心理的リアクタンスとは?反発心を恋愛や仕事で活かす実践方法も!
「心理的リアクタンス」はあなたの日常生活にも大きく影響を及ぼす心理現象です。恋愛・仕事・人間関係でこの理論を活かせば、良い影響を与えることもできます。ここでは心理的リアクタンス理論の意味を説明し、日常で活かすための対策や実践方法をご紹介していきます。
目次
心理的リアクタンスとは?日常に使える?
「心理的リアクタンス」という言葉を聞いたことはありますか?ちょっと難しい言葉に思えるかもしれませんが、実は日常生活でも大いに活用できる心理学の理論です。実際にあなたが気づかないうちに、恋愛や仕事、人間関係などで心理的リアクタンスに影響されていることも多いでしょう。心理的リアクタンスとは、一体どういう意味なのでしょうか?
ここでは心理的リアクタンスという理論について意味を説明し、日常でよく見られる心理的リアクタンスの例もご紹介します。また、心理的リアクタンスを活かすための対策や、恋愛・仕事・人間関係で実践するための方法も解説していきます。心理的リアクタンスの理論を実践することで、あなたの恋愛や仕事、そして人間関係の行方が大きく変わるかもしれません。必見です!
「心理的リアクタンス理論」とはどんな理論なのか?
「心理的リアクタンス理論」とは、1966年、心理学者のジャック・ブレームが名付けた概念です。「リアクタンス」の意味は「反発」です。「心理的リアクタンス」を一言で説明するなら「自由を制限されると、人は心理的な反発を覚える」という意味の理論です。
たとえば、「~してはダメ」と強く言われると、余計にその禁止されていることをしたくなった経験はありませんか?もともと人には自分で物事を判断して意思決定したいという欲求があります。禁止や制限に対して抵抗感を覚えやすく、自由を回復したいと願い、ますます反発してしまう傾向があるのです。これが「心理的リアクタンス理論」と呼ばれる概念の意味です。
心理的リアクタンスが日常に影響している例4選!
心理的リアクタンスの意味をさらに理解していただくために、日常に影響している例を挙げてみましょう。あなたも心当たりのある例が見られるかもしれません。恋愛や仕事、人間関係など、心理的リアクタンスは意外と身近なところでありがちな現象なのです。
恋愛でよくある例
まず、心理的リアクタンス理論が恋愛で影響を及ぼす例を見てみましょう。恋愛においてよくある例として、相手から「嫌い」と言われると、その人をますます好きになってしまうというものがあります。
たとえば、異性につれない素振りをされると、逆に恋愛感情がメラメラと燃え上がる人がいます。特に異性を追いかける恋愛が好きな人に見られる傾向です。意地でもこちらを振りむかせたいという情熱がわき起こるのです。
別の例として、いつも周りから可愛いとチヤホヤされている女性に見られがちな心理的リアクタンスというのもあります。モテる自分に対して、冷たい態度の男性がいるとしましょう。その男性に最初はイラ立ちを感じるものの、やがて興味関心を抱くようになり、恋愛感情に発展するというものです。
仕事でよくある例
心理的リアクタンスは「自分の意志や行動の自由を奪われると反発を覚える」という理論です。この例は仕事でもよく見られます。
ひとつの例として、仕事上の上司と部下の関係を挙げてみましょう。たとえば、部下がちょうどクライアントに営業の電話をしようとしていたときに、上司から「まだクライアントに電話をしていないのか。早く電話しないか」と強く言われた場合。
ちょうど電話しようとしていた部下にしてみれば、上司から強く指示されたことで反発を覚えます。部下が上司にムッとした態度で「もうすぐお昼時なので、1時を過ぎてから電話します」と言い返したとしたら、それは心理的リアクタンスが仕事に影響を及ぼしたと考えられます。仕事においても人は強制されてしまうと、素直に指示に従いにくくなるのです。
また、営業マンにありがちな心理的リアクタンスの例として、売りたい気持ちが先走り、顧客に一方的に売りこんでしまうことがあります。最初は顧客も買おうという気持ちがあったとしても、営業マンがセールストークを並べつづけると、顧客は買うことを強制されているような気持ちになります。人は「自分のことは自分で決めたい」という考えがあります。前のめりで売りこみを続ける営業マンに対しては、顧客は心理的リアクタンスが働き、結局、購入には至らなくなってしまうのです。
夫婦関係でよくある例
人間関係の中でも最も身近といえる夫婦の間にも、心理的リアクタンスは影響を及ぼす場合があります。例として、妻が夫に「浮気なんて絶対許さないからね!」と常日頃いわれていると、逆に夫は浮気したくなるというものです。あるいは、「またゴルフ行くの?たまには子供の面倒を見てよ!」と妻に小言をいわれつづけると、夫はますます家から離れたくなるという例もあります。
