諸説あるデブの語源を解説!有力なのは英語説?『デブの日』も紹介!
「デブ」には語源が諸説あります。「でぶでぶ」、「でっぱり」が変化した日本語が語源説、"double chin(二重あご)"が変化したカタカナ英語が語源説、はたまたデブの反対ガリガリの語源や、デブの記念日、デブならではの笑える名言まで解説します。
目次
日本でよく使われる『デブ』とはいったい何語なの?
「デブ」の語源をご存知でしょうか。標準よりも太っている体型や肥満体型のことを「デブ」と言いますが、なかなか他人に向かって口にするには憚られる言葉でありながら、自分を指して言う場合には自虐的つつ多少愛らしい印象もある不思議な言葉です。そんな身近に慣れ親しんできた「デブ」ですが、意外にも言葉の語源を知らないという方は少なくないのではないでしょうか。
「デブ」は日本語なのか、それとも外来語なのでしょうか。この記事では「デブ」の語源について解説していきます。
デブの語源2つ!有力なのはどっち?
【語源①】二重あごの英語表現
『日本語俗語辞書』によると、「デブ」は明治時代以降に普及した言葉とのことです。
デブとは肥えている(太っている)ことや、そういった人を嘲る言葉である。デブは明治時代から普及。出っ張りが変化した「でっぷり」からきたとする説、「double chin(二重あご)」からきたとする説など、語源説は諸説存在する。デブはその特徴による分類もされており、下半身デブ、上半身デブ、筋肉デブ、顔デブなどがある。
明治時代といえば、政府が改めて開国を行ったことでどんどん外国の文化が入ってきた時代です。また、英語の流入により、多くのカタカナ英語が生まれました。当時の日本人は初めて聞く英語を耳で聞いたまま発音していました。たとえば「アメリカン」は「メリケン」、「ハンカチーフ」は「ハンカチ」など、現在でも意味が通じる外来語が多く残っています。
日本語でいうところの「二重あご」という言葉は、英語では"double chin"と表現します。つまり太っている人を指したこの"double chin(二重あご)"という言葉が明治期に広まり、「デブ」の語源になったのではないか、という説があります。
"double chin"は発音すると「ダボーチン」になりますので、当時の感覚でカタカナ英語にすると、ダブルチン→デブチンに変化し、語源として広まった可能性があるということでしょう。
【語源②】江戸時代に使われた日本語表現
それでは、それ以前に「デブ」に相当する言葉はなかったのでしょうか。明治より更にさかのぼった江戸時代に、いくつか「デブ」の語源として関連しそうな表現が見つかりました。
当時の滑稽本『浮世風呂』(1809‐13)の中に「でっぷりとしたをとこ、手ぬぐひをしぼりながら」とあり、ここで「でっぷり」という言葉が「太っている、恰幅がよいさま」という意味で使われています。
〘副〙 (「と」を伴って用いることもある) 人の肥満したさまを表わす語。太っていて恰幅のよいさまについていう。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「でっぷりとしたをとこ、手ぬぐひをしぼりながら」
また、人情本『明烏後正夢発端』(1823)の中にも「年は四十に近づひて、色くろぐろとでぶでぶ太り」という一文もあり、「でぶでぶ」が「しまりなく、ひどく太っているさま」という意味で使われています。
[1] 〘副〙 (「と」を伴って用いることもある) しまりがなく極端に太っているさまを表わす語。
※人情本・明烏後正夢発端(1823)中「色くろぐろとでぶでぶ太り」
元々日本語のオノマトペには同じ言葉を繰り返す「畳語(じょうご)」が多いですが、「でっぷり」という言葉は「でぶでぶ」というオノマトペが名詞化されたという説があります。どちらも肥満を表す意味で用いられていますので、「デブ」は日本語の「でっぷり」、「でぶでぶ」が語源の可能性もあります。
デブの現代英語表現6つ!それぞれの単語の違いは?
肥満を英語で表現する場合、まず浮かぶのは"fat"です。ですが英語には他にも多種多様な「デブ」を形容する言葉があります。ここで少し語源から離れて、「デブ」の英語表現について見てみましょう。
【英語表現①】fat
実は"fat"は、人を形容する表現としてはかなり失礼な意味に聞こえる可能性が高い言葉です。確かに「太った」と形容するもっともメジャーな形容詞ではありますが、家畜の肥育ぶりを形容する単語でもあり、「脂肪の塊」、「ぜい肉」のようなニュアンスを含みます。
(まるまると)太った、肥満した、(市場用に)特に太らせた、脂肪の多い、太い、ずんぐりした、肉太の、ふくれた、豊かな、肥沃(ひよく)な
【英語表現②】stout
"stout"はじょうぶな、頑丈なという意味の言葉ですが、"fat"と言いたいところをうまくぼかして表現する際にも使用される言葉です。日本語で言うところの、「ガタイのいい年配の男性」、「恰幅のいい中高年」を形容する場面で用いられます。
じょうぶな、頑丈な、太った、かっぷくのよい、でっぷりした、勇敢な、断固とした、頑強な
【英語表現③】plump
"plump"も"fat"と形容したいところを婉曲的に表す表現ですが、"fat"というほど肥満ではなく、「ふくよか」な、好感のある太り具合を表現する単語として用いられます。女性の丸みのあるぽっちゃりとした身体つきや、赤ちゃんのまるまると太ったニュアンスを指す場合に使用します。
ふくよかな、丸々と太った、丸々とした、肉付きのよい、ぶっきらぼうな、露骨な
【英語表現④】heavyset
"heavyset"は"plump"とは逆に、男性的な「がっしりとした」、「ずんぐりとした」体格を意味する単語です。男性的な逞しい体格を表現する場合は"heavyset"を使用すれば問題ないでしょう。
体格の大きい、がっしりした、ずんぐりした
【英語表現⑤】curvy
"curvy"は言葉そのものには「太っている」というニュアンスは含まれません。「丸みのある」、「曲線的な」という意味の言葉であり、女性的な曲線美を形容する単語です。あからさまに"fat"な体型でなければ、"curvy"は「豊満で魅力的な肉体」として伝わるでしょう。
くねくねと曲がった、カーブの(多い)、曲線美の
【英語表現⑥】chubby
"chubby"は「ぽっちゃりとした」に近いニュアンスの言葉です。肥満というほどではないがよく太っているというような状態を形容する表現ですので、男女関係なく使用できます。特に新生児や乳幼児のふくふくと健康的に育った様子を表現する言葉として用いられます。
まるまる太った、丸ぽちゃの
単純に太っている体型を表現するのに、英語には6種類もの表現がありました。いつでも"fat"を使えば良いわけではないので、自分の意図に合わせて単語を使い分けるようにしておきましょう。
8月8日はデブの日!誰が制定したの?
