『敬白』の意味や使い方とは?『謹啓』の結びは『敬白』が正解?
手紙の冒頭と結びに使われる「謹啓」と「敬白」。正しい使い方をご存知ですか?ここでは「謹啓」と「敬白」の意味を説明し、手紙やビジネス文書、メールでの使い方について解説していきます。具体的な例文もご紹介しましょう。ぜひ参考にしてみてください!
目次
『敬白』の使い方と他の結語の使い分けを紹介!
「謹啓」「敬白」という言葉を聞いたことはありますか?きちんとした手紙を書くときに使う言葉です。ビジネスなどで手紙を書くとき、言葉の使い方を間違えると常識を疑われることもあるでしょう。仕事にも影響があるかもしれません。
ここでは「謹啓」「敬白」の意味や正しい使い方について解説していきます。手紙での使い方や例文だけでなく、ビジネス文書で使うときの例文もご紹介しましょう。「謹啓」「敬白」のほかにも、手紙ならではの「頭語(とうご)」と「結語(けつご)」はあるため、それぞれの違いや使い方も説明します。
まずは「頭語」と「結語」について
謹啓や敬白は手紙で「頭語」と「結語」にあたります。手紙には組み立てがあり、一般的には前文・主文・本文・末文・後付の順で書いていきます。「頭語」とは前文の一番最初に書く挨拶のような言葉です。また、「結語」とは末文の一番最後に記す結びの挨拶になります。尚、後付には日付けや署名、宛名などを書きます。
手紙の頭語や結語にはいろいろな種類があり、対になる正しい組み合わせもあります。「謹啓」は頭後として手紙の一番最初、つまり前文の冒頭に書き、「敬白」は結語として末文を終える結びの言葉です。
『敬白』の意味と使い方
結びの言葉である「敬白」の意味と正しい使い方について解説していきます。「敬白」は「けいはく」と読み、ビジネスなど、かしこまった手紙で使う結語になります。古くは「けいびゃく」とも読まれていました。意味を理解し、正しい使い方をしましょう。
「敬白」の意味
「敬白」には「謹んで申し上げる」という意味があります。もともと「白」には二心がないという意味があり、そういう真っ白な気持ちで申すことです。古文書では、武将が神社仏閣に戦勝を祈願するときなどにも使われていた結びの言葉になります。
「敬白」の正しい使い方
意味を理解していただいたところで、「敬白」の正しい使い方も説明しましょう。先ほどお話ししたように、手紙では本文のあとに末文が続きます。結語である「敬白」は末文の最後の結びの言葉です。手紙を縦書きで書く場合、「敬白」は末文の終わりの次の行の下揃えの位置に書きます。尚、目上の人に出す手紙は、縦書きで書くのが礼儀にかなった正しい書き方とされています。ビジネスの手紙なら横書きでも構いません。
手紙は「敬白」のような結語のあとに、日付け・署名・宛名といった後付が書かれます。「敬白」を結びの言葉と考え、後付のあとに書かないように注意しましょう。
『謹啓』に『敬白』で結ぶのは正解?
