茅葺き屋根の魅力に迫る!雨漏りしない理由もわかりやすく解説!
『茅葺き屋根』と聞くとみなさんは何を思い浮かべるでしょうか?今や、世界に誇ることのできる世界文化遺産の茅葺き屋根も日本には存在します。また、憧れとも言われる古民家のリノベーションやアンティーク人気に加え、茅葺きの住居も注目が集まっているところです。
目次
茅葺き屋根とは?
茅葺き屋根(かやぶき・やね)と聞くと、真っ先に何を思い浮かべますか?昔ながらの家造りや童話などに出てくる家を思い浮かべる人もいるかもしれません。もしくは、日本が世界に誇る世界文化遺産である岐阜県の『白川郷』や富山県の『五箇山』の合掌造り集落を思い浮かべる人もいるでしょう。
茅葺き屋根の材料となる『茅(かや)』とはイネ科の植物のことですが、茅という名前の植物はなく、茅とはススキやヨシ、チガヤ、カリヤス、カルカヤ、シマガヤなどといった種類のイネ科の多年草の総称を指します。
また、『萱(かや)』という漢字を使うこともありますが、ここでは『茅』と統一して明記することにします。
茅葺き屋根の種類
屋根材に用いられる茅は先ほど紹介したように様々な種類のイネ科の植物を用いますが、用いる茅の種類によって呼び名が変わります。例えば、藁(わら)を用いて造った『藁葺(わらぶき)屋根』や、草を用いて造った『草葺(くさぶき)屋根』などというように、用いた茅の種類がわかるような呼び方をします。
茅を『葺く』とは?
現代の屋根造りにも当たりますが、瓦や鉄板、粘板岩を加工したスレートなどの屋根材を屋根に乗せて並べる施工のことを『屋根を葺く(ふく)』と言います。これは茅葺き屋根を造っていた時代の名残りになります。
そもそも『葺』という漢字は草冠に『口』と『耳』から成り、口と耳は「寄せ集める」という意味も持っています。「雨から家を防ぐために草を寄せ集めて屋根に乗せていた」という歴史の背景から、屋根を施工することに『葺』という漢字が使われるようになったのです。
茅葺き屋根の歴史や魅力とは?
茅葺き屋根と言えば古くから伝わる日本の伝統的な屋根造りのイメージがありますが、実は日本独自のスタイルではなく、イギリスやドイツをはじめ、世界でも広く見られる屋根造りのひとつということをご存知でしょうか。
茅葺き屋根の歴史
茅葺きは世界各地の歴史を見ても、もっとも原始的な屋根造りといわれ、日本では歴史を遡ること縄文時代の遺跡に茅葺き屋根の住居が見つかったといわれています。時代が進み、その後も茅葺きの屋根は住居の他にも寺社などあらゆる建物に用いられたようです。
仏教と共に大陸から瓦を用いた屋根造りも伝来し、これを機に少しずつ茅葺き屋根は減少したと言われます。また、江戸時代までは一般庶民の住居に瓦を用いることが禁止されていたようで、明治時代に入るまで茅葺きの屋根造りが一般的だったという歴史もあります。
茅引き屋根の魅力
茅葺き屋根の魅力はなんといっても、住居性に優れているいくつかの特徴を持ち合わせていることです。それでは、茅葺き屋根の魅力や特徴を紹介していきます。
断熱性に優れている
夏はエアコンをかけているかのように涼しく、冬は温まった空気が外に逃げないので暖かく過ごせます。
吸音性に優れている
周囲の騒音をはじめ、雨が降ってもトタン屋根に響くようなパシャパシャとした雨音が聞こえないので静かな環境を確保できます。
吸湿性に優れている
過度な湿度は吸収され、適度な通気性があるので快適に過ごすことができます。
環境に優しいエコ素材
屋根材として用いている茅は全て土に還る自然由来の植物であるため、修繕後に廃棄物を出すこともなく環境にも優しいです。
屋根材である『茅』の魅力
最も用いられてきた茅の種類と言えばススキやヨシに代表されますが、屋根造りの料材としても条件が良く魅力的なものでした。かつて、ススキやヨシは日本全国の至るところに群生していたので手に入れることも容易く、また、毎年収穫もできるということも魅力のひとつで、定期的な修繕にも重宝されていました。
歴史の中で大陸からの瓦の伝来があり、それも茅葺き屋根の減少の理由として挙げることができますが、高度成長期以降になると都市開発などによって、それまでススキやヨシなどの群生地だった場所にはビルが立ち並んだりと、群生地はかなり限られたものとなってしまったようです。
茅葺き屋根が雨漏りしない理由を解説!
茅葺き屋根の材料には茅を用いていることは何度もお伝えしていますが、イメージとして植物を用いた屋根は雨などに弱いのでは?と思われがちですが、実はその反対で、茅葺き屋根は雨漏りに強いのです。
なぜ雨漏りに強いのか。そこには屋根材である茅の特徴や構造が関係していたのです。
茅葺き屋根が雨漏りない理由にはどんな説がある?
