『上』の書き順は昔と今で違うの?漢字の書き順の謎を解説!
「上」という漢字の書き順が今と昔で変わったと感じたことはありませんか?実は「上」を始めとするいくつかの漢字の書き順は1958年頃から変化しているのです。子どもの勉強を見るお母さんは混乱することもあるかもしれません。そこでそんな漢字の謎を詳しく解説いたします。
目次
『上』の書き順は昔と今で変わったの?
「上」という漢字は小学校1年生で習う基本的な漢字です。ところがこの「上」という漢字の書き順に違和感を覚える人がいるようです。昔と書き順が違うというのです。実はこの「上」という漢字だけでなく、年代によって書き順が変わった漢字はたくさんあります。漢字の書き順は文字を書くときの基礎のようなものです。それなのになぜ変わったのでしょうか。書き順が昔と今で変わった理由を調べてみましょう。
昔は漢字の書き順がなかった?「筆順指導の手びき」とは?
漢字の書き順には決まりがあるのが当たり前のように感じますが、実は昔はきっちりとした決まりはありませんでした。日本では文字の書体がいくつかあり、楷書・行書・草書などの書体ごとに書き順も変わったからです。そんな状態だった書き順を学習しやすくするために揃えることにしたのが1958年(昭和33年)に文部省が作成した「筆順指導の手びき」でした。つまり学校で教えやすくするために統一したのです。
『上』と『土』を使って書き順の決まりを知ろう!
「上」という漢字と「土」という漢字は見た目はとても似ています。そのため上と土の書き順も同じではないかと勘違いしやすいのですが、上と土の書き順は違います。その書き順の違いにははっきりとした決まりがあります。単純でわかりやすい上と土を使って書き順の決まりを覚えましょう。
『上』の書き順の決まり
「上」の書き順は縦棒からです。「|」の次に上の横棒「-」が入ります。最後が下の横棒です。書き順の決まりとしては上から下へ、左から右に書いていくのが基本的な流れとなります。もっとわかりやすく説明すると、土の上部分のように文字が重なって「+」になっていない場合は1番上で1番左になる縦棒から書くと覚えておくといいでしょう。
『土』の書き順の決まり
「上」の漢字にとてもよく似ている「土」ですが、上と土では書き順が全く違います。土の場合はまず上部の横線「ー」から書いて、次に縦線「|」を書きます。つまり土のように「+」になっている場合は横線から始まると覚えておくといいでしょう。上と土を基本として覚えておくことで、この形を持つ漢字の書き順がはっきりと理解できます。土のように線がクロスしていれば横線から、上のように線がクロスしてなければ縦線からと覚えておきましょう。
『上』の書き方のポイント!漢字を美しく書こう!
上という漢字は文章のなかによく使われます。四字熟語にもよく出て来る馴染み深い文字です。基本的な文字だからこそ乱れていると目立ってしまいます。上という文字を書き順通りに書くのは美しく書くための基礎ではありますが、それだけだと完璧ではありません。そこで「上」の書き方のポイントを覚えて美しく書いてみましょう。
美しい「上」を書くには、まず最初の縦線をできるだけまっすぐ引きます。次に横線は縦線の中心よりやや上の位置に少し右上向きに入れます。最後の下の横線は心持ち上側に弓なりに縦線よりも長く書きます。これで美しい「上」のできあがりです。
例外?草書では『上』の正しい書き順はない?
草書は早く美しく書くことを主眼においた書体で、読み取るのが難しい変わった書体でもあります。一般の人が草書体で書かれた文字を目にする機会は、書家の個展や美術展などでしょう。ほかには有名人のサインには草書体を応用したものが多くあります。最近では草書は芸術性を追求した美しい文字という認識となっていて、個性を大切にしているので書き順もはっきりと決まってはいません。とは言え基本のパターンはあるので「上」を草書で書く場合の基本パターンを覚えて草書に馴染んでみてください。
一画目を縦棒から書くパターン
草書の「上」は大きく分けて縦棒から書く方法と上部の横棒から書く方法があります。まずは一画目を縦棒から書く場合のパターンです。縦棒を短く省略して「レ」のように書き、その後横棒を「ノ」のように入れます。このときの形は「ソ」に近い状態です。最後に1番下に「一」を入れるのですが、このとき右端を下内側に跳ねます。草書は勢いが大切なので最後を止めずに跳ねさせるのです。それが強めの跳ねになって縦棒から書く草書体の「上」には完成形がひらがなの「そ」のような形になるものもあります。
一画目を短い横棒から書くパターン
草書で「上」を書く書き順には上部の短い横棒から書くパターンもあります。その場合、まず「ノ」のように上部の横棒を入れて、「レ」のように縦棒と下の横棒を続けて書きます。全部を続けて書く書き方もあります。流れとしては右からやや下向きの左に進め、下にまっすぐ落とし、左から右へ跳ねるという感じです。
『上』の漢字を使った例文5選
- 最上階から見る風景は素晴らしい。
- ビーチで砂の上に寝転がるのは気持ちいい。
- 上司は尊敬に値する人だよ。
- 川の上流にはきれいなせせらぎがあるんだ。
- 経済は上向きと言われているが予断を許さない状況だ。