子育てでよくある例
心理的リアクタンス理論は子育てにも例が挙げられます。たとえば、「宿題しなさい!」とか「〇〇ちゃんを見習いなさい!」など、子供に対して指示や命令、強制などを行うと、子供は反発を覚えるというものです。「今、勉強しようと思ったのに、やる気なくした!」といった心理的リアクタンスが生まれるのです。
また別の例として、小さい子供が危険な目に合わないようにと「触ってはダメ!」とか「~してはいけません!」と強く禁止するのも、心理的リアクタンスに影響されやすくなります。禁止されたことに対して、子供が興味を持ってしまって逆効果となるのです。
心理的リアクタンスを裏付けする実験と4つの心理効果!
心理的リアクタンスの理論を実証するような、大変おもしろい実験があります。人は自分の意見が少数派に属するとき、多数派の場合よりも、意見を変えにくいという実験結果があるのです。
この実験はアメリカのヒューレットパッカード社のソーシャル・コンピューティング研究部門の心理学者たちによって行われました。実験内容として、まず実験対象となる数百人に、2つの家具のうちどちらが好きかを選んでもらいました。
この実験のポイントは、同じ実験が同じ人に対して2回行われたという点です。そして、2回目の実験を行う前に、どちらの家具を何人が選んだか伝えました。つまり、2回目の実験が行われる前に、自分は少数派に属するか否かがわかるわけです。
実験結果として、多くの人が違う家具を選んだと聞かされた人たちは、自分の選択は少数派であるにも関わらず、2回目の実験でも同じ家具を選びました。つまり、自分の最初の選択に固執したのです。反対意見が多いほうが、少ない場合よりも、自分の考えを変えないという実験結果となりました。
これは心理的リアクタンスの好例となる実験です。やはり人は自分の「選択する自由」を重視するために、自己防衛から自分の意見や考えを変えたくない性質があると言えます。
この心理的リアクタンスに関連した心理には、ほかにもいくつかの種類があります。いずれも心理的リアクタンスと同じく、恋愛・仕事・人間関係などの日常生活に影響を及ぼすものです。具体的にご紹介しましょう。
①カリギュラ効果
「カリギュラ効果」という心理的リアクタンスによく似た現象があります。カリギュラ効果も心理的リアクタンスと同じく、禁止されるほど興味がわくという現象です。
カリギュラ効果という言葉の由来は、1980年公開の米・伊合作の映画「カリギュラ」にあります。この映画は内容が過激すぎて、アメリカの一部の地域では上映が禁止されました。すると、逆に映画「カリギュラ」は大変な話題となったのです。
「見るな」と言われると見たくなる。この現象がカリギュラ効果の意味で、人は禁止されていることほどやってみたくなる心理現象を表しています。「絶対に見ないでください」と告げられながらも、その姿を見ようとした日本の昔話「鶴の恩返し」にも通じるものがあります。
②ブーメラン効果
「ブーメラン効果」も心理的リアクタンスに関連した心理現象のひとつです。「ブーメラン効果」とは相手を強く説得しようとすればするほど、相手は説得されている内容とは逆の方向に意見を変えてしまう現象を意味しています。つまり、説得が逆効果になってしまうのです。
人は説得されつづけると、自由を奪われるような危機感を覚えます。その脅威に対して反発の態度を強めてしまうのです。ブーメランは投げた本人に帰ってきますが、自身が投げたブーメランを受けそこなって傷ついてしまうような状況と言えるでしょう。
③ロミオとジュリエット効果
心理的リアクタンスに似た心理現象で、「ロミオとジュリエット効果」というのもあります。シェイクスピア作の「ロミオとジュリエット」は親同士の反対により、仲を引き裂かれて二人とも死んでしまうという悲恋の物語です。「ロミオとジュリエット効果」という言葉の意味もこの物語から来ています。
「ロミオをとジュリエット効果」の意味とは、主に恋愛などにおいて、障害が大きければ大きいほど、障害を乗り越えて目的を達成しようとする気持ちが燃え上がるという心理現象です。
④希少性の原理
「希少性の原理」も心理的リアクタンスに関連しています。「希少性の原理」とは、需要に対して供給が少ないとき、つまり希少性が高いとき、そのモノの価値が高まるように感じる心理現象を意味します。
「希少性の原理」はマーケティング手法のひとつとして、消費者の購買意欲を高める目的で使われる場合もあります。商品の限定性を高めるのです。たとえば「期間限定」とか「数量限定」、または「地域限定」と言われると、あなたも欲しくなった経験はありませんか?
