『尊厳』の意味とは？尊厳を使った言葉や例文・類語＆対義語も紹介！

一見すると難しくて少し堅いイメージのある『尊厳』という言葉ですが、「今さら周りに聞けない。」「間違った使い方をすると恥ずかしい。」、そんなワードランキングに入っていないでしょうか？

『尊厳』という言葉はどこかで聞いたことがあって、なんとなく知ってはいるけど、改めて「どんな意味？」と聞かれると正確な意味はわからない。もしかしたらそんな経験があるかもしれません。

今回はその少し難しい言葉のひとつでもある『尊厳』という言葉について、意味や使い方、類義語や対義語など、また英語表現も合わせて、詳しく解説していきたいと思います。

読み方は「そんげん」。

漢字をひとつずつ解説すると、

【尊】尊い（とうと-い）、尊い（たっと-い）

1. （精神的な意味で）価値が高い。貴重だ。また、意義深く重大である。
2. （感覚的な意味で）価値が高い。すばらしい。

『尊厳』はこのふたつが合わさった言葉となり、漢字の意味をそのまま訳すと「尊く厳かなこと」となります。少し抽象的でわかりづらいので、もう少し平易な言葉で置き換えてみると、『自身の持つ本能や目先の欲に左右されず、人間性を守ること。』とも考えられます。

耳馴染みの良い「モットー」や「プライド」といった言葉に解説を置き換えた方が、もしかしたらイメージを掴み易いかもしれませんね。

ここで紹介する『尊厳』を使った言葉は、みなさんもどこかで耳にしたことがあるしれません。ニュアンスでなんとなく理解していた言葉だったかもしれませんが、こちらで意味を解説していきますので、みなさん自身の語彙に加わると嬉しいです。

『個人の尊厳』（または『個人の尊重』とも。）とは、すべての個人が互いを人間として尊重する原理を言います。日本の法律では最高の「価値基準」であり、「基本的人権」、その中でも平等権を直接根拠付けるものとされています。

すべての個人が持っている「守られるべきもの」という自然の法則、原理、権利のような、抽象的なものや象徴的なもののことを『個人の尊厳』と言います。

『尊厳死』は、過剰な医療を避け「尊厳をもって迎える自然な死」という意味になります。その中で『尊厳死』は、「安楽死」や「蘇生措置拒否」とも非常に関連性が深いものです。

現在の医療技術の進歩により、重症患者でも呼吸や栄養補給、痛みを管理できるようになりました。疾病によっては、死に至る過程を人工的に引き延ばすことができるようになりましたが、それを受けて多くの議論もされるようになりました。

「安楽死」は、特に延命治療を中止する「消極的安楽死」と同一視されることも多いですが、『尊厳死』は「最後が自然な死」であり、患者自身が最善の医療方法を選択して、残りの人生をより良く生きることまでを含むため、はるかに広い概念として捉えられています。

人間はたとえ亡くなったとしても、その故人の人格は誰にも犯し難いものです。生前に持っていた人格や信念を守って、丁重に故人を扱うべき、というのが「死者の尊厳を守る」という言葉の意味です。

最高の『尊厳』はお釈迦様などの存在に表れますが、人間ひとりひとりにも、もちろんこれを読んでいるあなたにも『尊厳』というものは内在しています。

『尊厳』と似た意味を持つ類似語や同義語として、「プライド」「誇り」「名誉」「ルーツ（根源）」「アイデンティティ」なども挙がります。

いずれも、人として優れていることや、見た目や精神についてを意味していて、これらの類義語や同義語が使われる際には「その人の人間性を認めて、褒め讃えること」に重きをおいて使われるケースが多いです。

また、話の中で伝えたい意味合いから、その中で最も適切な言葉を選んで使われることが多いです。

これらと同じ類義語や同義語の中でも、ここでは少しだけ難しめな言葉を5つ例に挙げて、読み方や例文と合わせて意味を解説していきたいと思います。

『尊厳』の類義語の1つ目は『威厳』です。それでは、読み方や意味を紹介していきます。

【読み方】いげん

【意味】人を圧するようないかめしさ。近寄りがたいほど堂々として厳かなこと。また、この言葉には「尊敬に値する」「尊敬したくなるほど」といった意味も含まれています。

【使い方・例文】

• 父親の威厳を示すためにも、子供たちの生活の乱れを厳しく注意する必要がある。
• 昨今の度重なる不祥事で、教師としての威厳を保つのが難しくなってきている。
• 彼の威厳に満ちた態度に圧倒され、犯人は思わずナイフを落としてしまったのだ。

