『いづれか』と『いずれか』正しいのはどっち?意味や違いを徹底解説!
日本語では時々使い方を迷う表現があります。「いづれか」と「いずれか」もそのうちの一つだと思います。ここでは意味や違い、使い方等を解説していきます。英語での表現もありますので、「いづれか」と「いずれか」がどのように使われているのかを確認していきましょう。
目次
『いづれか』と『いずれか』はどちらが正しい表現なの?
日本語には「づ」「ず」や「じ」「ぢ」のように、言葉によってどちらを使うかという問題にしばしば出会います。結局どちらが正しいかが分からず、間違った表現でもそちらが主流になれば辞典にも載ります。新しい言葉として認められることもあり、結構自由ですよね。
ここでは「いづれか」と「いずれか」の表現に注目していきます。どういった違いがあり、どういう意味なのか、迷っている方の手助けになればと思います。
『いづれか』と『いずれか』の違いとは?正しいのはどっち?
それでは「いづれか」と「いずれか」ではどちらが正しいのか、まずは見ていきましょう。実はどちらも意味としては正しい、というのが正解です。しかし、文章で書く時は「いずれか」という「ず」の方を使用する方が正しくなります。それは何故なのか、次の項目でご説明します。
『現代仮名遣い』と『歴史的仮名遣い』の違い
皆さんは「現代仮名遣い」と「歴史的仮名遣い」というのをご存知でしょうか?国語の授業でも習ったと思いますが、歴史的仮名遣いというのは昔の仮名遣いの事になります。昔使われていた書き方ですので、現代ではその仮名遣いをしません。歴史的仮名遣いである「をかし」や「にほひ」を現代仮名遣いに直すと「おかし」「におい」となります。
現代の表現としては『いずれか』が正しい
ここで「いづれか」と「いずれか」の話に戻します。上記のような例から、「いづれか」という書き方は歴史的仮名遣いになります。現代では使わない表現になりますので、日頃の文章で書く際には、現代仮名遣いである「いずれか」を書くようにしましょう。
『いずれか(いづれか)』の意味と3つの使い方!
それでは「いずれか(いづれか)」にはどのような意味があるのでしょうか。書き方は理解できたと思いますが、実は意味も様々なものがあります。違いを理解して正しく使っていきましょう。それでは一つ一つ見ていきます。
『どれか』の丁寧語
まず最初に見ていくのは「どれか」という表現の丁寧語である、ということです。これは一番よく使われるのではないでしょうか。「どれか」「どれ」「どっち」という表現は、複数あるもののうち一つを選ぶ時に使われるものです。これらを丁寧な表現に変えたものが「いずれか」になります。
『どちらが~か』という疑問表現
続いては先程の表現を用いた疑問文になります。例えば「どちらが正しいでしょうか」という疑問文があったとします。これを「いずれか」という表現を用いた文章に作り直すと、「正しいのはいずれか」という少し形式ばった言い方になります。あまり使用することはないと思いますが、使い方を覚えておくと役に立つと思います。
『いったいどれが』という反語表現
最後に反語表現についての「いずれか」です。反語とは意図している事に対して、わざと疑問文で述べ、断定を強調する効果のある表現技法です。これは現代においても使われますが、「いずれか」という言い回しは古文で使われる事が多くなります。
古今和歌集の仮名序で「生きとし生けるもの いづれか歌を読まざりける」という一文に歴史的仮名遣いとして、「いづれか」が使われています。これを現代の意味に直すと、「この世に生きている全てのもので、誰が歌を詠まないことがあるだろうか(いや、みんな読む)」となります。これが反語です。
『いずれか(いづれか)』の使い方を例文で確認しよう!
それでは「いずれか(いづれか)」を含んだ使い方を、例文で確認していきましょう。どの例文も何かを選ぶ、という内容になっています。逆に言えば、何かを選ぶという時に「いずれか」を使えば間違いない、ということですね。
●月曜日、火曜日、水曜日、いずれかの曜日で会議を行います。
●右か左か、いずれかが正しい道になります。
●こちらをお買い上げの方には、A、B、C、いずれかの特典が必ずつきます。
『いずれか(いづれか)』の漢字・英語表記を紹介!
ここでは「いずれか(いづれか)」の漢字や英語での表記をご紹介します。平仮名だけかと思われる「いずれか」の表現ですが、実は漢字や英語で書くことも可能です。どのようなものなのか、一つ一つ見ていきます。
漢字表記は『何れか』『孰れか』
「いずれか」を漢字で書くと「何れか」または「孰れか」となります。後者の「孰」という漢字はあまり見ることがないと思います。常用漢字ではない為、難読語としてもクイズで出題されたり、漢字検定では1級の試験に出るような漢字になります。この機会に覚えておくと、ちょっとした物知りになれるかもしれませんね。
『いずれか』を英語で言うと?