人は基本的に「得したい」「損したくない」という気持ちを持っています。損失のリスクを回避したいという気持ちから、「希少性の原理」に影響されてしまうのです。
心理的リアクタンスを活かすための対策3選!
私たちの日常生活の中でも、心理的リアクタンスは頻繁に経験される心理現象であることはおわかりいただけたでしょう。恋愛・仕事・人間関係などで、心理的リアクタンスは良くも悪くも私たちの生活に影響を及ぼしているのです。
では、心理的リアクタンスを良い形で活かすためには、どうすれば良いのでしょうか?心理的リアクタンスを活かすための対策について解説します。
①無理な説得はしない
まず、「無理な説得はしない」ということが心理的リアクタンスを活かすための対策として挙げられます。心理的リアクタンスを恋愛や仕事、そしてあらゆる人間関係において活かすためには、相手を無理に説得しないように心がけましょう。相手は「自分の自由が侵されてしまう」と無意識に危機感を覚え、あなたを避けようとしてしまいます。
先述の一方的に売りこみをしつづける営業マンは、まさに心理的リアクタンスを仕事に活かす対策ができていない例です。売ろうとするほど、顧客は逃げていくのです。
②命令せず提案してみよう
心理的リアクタンスを上手に活かすためには、「命令せず提案する」ことも対策になります。「宿題をしなさい!」と命令形だと、子供のやる気を失わせ、心理的リアクタンスを活かすことができません。人間は強制されることを嫌がります。対策として、同じ伝え方でも表現の仕方を「提案」という形に変えてみるのです。
子供の宿題以外でも、人間関係でありがちな例として、「〇時にここに来て!」という言い方は、相手によっては不快感を覚える人もいるでしょう。「何時にここに来れる?」という提案型の伝え方なら、人間関係は変わってきます。自分が自由である権利を相手に委ねるのが、心理的リアクタンスを活かすための対策です。
③相手の自由を尊重しよう
「無理な説得」と「命令」は心理的リアクタンスを活かすことができないというお話をしてきました。心理的リアクタンスを良い方向に活かす対策の総括とも言えるのが、「相手の自由を尊重する」ことです。
説得や命令で自由を奪われることに、人は嫌悪感を抱きます。特にまだ良い人間関係ができていない状態だと、あなたは避けられる対象になってしまうかもしれません。相手に自分の考えを押しつけるのではなく、相手に選んでもらうような形にすることです。これが様々な人間関係において、心理的リアクタンスを良い方向に活かすための対策です。
心理的リアクタンスを恋愛で実践する方法3選!
