『行う』と『行なう』正しいのはどっち?違いや使い分けを徹底解説!
「おこなう」という言葉はよく使うと思いますが、「行う」と「行なう」どちらが正しい送り仮名なのかご存知ですか?どちらも見かけることがあるので迷いますよね。この記事では「行う」と「行なう」をきちんと使い分けられるように、その違いや使い方をご紹介します。
目次
『行う』と『行なう』はどちらが正しいの?
日常生活やビジネスシーンでもよく使う「おこなう」という言葉。行動の記録や報告で使うことも多いので、文章で使う場面がたくさんありますよね。そんな時に迷うのが、「行う」なのか「行なう」なのかという送り仮名の問題!様々な文書などを見てみると、「行う」も「行なう」も見かけるので、迷ってしまいますよね。これから悩まなくていいように、「行う」がいいのか「行なう」がいいのか、それぞれの違いや正しい使い方についてご紹介します。
『行う』と『行なう』はどちらも正しい!
「行なう」の方が間違いだと思った方も多いのではないでしょうか?しかし実は、「行う」と「行なう」はどちらも正しい送り仮名の使い方として認められています。どちらかが間違いというわけではないので、きちんと使い分けることが重要です。まずは「行う」と「行なう」の法律上の違いについてご説明します。
『行う』は正しい送り仮名
1973年6月18日付けで公表された内閣告示第二号「送り仮名の付け方」によると、活用のある語は活用語尾を送るとされています。例えば「書く」という言葉の場合だと「かかない」「かけば」「かけ」というように活用するので、「か」の部分だけが変化しません。変化する活用語尾の部分を送り仮名とするので、「書く」となります。
「おこなう」を活用してみると「おこなわない」「おこなえば」「おこなえ」というようになるので、「おこな」までが変化しないことが分かります。つまりその後の「う」が活用語尾として、送り仮名となるのです。この送り仮名の付け方によると、「行なう」ではなく「行う」とするのが正しい送り仮名の使い方であることが分かります。
『行なう』は許容されている送り仮名
先ほど紹介した「送り仮名の付け方」には次のような表記があります。
許容 次の語は,( )の中に示すように,活用語尾の前の音節から送ることができる。
行う(行なう)
多くの言葉は「活用のある語は活用語尾を送る」と定められているのですが、「おこなう」に関しては「行なう」という送り仮名も許容されていることが分かります。つまり「行う」が正式な送り仮名ではあるものの、「行なう」も正しい使い方として認められているのです。
『行う』と『行なう』の違い①使われた時期の違い
なぜ「おこなう」の送り仮名は2種類あるのでしょうか?実は「おこなう」の送り仮名は、「行う」も「行なう」もどちらも使われてきた歴史があります。そして時代によって「行う」と「行なう」の使い方は変わってきているのです。
1972年までは『行なう』だった
1959年7月11日付けで公表された内閣告示第一号「送りがなのつけ方」では、「おこなう」の送り仮名は「行なう」であると定められていました。学校や行政機関でも、「行なう」が正しい使い方として教えられ、使われてきました。この時期に学生だった方々は、「行なう」を使う方が多いようです。それだけこの時期は今と違い、「行なう」の方が主流で「行う」は許容された送り仮名でした。
1973年以降は『行う』になった
1973年に、先ほど紹介した内閣告示第二号が定められると、内閣告示第一号は廃止されました。そして「行う」の方が主軸となり、「行なう」は副軸の扱いとなりました。それまでと「行う」と「行なう」の立場が逆転したのです。現在、学校ではもちろん「行う」の方が正しい送り仮名として教えられます。しかし「行なう」も許容されているということまで教えられることは少ないので、混乱する人も多いでしょう。
『行う』と『行なう』の違い②使用目的での使い分け
「行う」と「行なう」はどちらも正しい送り仮名として認められていることが分かりました。次にどのように使い分けたら良いのかについてご紹介します。
『行う』は『する』の意味
「行う(行なう)」という言葉は、物事をする、やる、実施するという意味で使われます。「イベントを行う」や「入学式が行われる」、「会議を行う」というように使われます。これはもちろん「行う」と書いても、「行なう」と書いても同じ意味です。
誤読しやすい場合は『行なった』を使う
しかし、「行」という漢字には「行く」という表現もあります。「イベントを行う」と書く場合は「おこなう」としか読めませんが、例えば「イベントを行った」と書いた場合、「おこなった」なのか「いった」なのか分かりづらいです。「行く」には基本的に移動する、目的地に向かって進むというような意味があり、「行う」とは違う意味を持ちます。そのため「行く」と誤読しやすい場合は「行う」ではなく「行なう」を使った方が良いでしょう!
『行う』と『行なう』の違い③公用文での使い分け3選!