「謹啓」を頭語に使う場合、対になる結語は「敬白」とは限りません。ほかにも「謹言」や「謹白」があり、そちらのほうが正しい使い方であるという説もあります。ただ、最近は「謹啓」に対して「敬白」という結び方も広く使われています。完全に正しいとも間違いとも言えないところがあるため、心配な人は「謹言」や「謹白」を結びの言葉に選ぶほうが良いでしょう。
『謹啓』の意味と「謹白」「謹呈」との使い分け
頭語である「謹啓」には似た言葉で「謹白」「謹呈」という言葉もあります。「謹白」は先ほどお話ししたように結語となりますが、この「謹啓」「謹白」「謹呈」は文字が似ているため、使い方を間違いやすい言葉でもあります。それぞれの違いを説明する前に、まずは「謹啓」の意味について解説しましょう。
「謹啓」の意味
「謹啓」には「謹んで申し上げます」という意味があります。同じ頭語である「拝啓」も同様の意味がありますが、「拝啓」より丁寧な印象になります。ビジネス文書では「拝啓」でも構いませんが、初めて送る相手、特に目上の人に対しては「謹啓」を使うほうが良いでしょう。
「謹啓」「謹白」「謹呈」の違い
よく似た3つの言葉、「謹啓」「謹白」「謹呈」には違いがあります。間違いがないように使いましょう。まず、「謹啓」と「謹呈」は頭語です。一方、「謹白」は結語です。「謹呈」には「謹啓」と同じ意味があり、対になる結語が「謹白」になります。いずれも目上の人に手紙を送るときにふさわしい頭語と結語のセットです。きちんと縦書きで書くことで、礼儀正しさも伝わるでしょう。
手紙で使える!『謹啓』『敬白』を使った例文
では、早速「謹啓」と「敬白」をセットで使った例文をご紹介しましょう。頭語に「謹啓」を使った後は、すぐに時候の挨拶を続けます。一般的には「謹啓」で改行はせず、1文字分を空けます。
尚、手紙にはいろいろな種類がありますが、ここでは書かれることも多い招待状、御詫び状、お礼状を例文として挙げてみます。いずれもあらたまった内容の手紙になるため、やはり縦書きをおすすめします。横書きは縦書きに比べてカジュアルな形式となり、友人や親しい間柄の人に送る手紙に留めるようにしましょう。縦書きにするだけで丁寧な印象を与え、本文の内容が引き立つというメリットもあります。
「謹啓」「敬白」を使った招待状の例文
手紙には「記書き」という書式があります。本文の後、行の中央に「記」と書いてある文書を目にしたことはありませんか?それが記書きです。招待状では記書きの書式を使うのがふさわしいでしょう。記書きは見てほしい部分を明確に相手に伝えるため、一般的には箇条書きで記載されます。記書きを入れる位置は結語の後になり、記書きの最後は「以上」で結びます。
招待状の記書きには招待するイベントの日時・場所(住所)・返信までの期日などを記載します。以下は結語までの例文になるため、そのあとに必要に応じて記書きを入れてください。
謹啓 皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃は大変お世話になり心より御礼申し上げます。この度、私たちは結婚式を挙げ、新生活をスタートすることになりました。つきましては、皆様に感謝の気持ちを込めて、ささやかな小宴を催したいと存じます。お忙しいところ誠に恐縮ではございますが、何卒ご出席賜りますようお願い申し上げます。 敬白 |
「謹啓」「敬白」を使った御詫び状の例文
御詫び状は特に失礼のない内容で書く必要があります。丁寧な印象を与える「謹啓」「敬白」は御詫び状にふさわしい頭語と結語と言えるでしょう。また、あらたまった手紙では便せんは白無地の縦書きがマナーとされています。
謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。つきましては、先日ご招待いただいたパーティーを欠席いたしましたこと、改めてお詫びを申し上げたく、お手紙を差し上げました。仕事上の急用とは言え、〇〇様が心を込めてご準備をされていらっしゃったお姿を存じておりますだけに、余計に心が痛みます。素敵なパーティーへのお誘いをいただきながら、本当に申し訳ございませんでした。これに懲りず、もしまたご招待の機会をいただけるようでしたら、ご案内いただけますとありがたく存じます。今後とも変わらぬお付き合いのほど何卒よろしくお願い申し上げます。 敬白 |
「謹啓」「敬白」を使ったお礼状の例文
