扁桃体の役割とは?過活動による悪影響や子供との上手な関わり方も!

人間の脳内には様々な働きをする部位があり、中でも扁桃体は人間の感情コントロールの重要なカギを握ります。扁桃体の働きについて知ることは、人間の心と体の関係について知ることで、うつ病やパニック障害という近年増えている心の病に対する対処法を考えるうえでも大切です。

扁桃体の役割とは?過活動による悪影響や子供との上手な関わり方も!のイメージ

目次

  1. 1扁桃体について知ろう!
  2. 2そもそも扁桃体とは?
  3. 3扁桃体が過活動になることによる悪影響5つ!
  4. 4扁桃体が過活動状態の子供との上手な関わり方8つ!
  5. 5扁桃体が原因でなる病気はある?
  6. 6扁桃体の働きを理解し、体としっかり向き合おう!
  7. 7出典はこちら

扁桃体について知ろう!

扁桃体(へんとうたい)は、脳の側頭葉内側の奥にある神経細胞の集まりです。位置としては目の奥のあたりというと分かりやすいかもしれません。扁桃体は脳の中で、感情の形成に関わる非常に重要な部位です。扁桃体について知ることは、人間の感情について理解を深めることになるのです。

脳

そもそも扁桃体とは?

扁桃体は、脳の左右にある神経細胞の固まりでアーモンドのような形をしているので、扁桃(アーモンドの和名)という名前がついたといわれています。扁桃体は大脳辺縁系の一部であると考えられており、周辺には記憶に関わる海馬(かいば)という部位があります。海馬が最初に視覚や味覚といった感覚器からの記憶情報をまとめて扁桃体に送り、それが「快」であるか「不快」を瞬時に判断しているのが扁桃体です。海馬と扁桃体との間で人間の感情を作り出しているといっても過言ではありません。

扁桃体の主な役割

扁桃体は、直観力・恐怖・記憶形成・痛み・ストレスなどから起こる人間の感情の処理と、その感情から起こる反応について重要な役割を果たしています。視覚や味覚といった感覚器からの記憶情報を元に、瞬発的に扁桃体が「快」か「不快」かを判断し、自律神経機能とホルモン分泌の中枢である視床下部へ伝えられ、心臓の拍動が早くなり胃腸の動きが変化するといった自律神経反応を引き起こします。例えば恐怖を引き起こすような刺激を受けた時は、瞬時に扁桃体から情報が伝達され、すくみ上がるといった体の行動に現れるのです。

感情とは、扁桃体が下した評価を体に伝えるメッセージなのです。しかし、扁桃体の反応はスピード優先であるため、瞬発的で感情が爆発し行動が過剰になる時があります。そういった過剰反応を抑える役割を担っているのは前頭前野(ぜんとうぜんや)です。

脳 イラスト

扁桃体が過活動になることによる悪影響5つ!

 脳内で情動の中枢とも呼ばれる扁桃体は、特に不安や恐怖といった感情に深くかかわっているため、扁桃体が過活動になることによって人間の感情処理や行動に悪影響が出ることがあります。

①感情のコントロールが難しくなる

瞬発的な強い感情や衝動を生み出す扁桃体が過活動になるということは、感情のコントロールが難しくなるということです。扁桃体の興奮を抑える働きをするのが、脳の中でおでこ側にある前頭前野という部位ですが、脳は後ろから前へと成熟が進むため子供は特に「前頭前野」は未発達なままであり、大人よりも感情が爆発しやすいのです。

パニック

②怒ったり、キレやすくなる

扁桃体の過活動を抑える役割を担うのが前頭前野という部位です。その前頭前野の機能をスムーズに動かすために必要なセロトニンという神経伝達物質が疲労やストレス、夜型生活、運動不足などが原因で現代人には不足しているというデータがあります。前頭前野が働かないということは、扁桃体からの恐怖や不安の信号が過剰に高まり、その結果動物的本能として不快とみなした対象を即攻撃するという発作的な過剰反応が起こるのです。

近年のスマホを眺め続ける生活や運動不足は子供たちの前頭前野の発達を妨げ、感情をコントロールできず我慢ができない子供やすぐキレやすい子供が増えている原因と考えられています。