公用文とは、国や公共団体が法律や公用文書を出す際に用いる文章のことです。法律などの公用文は、誤解が生じないように気をつけて書かれており、その書き方はビジネスでの文書などを書くときにも参考になります。ただし公用文の場合、漢字の使い方や送り仮名のつけ方にも決まりがありますが、それ以外の文書の場合はそこまで厳格なルールはありません。
ここでは法律などの公用文や論文、履歴書などきちんとした文書を書かなければならない場面での「行う」「行なう」の使い分け方についてご紹介します。
①論文では『行なう』を使うことが多い
論文は実験結果や研究結果を書くことが多いため、「行う(行なう)」「おこなった」などの表現を多く使いますよね。例えば論文で「実験を行った」「研究を行って」という表現をした場合、「いった」なのか「おこなった」なのか論文にサッと目を通しただけでは分かりにくいです。
論文は、見づらい表記や読み間違えてしまいそうな表現を避けた方がいい文章です。先ほどの例の場合、「実験を行った」とするより「実験を行なった」とする方が読みやすいでしょう。論文で「行う」を使う場合は、「行なう」という表記を使ってみましょう。
②履歴書では場面によって使い分ける
履歴書では、自分のこれまでの経験を書く時に「行う(行なう)」という言葉を使うことがあると思います。例えば履歴書に「ボランティアを行って」と書いた場合、「いって」と読み間違えられる可能性があるので、「行なう」を使った方が良いでしょう。そのほか履歴書に「イベントを行いました」と書く場合は、読み間違えにくいと思われるので、「行う」の方が履歴書には適しています。
「行なう」にしなくても前後の文脈から判断することはできますが、「行う」とすると判断が難しい文章もあります。「行う」と「行なう」はどちらも間違いではないので、履歴書ではこのように読みやすさを重視し、場合によって使い分けてみましょう。
③法律では『行う』を使用する
内閣告示第二号「送り仮名の付け方」は、各行政機関の拠り所とされているものです。この中では「行なう」も許容されていますが、法律・公用文書・新聞・雑誌・放送の文書では「行なう」ではなく、より正式な「行う」を使う方が良いとされています。許容の範囲とはいえ、あくまでも基本の送り仮名は「行う」なので、法律など公用文では「行なう」の使用を控え、「行う」を用いた方が良いでしょう。
【番外編】その他の許容されている表記がある言葉10選!
「行う」「行なう」以外にも、正しい送り仮名と別に許容されている送り仮名がある言葉はいくつかありますので、ここでは10個ご紹介します。括弧内が許容されている表記です。
・表す(表わす)
・現れる(現われる)
・向かう(向う)
・断る(断わる)
・伴う(伴なう)
・賜る(賜わる)
・群がる(群らがる)
・落とす(落す)
・変わる(変る)
・暮らし(暮し)
表す(表わす)や伴う(伴なう)はどちらの表記もよく見かけるのではないでしょうか?また「落す」は動詞として使われることは少ないかもしれませんが、「落し蓋」というように使われることがあります。
右の括弧内の表記は許容されている送り仮名ではありますが、基本的には左側の方が正しいのでそちらを使った方が無難です。先ほど「行う」と「行なう」の公用文での使い分け3選の中でご紹介したように、論文・履歴書・法律・公用文と場合によってきちんと使い分けましょう。
【番外編】送り仮名を間違いやすい言葉13選!
「行う(行なう)」の場合はどちらも使ってよい送り仮名ですが、日本語には送り仮名が何か判断がつきにくく間違えやすい言葉がたくさんあります。特に間違えやすい言葉を13個紹介しますので、使い方に注意しましょう!
・おぎなう→補う 「補なう」は間違い
・ついやす→費やす 「費す」は間違い
・したがう→従う 「従がう」は間違い
・あわれむ→哀れむ 「哀む」は間違い
・あやまる→誤る 「誤まる」は間違い
・おさない→幼い 「幼ない」は間違い
・こころよい→快い 「快よい」は間違い
・いさぎよい→潔い 「潔よい」は間違い
・こころざす→志す 「志ざす」は間違い
・さまたげる→妨げる 「妨る」は間違い
・こころみる→試みる 「試る」は間違い
・たしかめる→確かめる 「確める」は間違い
・はずかしい→恥ずかしい 「恥かしい」は間違い
ご紹介した漢字は小中学校で習うものばかりですが、使い方に迷う言葉だと思います。しっかり覚えて間違えないようにしましょうね。
『行う』と『行なう』は内容によって使い分けよう!
いかがでしたか?「行う」でも「行なう」でも間違いではありませんが、一般的には「行う」を使う場合が多いです。しかし誤読を防ぐために、あえて「行う」ではなく「行なう」を使った方が良い場合もありましたね。「行う」と「行なう」の使い方をきちんと理解して、場合によって使い分けるようにしましょう!