『合掌』の本当の意味や由来を徹底解説!葬式で役立つ正しい作法も!
葬儀に参列した時、お墓参りをする時の「合掌」の意味を知っていますか?合掌はお葬式だけではなく、仏教では大切な意味を持つ作法で、日常的に行われています。この合掌の意味と仏教での由来、大人として知っておきたい合掌の作法や手紙に書き添えることの意味を考えてみました。
目次
『合掌』の意味や由来を解説!
『合掌』は「がっしょう」と読み、両手を合わせて、ご先祖様や仏様を拝むときの作法の一つです。右手と左手の手のひらを合わせて、「いただきます」「ごちそうさまでした」といったことは、意味を考えることもなく、何気なく日常でもしていますよね。
この合掌は、仏教と深くつながる由来があります。仏教の発祥の地、インドから日本に伝わったもので、仏様を拝むときに両手を合わせる意味のある行為です。初詣などで両手をあわせて、願い事をすることがありますが、本来は仏様への尊敬と感謝の気持ちを現わすためのものなのです。
合掌の由来となる仏教の国、インドでは、右手は清いもの、左手は不浄のものとして考えられていて、仏教では、右手はけがれのない象徴である仏様を意味します。反対の左手は衆生(しゅじょう)といって、命あるすべてのもの、人間という意味があり、この右と左の二つを合わせることで、人間が仏様と一体になれますように、という意味がこめられます。
合掌することで、両手の平はふさがれてしまいますので、暴力をふるうことはできません。この意味は、相手に敵対する意志がないことを現わしていて、仏教徒の多いタイなどでは、この考えに由来して、日常的に挨拶の時に手を合わせて、相手への敬意を表現しています。挨拶とともに、手を合わせるのも意味があるのです。
日常で行われる『合掌』の意味とは?
日常的に合掌する行為は、意味までは考えずに、身近で何気なく行われています。食事する前の「いただきます」は、幼い時に、親などから食事マナーとしてやり方を教わり、意味を考えることもなく、大人になっても続けている人も多いものです。そこには本来の意味があって、食事を作ってくれた人、食材を育ててくれた人、食材となった植物や動物への感謝を現わすための合掌です。
「ごめんなさい」とお詫びをする時や、「お願い!」と相手に懇願する時にも、深い意味はなくても、手を合わせていませんか?これは、仏様を拝むのと同じくらいの気持ちをこめているということに由来しているともいえ、誠心誠意、心をこめていますという意味の現れとも考えられます。
また神社などで神様へのお願いをする時にも合掌をしますが、本来は日ごろの感謝や神様への敬意を現わすための、意味あるものなのです。
仏教では、僧侶の挨拶として、意味をこめた合掌が使われます。「おはようございます」というだけでなく、向こうから歩いてくる人とすれ違う時、その場を去る時、食事を食べる前後などにも、静かに合掌をします。タイの仏教徒が日常的な挨拶と同様に、相手への敬意、食事やあらゆるものへの感謝の気持ちをこめて、手を合わせる意味ある作法です。
仏教で行われる『合掌』の意味とは?
インドでの敬礼する作法、やり方である「アンジャリ」というサンスクリット語を訳したものが「合掌」です。インドだけでなく、仏教国であるアジア一帯では、日本人が挨拶の時に頭を下げて会釈をするように、挨拶をする時には、相手への敬意という意味をもって合掌をするというやり方をします。
合掌のやり方を生み出した仏教の由来は、インドでお釈迦様が説かれたことにあります。
後にお釈迦様となるゴータマ・シッタルダは紀元前4~5世紀の頃、インドのシャカ族の王子として誕生しました。結婚をして息子も誕生し裕福に暮らしていましたが、「生・老・病・死」からは、誰も逃れられないという思いが強くなり、29歳で出家をしました。インドで苦行をしても、なかなか悟りに到達できずにいました。そこで荒行を捨てて、座禅と瞑想に没頭し、35歳で人間の真理を悟り「ブッダ(仏陀)」になりました。
そこから誰でもが悟りをひらくことができると、ブッダは人々に説法しながらインド中を周りました。このブッダを慕ってたくさんの人が集まり、これが仏教となっていきます。
インドで仏教が広まると、インドを訪れた、孫悟空の物語でも知られる三蔵法師によって、中国に仏教が伝わります。日本では奈良時代になると、中国との行き来をすることで、仏教が伝わりました。こうして、インドから中国、中国から日本へと仏教が伝わり、現代では世界中に仏教徒がいます。
始まりのインドでは、お釈迦様が言葉で、人の在り方などを話して聞かせる説法で聞かせていたため、伝言ゲームのように解釈や意味合いがいくつかに分かれて伝わりました。そのために、いくつかの宗派が誕生していきましたが、合掌という作法は、仏教の誕生の頃から意味ある作法として、共通しているものと考えられます。
お葬式で行われる『合掌』の意味とは?