「上」の漢字を使った例文を5つ挙げさせていただきました。1つ目は位置を示す上の例文です。2つ目はものの表面を示す上の例文となっています。3つ目は地位を示す上の例文です。4つ目は連なったものの最初を示す上を使った例文となります。5つ目はグラフや図を想定した場合の上です。上という漢字は日常でも仕事でもよく使う文字なので例文のように上手に使い分けてください。
『上』の漢字を使った四字熟語5選
- 一筆啓上(男性が手紙の書き出しに使う言葉、筆を取って申し上げるという意味)
- 汚名返上(優れた働きによって過去の過ちを帳消しにすること)
- 上意下達(立場が上の者の考えを下の立場の者にしっかりと伝えること)
- 俎上之肉(まな板の上の肉、身動きが取れず相手の意のままにされる状態のこと)
- 盗人上戸(酒も甘い物もいける人、いくら酒を飲んでも様子の変わらない人)
「上」という漢字を使った四字熟語を紹介させていただきました。普段あまり使わない四字熟語が多いのではないでしょうか。四字熟語は上手に使うと「この人は物知りだな」と思ってもらえる言葉です。ただし間違った使い方をすると相手に意味が伝わらない場合もあります。普段使うのは難しい四字熟語ですが、ここぞというときに使えるように、たくさんの四字熟語を覚えておくと相手に感心される機会も増えるでしょう。ぜひこの機会に上を使った四字熟語を覚えてみてください。
【番外編①】昔と今で違う書き順の漢字を6つ紹介
上以外にも昔と今では書き順の変わった漢字はいくつかあります。そのなかでもよく使われる漢字で馴染みのあるものを紹介します。昔と今ではどう変わったのか、詳しく解説させていただきます。
昔と今で違う『必』の書き順
実はこの「必」の書き順は3つもあります。今の基本とされている書き順は動画で紹介されている1番上の点を書いてから右の「ノ」を書き左の「し」を書くというものです。また昔に多くの人が習った書き順は、基本である左から右へと書いて行く形で1番左の点を書いて左の「し」を書き、真ん中の点と右の点を書いてから右の「ノ」を最後に書くというものでした。もう1つは右の「ノ」を最初に書いて次に左の「し」を書くという書き順があります。どれも間違いではありません。
昔と今で違う『取』の書き順
「取」の漢字も昔と今では違っています。今学校で習う書き順は動画のように横棒を書いて左の縦棒を書き、縦棒に短い横棒を加えていくものです。しかし昔の書き順では耳の上部の横棒を書いて2本の縦棒を左と右に書き、間に横棒を入れていく順番でした。もちろんどちらも間違いではありません。
昔と今で違う『発』の書き順
「発」の漢字の書き順も昔と今では変わっています。今は「発」の冠部分の左側を書いたら右の最初の点を入れる書き方です。しかし昔は右の冠部分を書いて上の「入」の右部分を書いてから点を打っていく形でした。
昔と今で違う『書』の書き順
「書」の場合は上部の縦線の書き順が昔と今では違います。今は下の「日」部分を書く前に上部の最後の部分として縦線を書きます。しかし昔は「ヨ」という部分を書いた後に縦線を入れて次に下2本の横線を入れました。
昔と今で違う『馬』の書き順
「馬」の漢字も昔と今では違っています。現在の「馬」は1番左の縦線を書いてから上部の横線を書いて真ん中の縦線という流れです。昔の「馬」の書き順は1番上部の横線を最初に書いて左の縦線を書き、2つの横線を入れて真ん中の縦線という流れでした。
昔と今で違う『博』の書き順
「博」の漢字の場合は右上の点が昔と今では書き順が変わっています。今の書き順の場合、右上の点は右下の「寸」を書く直前に入れます。昔の「博」の書き順では右上の点は1番最後に入れるものでした。
【番外編②】『右』と『左』の書き順の決まりとは?
「右」と「左」は「上」と「土」のように似ているのに書き順が違うという代表的な漢字です。せっかくなので「右」と「左」の書き順の決まりも覚えてしまいましょう。今やデジタルの時代になって「右」と「左」という文字の違いが明確にわからなくなってしまっています。筆で右と左の文字を使う例文を書いてみてその違いを確認しながら書き順の決まりを覚えてみてください。
『右』の書き順の決まり
「右」の書き順の決まりでは一画目は左側の「ノ」からになります。実は右という漢字は上部の横棒が長くて左のはらいと呼ばれる部分である「ノ」の部分が短い漢字です。この場合はらい部分である「ノ」から先に書くという決まりがあります。
『左』の書き順の決まり
「左」は「右」とは逆ではらいである「ノ」の部分のほうが上部の横棒よりも長い漢字です。そのため、上部の横棒部分から先に書きます。つまりはらいと横線が交わる漢字の場合、2つの線のうち短いほうから書くというのが決まりなのです。デジタルの文字ではどっちもあまり変わらないように見えますがそれでも少し「左」のほうがはらい部分が長く描かれています。
漢字の書き順は変わったのではなく、昔は書き順がなかった!
漢字の書き順がはっきりと決まったのは学校で教えるために文部省が「筆順指導の手びき」という手引書を作成した1958年からになります。しかしほかの書き順も間違っているという訳ではなく、書体によっては違う書き方のほうが美しく書ける場合もあります。本来は決まった書き順というものはなかったのです。美しい文字を書くためには、学校の書き順を基本にしながらもそれにこだわらず文字を美しく書ける書き順を覚えるのが1番のようです。