三本締めの意味や由来とは?やり方・掛け声・一本締めとの違いも!
お祭りや冠婚葬祭の式典、株主総会などで掛け声とともに行われる「三本締め」。おなじみの手拍子に聞き覚えがある方は多いと思いますが、正しい作法や掛け声の出し方などはご存知でしょうか。知っているようで意外と知らない三本締めの意味や由来について確認してみました。
目次
三本締めの正しいやり方を知っていますか?
結婚式やお祭り、株主総会などの終わり際に、「イヨ〜」の掛け声とリズミカルな手拍子で行われる「三本締め」。年末テレビ中継などで、市場で行われる三本締めの様子を見た方も多いのではないでしょうか。しかしその様子を目にすることは多い一方、三本締めのそもそもの意味や由来、正しいやり方については意外と知られていないことが多いかと思われます。ではまず三本締めとはどういうものなのか、少しずつ探っていきたいと思います。
三本締めは「手締め」のひとつ!
三本締めとは「手締め」の一種で、手締めとは一つの物事が終ったことを祝う手拍子のことを意味します。
手締めとは?
手締めとは「手打ちによって締める」が語源となる言葉です。各種行事を取り仕切った主催者が、協力してくれた者に感謝する意味で行うもので、古くから日本の風習として続けられています。物事が無事に成就したお祝いとして実施されているようです。
手締めの種類は大きく分けて3つ!
手締めのやり方は一種類だけではなく、それぞれの地域ごとに特色があります。一般的に正式な手締めとして認知されているのが江戸締めという方法で、以下の3つの種類に分けられます。
- 三本締め
- 一本締め
- 一丁締め
三本締めがいわゆる正式のスタイルで一本締めは三本締めを簡略したもの、一丁締めは一本締めをさらに簡略化したものになります。どの種類の手締めも、掛け声を入れることと、手拍子を打つところは共通しており、TPOによって種類を使い分けます。その他に地域ごとにも様々な種類の手締めがありますが、上記の3種類はオーソドックスな様式ですので覚えておくと便利でしょう。
三本締めの意味と由来は?
三本締めの本来の意味や由来について解説いたします。
神事の終わりを告げる合図だった
先ほども少し触れておりますが、三本締めは、一般的に物事の終わりに行われるものになります。なぜこの慣習が行われるようになったのかには諸説あるのですが、由来として考えられているものの一つが古事記の「国獲りの神話」に記述されている「拍手を打って、国を譲ることを承諾した」という一文です。国を譲ること=物事が無事に終わりを迎えた、目途がついたという意味にとらえられたということですね。
なお、神事の一つである大相撲では、古くからの習わしとして千秋楽のすべての行事が終わった後に、相撲の神様を送り返す「神送りの儀式」として三本締めが行われているようです。
江戸時代から手締めと呼ばれるようになった
「手締め」とは、江戸時代より呼ばれるようになった呼び方で、それ以前には「手打ち」という言い方が一般的でした。なぜ「手締め」になったのかといいますと、それは「手打ち」を「手討ち」だと思ってしまう間違いが多く、人々の混乱を避けるためだったと言われています。江戸時代、「手討ち」という言葉には武士が無礼をはたらいた町人などを斬り殺すという意味があったため、同じ読み方の「手打ち」の使用は避けられました。なお、手締めの「締め」には「座をまとめる」という意味があり、これは手打ちが舞台や祭りごとの終わりにけじめをつける意味で行われたことと関係しています。
拍手の数の意味
三本締めの際には通常「三、三、三、一」のリズムを、掛け声を挟みながら三回繰り返すことになります。実はこの拍手の数には意味があって、三回を三度繰り返して九、最後の一を加えると「丸」になりすべてが丸く収まるという意味が込められているようです。九に一を加えると、実際には「十」ですが、計算では次の位に移ることになるので、一区切りと言えますよね。
三本締めのやり方と掛け声を紹介!
ここでは三本締めの通常のやり方と掛け声についてご紹介いたします。
三本締めの一般的な流れは?
三本締めは概ね以下のような手順で行われます。
① 主催者が来賓へ向けて「みなさん、お手を拝借」と声がかかります。
②「イヨーオ」と音頭が取られますのでその後全員で手拍子をします。
「パパパン パパパン パパパン パン 」(三拍子、三拍子、三拍子、一拍子)
③「ヨッ」(合いの手が入ります)
「パパパン パパパン パパパン パン 」
④「もう一丁(もう一本)」(合いの手が入ります)
「パパパン パパパン パパパン パン 」
⑤ ありがとうございました、と唱和して終了。全員で拍手をします。
掛け声の意味
三本締めの際、手拍子の前に入れられる「イヨー」、「ヨッ」などの掛け声ですが、これらの掛け声は「祝おう」が転じたものであると言われています。
三本締めと一本締めの違いとは?