それでは「いずれか」を英語で表記すると、どのようになるのでしょうか。「いずれか」という意味を直訳すると"either"という単語が出てきます。これだけでは使えず、"or"も一緒に使用します。"either A or B"という連語で「AかBのいずれか」という表現で使うことができます。
もう一つ英語の表現があります。それは"which"です。日本語では「どっち」という意味になり、どちらかを選ぶ疑問文で使います。こちらは連語ではありませんが、"which"を使用した場合"or"を用いて選択肢を入れなければいけません。"Which do you like A or B ?"という使い方になります。意味は「AかBのどちらが好きですか」です。「どちら」の丁寧語が「いずれか」なので、英語表現はこのようになります。
『いづれか』が『いずれか』になったのはいつ?どこで決められるの?
「いづれか」は歴史的仮名遣いだという話をしました。それでは現代仮名遣いである「いずれか」へと変わっていったのはいつなのでしょうか。合わせて、日本語を決められる場所についても見ていきたいと思います。
『いずれか』になったのは1949年
今使われている現代仮名遣いや、古典文学での歴史的仮名遣い自体を決めたのは1946年で、「国語審議会」というところで決められました。「当用漢字表」や「現代仮名遣い」を発表したのです。それ以降、これらの日本語は法令、公用文、教科書に反映されていくこととなり、「いづれか」が「いずれか」になったのもこの時期になります。それが1949年です。
日本語を選定する国語審議会とは?
それでは「国語審議会」とは何かを見ていきます。国語審議会とは、簡単に言うと、その時代の新しい日本語を定める文化庁所属の委員会です。発足は前からあったようですが、活躍し始めたのは1946年になります。この時期は現在の日本語の基礎となる使い方を定めていた時期ですので、様々な派閥に分かれ、対立もたくさんあったそうです。
先程、文化庁所属と言いましたが、実際に所属の委員会となったのは1968年に文化庁が発足してからになります。1970年以降は新しく定めた日本語が定着し出し、「日本語の制限から目安を設ける」という方向へ変わっていきます。1979年には「常用漢字表」が発表され、ついに1981年に現在も使われている「常用漢字表」と改訂された「現代仮名遣い」が内閣より発表されました。
「その時代にあった日本語」を制定するべく存在していた「国語審議会」ですが、中央省庁再編の動きに伴い、2001年に廃止されます。しかし無くなったわけではなく、「文化審議会国語分科会」と名前を変えて活動しています。文部科学大臣および文化庁長官の諮問機関となります。これからもその時代にあった日本語を模索する機関に変わりありません。
『いずれか(いづれか)』の注意点3選!使う前に確認しよう!
最後に「いずれか(いづれか)」を使う前に注意してほしい部分を説明します。似ている言葉の違いや意味の再確認も含め、正しい使い方ができるように見ていきましょう。
『いずれ』と『いずれか』の違いとは
まずは似ている「いずれ」と「いずれか」の違いになります。この二つの違いについて、文字で見てみると最後に「か」がついているか否かになりますが、意味は大きく違ってきます。「いずれか」の意味の中に複数のうち一つを選ぶ、というものがありましたが、「いずれ」は何かを選択しなくても良い言葉になります。
「いずれ」というのは「どれ、どこ、いつか」という言葉の代名詞として使われます。例えば、「いずれ訪れるだろう」という文章では何かを選択しているわけではありません。これは「いつか」に置き換えることができ、時間を表しているからです。しかし「どれ」を表す代名詞で「いずれ」を使用した場合には選択する場合もあり、文脈でそれぞれ判断をすることになります。
『どちらか』と『いずれか』の違いとは
次に「どちらか」と「いずれか」の違いについて見ていきます。この二つの言葉は同類語として扱われます。どちらも何かを選ぶ際に使われる言葉だからです。「いずれか」を「どちらか」に変えても、または逆に「どちらか」を「いずれか」に変えても意味は変わりません。そんな両者の違いはと言うと、「いずれか」という言い回しの方が若干丁寧な印象を与える、というところでしょうか。場面に合わせて使い分ける必要があります。
『どちらも』の意味では使われないことが多い
注意点の最後は「いずれか」は「どちらも」という意味では使われることがほとんど無い、ということです。先程から言っているように「A、B、C、いずれかお選びください」という文章では、必ずどれかを選ぶという回答になります。この聞き方で全てを選ぶという方は、まず居ないと思われます。
歴史的仮名遣いとして挙げた反語では「全て」という意味合いがありました。ですから、あくまで古文の中での使用に限る、という認識で間違いないでしょう。現代では「両者」という意味で使われることはほとんどありません。
『いずれか』は現代仮名遣い、『いづれか』は歴史的仮名遣い!
いかかでしたか?「いずれか」と「いづれか」の違いについて理解が深まったでしょうか。まとめると、意味としては同じですが、それぞれの表記が現代仮名遣いか、歴史的仮名遣いか、の違いになります。現代で使用する際には「いずれか」という「ず」の方で書くようにしましょう。
今回取り上げた「いずれか」と「いづれか」は日本語のほんの一部に過ぎません。他にも似ているのに意味が大きく異なる言葉や、同じように仮名遣いでの違いなど、面白い日本語が隠れています。知識を増やすというのは楽しいですし、自分の為に役立つ時が来るはずです。是非下記の記事もご覧下さい。