棄(ネグレクト)が原因で、幼児二人が50日間放置され餓死するという最悪の事態にまで至ってしまいました。大阪二児置き去り死事件の犯人や関係者の行動、事件の経緯を追ってみましょう。

大阪二児置き去り死事件の概要・判決・死因のイメージ

目次

  1. 1大阪二児置き去り死事件とは
  2. 2犯人の行動と関わりのある人物
  3. 3大阪二児置き去り死事件の判決
  4. 4大阪二児置き去り死事件に関する本
  5. 5未来の私たちに課せられた課題

大阪二児置き去り死事件とは

住民がいなくなった社宅|ぱくたそフリー写真素材

大阪二児置き去り死事件とは、2010年夏に大阪で起こった、母親が幼い我が子、3歳の長女、1歳の長男の二人を、食べ物も飲み物もないエアコンも止まったワンルームマンションの一室に50日間放置し、餓死させてしまった痛ましい事件です。大阪二児餓死事件とも呼ばれています。

母親が風俗店勤務だったことや、子供が自宅で亡くなっていることを知りながら遊びまわり、その様子をSNSに投稿したりと、大阪二児置き去り死事件発覚当時、史上最悪の残忍な母親としてマスコミで報道されていました。

「二人のことを殺そうとは思っていなかった」母親は裁判でそう証言しています。それなのになぜ放置し、餓死させてしまったのでしょうか。この大阪二児置き去り死事件をきっかけに、シングルマザーの過酷な現実も浮き彫りになりました。

母親を死体遺棄容疑で逮捕

2010年7月30日未明に子供たちの遺体は発見されましたが、すでに死後一ヶ月以上が経過しており、腐敗が進み、一部が白骨化しているようなひどい状態でした。糞尿とゴミだらけの一室で、裸で仰向けになり、二人寄り添うように亡くなっていたそうです。

姉弟を自宅リビングに放置し、50日間家を空けていた実の母親である、風俗嬢、下村早苗(23)が死体遺棄の容疑で同日逮捕されています。後に死体遺棄容疑は不起訴となり、殺人の罪で起訴されました。

犯人が務めていた風俗店の上司が部屋を確認しに行った際「部屋から異臭がする」と警察に通報したことによって、大阪二児置き去り死事件は発覚しました。リビングの入り口は外側から粘着テープで固定されたような形跡があり、子供たちは一室に監禁状態でした。

事件現場となったマンションについて

大阪二児置き去り死事件で遺体が発見れた、犯人が住んでいたマンションは、彼女の勤務先(風俗店)の社宅でした。2010年の1月頃から勤め始め、数ヶ月後には子供を置き去りにして外で遊びまわるようになっていました。

「ママー、ママー」という子供の大声と、尋常じゃない赤ちゃんの鳴き声が深夜のマンションの廊下に響き渡っていたと言われています。虐待を疑った近隣住人が子供虐待相談センターへ数度にわたり通報をしていましたが、子供たちを助けることはできず、大阪二児置き去り死事件に繋がってしまいました。

二児の死因

大阪二児餓死置き去り死事件、二児の死因は餓死です。事件発覚の数か月前から、お菓子やファーストフードを数日に一度しか与えていなかったとの犯人の証言からも、餓死に至るまでの二人の栄養状態は最悪だったと推測されています。

二児とも胃や腸には内容物は残っておらず、少なくとも数日間は何も食べていないような状態でした。裁判で精神科医が「おそらく、汗を舐めて、尿を飲み、便を食べて苦しんだ壮絶な最後だったのでは」と発言しています。

洗濯機の噂

大阪二児置き去り死事件関連でよく聞く噂の一つに「母親が洗濯機で子供の遺体を洗った」というものがありますが、これは事実ではありません。大阪二児置き去り死事件やその他虐待死事件を題材にした映画に洗濯機を使った衝撃的なシーンがあり、そのことが事実と混同され、噂が広まったのです。

実際のところ犯人は事件発覚の1ヶ月前に遺体を確認し、逮捕1日前に遺体が茶色く腐敗しているところも見ていますが、そのまま放置してすぐに部屋を立ち去っています。

犯人の行動と関わりのある人物

暗闇にたたずむ人の姿|ぱくたそフリー写真素材

犯人である下村早苗受刑者について

下村早苗は三重県出身、下村家の三姉妹の長女として1987年に生まれました。大阪二児置き去り死事件を起こしたのは23歳の時です。現在は刑務所に服役中です。

早苗は両極端な行動をずっと繰り返しています。小学生の頃は優等生でしたが、複雑な家庭環境も影響し、中学の頃に非行に走ります。その後、高校に通うために預けられた下宿先で更生し、就職、結婚、出産と穏やかな生活をしていましたが、二人目の子供を出産した後、突然、浮気に走り、それが原因で離婚に至ります。

離婚後は名古屋の寮付きのキャバクラで働きながら一生懸命子育てをしていましたが、突然何も告げずに辞め、大阪ミナミの風俗店に飛び込みで面接に行き務め始めます。このお店の寮が大阪二児置き去り死事件の現場となったマンションです。