ケンカ パンチ

③コミュニケーションをとることが難しくなる

人と人とがコミュニケーションをとる上で、感情をコントロールすることは必要です。腹が立つことやイライラとするような言動を相手がとった時に、すぐに感情的になり攻撃していてはコミュニケーションをとり人間関係を構築することはできません。扁桃体が過活動になりやすい人は、ちょっとしたきっかけで恐怖や不快を感じがちです。その感情を抑制する役割である前頭前野が不活性なため、感じたままに「やられる前に攻撃しよう」とか、「すぐ逃げよう」という突発的な行動に移してしまいがちなのです。

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④学習能力・記憶力が低下する

扁桃体が興奮しやすくなってしまうと、脳の中で近くに位置する海馬の発達に影響が出てしまいます。海馬は記憶を司っている部位なので、海馬が大きい方が記憶力が良いといわれています。しかし、扁桃体と海馬の働きにバランスがとれていない状態の場合、海馬が機能的に働かず学習能力や記憶力に悪影響を与えるのです。

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⑤睡眠不足

扁桃体の過活動が続くと、不安や恐怖を感じやすくなるためストレスに常にさらされ、扁桃体が興奮しつづけることで血圧上昇を引き起こし、不眠状態となります。睡眠不足によって扁桃体を抑制する役割を持つ前頭前野との機能的持続性が弱まり、扁桃体はますますネガティブな情動刺激に対して過剰反応を起こすという、悪影響を与えるのです。

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扁桃体が過活動状態の子供との上手な関わり方8つ!

子供は扁桃体を抑制する役割を持つ前頭前野が未発達のため、大人以上に扁桃体が過剰に活動するおそれがあります。子供が扁桃体の過活動状態に陥った時にどうするべきか、親の関わり方を考えていきましょう。

①無理はさせない

子供に対して何かを禁止したり行動を制限したり、命令口調の言葉で指令するような関わり方を続けていると、子供は常に緊張を強いられている状態で生活することになります。緊張状態が続くことが扁桃体にでストレスを与え、記憶を司っている海馬で親に叱られた記憶が蘇ってきてしまい、子供は親の前で感情がコントロールできなってしまうのです。

扁桃体が過活動な状態の子供に対してさらに禁止や命令をすると、ますます子供は親との関わり方が分からなくなり暴力的になったり、逆に引きこもってしまったりという悪影響しか与えません。褒めたり、認めてあげたり、失敗しても励ますようなフォローを多くし、プレッシャーを与えすぎて無理をさせないようにしましょう。

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②騒いだりはしゃいだりする時間を大切にする

日々の生活の中で、子供が友達や親と大騒ぎしたり、はしゃいで羽目を外すような時間も大切にしましょう。大騒ぎすることで、扁桃体の過活動により高まっている攻撃性を上手に発散させることができます。また、遊ぶ時は思い切り騒いでも良いが食事の時間はきちんとマナーを守ってご飯を食べる、というよう場所や時間をわきまえることを子供に経験させることで、扁桃体の過活動を抑え衝動をコントロールする力を養うことができます。生活の中でメリハリをつけることが子供の脳に良い影響を及ぼします。

子供 川遊び

③周りが笑顔でいる

扁桃体が過活動な状態の子供は、攻撃性が高まっています。親が怖い顔で怒っていると、扁桃体は親を恐怖・不快ととらえ、反抗的になったり殻に閉じこもってしまったりする可能性があります。笑顔で自分のことを見てくれている親に対しては、自分に危害を加えようとする恐怖の対象ではなく、安心感を与えてくれる人と認識するのです。安心してストレスの少ない状態で生活できるよう、親が関わり方を変えることで扁桃体の活動を抑えることができます。

笑顔 子供

④楽しかった記憶を思い出す

扁桃体は記憶を司る海馬のすぐ近くにあり、そのため、例えば強いストレスにさらされ続ける生活を送っていると、つらい記憶が蓄積されてしまい、何かのきっかけで爆発してしまうという悪影響を引き起こします。しかし裏を返せば、扁桃体と記憶との深いつながりを利用し、楽しかった記憶を思い出すことで扁桃体の過活動を抑制することができるとも考えられます。

子供が扁桃体の過活動により不安定な状態になっている時に、親は家族旅行の写真やビデオを見せて楽しかった記憶を思い起こし、また家族でにこやかに語らえるような関わり方をすると良いでしょう。

