『うる覚え』と『うろ覚え』で正しいのは?意味や語源・使い方も!
「うる覚え」と「うろ覚え」の正しい使い方はどちらでしょうか。どちらも「ある事柄をはっきりと知らない・覚えていない様子」を表現する言葉ですが、実は「うる覚え」は誤用です。この記事では、日常生活でよく使う「うろ覚え」という言葉の意味や語源について紹介します。
目次
『うる覚え』と『うろ覚え』正しいのはどっち?
「うる覚え」と「うろ覚え」は、どちらも「ある事柄をはっきりと知らない・覚えていない様子」を表現する言葉としてよく使われます。しかしながら「うる覚え」は誤った言葉で、「うろ覚え」の言い間違いとされています。この記事では、「うる覚え」と「うろ覚え」の違いや、日常生活でよく使う「うろ覚え」という言葉の意味や語源について紹介します。
『うろ覚え』の意味とは?
「うる覚え」と誤用されることの多い「うろ覚え」ですが、この言葉にはそもそもどのような意味があるのでしょうか。まずは、「うろ覚え」という言葉に込められた意味を詳しく解説します。
意味①「記憶が確かでない」
「うろ覚え」には、「記憶が確かでない」という意味があります。ある事柄について、知っていたつもりでも内容が曖昧だったり、不正確だったりする場合に「うろ覚え」という言葉を使用することができます。「うろ覚え」は、ある事柄についてもともと持っていた知識の記憶が欠落しているという場合はもちろん、そもそもその事柄について表面的なことしか知らないという場合もあてはまります。
後者の場合は、無意識のうちに見聞きしたものの表面的な情報のみをたまたま記憶していたというケースが当てはまります。どちらにせよ、「うろ覚え」は「記憶や知識が確かでない」という意味が込められた言葉です。
意味②「ぼんやりとしか覚えていない」
「ぼんやりとしか覚えていない」事柄を説明する際も、「うろ覚え」という言葉を使用することができます。ある事柄について、表面的なことについてもほとんど覚えておらず、おぼろげな記憶しかないという場合です。ぼんやりとしか覚えていないことによって、周囲に混乱をもたらすこともあります。
逆に、おぼろげな記憶しかないのにあえて説明してみたり、実演したりしてみることによってかえって面白いやりとりになることもあります。ぼんやりとしか覚えていないが、あえてそれを伝えたいときは「うろ覚え」という言葉がぴったりです。
『うろ覚え』の語源は?
「うろ覚え」はよく「うる覚え」と誤用されます。しかしながら、「うろ覚え」の語源がわかれば「うる覚え」が誤った言葉の使い方であることがよく理解できます。「うろ覚え」の語源を知って、「うる覚え」という誤用を避けましょう。
『空洞』の意味を語源とする説
「うろ覚え」の「うろ」とは、漢字で「虚」「空」「洞」などと書きます。どの漢字も「うろ」と読むことができ、「空っぽであるさま」や「中身がないさま」を意味します。これらの「空洞」を表す漢字が「うろ覚え」の語源となったことを考えれば、「うる覚え」が誤りであることがわかります。
『うろんおぼえ』という言葉を語源とする説
一説によると「うろんおぼえ」という言葉が「うろ覚え」の語源になったという可能性もあるようです。「うろん」は漢字で「胡乱」と書き、「確かでない・怪しい・うさんくさい」という意味の形容詞です。この「うろんおぼえ」が短くなり、いつしか「うろ覚え」となったという説を考慮すると、やはり「うる覚え」は昔からよく言われる言葉ではないということがわかります。
『うろ覚え』の使い方を例文を使って解説
「うろ覚え」は「記憶が確かではない」、「ぼんやりとしか覚えてない」という意味の言葉ですが、具体的にどのような文脈で使用される言葉なのか、ここで詳しく解説します。例文で具体例を解説しますので、「うろ覚え」の正しい使い方を確認してみてください。
記憶が曖昧で自信がないとき
誰かに質問されたときなど、ある事柄について記憶が曖昧で自信がないときは「うろ覚えなので、正確なところはわかりません」などと表現することができます。「(〜については)うろ覚えで申し訳ないですが」と言うこともできます。「うろ覚え」は「全く記憶にないわけではないが、正確な記憶はない」ということを意味する言葉なので、相手に何かを説明するときに「情報が不正確であること」を伝えるときに使用できます。
記憶が曖昧だが覚えていることを主張したいとき
記憶が曖昧だが覚えていることを主張したいときにも、「うろ覚え」という言葉を使用することができます。例えば、不確かなことでも相手にとってその情報がメリットになるときなど「確かに~だったと思います。うろ覚えですが」と一言添えることができます。
前置きとして伝えたいとき
「うろ覚え」は、今から話すことの情報が不正確であるということを、前置きとして伝えたい場合に使用することもできます。「うろ覚えですが、彼女は昨年結婚したと思います」、「うろ覚えだけど、昔この場所で遊んだことがある」という要領で使用することができます。あくまでも記憶が確かでないことを伝えるときに使用する言葉なので、情報の正確さが必要な場面で使用する場合にはよく考慮した上で使用しましょう。
『うる覚え』の誤用はどうして広まった?
