平安時代の食事とは?食事内容・回数・マナーも!【身分別】
今から1000年以上前の平安時代には、どのような食事をしていたのでしょうか?現代とは食事内容や回数、マナーにも違いがあるようです。今回は、平安時代の食事を貴族と庶民の身分別に詳しく紹介していきます。貴族の料理は再現も紹介しているので、参考にしてみてくださいね。
目次
平安時代の食事ってどんなの?回数やマナーは?
歴史の授業などで平安時代の出来事や文化を学習した人は多いと思いますが、平安時代の食事まで学習した人はなかなかいないのではないでしょうか。平安時代にはどのようなものを食べており、食事の回数やマナーはどのようなものだったのでしょうか。
今回は、平安時代の食事について、特徴や、回数やマナーなどを紹介していきます。平安時代の食事は、現代の食事とどのような点で違っているのか楽しみですね。
まずは平安時代について
まずは、平安時代について少し触れておきましょう。歴史の授業や古典の授業で必ず出てくる平安時代は、794~1192年までの約400年も続いた時代です。平安時代には、とてもきらびやかな印象を持っている人も数多くいるはずです。
平安時代と言って思い浮かぶのは、紫式部や清少納言といった女流作家の活躍や、藤原家による摂関政治などがありますよね。平安時代は貴族にスポットが当てられることが多いですが、平安時代の人達はどのような食事をしていたのでしょうか?
平安時代の食事内容は身分で違っていた!?
平安時代には貴族や庶民といった身分がはっきりと分かれていました。もちろん、貴族と庶民では暮らしぶりが全く違っていました。暮らしが違えば、食事内容も違ってきます。貴族と庶民にはどのような違いがあったのかも紹介しておきましょう。
平安時代の階級「貴族」とは
平安時代の貴族階級は、現代で言うところの政治家が占めていました。貴族階級にも上流貴族と下流貴族の格差がありました。上流貴族は、天皇と共に政治を司ることができました。上流貴族になるためには、天皇家との姻戚関係を結ぶのが近道だったようです。最も有名な上流貴族は、皆さんもご存知の藤原家です。娘を中宮(天皇のお嫁さん)にすることにより、天皇を意のままに操っていました。このように、平安時代の貴族階級は日本の中心にいる一握りの人達で構成されていたのです。
平安時代の貴族は、寝殿造りの立派なお屋敷に暮らしていました。お庭も華やかで、優雅な暮らしを送っていたようです。貴族としての名に恥じないよう、着る物などにも気を配っていたそうですよ。
平安時代の階級「庶民」とは
一方、平安時代の庶民階級の人達は、とても質素な暮らしをしていました。平安京の中で暮らしている庶民は、一般家屋に住むことができていましたが、地方の多くの庶民たちは、竪穴式住居に住んでいました。
庶民の多くは、農業や漁業に従事していたそうです。しかし、庶民が得た農作物や魚介類は、貴族に献上するための品でした。
平安時代の食事の特徴【貴族編】
では、平安時代の貴族の食事の特徴を見ていきましょう。平安時代の貴族と言えば、豪華絢爛な暮らしをしているイメージがありますよね。食事ももちろん贅沢の限りを尽くしたものでした。庶民から献上させた地方の食材を用いて、様々な食事を楽しんでいたようですよ。
メインは魚
平安時代の貴族の食事のメインは魚料理でした。イワシやアユがよく食べられていたようです。平安時代には、肉類よりは魚類がよく食べられました。川や海が身近にある日本特有の食生活ですよね。もちろん、肉類も食べられていたようですが、より好まれていたのは魚だったようですよ。魚の方が保存しやすいことも食生活に影響していたのかもしれませんね。
味付けはシンプル
貴族とは言え、平安時代の食事の味付けはシンプルなものでした。平安時代には、まだ砂糖や醤油、ダシといった調味料は無かったそうです。味付けは主に塩で、その他は、ひしお(味噌の原型)・酢・酒を付けて食べるというものでした。とってもシンプルですよね。汁物も塩味だったそうです。美味しそうとは思えませんが、平安時代にはこれが当たり前の味付けでした。
ご飯が主食
日本人の食生活に欠かせないものと言えば、白米ですよね。現代では、お米だけでなく、パンや麺類など、主食になるものは多くありますが、外国と限られた交流しかしていなかった平安時代では、ご飯が主食でした。
お米が主食と言いながらも、平安時代は現代ほど農業の技術が高くありませんので、白米を口にすることができたのは、貴族の人達だけでした。貴族の人達は毎日の食事で白米を食べていたようです。お茶碗にてんこ盛りに盛った白米が貴族の主食でした。
平安時代の食事の特徴【庶民編】
次に、平安時代の庶民の食事の特徴です。こちらは、貴族とは打って変わって、質素な食事です。食事も暮らしと比例するようですね。貴族のように、たくさんの品数が食卓に並ぶということは無い食生活でした。
主食は雑穀
貴族は主食に白米を食べることができましたが、庶民の主食は麦類やアワ・キビといった雑穀でした。現代では、健康のために白米ではなく、あえて雑穀米を食べる人もいるほどですよね。当時の庶民は白米を食べるなんて、贅沢すぎることだったに違いありません。
しかも、好きなだけ食べることができるわけではないので、腹持ちを良くするために、お粥にしてかさ増しをして食べていたそうです。まさに庶民の知恵ですね。
調理方法は超シンプル
平安時代の庶民の食生活において、食事を楽しむという概念は無かったようです。食事は飢えをしのぐためのものでした。そのため、調理方法はいたってシンプル。
・蒸す
・焼く
・煮る
程度しか無かったそうです。現代のように、炒めたり、揚げたりなどはしていませんでした。口に入れてお腹が満たされればそれで良しといった感じです。
庶民は新鮮なものを口にする機会もほとんどありませんでした。そのため、干物や漬物といった、日持ちするものを食べていたそうですよ。
麺類を食べることも
今や当たり前に食事の一品として出てくる麺類も、食べ始めたのは平安時代だそうです。麺類は平安時代に遣唐使によって日本に持ち込まれたそうです。平安時代の麺類は、今で言うところの、そうめんやうどんに近いものでした。ラーメンは江戸時代から食べられ始めたので、平安時代の人達は口にしなかったようです。
平安時代の食事の回数やマナーは?