⑤過去のトラウマを解消する

扁桃体と記憶というものに深いつながりがあり、過去のトラウマが扁桃体の過活動を引き起こす原因になることがあります。過去のトラウマを記憶の奥深くに無理に封じ込めようとしても、脳内では蓄積されてしまっていて、扁桃体に悪影響を与えています。それならば、辛かったことや苦しかった経験をできるだけ自分の口から語らせてあげましょう。親は子供が語ることに耳を傾け、辛い気持ちを吐き出させてあげて、もう大丈夫なんだと安心させるような関わり方をしていきましょう。

⑥太陽を浴びる

扁桃体の活動を抑制する前頭前野の働きを助けるセロトニンという物質を分泌させるために、太陽の光を浴びることが重要になります。太陽の光を浴びると、目から脳に信号が出され脳内でのセロトニン合成が活発になるのです。そもそも人間は、日の出とともに活動して、日没になったら休むというサイクルで生活してきました。しかし現代の子供は夜にゲームやテレビを見てなかなか眠らず、朝が遅いという昼夜逆転の生活になりがちです。親は子供を日中は太陽のもとに連れ出し、夜は早めに良質な睡眠をとるように促していきましょう。

子供 太陽 草原

⑦運動習慣をつける

扁桃体の過活動を抑制する神経物質のセロトニンは、呼吸や咀嚼(そしゃく)・歩行など、一定のリズムをとる行動にも大きく関わっています。そのため、リズミカルな運動を行うことはセロトニンを増やすのに効果的なのです。セロトニンを増やすために、無理な運動をする必要はありません。おすすめはウォーキング・ジョギング・自転車・水泳・軽い縄跳び・軽いスクワットなど、単純な動作をリズミカルに繰り返す運動です。公園に子供を連れだし、太陽の光を浴びながら親子で散歩するだけでも十分扁桃体の活動を抑制することができます。

運動 子供

⑧食事に気をつける

扁桃体の活動を抑制するセロトニンは食生活を見直すことで、作り出すことができます。セロトニンの材料である必須アミノ酸トリプトファンを積極的に摂取することが重要です。トリプトファンは、タンパク質から摂ることができますので、お肉や魚、大豆、卵、豆腐、納豆、バナナ、牛乳、豆乳、チーズ、ナッツ類、プロテインなどを子供に積極的に食べさせるようにしましょう。

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扁桃体が原因でなる病気はある?

扁桃体の活動がバランスを欠くことで、体や精神状態に悪影響を及ぼし、病気を引き起こすことがあります。

うつ病

脳内では扁桃体と海馬、前頭前野がお互いに影響しながら連携して活動していることは前にもお伝えした通りです。しかし長期間のストレスが蓄積し、扁桃体が過剰に反応し続けると、前頭前野が正常に機能しなくなってきます。思考・判断・意欲をつかさどる前頭前野が機能しなくなると、判断力が衰え、意欲も低下することになります。また扁桃体の暴走によって過剰なストレスホルモンが分泌され続けると、そのストッパー役の海馬がコントロールできなくなり萎縮することで、記憶力が減衰します。こうして判断力が鈍り、意欲がなくなり、そしてもの忘れも多くなる、「うつ病」の症状が現れるのです。

うつ 落ち込む

パニック障害

扁桃体は快・不快の感情情報を海馬に伝えます。この海馬は記憶を一時的に保存したり、大脳皮質にデータを送り、長期保存をする、さらにこの長期保存されたデータを呼び出すことができます。特に扁桃体を激しく活動させる出来事は、強い記憶としてデータ保存されます。つまり、ある衝撃的な出来事が起きると、まず扁桃体は過剰に反応し「恐怖の記憶」として、データ保存されます。この「恐怖の記憶」のデータは強烈ゆえに繰り返して思い出され、さらに扁桃体を過活動させることになります。「恐怖の記憶」と同じようなきっかけが起こった時に、扁桃体が過剰に反応し感情がコントロールできない状態になる、これがパニック障害です。

パニック

扁桃体の働きを理解し、体としっかり向き合おう!

扁桃体それ自体は、人類が外敵から素早く身を守るため発達した脳の部位であって、重要な機能です。問題は扁桃体と海馬、前頭前野の働きがバランス良く連携して機能しているかどうかということです。扁桃体が正常な働きをできるよう、生活習慣や食事、親は子供との関わり方を見直し、心と体の動きに向き合いましょう。

脳 骸骨

出典はこちら

ハートクリニック こころのはなし

病気スコープ パニック障害

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horst430
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