「謹啓」と「敬白」のように礼儀正しい頭語と結語を使えば、目上の人へも立派なお礼状として好印象を与えることができます。
謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。さて、先日は力強い励ましのお言葉と結構なお品を賜りまして、誠にありがとうございました。お陰様で当方も退院することとなり、現在は自宅で療養に専念しております。厳しい暑さに向かいます折、〇〇様もどうぞくれぐれも御身お大切にお過ごしくださいませ。仕事に復帰いたしましたら、また改めてご挨拶に伺わせていただきます。本日は略儀ながら暑中のご挨拶かたがた御礼申し上げます。 敬白 |
ビジネスで使える!『謹啓』『敬白』を使った例文
あらたまった頭語と結語のセットである、「謹啓」と「敬白」はビジネス文書でも使えます。ここではビジネス文書の例文として、見積もりの依頼、退職の挨拶、移転のお知らせをご紹介しましょう。
「謹啓」「敬白」を使った見積もり依頼の例文
ビジネス文書でも先述の「記書き」の書式はよく目にします。見積もりを依頼するビジネス文書の場合も「敬白」のあとに改行を入れ、中央に「記」と書き、必要な内容を箇条書きで入れましょう。以下は「敬白」までの例文となるため、記書きには商品名や数量、納期など必要に応じて記載してください。
謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。先日お打ち合わせさせていただきました御社商品につきまして、弊社内で前向きに検討させていただきたいと考えております。つきましては、下記の条件にてお見積もり書をお送りいただきたくお願い申し上げます。 敬白 |
「謹啓」「敬白」を使った退職挨拶の例文
退職の挨拶ともなれば、お世話になった取引先の人にきちんとした文書を送りたいものです。以下が「謹啓」と「敬白」を使った例文となりますので参考にしてみてください。
謹啓 貴社におかれましてはいよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。さて、私事で恐縮でございますが、〇月〇〇日をもちまして、株式会社〇〇を退職いたしました。入社以来、ひとかたならぬご懇情を賜り有難く厚く御礼申し上げます。〇〇様のお人柄や生き方に触れる機会をいただけましたことは、私の財産となりました。現在はかねてからの夢であった米国留学に向けて準備を進めております。今後とも何卒変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。まずは略儀ながら書中をもってお礼かたがたご挨拶申し上げます。 敬白 |
「謹啓」「敬白」を使った移転のお知らせ例文
会社の移転のお知らせにも「謹啓」と「敬白」は使えます。冒頭には「本社移転のお知らせ」といった件名を入れると良いでしょう。移転先については記書きとして、「敬白」のあとに住所・連絡先・業務開始日などを記載します。以下は「敬白」までの例文です。
謹啓 盛夏の候、ますますご清栄のことと心からお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。このたび、弊社では業務拡大に伴い、本社を下記に移転する運びとなりました。これを機会に、社員一同さらに業務に精励いたす所存でございます。今後とも一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。まずは書中をもちましてお知らせかたがたご挨拶申し上げます。 敬白 |
『謹啓』『敬白』はメールでも使える?
毎日送ることも多いメールですが、ビジネス上のメールでも頭語と結語を記すことはありますか?まずほとんどの人はメールに記載することはないでしょう。仕事のメールでは相手にわかりやすく用件を伝える必要があるからです。
とはいえ、メールでもいきなり用件から切り出すことはなく、「お世話になっております」などの簡単な挨拶文を入れてワンクッション置くはずです。また、末尾は「よろしくお願いいたします」といった結びの言葉で終える人が多いでしょう。
しかし、スピードと効率を重視するメールとは言っても、取引先へのお礼やお詫びなどのメールについては、「謹啓」や「敬白」を使うことで丁寧な印象を与えることができます。会社の慣例などもありますし、過去のメールのやりとりを参考にして、「謹啓」「敬白」を入れるべきかどうかを判断すると良いでしょう。
