鶴の寿命は実は短い!?千年生きると言われている理由とは?
鶴と亀といえば鶴は千年、亀は万年と長い寿命の象徴として夫婦箸などにも対でよく描かれています。確かに時々驚くほど長寿の亀の話題を聞きますが、鶴は本当に寿命が長いのでしょうか。鶴は千年と言われる所以はどこにあるのでしょうか。鶴の種類ごとにご紹介します。
目次
鶴の寿命は長いの?長寿や縁起がいいとされる理由は?
鶴の寿命は本当に長いのでしょうか。さすがに千年は生きることはないとおもわれますが、これだけ長い間長寿で縁起が良いとされているからには、理由があるように感じられます。
鶴の本来の寿命はどのくらいなのでしょうか。鶴の種類別、また飼育下の有無別にも平均寿命をご紹介します。そして、何故長寿で縁起がいいと言われてきたのか、その由来なども考えてみましょう。
【鶴の寿命①】タンチョウ
タンチョウは日本の野鳥の中では最大級で、全長1m40㎝にもなります。生息地は北海道東部のみで、国内で繁殖する唯一の鶴です。北海道の湿原の中でひなを生み育てるため、タンチョウは湿原の象徴とも言えます。
江戸時代までは北海道各地や時に関東地方にもいたようですが、明治時代の乱獲・湿原の開発により激減します。一時期絶滅も危惧されましたが、大正時代末期に再発見され特別天然記念物に指定、保護されはじめ今は1,000羽以上確認されています。
タンチョウの生態・特徴
個体数が増えているタンチョウですが、北海道東部のみに限局しているのが現状です。それは、湿原を生息地としていることが理由です。現在残っている湿原も保護指定されていない場所も多いため、開発が進めばタンチョウの居場所が無くなってしまうという状況にあります。
タンチョウが人から餌をもらうことに慣れたため、生き延びて個体数が増えた現実もありますが、そのため道路などにも出てきて事故に遭うということも増えてきています。
タンチョウの平均寿命とは
そのタンチョウの平均寿命は20年~30年です。鶴の寿命としては平均的と言えるでしょう。
タンチョウの飼育下での寿命はどのくらい?
動物園で飼育されていると、50年~80年生きるタンチョウもいます。鳥の中ではかなり高齢で、鶴の寿命としても長いと言えるでしょう。
【鶴の寿命②】ナベヅル
ナベヅルは、体長96.5㎝前後で中国とロシアの堺のアムール川流域とそのやや北の地域で繁殖する鶴です。世界で1万羽程度生息しており、日本国内でも越冬する姿がみられますが、その個体数は減っており保護活動が続けられています。
ナベヅルの生態・特徴
ナベヅルは、山沿いや苔の多い湿原で繁殖しますが、小規模の湿原が広い山地に点々としており繁殖地の分布などは分かっていません。乾いた湿地で越冬しますが、開発が進み水田がおもな越冬地になっています。
国内では出水、山口県周南市で越冬する姿がみられます。草の種子や根・小動物も食べる鶴です。農作物も食べるため、害鳥とも言われてしまっています。
ナベヅルの平均寿命とは
このナベヅルの平均の寿命はおおよそ20年です。鶴の寿命としては、平均的でしょう。
【鶴の寿命③】マナヅル
マナヅルとは、おおよそ体長127㎝でナベヅルと同様中国東北部とロシアの堺のアムール川流域で繁殖する鶴です。世界で5,000~6,000羽と推定されています。
マナヅルの生態・特徴
マナヅルは越冬をしますが、それは朝鮮半島や中国揚子江流域、そして日本では唯一出水が越冬地になっています。ナベヅルよりも湿った湿地で越冬することを好み、土地開発が進んだため水田が唯一の環境となっています。草の種子や根・小動物も食べます。
マナヅルの飼育下での寿命はどのくらい?
マナヅルは飼育下で45年ほどの寿命です。鶴の寿命としては長寿の方でしょう。
【鶴の寿命④】カンムリヅル
カンムリヅルは全長100~105㎝で、頭部に黄金色で扇型の羽根(冠羽)を持つことでカンムリヅルと呼ばれています。西アフリカのギニアからスーダン・エチオピアにかけて断続的に分布しています。
カンムリヅルの生態・特徴
カンムリヅルはサバナに生息し、乾燥した草原でも湿原でも暮らせます。乾いていても暮らせるので、他の鶴に比べて生息域が広いと言えるでしょう。鶴は木の上に止まれる指の構造はしていませんが、唯一木に止まれる第4指を持っていて木の上で寝る時もあります。
カンムリヅルの平均寿命とは
カンムリヅルは湿原でなくては生きられないということがないためか、鶴としては寿命も長く50~60年も生きます。タンチョウヅルの2倍は生きるといわれています。鶴の中では長寿と言えます。
【鶴の寿命⑤】その他の種類の鶴の寿命は?
