『頒布』の意味を徹底解説!『配布』『販売』と使い分ける理由は?
夏や冬のコミケなど、同人イベントが近づくと、SNS上などで頒布という言葉がよく見られます。あなたは「頒布」の読み方や意味・使い分けの理由をご存知でしょうか? 今回は、「頒布」の意味や使い方などについて、詳しくご紹介していきます。
目次
『頒布』の意味や読み方は?
「頒布」の読み方は、「りょうふ」などのように誤った読み方をされがちですが、正しい読み方は「はんぷ」です。広い範囲に配布して、行き渡らせることを意味しています。
「頒布」とは「不特定多数の相手に品物を配り、行き渡らせる」という意味の言葉で、その際に無料で配ることもあれば、金銭と引き換えなど有料でという場合もあります。
あまり耳慣れない読み方の言葉ですが、SNSなどでは主にコミックマーケット、通称コミケなどの同人イベント・同人誌即売会に関連して使われることが多い言葉です。
「頒布」のもつ「広い範囲に配布して、行き渡らせる」や「不特定多数の相手に品物を配り、行き渡らせる」という意味と似た意味の言葉、つまり類義語はたくさんありそうですが、特にコミケなどの同人イベントでは「頒布」に限定して使われるのはなぜなのでしょうか。
本記事では、「頒布」の類義語、使い方、意味についてと、「頒布」を使う理由などを詳しくご紹介していきます。
『頒布』と『配布』『販売』の違いとは?
「頒布」と「配布」、「販売」は、一見同じような意味・使い方の類義語のように見えますが、細かい意味や使い方などに違いがあります。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
配布
「配布」は、ビラ配りや新聞の号外など、手渡しで配るという意味の他に、ポスティングチラシなどに対しても使われる言葉です。対価や代金を必要とせず、広い範囲の人や場所に行き渡らせることを意味し、それを目的としている場合に使います。
有料でという意味が前提の「販売」とは違い、無料でという意味を含んだ使い方をする言葉です。「頒布」の類義語でもあります。
販売
「販売」とは売りさばくこと・商売を意味する言葉です。利益を得る目的・商売の場合に使われます。
「有料頒布」と似た意味の類義語となるのですが、代金を受け取ることが営利目的か非営利目的かどうか、また代金と引き換えに渡す物(商品など)が著作権に関係するかどうかによって、「販売」と「有料頒布」のどちらを使うか分かれます。
頒布
頒布の意味は、前述のとおり広い範囲に配布して、行き渡らせることです。「配布」との違いは、「頒布」は有料の場合もあることです。代金などを必要とする「頒布」は「有料頒布」と呼ばれ、金銭と引き換えに品物を配布することを指します。無料の場合の「頒布」は、「配布」と似た意味の類義語といえます。
商売を目的とした「販売」との意味の違いは、「頒布」は"配ること"重きをおいていることにあります。「頒布」が使われる場面は、「販売」と違い商売目的・営利目的ではない場合という傾向があります。
『有料頒布』とは?使う場面や理由を解説!
「有料頒布」の場合は、代金を受け取るので、営利・非営利にかかわらず、または代金が頒布するものの材料費・実費の金額であり利益が出ない場合でも、「販売」と意味に違いがないことになります。
それでは、なぜ有料の場合にも「頒布」が使われるのでしょうか。
コミケや同人誌即売会などで、同人誌やその他二次創作のグッズなどを取り扱っている場合に、著作権との兼ね合いもあり、これは商売ではないですよという意味で「頒布」を用いられることが多くなっています。
一方で、品物やサービスなどを不特定多数のお客様に対して売る場合に「販売」が用いられます。
『頒布』が使われる場面
コミケでの「頒布」以外にも、例えば神社などで売られているお札やお守りなども、「頒布」「授与」「お頒(わ)けする」といった表現が使われることが多くあります。
このように、金銭と引き換えの商売の形態であっても、神仏の宿るお守りや御札など、商品の性質上"あまり商売であることを主張したくない"場合に「頒布」という使い方をされる傾向にあります。
こちらのツイートは、阿佐ヶ谷神明宮のTwitterアカウントが、実際に「頒布」を使ったツイートを行っている例です。
平成31年1月25日午前9時より、当宮末社の「北野神社」の初天神祭を斎行致します。当日ご朱印をお受けの方には鳥の「うそ」をあしらったご朱印をおしるし致します。また、縁起物として「うそ」の木彫りの根付を頒布いたします。授与時間等の詳細はリンク先をご覧ください。https://t.co/9GE1rLxwp8 pic.twitter.com/n4PWs21lg4
— 阿佐ヶ谷神明宮 (@AsagayaShinmei) January 23, 2019
紹介されている根付は、一体500円であり代金が必要なもので、そこだけ見れば「販売」を使う場面かも知れません。しかし、この根付は縁起物として授与されるものであり、神様が宿っているものとされます。もしこれを「販売する」「購入する」と言ってしまえば、神様を売り買いするという表現になってしまいます。
そのような表現を避けるため、神社・寺院など神仏の宿る物を扱っている場所では、「頒布」やそれに類する意味の言葉が使われます。
『頒布』と著作権法について
コミケでの「頒布」の使い方には、著作権と関係している面もあります。
著作権法の定義によれば、既存のキャラクターを扱ったパロディ作品・商品(複製物)は、無料か有料かに関係なく、著作権者(作者)の許可を得たうえで譲渡や貸出をすることを「頒布」とするとあります。
アニメやゲームなどのキャラクターを使った二次創作は、著作権法における複製物に該当する場合があり、これらを販売・譲渡する際には「頒布」の形式をとる必要があります。
もしも自分のオリジナルのキャラクターを使った同人誌・作品をコミケに持ち込む場合は、これは著作権法における複製物にはあたらないので、そういった意味でも「頒布」と「販売」を使い分けることがあります。
コミケで『頒布』が使われる理由とは?
