児童虐待の実態と原因とは?未然に防ぐ対策はないの?
児童虐待という言葉は耳にするものの、その実態や原因そして対策まで深く知る機会は少ないのではないでしょうか。今回は、児童虐待についての実態や原因を統計とともに考え、対策法をまとめました。電話相談口もご紹介しているのでご参考にしてください。
目次
児童虐待は年々増えている!?
悲しいことに、児童虐待という言葉は多くの方に周知されるようになってしまったのではないでしょうか。ただし、児童虐待の受け止め方に関しては、世代や男女、子供に接する機会の多さなどでも異なっているように感じます。日々ニュースなどでも取り上げられ、相談件数が年々増加している児童虐待についての実態や原因を探っていきます。
児童虐待の定義と分類とは?
児童虐待に関する実態や分類、対策や相談先などは、厚生労働省のホームページで詳しく紹介されています。児童虐待の定義は、保護者が子供に対して不適切な関わりを持つこと表します。児童虐待に関する法令や指針は、厚生労働省のホームページで詳しく知ることができます。では、4つに分類された虐待について1つずつ詳しくご紹介します。
身体的虐待
1つ目に分類される身体的虐待は、1番目につきやすいかもしれません。殴る、蹴るといった暴力行為を伴うので、大怪我や意識不明などで救急搬送され医師の診察により虐待が表面化するケースもあります。また、学校の身体測定や健診、体育の授業などで肌が見えた際に、友人や先生が虐待に気づくこともあります。
虐待する側が計画的に虐待をしている場合、目立たないところへ暴行を加えたり、学校の身体測定前は身体的虐待を与えないようにしたりと、周囲に知られないように計算しておこなっていることもあります。
性的虐待
2つ目の分類である性的虐待は、その内容からも社会的に当事者が声を上げにくい場合が多いようです。最近では、子供をポルノグラフィの被写体にし、SNSで拡散や販売をおこなうケースも見受けられます。性的虐待は、女児だけが被害者になるわけではなく男児も同じように被害者となってしまいます。
児童に対し「他の人には言っていけないこと」や「みんなやってること」など、虐待する側が口止めしてることもあり、児童自身が虐待されていると認識しにくいこともあります。
ネグレクト
ネグレクトは、育児放棄とも表現され3つ目に分類されます。適切な食事をさせなかったり、お風呂に入れなかったりなど、人としての生活が成り立っていない状態です。また、体調不良でも病院へ行かせなかったり、虫歯治療をさせないということもネグレクトと判断されます。
理由を付けて、児童を家から出さないようにしてしまうケースもあり、年数が経過してからネグレクトが社会的に表面化することもあります。
心理的虐待
最後の分類である心理的虐待は、子供を叱る立場にいる方ならば日々境界線に立っている心境になる方も多いのではないでしょうか。心理的虐待は、脅しの言葉だけではなく、無視や兄弟間差別なども含まれます。子供を冷静に叱っていたつもりが、エスカレートしてしまって心理的虐待をしているケースもあるようです。
しつけと虐待の境界線が曖昧になりがちで、自覚がないままに虐待する側になっていることもあるので注意が必要です。
児童虐待には「善意の虐待」もある!
児童虐待は先ほどご紹介した、身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の4つに分類されていますが、最近では「善意の虐待」が5つ目の分類として注目されています。善意の虐待の実態とは、その名の通り子供にとって良いことだと思いおこなうものの、結果的にその行為が子供にとって辛いことになっているケースです。子供の為と思って習い事漬けにしてしまったり、過度な甘やかしをすることなどがあげられます。
子供側としても、親などが悪意を持ってしていないことがわかるために、その辛さをなかなか表にだせません。お互いが思いやってしまうので、改善や対策が立てにくくなってしまいます。
新しい虐待といわれる代理ミュンヒハウゼン症候群とは?
児童虐待の話題で注目されている代理ミュンヒハウゼン症候群(MSBP)について、子ども虐待対応の手引きには次のように記されています。
MSBPとは「両親または養育者によって,子どもに病的な状態が持続的に作られ,医師がその子どもにはさまざまな検査や治療が必要であると誤診するような,巧妙な虚偽や症状の捏造によって作られる子ども虐待の特異な形」である。
代理ミュンヒハウゼン症候群(MSBP)は、数年前からメディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。まだ解明されていないことも多い症状のようですが、本来は健康である子供に対し病気を作り上げる虐待の形と言われています。
児童虐待の実態を知ろう!
児童虐待の実態を、多方面から知っていきましょう。これからご紹介する内容は、あくまでもデータとしてのまとめなので、同じ状況の方が必ずしも児童虐待の被害者加害者になるというものではありません。
虐待者の割合は実母が6割
児童虐待と聞くと、血のつながらない親が加害者になるケースを想像してしまいがちです。しかし厚生労働省の政府統計である、平成29年度の福祉行政報告例の概況によると、主な虐待者割合は実母が1番多く46.9%、実父が40.7%と実の両親による児童虐待が多いようです。また過去の統計で実母が64.8%を占めたという結果もあります。これらの数字を考えると、児童虐待は身近なものとして今一度考えるべき問題に感じます。
児童虐待はひとり親家庭で起こりがち
各省庁や関連団体が調査している統計によると、児童虐待はひとり親(実父または実母のみ)家庭で起こりがちなようです。もちろん両親が揃っている家庭でも同じぐらいの割合で児童虐待の報告は多いので、一概にひとり親家庭にだけ目を配れば良いというものではありません。
虐待の被害は子供の特性や環境で変わる
子供が身体的心理的に障がいを抱えているか、兄弟や祖父母が同居しているかなど、子供自身の特性や生活環境、経済環境も児童虐待被害に大きな影響をもたらします。
虐待されている子供の年齢は断定できない
児童虐待は、0歳から18歳のどの年齢においても被害が確認されています。平成29年度の被虐待者年齢別対応件数は、7~12歳が33.3%と多く、次いで3~6歳が25.5%となっています。
児童虐待の原因は7つ!
