「魚に痛覚はない」はホント?最新の研究結果も踏まえて解説!
魚に痛覚はないと聞いたことはありませんか?最新の研究を見てみるとどうやらそうではないかもしれません。魚の痛覚はどんな働きをしているのでしょうか。もし魚に痛覚があるなら昆虫やイカなど他の生き物は?最新の研究結果を踏まえて魚の痛覚について解説します。
目次
魚には痛覚が存在した?最新の研究で分かったことは?
これまで一般的に魚には痛覚は存在しないと信じられてきました。しかし最新の研究によるとどうやらそうではないらしいのです。痛覚に関してどのようなことがわかってきているのでしょうか。
そもそも痛覚はなんのために存在するの?
そもそも痛覚とは、生き物が生きていく上でなくてはならないものです。命の危険から身を守る警告シグナルの役割を担っています。
生き物の痛覚の伝わり方や反射行動を紹介!
生き物の痛覚の伝わり方には決まった経路があります。反射行動と合わせて紹介します。
痛覚の伝わり方
痛覚の伝わり方は以下の通りです。
①刺激により細胞が傷つけられる
②発痛物質が発生
③末梢神経で感知
④神経繊維を通って脊髄へ
⑤感覚神経から大脳へ
痛覚を覚えた時の反射的な行動
魚は痛覚に怪我をするような強い刺激や極端に熱かったり冷たかったりする刺激を受けると、刺激を避けるように関節を体幹に向けて曲げます。これは防御反応です。
魚に痛覚がないと言われている理由は?
これまでの通説では魚には痛覚がないとされてきました。それにはどんな理由があるのでしょうか。
あまりにもナンセンスな理由2選!
魚に痛覚がないということに納得できる理由だったらまだしも、ナンセンスな理由もあるものです。2つ紹介します。
魚が痛がってるように見えないから
魚には目蓋がなく、表情が動きません。苦痛に歪むことがないので痛みを感じない、痛覚はないに違いないという説です。
針にかかると暴れるから
痛覚があるのなら釣り針にかかって痛みを感じたら動かないはず、なのに釣り針にかかっても失神せずに暴れるだけということは痛覚はないに違いない、という説です。
魚の神経系はそこまで複雑に発達していないという説
全くナンセンスな理由の他にも魚の神経系は複雑に発達していないからという説もあります。
魚の脳には他の哺乳類などの生き物が持つ大脳皮質がありません。大脳を構成する大脳皮質がないため痛みを感じることもないというものです。
痛覚がないことを前提にしている文化がある
島国である日本には新鮮な魚を生で食べる文化が根付いています。踊り食いや活け造りなどです。
これは魚に痛覚がないことを前提としていて、外国人が見るとかなり衝撃を受ける食べ方ですが日本人でも拒否反応を示す人はいます。
魚の痛覚についての最新の研究結果を紹介!
魚に痛覚はあるのかということに関していろんな説が飛び交っていますが、最新の研究結果はどうなっているのか見てみましょう。
魚にも痛点や侵害受容器が存在する!
痛みを感じる感覚点である痛点や、避けなければいけない刺激を検知する侵害受容器がニジマスに発見されたというものです。この侵害受容器は熱にも反応を示しました。
ポリモーダル受容器も存在する
また、ニジマスに発見された侵害受容器のうちのいくつかはポリモーダル受容器と見ることができるようです。
ポリモーダル受容器とはいろんな刺激に応答する感覚受容器のことで、両生類や鳥類、哺乳類も持っている原始的なものです。
魚には痛覚が存在するという結論に
魚にも侵害受容器という神経細胞があり、高温や高圧力といった刺激を感知することができるようです。刺激によって侵害受容器から脳へと向かう電気信号が増えることから、魚には痛覚が存在するという結論に達しました。
魚の痛みの感じ方は人間とは違う?
体に害をもたらす刺激を受けて、それに応じる能力が備わっていることはわかりました。しかし魚が持つ侵害受容器は強い痛みを感じるものは少なく、素早く感じられるタイプの侵害受容器が多いのです。
魚が知覚しているのは針に刺された時のような感覚だけで、だからといって苦痛を感じているかどうかはわからないという主張もあります。
また、痛点からは温度や圧力といった触覚も感知します。変温動物である魚が適温水域で生息できるのはこのためです。
適温水域以外では動きが鈍くなり他の生き物に捕食される恐れがあるため、痛覚を危機回避に使っているという説もあります。人間と同じように痛みとして感じているかどうかは不明です。
魚の痛点の場所や痛覚を覚えた時の反応は?
