『見れる』と『見られる』正しいのはどっち?違いや使い方を解説!
「見れる」と「見られる」の違いを知っていますか?「見れる」は『ら抜き言葉』と言われ正式な日本語文法ではありませんが「見れる」の全てがそうではありません。「見れる」と「見られる」の意味の違い、ら抜き言葉や他の誤用言葉使った場合のメリット・デメリットを紹介します。
目次
「見れる」は「見られる」のら抜き言葉!
「見れる」「食べれる」のような表現を耳にしたり、自身で使ったりすることはありませんか?これらは正式な文法表現ではなく「見られる」「食べられる」から「ら」を抜いた文法誤用で、『ら抜き言葉』と言われます。
「見れる」などと表現するら抜き言葉は若い世代を中心に広く浸透していますが、正式な使い方としては「見られる」が正しい表現です。
そもそも、ら抜き言葉とは?
よくみられるら抜き言葉には、「見れる」の他に「食べれる」「寝れる」「出れる」など、日常会話の中でもよく使う言葉が挙がります。
本来「見る」「食べる」「寝る」「出る」といった動詞は、可能の意味を表す助動詞の「られる」の形に変換して「見られる」「食べられる」「寝られる」「出られる」とするのが正式な文法表現です。
若者言葉として広まった?
言葉というのは時代と共に少しずつ変化していくもので、現代では若者世代が新しい言葉を作り出していると言っても過言ではありません。
例えば「見れる」という表現は、「見られる」から「見れる」と発声を一文字分抑えることにより会話のスピード感やリズムが良くなり、親近感の湧く話し方になるので、仲間内での日常会話として使われるようになりました。
文法では間違いとされている
「見れる」をはじめとするら抜き言葉は日常会話の『話し言葉』として使われますし、先ほど述べたようにメリットとして感じる部分もありますが、日本語文法としてみると誤った表現になるのです。
仲間内で「見れる」「食べれる」のように使われるものの、正式な文法表現ではないため、新聞や書籍などの『書き言葉』としては使われません。自身で文章を書き残す際にも「見れる」「食べれる」のような表現はせず、「見られる」「食べられる」と書くようにしましょう。
「見れる」と「見られる」の違いは?
ら抜き表現の「見れる」は正式な文法ではありませんが、「見れる」という表現のすべてが誤りではなく、ら抜き言葉ではない「見れる」の使い方も存在します。
また、みなさんは「見れる」と「見られる」の正しい意味や使い分けを知っていますか?「見れる」の正しい使い方と、「見られる」が持つ言葉の違いを例文を紹介しながら解説していきます。
「見れる」は可能のみを表す言葉
本来「見れる」という動詞は、可能の意味を表す可能動詞に属します。可能動詞とは「〜できる(可能)」という意味を持つ動詞のことで、「見れる」の他には「(本を)読める」「(空を)飛べる」「(英語を)話せる」のように「〜することができる」という意味を持つ動詞です。
ら抜き言葉が気になってしょうがない pic.twitter.com/eaSmgvuoYh
— Yoshimitsu (@Social_Window) March 10, 2019
<「見れる」を使った例文>
- 私の目標は、映画を字幕なしで見れるようになることです。
- 満開の桜が見れると思っていたのに、昨日の雨で見れないとはなんとも残念なものです。
「見られる」は4つの意味を持つ
「見られる」は「見る」という動詞に、助動詞「られる」をつけて変換させた形です。この助動詞「られる」は受身・可能・自発・尊敬の4つの意味を持つため、同じ「見られる」という表現であっても4つの異なる場面で使うことができます。
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<「見られる」を使った例文>
- 【受身】集中して仕事をしているだけなのに、不機嫌に見られることがある。
- 【可能】本日は生憎の天気ですが、晴れるとこちらから雄大な景色が見られるそうです。
- 【自発】日本へ旅行に来た外国人は、至る場所で見られる整然と列をなす日本人の姿を見て驚いていた。
- 【尊敬】審査員の先生方はこちらから作品を見られるので、展示の仕方にも気を配った方が良さそうだ。
「見られる」は「見れる」と同じように、ポジティブな事象にもネガティブな事象にも使うことができます。また、1つ目の例文のような「(そのように)見られることで困ること」を表す、されて困る受身表現を迷惑受身とも言います。
改まった場では「見られる」を使おう!
ビジネスや面接などの改まった場面で「見られる」と言うべきところを「見れる」と言うことが、大きなデメリットになることを覚えておきましょう。
「見られる」と「見れる」はたった一文字違うだけですが、「見れる」と言ってしまった場合、相手に幼稚な印象を与えてしまったり、言葉が軽率に聞こえるために敬語が使えないと知的レベルを問われたり、さらには自身が過ごしてきた周囲の環境までをも問われてしまうことがあるようです。
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— 就職活動2020 (@shukatu__2020) June 19, 2018
「ら抜き言葉」にご注意ください! pic.twitter.com/6CVKPyCXfW
このように「見られる」を「見れる」と表現することは、正式な文法表現ではないために誤りと判断され、ご年配の方や言葉使いに敏感な方に違和感を残すことになるでしょう。
話す相手や場面を見極め、「見れる」ではなく「見られる」のような正しい文法を頭に浮かべて話すように心掛けましょう。
「見れる」以外も!ら抜き言葉に気を付ける言葉は?
