熊の平均寿命はどのくらい?【野生・動物園・種類別】
可愛いゆるキャラとしてお馴染みの熊ですが、どのくらい生きられるか知っていますか?実は熊の寿命は意外と短いものでした。また、人間と熊の間には昔から命をめぐった根深いものがあります。今回は、熊の寿命と種類や人間と熊の関係性についてご紹介します。
目次
熊ってどんな動物なの?
熊というワードを聞くと、リラックマやくまのプーさんなど、ほのぼのとした可愛らしいキャラクターを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。それでは、そんなゆるキャラとして親しまれている熊の実際の生態について紹介していきます。
熊の特徴を知ろう
熊の1番の特徴は、暖かそうなしっかりとした毛皮が生えた大きな体です。毛色は黒や茶色がほとんどで、ホッキョクグマは透明の毛が黒い毛の上を覆っているため、光が乱反射して白色に見えています。手足は太くて短くがっしりとしていて、長く鋭い爪は穴を掘りや獲物を捕まえるのに適しています。顔は、鼻が大きく、つぶらな瞳と取って付けたような小さな耳が特徴です。目はあまり良くないのですが、嗅覚が優れていて犬の7倍だと言われています。風が吹けば30km先の死体の匂いも嗅ぎ分けられるほど。過酷な自然の中で育ち生きていくために発達した、熊の能力です。
熊の生態とは?
熊は山岳地帯や森に生息していて、ホッキョクグマだけは氷原に生息しています。また、様々な環境に適応することができるので、標高3,000mの高地からサバンナなどの低地までクマの生息可能範囲はとても広いのです。
寒い地域や冬場に食べ物がなくなる地域に住んでいる熊は、冬眠もします。冬ごもりに入った熊は、体温・呼吸数・心拍数を下げ、最低限のエネルギーだけで生き延びることができるのです。冬眠中は食べ物も水も摂らなければ、排泄も排尿もしません。
熊は肉食だと思われがちですが、ジャイアントパンダやメガネグマはほぼ草食です。種類によって食べ物の傾向がかなり変わってきます。熊の体格差が種類によってかなり違ってくるのは、そのためです。メスの熊は一回の出産で、1~4頭の赤ちゃんを産みます。冬眠が必要な地域で生きる熊が出産を迎えるのは、冬眠中です。母親は飲まず食わずで400gだった赤ちゃんを春までに4kgにまで育てます。
熊の種類は8種類しかないの?
現在、熊の種類は8種類しかありません。ジャイアントパンダ・メガネグマ・マレーグマ・ナマケグマ・アメリカクロクマ・ヒグマ・ホッキョクグマ・ツキノワグマの8種類です。
以前は18種類いたのですが、絶滅してしまいました。成体になれば天敵の少ない熊ですが、主に人間による猟や、防衛のために殺されて数を減らしています。
熊の平均寿命はどのくらい?
熊の平均寿命は、20~30年程だと言われています。では、どのように熊野年齢を調べるのか、野生と飼育では寿命にどのような変化があるのかをみていきましょう。
熊の年齢はどうやって調べるの?
熊の年齢は、歯を調べることで知ることができます。
寿命を迎えた熊から歯を抜き、歯の根元を薄くスライスして顕微鏡で見ます。そして、歯のセメント質の部分を確認します。そこに年輪(層)という層があり、それを数えることで年齢を把握できます。歯に記された層が意味するのは、何度冬を越したかです。これは冬に歯のセメント質の形成が止まるという仕組みに由来します。
野生の熊の平均寿命
野生の熊の寿命は十分なデータが無いために、正確な数字を知るのはとても難しいです。しかし、だいたいの熊が20~30年の間に寿命を迎えていることがわかっています。
自然環境の中では、過酷な自然環境や肉食動物により、子供のうちに命を落とす事も少なくありません。病気で死んでしまう個体もいます。また狩りの対象とされる熊は寿命を迎えるよりも前に殺されてしまう事が多いのも事実です。
動物園の熊の平均寿命
動物園で飼育されている熊の平均寿命は30年で、希に40年以上生きる熊もいます。野生の熊に比べると、安全な環境で食べ物に不自由することなく、病気になっても治療して生きられるので、野生よりも寿命が長くなると言えます。
【種類別】熊の平均寿命はどのくらい?
