エピソード記憶とは?鍛える方法や意味記憶との違いも!
覚えることが難しい、すぐ忘れるといった人にもピッタリの勉強法があります。長期記憶のひとつである「エピソード記憶」を有効活用すると記憶力をあげることができるのです。エピソード記憶を鍛える方法とは?エピソード記憶と意味記憶との違いも紹介します。
目次
エピソード記憶は大人にピッタリの勉強法!
大人になるにつれ、「覚えることが難しくなった」「すぐ忘れるようになった」と思うことはありませんか?記憶力は年々衰えすぐに忘れるからと勉強を諦めがちですが待ってください。覚え方を変えればいいのです。
物忘れしがちな大人にピッタリの「エピソード記憶」という勉強法があります。ここではそのエピソード記憶について詳しく紹介していきます。
そもそも「エピソード記憶」とは?
エピソード記憶の前に、まずは記憶とはどんなものなのかひとつずつ見ていきましょう。
記憶には大きく分けて2種類があります。それはごく短期間だけ覚えている短期記憶と、長期間覚えている長期記憶です。
長期記憶のひとつ
長期記憶は「宣言的記憶」と「非宣言的記憶(手続き的記憶)」にわけることができます。言葉にできる記憶と言葉にできない記憶(潜在記憶)ということです。
このうちの宣言的記憶がさらに「エピソード記憶」と「意味記憶」とにわけられます。エピソード記憶とは長期記憶のひとつなのです。
体験を通して覚えた記憶
エピソード記憶の例としては、例えば「先週の日曜日に家族全員で動物園に行った」や「昨日、会社から帰る電車の中で偶然にも高校時代の友人と出くわした」というような個人の体験を通して覚えた記憶がエピソード記憶です。
エピソード記憶は時間や場所やその時に感じた感情とともに記憶されます。自分で自分の記憶の中に探りあてた時に「覚えてる」となる類の情報がエピソード記憶なのです。
エピソード記憶は「5W1H」、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どうやって(How)という情報と関連付けて覚えやすく、また思い出しやすくしています。
エピソード記憶は長期記憶なので比較的長期間覚えておくことが可能なのです。
エピソード記憶と対立的な意味記憶とは?
エピソード記憶と対の位置にあるものとして「意味記憶」というものがあります。エピソード記憶が個人的な思い出や経験を覚えているのに対して、意味記憶は特定の時間や場所とは関係ありません。
例えば「空は青い」や「2×3=6」、「794年に平安京に遷都」などといった学校の授業で丸暗記して勉強したような情報はエピソード記憶ではなく意味記憶に収納されます。自分で自分の記憶の中に探りあてた時に「知ってる」となる類の情報です。
ある意味抽象的な意味記憶を明確な具体的なエピソード記憶へと変えることで思い出しやすくすることができます。受験勉強などにもエピソード記憶が効果を発揮します。エピソード記憶を上手に活用していきましょう。
エピソード記憶の鍛え方6選!
大人が勉強するのにはエピソード記憶を活用すると効果があらわれやすいと言われています。そこでエピソード記憶の鍛え方を6つ紹介します。
1. 法則性を見つけて覚える
エピソード記憶の鍛え方の1つ目は「法則性を見つけて覚える」ということです。その法則は多少力技の無理矢理でも構いません。
「1.41421356」といった数字の羅列を忘れることのないようにするのには骨が折れますが「一夜一夜に人見ごろ(ひとよひとよにひとみごろ)」と語呂合わせすれば√2が簡単に覚えられるように、自分なりの法則に当てはめてエピソード記憶にするのです。
2. 体験して学ぶ
エピソード記憶の鍛え方には「体験して学ぶ」ということもあります。例えば外国語を覚えたい時は、テキストをひたすら読み込むよりその言葉を使う国にいったりその言葉を使う友人を作ったりして実際に使ってみる方がエピソード記憶として覚えられます。
また、パソコンをはじめとした電気製品も分厚い説明書にあたるより、使い続けていればエピソード記憶として操作方法を覚えることができます。ことわざでいう「習うより慣れよ」というのはエピソード記憶と同じ状況です。
3. 覚えた知識を人に話す
「覚えた知識を人に話す」ということもエピソード記憶を鍛えることに繋がります。覚えた知識を家族や友人に話すことを前提にしているとしっかり覚えていようと集中しますし、話すことで記憶は補強され、話したことで反応があればエピソード記憶として覚えています。
例えばワインセミナーに通い、そこで得た知識を友人に披露して感心されたなら本だけ読んで得た知識よりもずっと忘れることなくエピソード記憶に残る出来事となります。
4. 人から教えてもらう
エピソード記憶を鍛えるには「人から教えてもらう」ということも効果的です。人に話したり話してもらったりしたことは耳から入るため、聞いて覚えるタイプ(聴覚優位)の人は教えてもらうことが有効的です。
見て覚えるタイプ(視覚優位)の人は写真や図を使うと文字だけの時より覚えやすくなります。どちらの人にも有効なのが映像や動画などに教えてもらうことです。聴覚も視覚もフル活用でき、エピソード記憶として残ります。
5. 色々な形式の問題を解く
エピソード記憶の鍛え方はまだあります。それは「色々な形式の問題を解く」ということです。同じひとつの事柄に対して様々な角度から取りかかることでエピソード記憶としての立体感が増し覚えやすくなります。
例えば「ときたまご」が何かご存知でしょうか。漢字はと聞かれたら「溶き卵」ですし、料理に使うなら「生卵を割ってかき混ぜたもの」が正解で、近頃の男の赤ちゃんの名前に人気の止め字を尋ねられたならそれは「と・き・た・ま・ご」です。
6. 実践を繰り返す
エピソード記憶を効率的に鍛えられるのはやはり「実践を繰り返す」ということです。もし外国語を勉強したいならやはりその言葉を話す友人と話したりその言葉を使う国に行ったりして実際に使っていくと忘れることなくだんだんエピソード記憶に刻み込まれていきます。
失敗しても構いません。鉄を鍛える時と同じように何度も叩くことによって覚える力も強くなっていくのです。失敗しても実践を繰り返すことがエピソード記憶の強化に大事です。
他にもある!記憶の種類とは?