ら抜き言葉には「見れる」以外にどんな言葉があるのか?正式な文法表現になっているか?と考える場合、動詞の活用をいちいち思い出すのは時間がかかるかもしれません。
簡単にら抜き言葉を見分けるには、意志や勧誘の意味を表す助動詞「~よう」の形に変換してみると良いです。
「よう」が付けられる動詞
例えば「見る - 見よう」「食べる - 食べよう」「寝る - 寝よう」のように「〜よう」をつけることができる動詞と、「乗る - 乗よう」「立つ - 立よう」「飲む - 飲よう」のように活用が成立しない動詞があります。
「見よう」「食べよう」のように「〜よう」をつけることができる動詞はら抜き言葉になりやすい動詞で、反対に「乗よう」「立よう」のように活用が成立しない動詞はら抜き言葉になりづらい動詞です。
わざわざ活用形を思い出さなくても簡単にら抜き言葉か見分けることができるので、正しい動詞の使い方を意識しやすいのではないでしょうか。
ら抜き言葉の見分け方のひとつ。人を誘う時の言葉に変えてみて。「R」が既に入ってたら、もういらない。#日本語 #shotnote pic.twitter.com/NwLQkpuz8d
— 松嶋有香@文章力養成コーチ (@v_sensei) February 1, 2018
使いがちな「ら抜き言葉」
この「〜よう」の法則で日常的に使う言葉を当てはめてみましょう。「〜よう」をつけることができる言葉は「見れる」のようなら抜き言葉になりやすい言葉です。
例えば、「起きよう - 起き(ら)れた」「着替えよう - 着替え(ら)れた」「開けよう - 開け(ら)れた」「借りよう - 借り(ら)れた」「始めよう - 始め(ら)れた」など、「見れる」と同じように日常会話の中で使う言葉が多くあることに気付きます。
ら抜き言葉が正しいとする地域もある!?
北海道や北陸、中部、東海、中国、四国地方などの一部地域では、「見れる」「食べれる」のような表現を地方言語として古い時代から使っているのも事実です。それらの地域では、若い世代特有と言われるら抜き言葉が、日常的に使うナチュラルな会話表現になるのです。
一般的に「見れる」のようなら抜き言葉は誤用とされますが、このように日本語の表現は各地域に根付いている方言や地域によるイントネーションの違いなどもあり、同じ「日本語」という言語ですが、様々な話し方があります。
【番外編】ら抜き言葉以外に気を付けるべき日本語は?
「見れる」「食べれる」をはじめとするら抜き言葉以外にも日本語の乱れとしてよく挙がるのが、『レタス言葉』と『さ入れ言葉』です。日常会話の中で知らず知らず使ってしまい、思わず違和感を覚えることはありませんか?
レタス言葉
レタス言葉とは、可能の意味がある動詞に不要な「れ」を足してしまうことによって起こる誤用で、『れ足す言葉』といわれます。
レタス言葉の見分け方も簡単で、意志や勧誘の意味を表す助動詞「〜よう/〜ろう」に変換してみます。「生きる - 生きよう - 生きられる」「来る - 来よう - 来られる」「走る - 走ろう - 走れる」のように変換できればレタス言葉にはなりません。
「〜よう/〜ろう」以外の助動詞をつけて変換する動詞は「歩く - 歩こう - 歩けれる(正:歩ける)」「買う - 買おう - 買えれる(正:買える)」のようにレタス言葉になりやすいので注意が必要です。
さ入れ言葉
『さ入れ言葉』とは、助動詞「せる」を使うべきところに不要な「さ」を足してしまうことによって起こる誤用です。
本来、助動詞「せる/させる」は「~してもらう」という使役表現(命令的な表現)の意味を持ちますが、「いただく」と一緒に使うことによって「〜をさせていただきます」と話し手側の謙虚さや丁寧さを表すことができます。
但し、「一週間仕事を休まさせていただきます」「私にも手伝わさせてください」のように自分が行うことが予め決まっている行為や自分で判断して行う行為に「さ」を足すことは誤りなので、注意が必要です。
「見れる」と「見られる」の使い分けをマスターしよう!
「見れる」と「見られる」の意味の違いや、日本語の乱れとされる『ら抜き言葉』や『レタス言葉』『さ入れ言葉』、メリット・デメリット、それぞれの見分け方などを説明しました。
今まで「見られる」ではなく「見れる」のような間違った使い方をしていた方は、自身の言葉使いを見直してみましょう。誤用である言葉を使うデメリットを認識することは、正しい言葉使いをする第一歩となります。「見られる」「食べられる」のように日常会話の中で使う言葉から使い方に慣れていき、スマートな会話を目指していきましょう。