それでは他の鶴の寿命もみてみましょう。
クロヅルの生態と寿命
クロヅルは、体は灰褐色で頭は赤と黒と白という特徴的な色味を持つ鶴です。全長で114㎝と平均的な鶴の体長をしています。ヨーロッパ・アフリカ・アジアなどに生息し、繁殖はユーラシア大陸、冬季はヨーロッパやアフリカ・インド・中国で越冬するという広い範囲を移動する鶴と言えるでしょう。日本へも、鹿児島県出水へ渡来します。
クロヅルの寿命は、飼育されていたものが56歳という記録が残っていますが、平均ははっきりしないのが現状です。
カナダヅルの生態と寿命
カナダヅルは、全長80㎝~120㎝の比較的小柄な鶴です。アメリカ・シベリア・キューバ・カナダに生息し、日本にはほとんど渡来しません。毎年他の鶴の群れに交じって、1羽から2羽飛来する程度ですが、特徴的な前頭部のハート模様で幸せになれると見つけようとする人々に親しまれています。
カナダヅルの平均寿命は、野生で25年程で飼育下ではその2倍程度生きると言われています。
ソデグロヅルの生態と寿命
ソデグロヅルは、全長125㎝~137㎝で全身的には白いのですが、羽根の先端が黒く袖が黒いように見えます。ロシアで繁殖し、冬季には中国やインドやイランで越冬します。日本にもごくまれに越冬にくることがあります。
ソデグロヅルは、繁殖地が開発されたりすることで個体数が減っており、現在では絶滅危惧種になってしまいました。寿命ははっきりしていませんが、飼育下で61年という記録が残っています。
アネハヅルの生態と寿命
アネハヅルは、全長90~97㎝で最も小型の鶴です。しかし、鶴の中でもヒマラヤ山脈を越えるほど、かなりの高度を飛べる鶴として知られています。繁殖は、シベリア・アジア・ヨーロッパで、冬季はインド・アフリカ・中東で越冬します。
日本へは、2007年青森県へ渡来しているのを発見されていますが、かなり稀なことになるでしょう。平均寿命は20年~25年と言われています。
野生の鶴と飼育下での鶴の寿命に差がある理由とは?
野生の鶴と飼育下での鶴の寿命は、場合によっては倍ほども違います。その理由はどこにあるのでしょうか。
鶴は本来野生の中で生きてきた鳥です。タンチョウヅルなども、江戸や明治時代までは人間の差し出したエサは食べませんでした。しかし、生息地の減少などで徐々に絶滅の危機にさらされるようになり、人間のエサも受け付けるようになります。
それでも野生の鶴は自分で生息地を探し、エサを求めなければなりません。また、天敵に襲われたり、人間慣れしたがゆえに交通事故に遭うこともあります。一方、飼育されている鶴は飢えや交通事故の心配が無く、生育場も整っているため長寿につながっています。
鶴の最長寿命はどのくらい?
鶴の中で最も寿命が長いと言われているのは、カンムリヅルです。生息域をさほど選ばないことが幸いしているのでしょう。野生でも平均で50年~60年と言われています。現在、正確な最長年齢は分かっていませんが、飼育下で80年生きたという情報があります。
鶴が千年生きると言われている理由は?
鶴は確かに、鳥という種類の中では長生きの方ですが、千年生きるというほど長寿というわけでもありません。それでは、鶴が千年生きるといわれ縁起ものである理由は何でしょうか。
「鶴は千年亀は万年」の意味とは
「鶴は千年亀は万年」とは、文字通り鶴や亀の寿命を言っているのではなく、長寿それも縁起がいいという意味を持ちます。ご祝儀袋やおめでたい席の模様などに、特に鶴がよく描かれるのはそのためです。
「鶴は千年亀は万年」の由来
「鶴は千年亀は万年」という言葉自体の由来は、古代中国の書物「説林訓」です。仙人に仕える生き物として「鶴歳千歳、亀歳三千歳」と書かれていたことからきている言葉です。
鶴と亀が縁起がいいとされる理由とは?
しかし、なぜこの言葉が縁起が良いという意味になったのでしょうか。仙人は不老不死の特別な存在です。その仙人は、空中では空に乗り水中では亀に乗ると言われていました。
この仙人に仕えているのだから、縁起のいい動物とつながったと言われています。
【番外編】亀の寿命は長い?
鶴といえば亀ですが、その亀は本当に寿命が長いのでしょうか。亀は種類によって寿命が違います。一般的なミドリガメやクサガメなどは、約20年~30年程度ですが、ウミガメやリクガメなどは30年~50年程度です。
ただ、亀は時折ギネス記録を持つような長寿の亀が存在するのが鶴との違いです。現在もセントヘレナ島に生息するアルダブラゾウガメが、2017年で185歳を迎えています。
鶴は千年は生きないけれど長寿な生き物!
鶴は鳥の中では比較的長寿といっても、もっと長生きする鳥もいますしさすがに千年は生きません。しかし病気療養の時の千羽鶴や、多くの人に縁起が良いという意識づけがされています。そこには、中国からの由来だけでなく、鶴そのものの美しさが絵になることなどもあるでしょう。
いずれにしても鳥としては長寿な鶴から、縁起の良い習慣を取り入れていきたいものです。