サウダージの意味や使い方とは?語源や類語も!翻訳しにくい単語!
サウダージという言葉の意味を的確に表現できますか?「できる!」と自信満々に答えた人も、きっとそれはサウダージという言葉のほんの一部なのかもしれません。サウダージという言葉の意味、語源や由来、歴史、日本の音楽や映画との関連性について紹介していく記事です。
目次
『サウダージ』は翻訳しにくい単語!
「サウダージ」という単語を知っていますか?有名なところでは、サザンオールスターズやポルノグラフィティの楽曲のタイトルに使われているため、何となく聞いた事がある人も多いかもしれません。そんな誰もが知る単語である「サウダージ」ですが、意味についてしっかりと説明出来る人は少ないと思います。
「サウダージ」という言葉はポルトガル語ですが、ポルトガル語以外には「サウダージ」を意味する単語は存在していません。というのも、「サウダージ」という複雑な意味を持つ言葉をポルトガル語以外で表現するには、的確な単語が無いのです。その証拠に、世界で最も翻訳しにくい単語ランキングの7位にランクインしています。
今回は「サウダージ」という言葉の語源や歴史、日本音楽や映画との関係性など、様々な視点から「サウダージ」について解説していきます。
『サウダージ』の意味とは?
前述したとおり、サウダージという言葉は複雑な意味を持っています。日本語で表すならば「郷愁」「切ない」「悲しい」「寂しい」などを意味しますが、それらの意味はサウダージのほんの一部分を表現しているだけに過ぎないのです。
例えば恋人と別れて別れて寂しいという気持ちだけではなく、恋人との楽しかった日々を思い出したり、懐かしむ気持ちも全てまとめた感情がサウダージなのです。また、手が届かないものを羨望する気持ちもサウダージとして表します。これだけ複雑な意味を持つ言葉なので、翻訳しにくい単語ランキングにランクインするのも納得ですね。
『サウダージ』の語源や由来は?
とにかく複雑な意味を持つサウダージですが、この言葉をさらに理解するためには、サウダージの語源や由来について知る必要があります。
ラテン語で孤独という意味の“solitate(ソイダーテ)“ がサウダージの語源となっています。元々は“saudade“ではなく“soydade(ソイダーデ)“という言葉でしたが、ここにポルトガル語で健康を意味する“saùde(サウージ)“という言葉が交わり、“saudade“という言葉となりました。
寂しいイメージの孤独という言葉と、前向きなイメージの健康という言葉が交わった事で生まれたサウダージという言葉には、人間の複雑な感情が隠されているのです。
『サウダージ』はどんな場面で使うの?
サウダージの意味や語源が理解できた所で、実際にサウダージとはどんな場面で使うのでしょうか。ここではサウダージを使う場面について紹介していきます。決して恋愛のみに対して使用される感情ではない事にも注目して下さい。
別れを惜しむとき
共に楽しい時間を過ごせば過ごすほど、別れというのは惜しいものとなります。その時に出てくる「寂しい」という感情はもちろんですが、楽しかった事を思い出す時に湧き出る感情も含め、サウダージという言葉で表現します。
生まれ故郷に帰りたいと思うとき
例えば上京して生活をしている時、ふと生まれ故郷に帰りたいと思う時もありますよね。両親の温もりや、学生時代を共にすごした友達が恋しくなる事もあるでしょう。きっと「寂しい」「懐かしい」など、様々な感情が出てくると思います。その感情こそ、サウダージそのものです。
離れた恋人を想うとき
別れてしまった恋人を思い出すと、胸が痛くなる事はありませんか?「切ない」「会いたい」「あの頃に戻りたい」などと、寂しい気持ちだけではなく、楽しかった日々も思い出す事でしょう。過去の恋愛に対する感情もサウダージなのですが、それだけではありません。戻らない日々に想いを馳せる感情も、サウダージです。
亡くなってしまった両親を想うとき
もしも両親と今生の別れをしてしまっている場合、二度と会う事はできませんよね。そんな両親に対しての「感謝」や、十分に親孝行できなかったなどの「後悔」の気持ちもサウダージとして表現できます。
料理の味を懐かしむとき
たまたま口にした料理が、いわゆる「おふくろの味」に似ていたりすると、懐かしくなる事もあるでしょう。その味を「懐かしい」としみじみ思う感情もサウダージです。
『サウダージ』の類語は?
サウダージを意味する言葉はポルトガル語以外には存在しないと紹介しましたが、似たような意味を持つ類語ならば、ポルトガル語以外でも存在します。代表的な類語を紹介しますので、参考にしてみて下さい。
ノスタルジア
「ノスタルジア」という類語も、サウダージと同様に何となく耳にした事がある人も多いと思います。「ノスタルジア」は英語に分類され、「郷愁」という意味を表します。何となくサウダージと意味は似ていますが、この類語ではサウダージの一部しか表現出来ません。
モリーニャ
ガリシア語に「モリーニャ」という類語が存在し、この類語はサウダージと同じ意味を持っています。ガリシア語にもサウダージという言葉は存在しますが、「モリーニャ」という言葉でサウダージを表すのが一般的となっています。
『サウダージ』とブラジル文化・歴史との関係は?