メールの「謹啓」「敬白」の正しい位置
一般的にメールで「謹啓」と「敬白」は使ってはいけないというルールはありません。メールで使用する場合も手紙に記すときと使い方は同じです。ただ、あらたまった手紙の場合は縦書きですがメールは横書きです。「敬白」が左揃えとならないよう、文面の最後の位置に右揃えで入れるように注意しましょう。「謹啓」は頭語として冒頭に使います。また、横書きの場合は縦書きと違い、相手の名前から書き始めましょう。
「謹啓~敬白」「拝啓~敬具」の違いと使い分け
「謹啓」は「敬白」とセットで使うというお話をしてきました。同じ頭語・結語のセットとして、一般的によく使われている「拝啓」と「敬具」もあります。「謹啓~敬白」と「拝啓~敬具」の違いと使い分け方を説明しましょう。
「謹啓」「拝啓」の違い
「謹啓」と「拝啓」を比べたとき、「謹啓」のほうがより丁寧でかしこまった頭語になるという違いがあります。「拝啓」にも「謹んで申し上げる」という意味があり、「謹啓」と同じです。「拝啓」もビジネス文書を含め、様々な用途に使用して問題ありません。ただ、目上の人や初めて送る相手などには、「謹啓」のほうがあらたまった言い回しになるため好ましいでしょう。
「拝啓」の正しい使い方
頭語に「拝啓」を使用するなら、結びの言葉は「敬具」が一般的です。または「敬白」を結語に使うこともできます。「謹啓」の頭語に対して、結語が「敬白」や「謹白」と複数あるように、「拝啓」にも「敬具」「敬白」といくつかの結びの選択肢があるのです。
「謹啓~敬白」「前略~草々」の違い使い分け
「前略」という頭語に対して「草々」を結語に使う書面を見たことはありませんか?この「前略~草々」は「謹啓~敬白」のセットとどう違うのでしょうか?使い分け方を説明します。
「謹啓」「前略」の違い
「前略」は読んで字のごとく「前を略します」という意味です。つまり、時候の挨拶などの前文を略しますということで、「前文を略すことをお許しください」といった意味になります。一方、「謹啓」には「謹んで申し上げます」という意味が込められており、そのあとに時候の挨拶や相手の安否をたずねるなどの文章が続きます。「謹啓」のほうがより丁寧な頭語になるのです。
「前略」の正しい使い方
様々な頭語がある中で、「前略」を使うのはどういうときなのでしょうか?前文の挨拶などを省くということは、急ぎの用件や、用件のみを伝えたいときです。「前略」を頭語に使えば、すぐに本文に入って構いません。そのため、頭語に「前略」を使う場合、「ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」といった挨拶文は記載しないようにしましょう。
セットとなる結語の「草々」にも「忙しく慌ただしい」という意味があり、簡略に物事を伝えていることをお詫びしていることになります。以上のことからもわかるように、「前略~草々」は「謹啓~敬白」よりも内容を簡略化したい手紙に使われます。
友人に送る肩の凝らない手紙にしたいときには、この「前略~草々」が良いでしょう。形式も縦書きではなく横書きなら、より親しみやすさが感じられます。「前略~草々」はほかにも災害見舞いや、用件を早く伝える必要があるビジネスシーンなら失礼にはあたりません。
ただ、「前略~草々」は同じビジネスシーンでも相手に敬意を表したいときにはNGです。一般的な手紙にはやはり「謹啓~敬白」という頭語・結語を使用し、挨拶文も記載するようにしましょう。また、お礼状や御詫び状など、より丁寧さが求められるような内容の手紙にも「前略~草々」は好ましくありません。
頭語と結語は正しく使い分けしよう!
「謹啓」と「敬白」など、様々な頭語と結語についてお話ししてきました。正しい頭語・結語を使えば、礼を尽くそうとする気持ちも伝わります。「難しそう」という印象もある頭語・結語ですが、手紙は書くことに慣れれば苦にならいものです。LINEなどでのやりとりに終始するだけでなく、筆まめな人というのはそれだけで素敵です。季節が感じられる縦書きの便せんに、丁寧な文字で書かれた手紙には、その人の背筋がすっと伸びた姿勢が感じられるだけでなく、真心まで伝わるでしょう。相手のことを思い浮かながら、美しい便せんに向かって、一筆したためてみませんか?