手締めには三本締め、一本締めをはじめとしていくつか種類があることを先ほど紹介いたしましたが、具体的な違いについてここで解説いたします。
まず三本締めは、正式な手締めの形と言われており、お祝いの席や公式の場で行われるのは三本締めがほとんどです。ちなみに3回の手拍子はそれぞれ、「会の主催者」、「来賓」、「会に出席できなかった方々」に向けたものだと言われています。
それに対し一本締めは三本締めを簡略化したもので、飲み会の終わり際など仲間内で集まる場で行われることが多いものです。以下のように三本締めで三回行う手拍子が一回だけになります。
① お手を拝借(主催者が言う)
②「イヨ〜」
③「パパパン パパパン パパパン パン」(全員で手拍子)
④ ありがとうございました(唱和する)
一本締めと一丁締めは混同しやすい
手締めのなかには上記で紹介した一本締めの他、「一丁締め(別名関東一本締め)」と呼ばれるものもあります。一丁締めは「イヨー」の音頭を取った後全員で「パン」と一回だけ手を打ち、いわゆる一本締めを簡略したものなのですが、拍手の数が一回だけのためこちらを一本締めだと思ってしまう方もいるようです。非常によくある間違いのため、一丁締めを行う際には音頭を取る人が事前に「関東一本締めで」と周知してから行うことが多いようです。
三本締めでやりがちな間違い2つ!
公式行事の締めとして、皆で一斉に行う三本締め。大勢で揃って行っているものだから、手順は正しいはずと思いたいところですが、意外にも多くの人がやりがちな間違いというものがあるようです。
手締めの音頭を来客にお願いする
三本締めでやりがちな間違いの一つが、手締めの音頭を来賓にお願いしてしまうことです。本来三本締めは主催者が、協力者らに一連の行事が滞りなく行えたことを感謝をする意味で行うものです。来賓に依頼をするのは失礼にあたりますので注意しましょう。もし、何らかの間違いで主催者に依頼されてしまった場合は断るのがマナーとされています。
掛け声を「せーの」という
二つ目のやりがいな間違いが、音頭をとるときに、「せーの」という掛け声をかけてしまうことです。三本締め全員参加が基本なので、ついうっかりやりがちな間違いですが「イヨー」の音頭には感謝の意が込められています。とても大切な掛け声ですので、こちらもしっかり覚えておきましょう。
三本締めではなく西日本では別な手締めがある!
三本締めは、全国共通の手締めとして認識されていますが、実際には地域ごとに独自の手締めも存在しているようです。西日本で行われている代表的なものをいくつか紹介いたします。
大阪手締め
大阪締めとは、大阪を中心に行われている手締めのことです。(現地では手打ちとも呼ばれています。)一般的な三本締めよりも掛け声が多いのが特徴で、手拍子のリズムも独特です。まず手を挙げて手拍子の準備をした後、以下のような流れで行われます。
① 「打ちまーしょ!」(音頭を取る人の掛け声)
「パンパン」(2回拍手)
②「もひとつせぇー!」
「パンパン」(2回拍手)
③「いおうてさんどぉー(祝うて三度)」
「パパン パン」
大阪締めが実際に見られる行事として有名なのが、大阪天満宮天神祭です。船渡卸(ふなとぎょ)というメインイベントが行われる際、行きかう船同士が大阪締めを送りあうという独特の光景が見られるようです。なお、天神祭は全国三大祭りの一つとされていて、毎年多くの人が訪れる人気のお祭りとのこと。気になる方は是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
博多手一本
博多手一本は、約束事の確認、物事のけじめをつける時に使われる手締めの一種で、福岡県内では福岡祇園山笠というお祭りで行われることでも有名です。「一本」とはなっていますが、手を一回打つということではなく、独特の表示で手拍子が何度か打たれます。
①「ヨーオ」 (音頭を取る人の掛け声)
「パンパン」(2回拍手)
②「まひとつしょ」
「パンパン」
③「よーさん(もしくは祝うて三度など)」
「パパン⇒(短い休み)⇒パン」
③のタイミングが独特で難しいと言われています。博多の人々は他県民を迎えて締めを行う際には事前練習をすることもあるそうですよ。ちなみに手一本は三本締めと異なり、締めが終った後に拍手をするのは無作法とされています。この点は注意をしたほうがよいでしょう。
正しい三本締めで気持ちよく会を閉めよう!
以上、三本締めの意味や由来についてご紹介いたしました。式典などの挨拶として、多くの人々が当たり前のように行っている三本締めですが、詳しい意味を知ると神聖な気持ちになりませんか。深い感謝の気持ちがこもった風習ですので、これから様々な場で音頭をとる際に意味を思い起こして頂ければ幸いです。謙虚かつ正しい三本締めで気持ちよく会を閉めましょう!