お葬式に参列すると、故人の遺影の前で、少なからず合掌をし、お焼香をすることがあります。この時の合掌の意味として、亡くなられた方への思いを込めて、「お疲れさまでした」「ありがとう」や「寂しいよ」といった気持ちでお別れの挨拶の意味で合掌をしている人も多いと思います。
仏教としては、亡くなられた方が、仏様のそばへ行き、あの世での修業を始めるにあたって、亡くなった人のことを仏様に「故人のことをよろしくお願いします」という気持ちを込めるための、意味を持った合掌です。
お葬式の時には、合掌とあわせて焼香もします。この焼香は、仏様と亡くなった人へ香を焚いて、拝むという意味を持つものです。香を焚くことで、心と身体の穢れを取り除き、清らかな気持ちで合掌するための作法でもあります。
焼香のやり方の基本は、右手の親指、人さし指、中指の3本で、細かくした香をつまんで、目の高さまでもち上げて、指をこすりながら、香炉に落とします。この時に、左手は合掌のように手のひらを右手の方に向けたままでもよいですし、数珠を軽く握っておくというやり方もあります。
手紙での『合掌』の意味とは?
手紙で、文末に「合掌」と書いてあるものがあります。相手への尊敬の意味を込めて、始まりを「拝啓」として、締め部分が「敬具」といった組み合わせが、心をこめて書く日常の手紙の定番ではありますが、「合掌」を「敬具」の代わりに使うこともあります。
この文字となって手紙に書かれる「合掌」にも、手を合わせる作法と同じ意味があって、相手を敬う気持ちが込められています。近い言葉で「九拝」と書いてあるものもありますが、意味合いはほぼ合掌と同じです。中国の礼拝の作法で9種類のものがあり、そこから転じて、相手への敬意の意味で手紙に記すこともあります。
もし知人や親戚などが亡くなり、やむを得ず弔問できないときには、手紙や電報で弔意の意味を伝えることがあります。そうした場合には、手紙の書きはじめに、「拝啓」「前略」といった頭語は書かずに、冒頭からお悔やみの気持ちを書きます。そして、結びの言葉として「合掌」を添えることで、手を合わせています、という意味になり、悲しみやお別れの気持ちも伝えることができます。
『合掌礼拝』のやり方・作法を解説!
お葬式だけでなく、法要や仏様の前では「合掌礼拝(がっしょうらいはい」をすることがあります。簡単には、合掌は両手を合わせること、礼拝は頭を下げるというものです。和尚さんが掛け声のように、「合掌」と言ったら、その場に参列している人は手を合わせ、「礼拝」の声で頭を下げます。これだけでも間違いはないのですが、正しいやり方と作法を紹介します。
両手は胸の下、みぞおちの前あたりで合わせます。この時に、両手の手首の辺りが、軽く体にふれるかふれない程度にそろえ、親指以外の指先は真上ではなく、少し前の方へ傾けるように、45度程度斜め上を向くようにします。
数珠を持っていれば、数珠の結び目、房が自然と下にたれるようにして、両手の親指、または左手の親指にかけて右手を添えます。そして、ご本尊やお仏壇の正面をみつめて、上半身をそのままゆっくりと前方に傾けます。45度くらいまで上体を倒したら、ゆっくりと元へ戻し、合掌をときます。これが「合掌礼拝」になります。
子どもや慣れていない人には、意味や思いなどは分からないかもしれませんが、仏様への感謝の気持ちをこめて、ゆっくりと合掌礼拝をすることで、周りからみても気持ちよく、自然と自分の気持ちも平穏になります。
仏教以外での『合掌』に近い作法とその意味とは?
神道では「合掌礼拝」に近いものとして、玉串といわれる榊(さかき)を神様に捧げて、二礼二拍手一礼するという作法があります。意味としては、お焼香に近く、榊を神様や故人に捧げます。
「二礼二拍手一礼」は、神社を訪れてお詣りするときの作法として知っている人も多いと思います。礼や拍手の数は神社によって異なることもありますが、拍手をすることの意味は、自分の穢れをはらう、神様をお呼びするためというものです。神道のお葬式では、拍手の動作だけをして、音をたてない「しのび手」という作法があります。
キリスト教では、合掌に近い作法で、胸の前や口の辺りで、両手を合わせたり、両手の指をクロスさせるように握ったりします。手のひらを合わせるという行為は、意味と合わせて仏教と通じるものですが、手を合わせて握るようにした両手の間に、キリストが宿るという意味もあります。
十字架の前で膝まづき、両手を合わせて目を閉じ、ゆっくりと時間を過ごすことで、神と自分が一体一で向き合うことを大切にしています。大切な人が亡くなった時だけでなく、日々が平穏であることの祈りの意味や、物事を始める時などにキリストのご加護があるようにと祈の意味で、両手を合わせます。
『合掌』をする正しい意味を学ぼう!
日常的にも合掌する機会は、たくさんあります。お葬式だけでなく、仏様やご先祖様への敬意や感謝の意味を込めて、お仏壇に向かって合掌をすること、食事の前に食材や作ってくれた人に感謝の意味での合掌をすることなど、合掌はとても身近なものです。この意味を知って、一つの合掌でも心をこめて合掌してみてくださいね。