『遠くの親戚より近くの他人』の意味や使い方!本当に正しいの?
「遠くの親戚より近くの他人」ということわざは、日常会話の中でもよく使われる言葉です。ことわざは、意味や使い方を知らないと会話をする上で困ることがあります。そこでこの記事では、「遠くの親戚より近くの他人」の意味や由来、使い方について詳しくご紹介します。
目次
「遠くの親戚より近くの他人」って本当なの?
みなさんは「遠くの親戚より近くの他人」ということわざを知っていますか?ことわざは日常会話の中でも使われることがあり、知らないと会話が成立しないので困りますよね。この記事では、「遠くの親戚より近くの他人」の意味や使い方についてご紹介していきます。
「遠くの親戚より近くの他人」の意味とは?
「遠くの親戚より近くの他人」とは、いざという時は遠くにいる親戚よりも近くにいる他人の方が頼りになるという意味のことわざです。また、疎遠な親戚よりも仲の良い人の方が助けになるという意味でもあります。
親戚は血が繋がっていても、遠く離れていて会う回数も少ないとだんだん心の距離も遠くなっていきます。日常生活の中で緊急事態の時には、他人であっても親しくしている人や近くにいる人の方が助けになることが多いですよね。「遠くの親戚より近くの他人」ということわざは、血のつながりだけでなく、ご近所同士の関係も大事にしなさいという教訓でもあります。
「遠くの親戚より近くの他人」の由来は?
「遠くの親戚より近くの他人」の由来は諸説あります。こちらでは、このことわざの出典と言われている中国の古典と日本の古典を1つずつご紹介します。
中国の古典による由来
「遠くの親戚より近くの他人」の由来は、中国の古典にあるという説があります。その出典は、中国の明時代に孔子・孟子・老子・荘子などの言葉を集めた「明心宝鑑」です。この中にある「遠水難救近火、遠親不如近隣」が由来だと言われています。この言葉は「遠くの水で、近くの火事を消すことはできない。 遠くの親類は近隣の人には及ばない」という意味です。この中国の古典の言葉が「遠くの親戚より近くの他人」の由来になっています。
日本の『毛吹草』による由来
日本の『毛吹草』(1645年)も「遠くの親戚より近くの他人」の由来とされています。この本の中には「とをきおや子よりちかき隣」という言葉があります。日本で「遠くの親戚より近くの他人」という言葉は、昔「遠き親子より近き隣」という言い回しだったようです。この「親子」が親類・親戚と広い意味に捉えられるようになり、「遠い一家より近い隣」「遠き親類より近き他人」という表現に変化していったとされています。
「遠くの親戚より近くの他人」の使い方と例文
「遠くの親戚より近くの他人」という言葉は、どういう時に使うのでしょうか?使い方を学ぶため、2つ例文をご紹介します。
「主人が倒れて急に病院に行かなければ行けなくなりました。保育園に預けている子どもを迎えに行けなくて困っていたら、近くに住む友達が迎えに行って面倒を見てくれて助かりました。やっぱりこういう時は、遠くの親戚より近くの他人ですね。」
「地震で家が壊れた時、助けてくれたのは近所の人たちだった。あの時は本当に遠くの親戚より近くの他人だと強く感じた。」
このように特に緊急事態の時、手を差し伸べてくれるのは近くの隣人や友人であることが多いです。「遠くの親戚より近くの他人」ということわざは、親族よりも身近な人にお世話になった時に使う言葉だと言えます。
「遠くの親戚より近くの他人」はどういう時に感じる?
何かトラブルがあって不安な時は、誰に相談しようか迷う人も多いと思います。そんな時親族より身近な友人・知人を思い浮かべた人は、「遠くの親戚より近くの他人」だと感じるでしょう。このように「遠くの親戚より近くの他人」は困っていてすぐに助けが必要な時や、緊急事態を救ってもらった時に感じることが多いです。
「近くの他人より遠くても親戚」という時もある!