ここまで、「うろ覚え」の語源や具体的な意味について解説しました。そこから分かるのは「うる覚え」は誤用であるということですが、それではなぜ「うる覚え」の誤用が広まってしまったのでしょうか。「うる覚え」が広まったとされる理由には諸説ありますが、主に3つの理由が考えられます。
『うる覚え』は方言?
「うる覚え」が広まった1つめの理由に、「うる覚え」は方言であるという可能性が挙げられます。一説には、関西地方で方言だと思って使用していたという例もあるようです。ところが、この説には懐疑的な意見が多いのも事実です。地方によっては「うり覚え」という使い方をするところもあるようです。
『うる覚え』は発音しやすい
誤用である「うる覚え」が使われるようになった2つめの理由は、「うる覚え」は発音しやすいというものがあります。人によっては、「うろ覚え」よりも「うる覚え」のほうが語感がよいと感じる場合もあります。「うる覚え」という誤用が広まったのには、「うる覚え」の発音のしやすさが関わっているとも考えられます。
『うろ覚え』と『うる覚え』の発音が似ている
そもそも「うろ覚え」と「うる覚え」は発音がよく似ているというのが、「うる覚え」の誤用が広まった理由の3つめです。「うろ覚え」と「うる覚え」の発音がよく似ていることによって、会話中に「うる覚え」と誤用しても、他人から指摘されづらいという側面もあります。
『うろ覚え』の漢字表記は?
「うろ覚え」は、漢字で表記すると「疎覚え」となります。「疎」という漢字は一文字で「うとむ、うとい」と読むことができますが、「おろそか・なおざり」という意味もあります。まさに、「ある事柄についての知識・記憶がおろそかであるさま」を表す「うろ覚え」という言葉の意味そのものです。
『うろ覚え』の類語
「うろ覚え」には、いくつかの類語が存在します。「類語」とは、「表記や発音は異なるが意味は同じである言葉」を指します。「類義語」「同義語」とも言います。それでは、「うろ覚え」の類語を3つご紹介します。
類語①『生覚え』
「生覚え」は「なまおぼえ」と読み、「うろ覚え」と意味は同じです。かの清少納言は、枕草子で「よみたる歌などをだになまおぼえなるものを」と言っており、ここでは「自分が詠んだ歌でさえうろ覚えであるものなのに」と訳されます。
類語②『空覚え』
「うろ覚え」の類語に「空覚え」というものもあります。「そらおぼえ」と発音し、「うろ覚え」と同じ意味です。ところが、「空覚え」には「暗記しているさま」という意味もあるので、混同しないようにしましょう。
類語③『おろ覚え』
「おろ覚え」も「うろ覚え」の類語として使用されています。「うろ覚え」と同じく「はっきりと記憶していないさま」を意味するもので、漢字で「疎覚え」と表記します。前述したように、「うろ覚え」も漢字で書くと「疎覚え」となりますが、これを「うろ」ではなく「おろ」と読んだものが「おろ覚え」であると考えることもできます。
『うろ覚え』の英語表現は?
うろ覚えは、英語で”faint memory(フェイント・メモリー)”、”vague memory(ヴェイグ・メモリー)”と表現することができます。うろ覚えであるということを、英語では以下のように表現することができます。
- ”I have a faint memory of 〜.”(直訳:私は〜についてうろ覚えしかない)
- ”I remember 〜 only vaguely.”(直訳:私は〜についてうろ覚えで記憶している)
『うる覚え』は『うろ覚え』の言い間違い!
「うろ覚え」の語源や漢字の意味などを通じて、「うる覚え」は誤った使い方の言葉であるということが明らかになりました。「うる覚え」は「うろ覚え」の言い間違いですが、「うる覚え」と思っている人も多いです。長い月日で言葉の使い方は変化していくので、いつの間にか正しい使い方が曖昧になっていきます。言葉の意味や語源から、言葉の正しい使い方を考えてみてください。