ブラジルは元々、ポルトガルの植民地だったため、常用語はポルトガル語となっています。そのため、ブラジルでもサウダージという言葉は使われますが、ポルトガルで使われるサウダージよりも悲しみの感情が強い意味となっているのが特徴です。そうなってしまった理由を知るためにも、ブラジルの歴史を辿ってみましょう。
先住民インディオとの関係
大航海時代に、ポルトガルの船団によってブラジルは発見されました。元々ブラジルにはインディオという先住民族が住んでいたのですが、ポルトガルの侵略によりインディオは土地を奪われ、奴隷として使われるようになりました。
侵略したものの、熱帯のブラジルでは、ポルトガル人は生活に馴染むことが中々できなかったために、インディオの生活の様式を参考にするようになりました。言語も決して例外ではなく、インディオの言葉がポルトガル語に取り入れられ、ブラジルの文化が作られていったのです。
アフリカ人奴隷の輸入
ブラジルの先住民であったインディオは、奴隷としての過酷な労働や感染症の流行などで、次第に人口が減っていきました。丁度その頃、キリスト教を布教しようと渡ってきたイエズス会の宣教師たちがインディオを保護し、インディオを奴隷として使いたいポルトガル人との関係を悪化させてしまいます。
その関係を解消するために、1570年にインディオの奴隷禁止令が公布され、インディオを奴隷として扱うことができなくなりました。そしてインディオの代わりに、アフリカから黒人の奴隷が輸入され、新たな奴労働力を手に入れたのです。しかしその扱いはとても酷いもので、奴隷は使い捨てが当たり前で、家庭を持つ事すら許されなかったようです。
ブラジルにはこのような悲しい歴史があるからこそ、ブラジル人の使うサウダージには、インディオやアフリカ人の悲しみが込められていると考えられています。
音楽にみられる『サウダージ』の意味とは?
決して一言で表すことのできないサウダージという言葉は、詩を書く上でも非常に魅力的な表現の一つとなり、音楽にも多用されるようになりました。ポルトガルの民族歌謡ではもちろんですが、ブラジルのボサノバやサンバにもサウダージは非常に強く関わっていて、ブラジル音楽を語るのならばサウダージを理解する事が非常に重要となってくるのです。
前述したとおり、ポルトガルとブラジルではサウダージの意味は少し違います。お互いの国が奏でるサウダージは、それぞれに違う意味が込められているのが、音楽と言葉の面白い所です。
日本における『サウダージ』との関係は?
冒頭でも触れましたが、日本にもサウダージをテーマとした音楽や映画が存在します。ポルトガルやブラジルとは違い、日本人が表現するサウダージを感じる事で、文章だけでは伝える事の出来ない部分まで理解する事が出来るかもしれません。
日本音楽の『サウダージ』
日本の音楽でサウダージと言えば、代表するのは以下の2曲となります。他にも詩などでサウダージを表す楽曲も多数ありますが、代表として2曲を紹介します。
サザンオールスターズのSAUDADE
サザンオールスターズの「SAUDADE」は、ボサノバ調のミドルテンポで、切ない感じで繰り広げられる楽曲です。彼女と別れたあとに一人で寂しくリオのカーニバルに来ているシチュエーションとなっていて、旅先で感傷的になっている様子をサウダージとして表しています。
ポルノグラフィティのサウダージ
言わずと知れた、ポルノグラフィティを代表する大ヒットナンバーです。テーマは「失恋」となっていて、別れを向かえ終わってしまった恋愛を振り返り、最後にはその過去と決別する曲となっています。2番のAメロの「愛が消えていくのを、夕陽に例えてみたりして、そこに確かに残るサウダージ」という歌詞は、作詞者の新藤晴一さんなりの比喩表現を使ったサウダージの解釈なのでしょう。
日本映画の『サウダーヂ』
2011年に公開された映画「サウダーヂ」は、富田克也監督がメガホンを取った映画です。移民労働者がテーマで、不況で仕事を失ってしまった外国人労働者のやるせない思いをサウダージとして表現した映画となっています。
『サウダージ』は複雑で多面的な意味をもつ言葉!
サウダージの語源や歴史、日本の音楽や映画への関連性などを紹介しました。少し難しい内容でしたが、理解して頂けたでしょうか?サウダージという言葉は1つの単語に過ぎないのですが、その1つの単語に非常に深い意味が込められています。非常に深い意味を持つからこそ、音楽でも映画でもその人なりの解釈が出来るのかもしれません。言葉と感情を持った人間だからこそ、こうした言葉を生む事や感じる事が出来るのでしょう。