茅葺き住居の一番の敵は『火』と言われますが、その昔、茅葺き住居には囲炉裏が置かれ一年中日中は火を絶やさずにいたようです。囲炉裏の煙が家の内側から茅を燻煙することによってヤニが付き、そのヤニが撥水剤代わりになったといわれます。
茅葺き屋根が雨漏りしない理由を解説!
茅葺き屋根が雨漏りしない主な理由は3つあります。
屋根材である茅の特性に注目
雨漏りしない1つ目の理由は、屋根材である茅が自然由来の植物であるということです。
植物である茅は雨に濡れると膨張します。その特徴が生かされ、屋根に葺かれた茅同士の隙間が自然に埋まり、雨漏りを防いでいたのです。
雨水が流れ落ちる構造に注目
雨漏りしない2つ目の理由は、雨水が茅を伝って流れ落ちる構造です。
茅がホースの役割となります。降ってきた雨の水滴がいくつも連なって水の塊へと変わり、茅を伝って軒下へと流れ落ちる仕組みになっています。その茅の特徴が生かされ、雨漏りを防ぐことができていたのです。
屋根の角度に注目
雨漏りしない3つ目の理由は、屋根の角度が急勾配であるということです。
たとえ雨が降っても、屋根に雨水が溜まらなければ雨漏りすることはありません。そのために屋根を急勾配に造り上げ、雨漏りを防いでいたのです。
また、豪雪地帯では雨漏りだけではなく、たくさん降る雪からも家を守っています。パラパラと降る雪ではイメージが湧かないかもしれませんが、雪は積もるととても重いもので、雪の重みで屋根全体が押されてドアが開かなくなったりすることもあります。
急勾配な屋根であれば雪は自然に滑り落ちるので、屋根に雪が積もりにくく、そのため豪雪地帯ではこのような特徴を持つ茅葺き屋根が好まれていたそうです。
茅葺き屋根の葺き替えにかかるコストは?
茅葺き屋根の材料は自然由来の植物を用いているため、経年劣化してしまうのはとても自然なことです。そのため、定期的な葺き替えや修繕作業が必要になります。
では、葺き替えや修繕には一体どのくらいのコストが掛かるものなのかご存知でしょうか?また、どのようにメンテナンスを行うのでしょうか。
屋根を丸々葺き替えるのは高い!
茅葺き屋根の葺き替えは、屋根を全面的に葺き替える『丸葺き』と、一部だけを葺き替える『分割葺き』という二種類の葺き方に分けることができます。
葺き替えにかかるコストは地域や用いる茅の種類にもよるようですが、だいたい2,000万円程度の費用がかかるようです。ここには茅葺き職人にかかる人件費や葺き替え工事に必要な足場代だったり、材料である茅の運搬費用など諸々を含んだ額になるそうですが、それにしても目が飛び出るくらい高いことに驚きます。
表面の修繕だとコストは低くなる
茅葺き屋根の材料として用いられる茅は自然由来の植物なので、表面に苔が生えてくることもあります。その苔の部分を取り除く『苔落し』を行うことで、全体に腐朽が広がるのを防ぐことができます。また、茅の傷みが進んだ部分だけに茅を足していく『差茅(さしがや)』という修繕方法もあります。
部分的に修繕する場合にはまだ使える茅を再利用することも可能なので、屋根全体の葺き替えよりもかなりコストを抑えてメンテナンスすることができるようですが、それでも500万円程度の修繕コストは必要になるようです。
茅葺き屋根はメンテナンスが重要!
茅葺き屋根の材料となる茅はどうしても経年劣化を防ぐことができません。そのため、修繕コストは決して安いものではありませんが、茅葺き屋根を大切に維持していくためには定期的なメンテナンスを行い、必要に応じて修繕作業が必要になってくるのです。
茅葺き屋根はペット用としても人気?
今や茅葺き屋根は人間のためだけではなく、犬などのペットの小屋の屋根造りにも用いられているようです。茅葺きの特徴である断熱性や吸音性、吸湿性に優れているという魅力は人間だけではなく、ペットにとっても快適に過ごすことができるというわけです。
快適で優しい環境を大切なペットにも与えてあげ、それに加え、見た目はアンティーク感が溢れているので人気が出ているようです。ちなみに、茅葺きを用いたペット小屋制作にかかるコストは30〜50万円程度と言われています。
茅葺き屋根の特徴やメリットを理解しよう!
世界中で見ることができる茅葺き屋根ですが、日本の歴史の中でも大切に受け継がれてきたもののひとつであり、今や世界に誇ることのできる世界文化遺産にも登録されているほどのものです。
現在、憧れとも言われる古民家のリノベーションやアンティーク人気に加え、茅葺きの特徴である住居性に優れているというところに注目が集まっています。茅葺きの維持には多大なコストが必要にはなりますが、それ以上の魅力がたっぷりと詰まっています。快適な生活やローライフに憧れる人たちが注目しているのには、納得の魅力があるからなのですね。