ここまで「遠くの親戚より近くの他人」と感じる場面をご紹介してきましたが、やはり「近くの他人より遠くても親戚」という時もあります。例えば、シングルマザーの人が病気になって入院しないといけなくなった場合、しばらく子どもを預かってくれる人が必要になります。一時的だったら友人にもお願いできるかもしれませんが、長い期間お願いすることはなかなか難しいです。そんな時は遠くても、血の繋がった両親や親戚が頼りになります。
このように友人や知人には頼みにくいようなことも、親族ならお願いできる可能性があります。そんな時には、「近くの他人より遠くても親戚」と感じるでしょう。
「遠くの親戚より近くの他人」の類義語
「遠くの親戚より近くの他人」の類義語には、「遠い一家より近い他人」「遠き親子より近き他人」「遠親は近隣に如かず」「遠水喉を救わず」「遠水近火を救わず」などがあります。先ほどご紹介しましたが、「遠くの親戚より近くの他人」は言い回しが変化してきた言葉です。類義語である「遠い一家より近い他人」「遠き親子より近き他人」は言い回しが変化していく中で派生した言葉なので、意味は「遠くの親戚より近くの他人」とほとんど同じです。
また類義語の「遠親は近隣に如かず」「遠水喉を救わず」「遠水近火を救わず」は、中国の古典の「遠水難救近火、遠親不如近隣」からできた言葉です。このように「遠くの親戚より近くの他人」の類義語はたくさんありますが、意味はほとんど同じものが多いです。遠い身内より近くの他人の方が助けになるという意味で使う時は、「遠くの親戚より近くの他人」を使うことが多く、類義語はほとんど使われません。
「遠くの親戚より近くの他人」の対義語
「遠くの親戚より近くの他人」の対義語には、「血は水よりも濃い」ということわざがあります。こちらでは対義語の「血は水よりも濃い」についてご紹介します。
「血は水よりも濃い」の意味とは?
「血は水よりも濃い」は「遠くの親戚より近くの他人」の対義語で、血の繋がりは他人同士の絆よりも強いという意味です。「血」がつく言葉には他にも「血を分けた」「血は争えない」などがあり、いずれも血縁関係の強さを示しています。
「血は水よりも濃い」の由来は?
「血は水よりも濃い」は元々西洋のことわざで、「水は跡を残さずに蒸発するが血は跡を残す」という意味の英語"Blood is thicker than water"が由来です。水が他人との繋がりを指し、血が親類との繋がりを指しています。他人との繋がりはあっさり消えるが、血の繋がりは後を残して消えないという意味のことわざです。まさに「遠くの親戚より近くの他人」とは真逆の意味の対義語です。
日本では他人行儀を「水臭い」、家族だけで過ごすことを「水入らず」と言うなど、「水」には他人を表す意味合いがありました。そこで日本に伝わった後に英語を日本語訳する際、「血は水より濃い」という表現になったとされています。
「遠くの親戚より近くの他人」の英語表記
「遠くの親戚より近くの他人」は英語でも表現されます。英語表記は"A near friend is better than a far-dwelling kinsman."(遠い親戚より近くの友人の方が良い)"Good neighbor is better than a brother far off."(良き隣人は遠くの兄弟より良い)などです。いずれも近くの隣人・友人の方が遠くにいる家族・親戚より良いという意味の英語です。
英語以外の地域ではどのような表現があるの?
「遠くの親戚より近くの他人」は中国の古典の中や英語での表記もありますが、他にも様々な国で似たような表現があります。例えばイタリアでは「遠いところの水は、火を消せない」という言葉がありますが、これは中国の古典の表現と似ています。またドイツでは「良き隣人は遠い親戚に勝る」、南アフリカでは「よき隣人は遠くの兄弟よりありがたい」という表現があり、先ほどご紹介した類義語の表現と似ています。
少し変わった表現だと、スリランカの「遠くにある鍛冶屋より、家にある砥石の方がいい」、タンザニアの「遠い家族よりも隣人の死を悼め」があります。それぞれの国の文化に合った表現になっているようです。
【番外編】ことわざを使う意味や効果とは?
ことわざは短い文字の中にも、しっかりとした意味を持っています。使い方次第で、端的にいろいろなニュアンスを伝えることができる言葉です。例えば、困った時に親戚より近くの友人の方が助けになったという内容のエピソードを聞いた時、ただ頷くだけでなく「やっぱり遠くの親戚より近くの他人だね」と返答したとします。そうすると、エピソードをきちんと理解して聞いていたことが伝わります。このようにことわざを使うと、エピソードを凝縮して分かりやすくまとめる効果があります。
またことわざには、類義語や対義語があるものも多いです。例えば「善は急げ」と言いますが、対義語には「せいては仕事を仕損じる」ということわざもあります。対義語も理解しておくことで、会話もよりスムーズになりますし、教訓にもなります。
「遠くの親戚より近くの他人」の意味を理解して使ってみよう!
「遠くの親戚より近くの他人」の意味や使い方、どんな時に感じるのかをご紹介してきました。「遠くの親戚より近くの他人」だと感じたことがある人も多いのではないでしょうか?ことわざの意味を理解して上手く使えれば、より知的な会話をすることができます。ぜひ会話の中に取り入れてみてください!