記憶の種類にはエピソード記憶の他にもいろいろあります。短期記憶にまつわるワーキングメモリーやマジカルナンバー7、長期記憶の中の非宣言的記憶に含まれる手続き記憶やプライミング記憶などです。
ワーキングメモリー
ワーキングメモリー(作業記憶、作動記憶)は短期間だけ情報を覚えておきながら作業をする能力のことです。会話をする時や読み書き・計算をする時などに必要な情報をその短期だけ覚えて処理をする日常生活において重要な能力です。
ワーキングメモリーはよく作業机に例えられます。机に乗ってきた本(情報)を整理していらないものは捨て(消去)、長く必要になるものは本棚(長期記憶)へと移動させるのです。机の広さや処理能力の速さなどは人それぞれ違います。
ワーキングメモリーにはその容量に限界があると考えられています。その限界については次項の「マジカルナンバー7」において紹介しています。
マジカルナンバー7
人がワーキングメモリー(短期記憶)で持ち得る情報の数は7のプラスマイナス2の範囲内(5〜9)と言われています。意外に少ないと思われるでしょうか。この記憶の単位はチャンク(塊)として扱われるので、ひとつにたくさん詰め込むことも可能です。
例えば「頁」という漢字を覚える時、1画ごとに覚えようとすると9チャンクも必要ですが「一」「ノ」「目」「ハ」だと4チャンク、「頁」だと1チャンク、「総頁数」は1画ごとだと36チャンク必要でも単語としてなら1チャンクで済みます。
近年の研究では実践を繰り返すの限界数は4プラスマイナス1(3〜5)だということが明らかとなり、マジカルナンバー4またはマジカルナンバー3と言われるようになってきています。
例えば090-012-345だと数字9個でも3チャンクだからすぐ覚えられるのに対し090-012-345-678-910-123-456も7チャンクですが覚えるのはかなり難しいでしょう。
手続き記憶
手続き記憶とは、あえて言語化されていない記憶のことです。無意識のうちに体が覚えていること、例えば自転車の乗り方だったり箸の使い方だったりするような類です。繰り返しの経験により獲得されました。
長期記憶の中でもエピソード記憶とは異なる場所を使用しています。フィクション作品でよくある「記憶喪失」で過去の記憶を失っても日常生活が送れるのは衝撃でエピソード記憶を失っても手続き記憶が残っているためでしょう。
プライミング記憶
プライミング記憶とは先入観の影響を受ける記憶です。事前にインプットされていた情報に引っ張られ勘違いをしてしまうことがあります。プライミング効果と呼ばれることもあります。
例えば「ワーキングメモリー、マジカルナンバー7、手続き記憶、プライミンク記憶」と書いてあったら普通に「ぷらいみんぐきおく」と読んでしまうのではないでしょうか、「プライミンく」と書いてあっても。これがプライミング効果です。
事前のインプット情報によりしっかり読むことなく単語を認識することは速く読む際にはとても有益です。なるべく速く問題文を読まないといけないテスト中や勉強中などにはかなり使っている能力です。
エピソード記憶を使えばもう物忘れで悩まない!
大人になって物忘れをするようになったのを、年のせいだからと諦める必要はありません。短期間で忘れる短期記憶でなく、なるべく忘れることのないような長期記憶のエピソード記憶として覚えることがとても有効です。
覚えることと関連付けるエピソード記憶を獲得するためにあなたが経験することは、記憶を強化するのみならずきっとあなたの人生を豊かにしてくれることでしょう。