コミケで有料であっても「販売」ではなく「頒布」が使われるのは、"商売目的ではない"という意味であることは、ご紹介したとおりです。
それでは、なぜコミケでの有料頒布が商売目的ではないとされるのでしょうか。
現在では一人の作者による同人誌(個人誌)が主で、本来の意味での同人誌は合同誌と呼ばれることが多いため誤解されがちですが、同人誌とは、趣味や嗜好を同じくした仲間内(同好の士)で必要な資金を出して作成される「同人雑誌」の略です。この集まりをサークルと呼び、同人誌はサークルに所属している複数の作者による作品が掲載されている本のことを指します。
同好の士から原稿を募って発行された後、製作の労働力を含めた実費と引き換えに頒布されるもの、という意味合いが強いので、コミケなどの同人誌即売会では有料であっても「販売」ではなく「頒布」を使う、という認識が広まっています。
同じような考え方ですが、コミケ会場にいる人々を「売り手」と「買い手」ではなく、すべての人がコミケの「参加者」であるということから「頒布」を使う、という使い方をする人もいます。
コミケという同人活動を、「参加者全員が仲間内で楽しんでいるだけなので、商売での参加とは違います」とする考え方です。
また、先程ご紹介したとおり、著作権法の定義のため著作権のある作品を扱っている場合に「頒布」とするという理由もあります。
『頒布』の使い方・例文を紹介!
ここまででご紹介したように、「頒布」とは「広い範囲に行き渡らせるよう配ること」を意味するほか、「法律などを広く発表し、知らせること」という意味ももっています。こちらの場合は、「公布」と意味が近く類義語といえます。
また、通信販売のシステムのひとつとして「頒布会」と呼ばれる仕組みがあります。これは定期的に販売者側がおすすめする商品を送付するというものです。
これらの意味をふまえて「頒布」を使った例文として、
・季節のお花が毎月届く頒布会を契約した。
・希望者には小冊子を無料で頒布しますので、お申し出ください。
・自治体は新しい条例を制定し、頒布することを決定した。
などが挙げられます。
『頒布』の類義語は?
ここまでで、「販売(有料頒布の場合)」「配布」「公布」が「頒布」と意味の似ている類義語であることをご紹介しました。
それ以外にもいくつかある「頒布」と似た意味を持つ類義語を、読み方と意味を併せて見ていきましょう。
分配
読み方は「ぶんぱい」です。
「品物や金銭などを、分けて配ること」という意味があります。「避難所で食料を分配する」のような使い方をします。
分布
読み方は「ぶんぷ」と読みます。
「人や動物・物などが、分かれてあちらこちらに存在していること。また、分けてあちらこちらに置いておくこと」という意味で、例えば「人口分布」という使い方をします。
流通
読み方は「りゅうつう」です。
「世の中に広く普及すること」という意味があり、「新商品を流通させるためのルートを探している」などの使い方をします。
配分
読み方は「はいぶん」です。
「品物や金銭、あるいは戦力などを配り分けること」という意味です。「球技大会で不利にならないように、クラスメイトの実力が偏らないよう配分した。」のように使います。
それぞれの意味を覚えておけば、自分が表現したい意味により近い意味の言葉を使った表現ができそうですね。
『頒布』は商売目的ではない時に使われる言葉!
コミケなどの同人活動では特に、「商売が目的ではない」という意味を込めて「頒布」を使います。それ以外にも、「頒布」は神社・寺院のお守りや御札、破魔矢などでも同様の意味を含めて使われます。
他にも「頒布」と似た意味の類義語がたくさんありますが、ぜひ本記事を参考に意味を覚えて使い分けてみてください。