身分によって食事内容が違っていた平安時代ですが、食事の回数やマナーはどのようなものだったのでしょうか?現代のような食事のマナーがあったのかどうか気になるところですね。
平安時代の食事回数
まずは、平安時代の食事の回数から紹介しましょう。現代では、朝昼晩の3食食べるのが普通ですよね。平安時代には、朝と夕方の2回の食事が普通でした。間食はときどきする程度です。
貴族は毎食、山盛りのご飯を食べることができるため、お腹もいっぱいになりそうですが、庶民は大丈夫だったのでしょうか。平安時代の庶民にとっては、2回のシンプルな食事ができるだけでも幸せなことだったのかもしれませんね。
平安時代の食事マナー
平安時代は、食事のマナーが確立されてきた時代でもありました。庶民の間でも、箸を使って食べることが浸透していました。個別の食台が用意され、そこに食事が並びました。左にはご飯を、右には汁物を置いていたそうです。
現代と大きく違うのは、配膳する際に、箸をご飯に立てておくことです。現代では、これはマナー違反ですよね。仏前にご飯を備える際にする作法となっています。
平安時代の食事を再現してみよう!
平安時代の身分に応じた食生活を紹介してきましたが、ここで、平安時代の貴族の食事を再現してみようと思います。文献に残された食事の内容を基に、再現したものです。平安時代の貴族は具体的にどのような食事をしていたのでしょうか。
①平安御膳
再現料理1つ目は、平安御膳です。これは、貴族が日々の暮らしで食べていた食事です。平安時代の貴族は食事の品数が豊富です。調理方法や味付けがシンプルなので、食材の多さで食事を楽しんでいたのでしょう。
例えば、
・ご飯
・鯛の昆布締め
・サワラとエリンギの焼き物
・旬の野菜の煮しめ
・かまぼこ
・梅干し
・鰻の塩焼き
・鴨の塩焼き
これが1食の食事で出てきていました。とても豪華ですよね。たくさんの品数を少量ずつ味わうのが平安時代の貴族の食事だったようです。
②宴会料理「大饗料理」
再現料理2つ目は、大饗料理です。これは現代で言う宴会料理に当たります。貴族の中でも身分が細分化されており、互いに接待していたそうです。そこで振舞われていたのが大饗料理です。
・大きなテーブルにたくさんの料理が配膳されること
・身分によって用意される品数や、料理を付けて食べる調味料の数が違うこと
・野菜は下品な食べ物であるから出さないこと
・宴会の9日前から用意を始めること
などが特徴です。
食事の内容も、普段の食事とは比べ物にならないほど豪華で、生ものはもちろん、タコやアワビの干物といった高級食材も振舞われたそうです。
具体的には、
・ご飯
・調味料(塩、酢、ひしお等)
・生もの
・干物
・唐菓子
・果物
などがたくさん並べられたようです。平安時代の貴族は、こういった接待で見栄を張らなければいけない暮らしだったようですね。これはこれで大変な暮らしですね。
③日本最古のもち菓子「椿餅」
平安時代の貴族の食事の再現、最後は椿餅です。椿餅は平安時代の名作『源氏物語』にも登場するお菓子です。日本最古のもち菓子と言われています。
レシピは簡単で、道明寺粉を蒸して塩と砂糖を混ぜ、それにあんこを包みます。俵型に整えた餅を椿の葉ではさめば出来上がりです。当時は調味料として砂糖は使われていなかったので、道明寺粉の甘味だけが頼りだったはずです。厳密に再現したい場合には、砂糖は省いてください。
実はこの椿餅、桜餅の原型でもあるそうです。道明寺粉をピンク色に着色し、椿の葉を桜の葉に替えると桜餅の出来上がりです。椿餅は平安時代の貴族の暮らしには欠かせないお菓子だったようですよ。
平安時代の食事は健康的?
平安時代の食事を見てきました。現代の私達からすると、平安時代の食生活は脂分が少なく、とても健康的に感じます。カロリーを試算すると、1食あたり、
・貴族:900~1400kcal
・庶民:200~300kcal
だそうです。庶民はとても少ないですよね。これでは健康的な食生活とは言えないでしょう。栄養失調で亡くなる人も数多くいたそうです。
そして、注目したいのが、塩分です。現代でも塩分の摂りすぎは要注意ですよね。先ほども紹介したように、平安時代の食事の味付けは、基本的に塩で行っていました。平安時代の1回の食事の塩分量は、
・貴族:22.5g
・庶民:0.5g
と試算されています。貴族は塩分過多なのがお分かりいただけるでしょう。庶民は一見、塩分は少ないようですが、摂取カロリーから考えるとやはり塩分の比率が高いことが分かりますよね。これでは平安時代の食事は健康的だとは言い難いですね。
平安時代の食事は質素でシンプル!
平安時代には貴族と庶民で食事に大きな差があることが分かりました。貴族は一見豪華な食事のように見えますが、品数が多いだけです。再現してみると、実は焼いただけ、蒸しただけというような、質素でシンプルな料理が多いようですね。