色々な記念日があるように、日本では「デブの日」というものも存在しています。
このデブの日は、大日本肥満者連盟が1978年に「肥満者への差別をなくそう」を旗印に制定した記念日で、「8」の字のふくよかなイメージと、肥満体型こそ水着がよく似合うということから8月8日になりました。初代会長には作曲家でマルチタレントの小林亜星氏が就任していましたが、現在のこの連盟の状況は分からずいつの間にか自然消滅したのではないかと言われています。
デブの人が言うと説得力がある名言5選!爆笑必須!
他人に対しては使いづらい言葉でありながら、お茶の間にも浸透している「デブ」という言葉は、ユニークさや愛嬌を感じさせる不思議な単語です。実際、テレビなどでも「おデブタレント」というカテゴリで活躍している芸能人もたくさんいますね。
こうしたデブな人をモチーフにした名言として「カレーは飲み物」という言葉もありますが、他にも太っているからこそ言える名言があるので5つ紹介します。少し面白くてクスリと笑えるようなセリフばかりですので、ぜひチェックしてみてください。
【名言①】いいのかい?俺は割り勘でも構わず食っちまうようなデブなんだぜ?
友人に食事に誘われたときに使いましょう。おごりではないので食べた分だけ支払いが増えますが、そんなことは構わず食べてしまうのがデブというものです。ここで相手の分もおごるのなら更に格好いいこと間違いなしですが、予定通り割り勘にするなら相手の分の支払いも増えてしまうのでほどほどにしておきましょう。
【名言②】痩せろ?何言ってんだよ。この体に幾らかけたと思ってるんだ
「体にお金をかけた」というと、一般的には美容的な意味で使われることが多い言葉です。しかしながら、デブがこの言葉を言うことで「今ままでたくさん食べた」という全く違った意味になるところが面白いですね。マッチョや美人が「体のメンテナンスにお金をかけている」と言うのとデブが言うのではニュアンスが違います。
【名言③】お前とは、取っているカロリーの量が違う
フィクションの世界で「お前とはくぐってきた修羅場の数が違う」のような決め台詞を言う場面を見たことがある人も多いでしょう。それをもじって「お前とは、取っているカロリーの量が違う」とかっこよく言えるのは面白いですね。今までたくさん食べて太ってきたデブとしての誇りが見えるようです。
【名言④】俺の幸せは腹に溜まるんだ
幸せ太りという言葉がありますがその通りです。デブは幸せを感じた分だけ食べ、太るのです。ぽっこりと膨らんだお腹を擦りながら彼女、または奥さんに伝えてみてください。きっとこれまで以上に美味しい料理を作ってくれることでしょう。
【名言⑤】もやしでも食ってろガリ!
「ピザでも食ってろデブ!」という売り言葉で喧嘩を吹っかけられたときに、即座にこの言葉を使って反論しましょう。相手がもやしばかり食べているかはわかりませんが、少なくともデブにとってピザは主食です。言われなくても毎日だって食べられます。
【番外編】デブの反対語『ガリガリ』の語源は?日本語なの?
太っている状態とは正反対の言葉、「ガリガリ」の語源は何なのでしょうか。「デブ」と同じなら明治時代に伝来したカタカナ英語、もしくは江戸時代からある日本語が元なのでしょうか。
「ガリガリ」は意外にも「我利我利」という仏教語でした。この言葉には「やせ細った」、「細い」と言う意味がありますが、ガリガリの後に「亡者」をつけて「我利我利亡者(がりがりもうじゃ)」という言い方をすることもあります。「私利私欲のみを追求する亡者」という意味です。
「亡者」という言葉は本来は死者のことですが、「何かにとり憑かれたように一つのことに執着するもの」という意味でも使われます。そのため、「我利我利亡者」とは「他人のことはどうでもよく、自分の利益のみ追求するもの」という意味になります。「餓鬼」をイメージしてみるとわかりやすいかと思いますが、餓鬼は生前、自分の利益のみに執着したために、ガリガリに痩せて骨と皮だけの姿に生まれ変わってしまったのです。つまり、生きているとき「我利、我利」と自分の利益ばかり求めていた者が、「非常に痩せ細った姿(ガリガリ)」の餓鬼となるのです。
当たり前に使われる『デブ』には思わぬ語源が隠されていた!
日常的に使われている「デブ」という言葉ですが、実は江戸時代や明治時代を語源とする由緒正しい言葉であることが分かりました。また、最近ではデブの派生語として「ぽっちゃり」や「マシュマロ系」などの新たな言葉も生まれようとしています。身近な存在だからこそ、今後ともデブの活躍や発言から目が離せないのではないでしょうか?