『致す』の意味を紹介!間違いやすい使い方や使い分けも!
「致す」という言葉の意味を知っていますか?ビジネスシーンなどでもよく使われる言葉ですが、その意味を正しく理解できているでしょうか。「致す」の意味や使い方、類語や英語などをご紹介し、正しい使い方ができるように解説していきます。
目次
『致す』の意味を知っていますか?
「致す」という言葉の意味をご存知でしょうか?「致す」には「する」の謙譲語というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、他にもさまざまな意味を持っています。「致す」はビジネスシーンでよく使われる言葉ですので、しっかり意味を理解して使えれば仕事での印象も良くなります。
今回は「致す」の意味や使い方、謙譲語や敬語としての意味、英語での表現方法、平仮名との使い分け、類語、隠語としての使い方を解説していきます。正しい意味を知って「致す」を使いこなせるようにしていきましょう。
『致す』の【動詞】としての意味・使い方は?
「致す」には、「そこまで達するようにする。至らせる。」という意味があります。
まず、「物事の影響力を行き届かせる」や「特定の言動・行動による効果や影響力を行き届かせる」などといった意味があります。例文として、「ふるさとに思いを致す」などといった使い方をします。
また別の意味として、「致す」という言葉には「○○について尽力します」という「特定の物事に対して力を尽くす」という意味もあります。この場合も「行き届かせる」の意味合いと同じく、「その言動・行動を精一杯行ない、その効果・影響力を隅々にまで行き届かせるために尽力する」といった活用方法となります。例文として、「健康に心を致して頑張る」といった使い方をします。
また、「あることが原因となってよくない結果を引き起こす」という意味もあります。例文として、「私の不徳の致すところです」などという使い方をします。
『致す』の【謙譲語】としての意味・使い方は?
「致す」は、「する」の敬語として、特に謙譲語として使われる場合もあります。謙譲語とは、自分の動作を低めることで相手を敬う表現手法です。「致す」を「する」の謙譲語の意味で使う場合は、「いたします」という形で用います。 例としては、「拝見いたします」「参加いたします」「失礼いたします」などが挙げられます。
例文として、「こちらで準備いたします」「係の者がご案内いたします」などという使い方をします。
『致す』の【敬語】としての意味・使い方は?
「致す」を敬語として「する」を丁寧に言う表現として用いる使い方もあります。丁寧語は、上品に喋りたいときに使う改まった言葉遣いを表します。こちらの意味の場合は自分がへりくだる謙譲語とは少し異なり、あくまで丁寧な敬語としての表現です。敬語的な表現の時、主体は自分ではありません。
例文としては、「あと数分いたしますとチャイムが鳴りますので、それまでしばらくお待ちください」「昨夜、システム上のトラブルが発生いたしました」などといった使い方をします。
『致す』を英語で言うと?
「致す」を英語で言うと、その意味によって様々な英語に使い分けされます。英語での「致す」の表現を見ていきましょう。
・will do(するつもり、致す、行なう)
・perform(演技をする、行なう、致す)
・conduct oneself(する、行なう、致す)
・accomplish(達成する、行なう、致す)
・achieve(成し遂げる、やり遂げる、致す)
・make sure(行き届かせる、行なう、致す)
・try(挑戦する、実践する、致す)
・carry out(実行する、成し遂げる、致す)
・serve as(なす、果たす、致す)
・practice(練習する、実践する、致す)
英語だとさらにバリエーションがあるように思えます。英語で表現する場合は、「致す」の意味に合わせて使い分けましょう。
『致す』の漢字と平仮名の使い分けは?
ビジネス文書を書いていると「いたす」と、平仮名で表記するのが正しいのか、「致す」と漢字で表記するのが正しいのか、悩んだことはありませんか?
この2つには使い分ける意味があります。「致す」はそれ自身が動詞であり、「届ける、至らせる、及ぼす、引き寄せる、仕向ける」などの意味があります。補助動詞として使う場合は、平仮名の「いたす」を使います。「お願いいたします」「失礼いたします」などは平仮名で表記します。また、公用文では補助動詞を使う場合は、平仮名で表記することが定められています。
漢字の「致す」を使った例文は「今回のことは、私の不徳の致すところです」「遠い故郷に思いを致しておりました」などがあります。
動詞と補助動詞の違いが分からない!という場合には、「する」に変換できるかどうかで見極めてみましょう。「する」に変換出来る意味の場合は補助動詞で、平仮名で「いたす」と表記します。ビジネスメールなどでは平仮名で使うことが多いかもしれません。平仮名で表記するか漢字で表記するかその意味をよく確認してみてください。
『致す』と『申し上げる』との使い分けは?