『尊厳』の類義語の2つ目は『荘厳』です。この「厳」は読み間違えしやすい漢字かもしれませんが、こちらで読み方や意味などを紹介します。

【読み方】そうごん

【意味】重々しく厳かであること。威厳があって気高いこと。立派であること、またそのさま。主に、宗教的な建物や儀式などの雰囲気が厳かであること、落ち着いた雰囲気の中で近寄りがたい立派さを感じる様子を表します。

【使い方・例文】

• 初めて伊勢神宮を参拝した際に、この荘厳な雰囲気にひどく圧倒されたものです。
• 富士山頂から初日の出を見て、その荘厳な美しさに心を打たれました。
• 厳しい冬を600年以上にわたって生き抜いてきたこの塔は、荘厳な姿を今に伝えている。

『尊厳』の類義語の3つ目は『自尊』です。耳にしやすい言葉ではないでしょうか。それでは、意味や使い方も合わせて紹介します。

【読み方】じそん

【意味】自分で自分を偉いと思い込むこと。自分の人格を尊重し、誇りを持ち、自分の品位を保つこと。自分自身を大切にして、自分という品位を傷つけないようにする様子を表します。

【使い方・例文】

• 僕は彼の心無い言葉に自尊心をひどく傷つけらた。
• 彼女は自尊感情がとても高く、どんな逆境に立たされても精神的に参ることはなかった。
• あの若者は自尊の眼を輝かし、明日への望みに繋げたのであった。

『尊厳』の類義語の4つ目は『威容』です。読み方や意味をこちらで紹介します。

【読み方】いよう

【意味】堂々とした立派な姿、誇らしげに栄えるさま。優れていて、他を圧するようないかめしい姿。威圧感。人為的に演出された立派な姿やその様子を表します。

【使い方・例文】

• 多くの建物は当時の最新技術を駆使したもので、現在でもその威容を誇っている。
• 丘に見えるあのお城は堂々たる威容を誇っている。
• 彼は王者らしい威容のある華やかさを持ち合わせていた。

『尊厳』の類義語の最後のご紹介になります。5つ目のは『重々しい』です。それでは、意味や使い方を紹介します。

【読み方】おもおも-しい

【意味】 荘重である。威厳がある。地位や身分が高い。態度が落ち着いていて堂々としている、またそのさまを表します。

【使い方・例文】

• 厳しい表情を浮かべていた社長は首をうなずかせ、重々しくその案に同意した。
• 紳士は一言も口を聞かず、重々しい態度で我々を見ている。
• 彼は壇上に立ち、重々しい口調で今大会の開会を宣言した。

『尊厳』の反対の意味を持つ対義語は、それぞれの思想や環境、立場や『尊厳』という言葉の解釈の仕方などによって、対義語として表現される言葉が違ってくるようです。

また、辞書などで引いても明確な言葉（対義語）は見つかりません。

そんな『尊厳』に対する対義語ではありますが、ここでは2つの言葉を紹介して、何故そのように解釈されるのかを解説したいと思います。

『尊厳』の対義語の1つ目は『虐待（ぎゃくたい）』です。なぜこの言葉が対義語になるのか不思議に思うかもしれません。その意味をこちらで紹介します。

『尊厳』の対義語を『虐待』と解釈したのは、精神カウンセラーや介護業界で働く方々による、悲痛の叫びに近いものです。

『尊厳』とは先に述べてきたように、「すべての個人が持っている人間性を守ること」や「守られるべきもの」、「基本的人権」などの意味があると解説してきました。

それらを尊重して丁重に扱っていくためには、自分自身はもちろんのこと、他人をも「心から思い遣る気持ち」というのが大切です。

「すべての個人が持っている人間性を守ること」。これが守られないとは、どのような時に起こるのでしょうか。

悲しい状況を想像することになりますが、親から子供への虐待や育児放棄、また介護施設での虐待などが挙げられます。

「人間が人間らしく」あれるように、ひとりひとりの思い遣りの気持ちが大切になるわけです。
 

『尊厳』の対義語の2つ目は『価格（かかく）』です。この言葉もなぜ対義語になるのか首をかしげるかもしれません。その意味をこちらで紹介していきます。

『尊厳』の対義語が『価格』と説いたのは、ドイツの偉大な哲学者 Immanuel Kant（イマヌエル・カント）によるものです。

以下は『Introduction to Kantian animals and animal Kant（カントにおける人間と動物の関係）』の「人間の尊厳と道徳性」より抜粋。