児童虐待を招いてしまう主な原因として考えられる7つをご紹介します。親側、子供側、経済面などから原因を考えていきましょう。
1. 親が子供のころに虐待を受けていた
虐待の連鎖という言葉をご存知な方も多いのではないでしょうか。1つ目の児童虐待の原因は、親自身が虐待を受けて育ったことです。暴力や暴言を日常的に受けて育つと、それが「普通」のことになってしまい、自分の子供にもその「普通」をしてしまいます。親自身、しつけと虐待の境目がわからないのが原因です。児童虐待をしているという感覚よりも、それ以外の育て方がわからないというケースも見られます。
2. 親が低学歴である
「低学歴=児童虐待する」「高学歴=児童虐待しない」ではありません。育児に対して十分な知識を得る機会がなく、暴力で子供を押さえつけてしまったり、自身の低学歴がコンプレックスになり、子供へ過剰なしつけをしてしまうケースが見受けられます。
3. 子供自身に問題がある
子供自身が感情的になりやすい場合なども児童虐待を招く原因となります。子供を落ち着かせようとしているうちに、親の方が感情的になりすぎてしまうのです。また、子供が病気や障がいを抱えている場合も、子供に対しての心配や不安から児童虐待につながってしまうこともあります。子供とのより良い親子関係を求めているものの、うまく関係性が築けなくなってしまうケースです。
4. 良い親に見られるために子供を操る
子供は親自身でも分身でもないのですが、「子供への評価=親への評価」と勘違いしがちです。親自身が良い親に見られたいがために、子供を暴力や脅しで言いなりにさせることも児童虐待の原因の一つです。
5. しつけが過激な暴力になってしまった
しつけと児童虐待の線引きがとても曖昧になってしまい、少し注意するつもりが取り返しのつかない虐待を与えてしまうケースも多いのです。しつけと称した暴力が、児童虐待の原因になってしまいます。
6. 経済的に困窮している
経済的に困窮していると児童虐待を招く恐れがあります。定期的な食事が摂れない、水道や電気などライフラインが止められ生活がままならない、必要な学校用品が揃えられないなどが原因で、結果的に虐待につながってしまいます。経済的な支援について相談することで改善される場合もあります。
7. 夫婦関係の悪化
うまくいっていない夫婦関係も、児童虐待の原因になってしまいます。子供の前で激しい夫婦喧嘩(DV含む)を繰り返したりと、安定していない夫婦関係が原因で子供に悪影響をもたらします。
児童虐待を未然に防ぐ対策法は?
悲しく辛い思いをする子供を減らすためにも、児童虐待は未然に防ぎたいですね。ご紹介した原因を踏まえた上で、児童虐待を防ぐための対策法を4つご紹介します。
積極的に父親が育児に参加する
統計でもご紹介しましたが、虐待する可能性が高いのは実母です。現在の日本では父親よりも母親が子供と接している時間が長いのも要因の1つでしょう。出産直後から24時間子供に向かい合う生活は、時として母親の心をむしばんでしまいます。母親がリラックスできる時間を少しでも持てるように、父親が積極的に子供と関わろうとする姿勢は、対策法として効果的です。また、必要に応じて祖父母や行政からのサポートも視野にいれてみましょう。
母親個人の時間を作ってあげる
母親は「○○ちゃんママ」と呼ばれることが増え、個人としての存在を失ったかのような気分になることがあります。母親も子供もあくまでも「個」として成り立っています。母親が個人として楽しめる瞬間や、1人で気を抜ける時間を増やしてあげることが児童虐待の対策としておすすめです。
子育て中の母親を孤立させない
核家族化が進んだこともあり、子育て中の母親は孤立しがちです。子供が小さいうちは、一歩も外に出ず誰とも話さない日も珍しくありません。近所の児童館や育児サークルなどを活用して、外に目を向けることも児童虐待対策法の1つです。
専門家のアドバイスを受ける
児童虐待に関する悩みは、1人で抱え込むには辛すぎます。心が悲鳴をあげる前に、専門家のアドバイスを受けてみましょう。児童相談所だけではなく、かかりつけの小児科の先生や保健師さん、子供が通う学校のスクールカウンセラーの方など、身近な人に聞いてもらい専門家を紹介してもらったり原因を探すことも対策の1つです。
児童虐待かも?と思ったときは?
児童虐待に関しての相談は、厚生労働省のホームページでご紹介しています。
虐待かもと思ったら、お住まいの市町村、児童相談所までご相談ください。
児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」へかけると、お住まいの地域の児童相談所につながります。
全国共通ダイヤル「189」(通話料はかかります)への相談は秘密厳守されます。しかし、一部のIP電話からはつながらないのでご注意ください。全国の児童相談所一覧は、厚生労働省のホームページをご参照ください。
児童虐待は周りのサポートで未然に防げる!
児童虐待の実態や原因、対策などをご紹介しました。子供の命や生活を守るためには、父親や母親だけの問題と切り捨てるのではなく、地域や社会でサポートしていける体制が大切です。1人でも多くの子供や親が笑顔になる社会を築き上げていきたいですね。