「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。「いたします」と「申し上げます」の使い分けはあるのでしょうか?
例えば、「感謝いたします」と「感謝申し上げます」という場合、「感謝する」と「感謝を言う」の意味にあまり違いはありません。「言う」という表現は 「聞いてる人がいるのが前提」で、「する」は「相手がいてもいなくても可能」なので、「感謝する」の方が語感的に謙虚だという主張も存在します。しかし、「致す」と「申し上げる」の意味に大きな違いはないというのが答えになります。
ただし、「申し上げる」は日常会話ではあまり使われない言葉なので、よりフォーマルに聞こえるでしょう。ビジネスの際に立場が上の人に対しては「申し上げます」と言う方が適切でしょう。ただ、目上の人でも親しい間柄であれば、「いたします」の方が自然で、「申し上げます」だと少し堅苦しい印象になることもあるでしょう。相手との関係性によって使い分けるのが良いと思います。
『致す』と『至る』の違いは?
「致す」と「至る」は文字も響きもよく似ています。「至る」との意味の違いをご存知でしょうか。
「至る」の意味は、 「及ぶ、極まる、この上ない状態になる」「行き着く、到着する」「隅々まで行き渡る」 「達する」「やってくる、到来する」「〜という結果となる」といったものがあります。また、「至る」には、「ある目的地・場所に到着する」という意味や「ある時間・時点になる」、「ある段階・状態になる」といった意味もあります。例文として「この道は京都を経て大阪に至る」「先月家を出たまま、今に至るまで連絡がない」といった使い方をします。
一方で「致す」は「そこまで達するようにする」ことを意味します。「致す」は、「まだ目的には到達はしていないが、到達するように努力する」といった意味になります。 「致す」と「至る」は文字が似ているので迷うこともあるかもしれませんが、その意味は異なるので間違わないように気を付けましょう。
他にも!『致す』の類語を紹介!
「致す」の類語はたくさんあります。「致す」の他に「する」の謙譲語はありませんが、類語の中でよく使われる言葉について紹介していきます。
・「させていただく」
「させていただく」は、「相手に許可を得て、ある行為を遠慮しながらすること」を意味します。 相手や第三者の許可を受けて、恩恵を受ける場合に用いられます。「させていただく」は、「図々しくて申し訳ないが、相手が許可してくれたから〜する」というニュアンスになります。「致す」の謙譲語としての使い方の類語として挙げられます。例文としては「コメントは控えさせていただきます」「誠に勝手ながら、本日は休業とさせていただきます」などがあります。
・行う
「行う」の意味は、「物事をなす」「修行する」「配分する」「手はずを示す」「刑罰に処する」「食事をする」となります。「行う」は「ある動作や行動をすること」を意味します。「行う」は敬語ではありませんが、少々改まった表現になりますので「致す」の類語として挙げられます。例文としては、「明日は講習会が行われる」「ボランティア活動を行う」などがあります。
・為す
「為す(なす)」の意味は「つくりあげる」「産む」「ある行為をする」「なしとげる」「別の状態にする」「故意に◯◯する」となります。「為す」は「致す」と同じく「する」という意味があり類語として挙げられます。「為す」は主に、慣用句的に使われる堅い言い回しとなります。例文としては「とてもではないが一人の力では為しえない」「事を為す気力がもはやない」などがあります。
『致す』は下ネタなの?隠語での使い方や意味も紹介!
最近ネット上では、オタクの人たちの中で「◯◯を致す」という隠語としての使い方が流行っているようです。本来の「致す」という用途は、「感謝いたします」「お願いいたします」などと「する」の謙譲語として使いますが、隠語としてネット上で流行っている「◯◯を致す」は、「性行為を致す」「自慰行為を致す」という意味になります。この場合の「致す」は「する」の謙譲語というよりも、「全力で事を行う」といった意味になっています。直接的な表現では恥ずかしいため、隠語を用いて表現されています。
例文としては、「(キャラクター名)で致した」「致したので睡眠」といったものになります。隠語なのであまり公の場では使われませんが、こういった隠語の意味でも使われていることがあることは頭に入れておくといいかもしれません。
致すの正しい使い方を身につけよう!
「致す」の意味や英語表現、類語、隠語としての使い方などをご紹介しましたが、一口に「致す」といっても様々な意味があります。敬語としてビジネスシーンで使うことも多いワードですので、正しい意味や使い方を身につけて、印象アップを目指しましょう!