要約すると、『価格』があるものとは「交換が可能なもの」ということで、つまり「代替えが可能」という意味になります。

それに対して『尊厳』とは、「代替えが不可能」なものであり、つまりそれは「何にも代替えすることのできない、尊い人間そのものである」と意味することができます。

『価格』が『尊厳』の対義語になるとは少し意外な感じもしますが、こうやって意味を少しずつ解読してみると、それぞれの言葉の意味が鮮明化されてきますね。

『尊厳』という言葉は、英語ではどのように表現するのでしょうか。英語の読み方や例文、各種英語検定でのレベルも交えて意味を解説していきます。

まず1つ目の英語表現です。『尊厳』を英語で表現するとこうなります。

Dignity（読み方：ディグニティ）

【意味】威厳、尊厳、品位、気品、（態度などの）重々しさ、荘重、位階、爵位

【単語のレベル】英検：2級以上、TOEICスコア：470点以上

【例文】

• Dignity of individual human beings　：人間個人の尊厳。
• Assert one's dignity as an individual　：個人としての尊厳を主張する。
• Put dignity above all else　：尊厳を何よりも重視する。

2つ目の英語表現です。『尊厳』を英語で表現すると、このようにも言うことができます。

Prestige（読み方：プレスティージ）

【意味】（地位・品質の高さなどからくる）威信、名声、信望、威光

【単語のレベル】英検：2級以上、TOEICスコア：470点以上

【例文】

• Damage someone's prestige　：（人）の威信を傷つける。
• Enjoy great prestige among　：～の間で信望が厚い。
• Maintain one's prestige　：（人）の威厳を保つ。

『尊厳』を使った表現は少し奥が深い言葉が多いですが、例文と合わせてその意味を解説していきます。

人間の尊厳とは、「人間が人間らしくあること」を言います。

例えば、朝起きて顔を洗い、朝ごはんを食べて、服を着て出掛ける。ごくごく当たり前であろうこの日常の行動ですが、誰かに侵害されてそれを送ることができない、そのようなことがあった場合には「人間らしい生活を送れない」、または「『人間の尊厳』が侵されている」と表現することができます。

とある小説に書かれていた文章です。

『彼は自分の尊厳を守るために、将来有望な経歴を犠牲にした。』

ここで使われている『尊厳』という言葉は、「今まで大切にしてきた誇りや信条、生き方（生き様）、モットー」という言葉に言い換えることができるでしょう。

前後の文脈にもよりますが、この文章だけを少し平易に言い換えると、「彼は他なる欲望（＝将来有望な経歴）に左右されることなく、今まで持ってきた信条や誇りを守り抜いて、自身の人間性を守った。」と言う意味にも捉えることができるのではないでしょうか。

『尊厳を支える』とは、介護の世界でよく聞かれるかもしれません。

介護する側はとても大変だとは思いますが、介護される方々も同じ人間であり、決して「モノ」ではありません。食事や排泄、入浴などの介助を「モノ」を扱うかのごとく、「流れ作業」のようにやってしまう介護職員に対して多くの議論がなされています。

たとえ介護される方が認知症などによって、意思判断能力が低下している場合であっても、その方が本来持っている「人間らしい」信念や人格を尊重して介護に臨むことを『尊厳を支える』と言います。

『生命の尊厳』とは、すなわち『生命の尊さ』です。「生命」はかけがえのない価値のあるものであるため、自身はもちろんのこと、他者の生命をも尊重するというのが、この言葉の意味となります。

また『生命の尊厳』は、宗教や倫理学においても頻繁に議論される奥の深い内容でもあります。「生命」というものは変化をし、消滅するものであるため、人間や動物、または生態系の「生と死」をめぐる議論の中でもよく耳にする言葉です。

ここまで『尊厳』という少し難しい言葉について、意味や使い方、類義語や対義語、英語での表現を含めて解説してきました。

一見すると難しそうな言葉に聞こえますが、意味や使い方を理解して、また英語での表現も合わせて自身の語彙として加えることができれば、日常会話での中でもスマートに使うことができるのではないでしょうか。

こちらの記事がみなさんの参考になってくれると嬉しいです。