魚の痛点がもし口の周りにあるのなら趣味である「釣り」の立ち位置が変わってくるのではないでしょうか。痛覚を刺激された時の反応とともに見ていきましょう。
魚に存在する痛点の場所や範囲
痛覚を感じるポイントである痛点を研究したところ、魚の痛点は頭部に集中して存在していることがわかりました。
魚の体の側面には側線と言われるすじが走っているのですが、ここにも痛点が集まっています。これらの狭い範囲以外には痛点はないようです。
鱗にも部分的に痛点が存在する
ほとんどの魚は鱗で体表面が覆われています。鱗は鎧のような枠割をして敵からの攻撃や衝撃などから体を保護しています。
しかし全く神経がないと水流を感じることもできなくなるので、部分的ではありますが痛点が存在すると言われています。
魚が痛覚を覚えた時の反応
魚に危害を加えダメージを負うような状況に陥ったりストレスに晒されたりすると以下のような反応を見せるようです。
・注意散漫
・損傷部分をかばう
・食欲低下
・うつ状態
魚に痛覚があるとどうなるの?
最新の研究では魚に痛覚があるとする意見が主流ですが、そうするとどういうことが起こってくるのでしょうか。
魚の調理方法が問題視される
世界的にはアニマルウェルフェア(Animal Welfare)、動物福祉を重視する流れとなっています。これは家畜に対しての概念ですが魚に対してもこのような動きになるのであれば魚の養殖方法や輸送方法、調理方法などについても問題視されることになる可能性は十分あります。
踊り食いや活け造りが残酷だと批判される
魚を新鮮な状態で食するこのとできる踊り食いや活け造りは、生きたまま歯ですり潰されたり生きたまま胃に入り胃酸で溶かされたりするので残酷だと批判されることもあるかもしれません。
スポーツフィッシングが禁止される恐れがある
スポーツとして釣りをするスポーツフィッシングは虐待とみなされて禁止される恐れがあります。魚に痛覚があることが広く知られているわけではない現在でさえキャッチアンドリリースは偽善だとの否定的な意見があるのです。
釣りに新たなルールや厳粛さが求められる
魚は決して釣りのために生まれた生き物ではありません。痛覚のある、痛みを感じる生き物とした上での釣りに新たなルールや厳粛さが求められるようになるかもしれません。
【番外編】甲殻類にも痛覚が存在する!
堅い殻に覆われている甲殻類は生きたまま茹でたとしても暴れることがないため、痛みを感じることはないとされていました。しかし最新の研究では甲殻類に痛覚がある可能性が高いという説が濃厚となってきました。
甲殻類の痛覚についての研究結果
カニの一番下の足に電気ショックの装置を付け、そのまま入れる住処と入ろうとすると電気ショックが流れる住処とを用意した実験があります。この実験でカニは装置の付いた足を取ったり、電気ショックが流れる方の住処を避けるようになったりしました。
この結果は甲殻類には痛みを感じる力があることを示唆しているそうです。
研究結果から調理方法を定めた国もある
最新の研究結果からスイスでは生きたロブスターの煮沸を禁止する法律が作られました。痛みを感じる可能性のある高度な神経系を持っているとされたためです。
また、イタリアの最高裁は生きたロブスターを氷漬けにして保存していたレストランのオーナーに罰金の支払いを命じました。ロブスターを不当に苦しめているからです。
魚の調理方法も法律で定められる可能性がある
魚にも痛覚があるということがわかってきたことから、一部の調理方法は虐待行為であるとされる可能性はあります。今後甲殻類のように調理方法などが見直され、法律で定められるようになるかもしれません。
古くから受け継がれて来た伝統的な食べ方といえど人道的な見地からの見直しを迫られる可能性はあります。
【番外編②】魚・甲殻類以外の生き物も痛覚はある?ない?
これまで魚や甲殻類に痛覚があるという例を見てきましたが、昆虫やイカなどといったその他の生き物にも痛覚はあるのでしょうか。それとも昆虫やイカに痛覚はないのでしょうか?
虫や昆虫の痛覚
昆虫に刺激を与えた場合に嫌忌のリアクションを見せることがあるので昆虫にもニューロンが働いていることがわかりました。ただ、それが痛みから出た反応なのか反射神経によってもたらされたものなのかは意見が割れているようです。
昆虫の寿命は短いので痛みを学習して回避するよりもとにかく多いその数でカバーしているのかもしれません。地球上に昆虫は100京匹いるそうですので。
イカやタコの痛覚
イカやタコなどの軟体動物もこれまで痛みを感じないように扱われてきましたが、イカにも痛覚があることがわかってきています。
イカにも甲殻類と同じような法整備が今後なされていくことは十分考えられます。
魚の痛覚への考え方は人それぞれ!釣りをするならモラルを忘れずに!
痛覚を感じるシステムが備わっていることはわかってきましたが、それを魚が痛いと感じているかどうかはわかりません。痛いから避けているのだと考える人も、ただの反応であって苦痛を示しているのではないと考える人もいます。
人それぞれ、いろいろな考えがありますが釣りをするならモラルを忘れずに楽しんでくださいね。