心理的リアクタンスを良い方向に活かすための対策についてお話してきました。では、心理的リアクタンスを恋愛で実践したいときには、どのような対策があるのでしょうか?恋愛と心理的リアクタンスは密接に関係しています。心理的リアクタンスを恋愛で実践するための対策を具体的にご紹介していきます。
①アプローチをしすぎない
恋愛においては相手に「アプローチしすぎない」ことが、心理的リアクタンスを実践する上での注意点となります。恋愛で相手にアプローチしすぎるのは、相手を説得している状態です。付き合ってほしいとアプローチをしつづけると、相手は自分が支配されそうになっているような不快感を覚えます。コントロールされそうになることに、無意識のうちにも反発心を抱きやすくなるのです。恋愛でガンガン攻めつづけることは、心理的リアクタンスを悪い形で実践してしまっています。
恋愛で心理的リアクタンスを良い形で実践するためには、相手に好意を伝えるだけなら良いのです。ただ、付き合うかどうかの判断は、相手に委ねるようにしましょう。
②気持ちよい距離感で好意を伝える
相手との距離感も、恋愛では心理的リアクタンスを実践する上で大切なポイントです。先ほど心理的リアクタンスを良い形で実践するためには「相手に好意を伝えるだけなら良い」とお話ししました。人は追われると逃げたくなり、逃げられると追いたくなります。恋愛では相手との距離をつめすぎないことです。相手に好意を伝えるときにも、心理的リアクタンスの実践を意識しましょう。
③相手の行動を強制しない
「相手の行動を強制しない」姿勢も、恋愛で心理的リアクタンスを実践する上で重要となります。行動を強制されると、人は自由を脅かされたような気持ちになり、反発してしまうためです。
たとえ好きな人と付き合えることになったとしても、「毎日メールして」といった形で相手の行動を強制してしまうと、心理的リアクタンスを悪い方向へ実践することになります。
恋は盲目という言葉があるように、恋愛においては自分の気持ちを相手に押しつけてしまうこともあるでしょう。しかし、相手に何かを強制することは、心理的リアクタンスの実践の観点からも良くないことなのです。
心理的リアクタンスを仕事で実践する方法2選!
次に、心理的リアクタンスを仕事で実践する方法についてお話していきます。心理的リアクタンスは仕事でも活かすことができるのです。具体的な方法を見ていきましょう。
①部下への指示方法に活かす
もしあなたに部下がいるなら、部下への指示方法にも心理的リアクタンスを活かすことを考えてみましょう。たとえ上司であるあなたの言っていることが正しくても、部下は上司から強制されると、素直に指示に従うことができなくなります。偉そうに指示する上司が嫌われる理由です。
まずは部下が自分の考えで問題を判断する力を養うように努めてみましょう。上司として適宜アドバイスをする必要はあります。ただ、心理的リアクタンスを仕事で活かすためには、部下の自由を尊重する姿勢を見せることが大切なのです。
②営業アプローチに活かす
心理的リアクタンスは営業のアプローチ方法にも活かすことができます。「売ろうとするほど顧客は逃げていく」というお話はしました。最終的に売買契約をまとめるまでに、顧客と距離を縮めていく過程は重要です。ただ一方的に契約を迫るだけでは、心理的リアクタンスは悪い方向へ実践されることになり、良い営業マンとは言えません。
営業マンとして成績を上げたいのであれば、顧客自身に最終的な選択を委ねることが大切です。もちろんそれ以前に、顧客のニーズに合った提案をすることが必要です。ただ、その提案を顧客に押しつけてはいけません。強制されることで、顧客に反発心が生まれるからです。この心理的リアクタンスを理解することで、営業マンとしてのアプローチ方法が見えてくるでしょう。
心理的リアクタンスをあなたの日常に活かそう!
心理的リアクタンスについて、その理論の意味や対策、実践方法などについてお話してきました。心理的リアクタンスは恋愛・仕事・人間関係など、私たちの日常生活に深く関りがある心理現象であることがご理解いただけたと思います。
心理的リアクタンスは「あまのじゃく」とも言える心理です。Aと言われればB、Bと言われればAを選びたくなる人の心理です。それは人が本能的に自分で選択する自由を欲しているからです。自由が脅かされる強制や命令、説得や禁止などに対しては、抵抗感を覚えてしまうのです。
この心理的リアクタンスの理論を知ることで、あなたの人間関係にも変化が見られるかもしれません。人に何かをお願いしたり、逆に自分が何かを頼まれたとき、心理的リアクタンス理論を思い出すことで、冷静な判断をすることができるでしょう。