早苗はシングルマザーとなってからわずか一年足らずで事件を起こしています。関連人物とのかかわりから早苗の行動を詳しく見ていきましょう。

犯人の母親

早苗の実母は高校教師である実父の元教え子です。卒業後すぐに結婚し、早苗を出産しました。その後2人の娘を儲けますが、夫からのDVが原因で、早苗が5歳の時に別居しています。双方とも浮気をしていたとも報じられています。

実母は早苗達たち三姉妹をつれて家を出ましたが、次第に子供たちを放置して何日も家を空けるようになります。飼っていた犬の糞尿が散乱した不衛生な環境に子供たちは取り残されていました。亡くなってはいませんが、大阪二児置き去り死事件の状況とよく似ています。

早苗は大阪二児置き去り死事件を起こしてしまいましたが、自身も似たような環境で育児放棄(ネグレクト)を受けていたのです。離婚後は三姉妹は父方に引き取られています。

早苗がシングルマザーになってすぐの頃、一時的に母親のところに身を寄せていますが、その頃の母親は精神的に不安定でリストカットを繰り返していました。早苗は一緒に暮らすことはできないと判断し、名古屋で寮託児所付きのキャバクラの仕事を始めています。

犯人の父親

父親はかつては三重県のラグビー強豪校の有名な熱血監督でした。現在も別の学校で教師は続けています。

早苗の実母と正式に離婚する際、子供たちを引き取り、数年後に子連れの女性と再婚しました。仕事が忙しかった父親は、再婚相手に育児をまかせっきりにしていたところ、早苗たち姉妹は継母に実の子ではないことから差別的な扱いを受けるようになりました。

そんな苦痛から逃げるかのように早苗は家出を繰り返し、非行に走りました。父親は手が付けられなくなった早苗を知人教師に預け、そこから高校に通わせました。それ以降は一緒に暮らしていません。

母親の育児放棄だけではなく、家庭を顧みず、娘と向き合わずに放任し続けた父親の精神的育児放棄も早苗の人格形勢に大きく影響を及ぼしているのではないかとの見方もされています。早苗が大阪二児置き去り死事件の容疑者として逮捕された際の身元引受人も拒否しています。

元夫

元夫とは早苗が高校卒業後に就職した飲食店で出会っています。早苗が長女を身籠ったのをきっかけに籍を入れ、ごく普通の幸せな家庭を築きました。しかし、長男が生まれた頃から早苗の行動に変化が現れます。良き母、良き妻だったはずの早苗が、突然家事育児を放置して外泊を繰り返すようになったのです。

同級生と浮気をし、夫の知らないところで多額の借金も作っていました。そんな生活では夫婦関係が続けられるわけもなく、結婚生活は2年で離婚に至ってしまいました。離婚後、二人の子供は早苗が引き取ることとなりました。元夫は早苗が不貞行為をした罰として、養育費は払っていませんでした。

ホストたち

名古屋から大阪に移ってすぐの頃、慣れない仕事と育児で精神的にも疲れ切っていた早苗は、風俗店に客としてきたホストと恋人関係になります。恋人の務めるホストクラブへも頻繁に通うようになり、現実を忘れさせてくれる癒しの場にどっぷりハマりました。

その後、ホストたち複数人と関係を持ち、ホストクラブへ毎夜繰り出しては豪遊するようになります。次第に子供はリビングの入り口に粘着テープを貼って閉じ込め、数日置きにお菓子を与えに帰るだけという生活にシフトしていきました。

大阪二児置き去り死事件の判決

大阪二児置き去り死事件の判決は懲役30年、虐待死事件の中でも異例の重さです。

大阪置き去り死事件の裁判では殺意の有無についてが一番の論点となりました。犯人は殺意については否定していましたが、精神鑑定の結果は刑事責任能力に問題はないと出ており、放置すればいずれ死亡することは理解できていたとされています。死んでしまっても仕方がないという意志が殺意と認定され、殺人罪で実刑判決となりました。

犯人の生い立ちや生活環境等、ネグレクトに至った経緯には同情すべき点もあったようですが、子供二人を餓死によって殺害してしまった事実があまりにも惨く残忍であると結論付けられました。

大阪二児置き去り死事件に関する本

乱雑に置かれた図書館の本棚|ぱくたそフリー写真素材

大阪二児置き去り死事件に関する本をご紹介します。

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件

大阪二児置き去り死事件が起こった当時、マスコミで取り上げられた、風俗嬢で育児よりも男漁りを優先させるようなとんでもない母親だという内容とは違った視点で書かれたルポルタージュです。幼児虐待やネグレクト等、社会に取り残された母親の貧困問題から大阪二児置き去り死事件に切り込んでいる作品です。

未来の私たちに課せられた課題

大阪二児置き去り死事件以降、ネグレクトに注目が集まり、児童相談所、行政の在り方等、実際に見直し改善された事柄もありますが、まだまだ虐待はあとを絶ちません。

犯人のように金銭的にも精神的にも追い詰められ、子育てが困難な過酷な状況に身を置く母親は沢山います。そんな社会から孤立した母親たちが、助けを求めやすい、暮らしやすい社会を作り、大阪二児置き去り死事件の姉弟のような虐待児、虐待死を失くしていくことが今後の私たちに課せられた課題なのです。

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