次は種類別に熊の平均寿命を見てみましょう。
ツキノワグマ
ツキノワグマはアジア大陸に起源をもち、西アジア・韓国・台湾・日本と広い範囲に生息しています。大きさは110~130cmで40~130kgです。個体差があり、季節によっても大きさに変動が出てきます。他の種類の熊に比べると小さめで、小型~中型です。
ツキノワグマの主食は植物で、どんぐりなどの木の実や植物の新芽をよく食べます。野生での寿命は30年くらいだと考えられており、日本で飼育されていたツキノワグマは39年生きた記録があります。熊の中では長めの平均寿命です。
ヒグマ
ヒグマは北半球に生息する熊で、日本にも生息しています。大きさはだいたい140~280cmで80~600kgです。しかし、日本のヒグマの平均的な大きさは150~250kgなのですが、以前北海道で捕獲されたヒグマの雄は体重が400kgもありました。ヒグマは日本に生息する最大の陸上動物です。
ヒグマも雑食で植物を主食としており、木の実や果実、近年ではシカを食べるヒグマもいます。ハイイロヒグマの寿命は20~25年、マルシカヒグマの寿命は35年、日本のエゾヒグマは30年以上生きると言われています。
ホッキョクグマ
ホッキョクグマは流氷水域や海岸に生息し、獲物の獲得や流氷の影響で1日あたり70kg移動します。大きさは180~250cmで200kg~600kgです。大きな雄であれば、体重が800kgに到達します。
ホッキョクグマも雑食ですが、熊の中で一番肉食性が強く、アザラシや魚、鳥類やその卵をよく食べます。氷が溶けだすと食べられるのが昆布や苺です。寿命は25~30年ですが、野生のホッキョクグマはその過酷な環境から1年以内に死んでいく幼獣も多いと言われています。飼育下ではカナダで42歳、日本で34歳という記録があります。
メガネグマ
メガネグマは南アメリカに生息しています。大きさは60~200cmで40~200kgと比較的小さな熊です。名前の由来は顔にある模様で、目のまわりにメガネのような模様があり、パンダを連想させます。メガネグマは基本的には夜行性の動物です。
メガネグマも雑食で、果実や木の葉、球根やサボテンを食べます。時にはウサギも食べ、シカやラマなどの大型の動物を捕らえて食べることもできます。寿命は20~25年とあまり長くなく、熊の中では短めの種類です。
ナマケグマ
ナマケグマはインド東部やスリランカに生息しています。大きさは150~190cmで60~140kgと熊の中では小さな種類です。胸のあたりにツキノワグマの特徴にも似た大きなV字の模様があります。木登りが得意で、動作があまり活発でないことがナマケモノを連想させ、そのまま名前になりました。暖かい地方に住んでいるので、冬眠はしません。
ナマケグマはハチミツやシロアリが大好物で、丈夫な長い爪と長い舌を器用に使って食べます。また、その他の昆虫や鳥の卵も重要な栄養源です。飼育下の寿命は30~35年程度です。
アメリカクロクマ
アメリカクロクマは北アメリカに生息しています。大きさは120~220cmで150~200kgです。全身真っ黒であるのが特徴で、熊の中ではこの熊だけが雄よりも雌のほうが3割ほど体のサイズが大きくなります。性質はおとなしく、危害を加えなければ襲われることは滅多にありませんが、近づかないに越したことはないでしょう。
アメリカクロクマは行動的な熊で、食べ物を探すために広い範囲を動きます。草・木の根・木の実・果実などを食べ、昆虫や魚、小動物やトナカイの子供を食べることもあります。野生での平均寿命は18年程度で短いですが31年生きた個体も見つかっており、飼育下での平均寿命は25~30年程度で44年生きた記録もあります。
野生のアメリカクロクマは人間の他に、グリズリー(大型ヒグマ)が天敵です。生息地が重なるところがあり、寿命を迎えず死んでしまう個体も多くいます。
世界最大級の熊の寿命とは?
世界最大級の熊はコディアックヒグマと言われており、平均体重は390kgで大きな個体になると800kgの巨体を持ちます。また、アメリカのダコタ動物園にいたクライドというオスのコディアックヒグマは、22歳まで生き、その時の体重が966.9kgあり、前年には1,090kgもあったそうです。
主な生息地域はアラスカ半島の海岸部や、コディアック諸島です。この地域は穏やかな気候に恵まれ、川にはコディアックヒグマの大好物である鮭が、なんと5種類も海から産卵しにやってくるので、たっぷりの栄養を摂ることができます。そのため、内陸に生息するヒグマ(グリズリー)よりも大きく育つことができるのです。
コディアックヒグマの平均寿命は28歳くらいだと考えられており、他のヒグマや、大きさの近いホッキョクグマと同じくらいの寿命です。
比較対象物はないのですが、歩き方と体の揺れから、かなり大きいことがわかります。ぜひ動画でご確認ください。
寿命が長い熊の特徴や条件とは?
野生で寿命を伸ばせる熊の特徴は、体が大きく強いことです。先ほど紹介したようにアメリカクロクマは人間の居住区や天敵のグリズリーと交わる範囲で生きているため、野生の平均寿命が18年と熊の中でも短くなっています。
また、体が小さな熊よりも大きな熊の方が長生きの傾向にあると言えるのは、メガネグマは恵まれた気候の地域に生息しながらも、過酷な環境下で生きるホッキョクグマと寿命の長さが変わらないからです。食べ物に関しては、昆虫やハチミツを好むナマケグマが一番長寿であることから、タンパク質などの栄養を食べ物からしっかり摂取できている熊がより長生きできると言えます。
日本の熊の寿命は他の国に住む熊よりも長めです。ツキノワグマが小さな体の割に寿命が長いことから、日本の気候と土地によるものだと考えられます。なぜなら、日本の気候はそれほど厳しくなく自然環境が安定してるため植物が育ちやすく、ツキノワグマが栄養をしっかり摂れるからです。
熊の寿命は短くなってきている?
近年、熊による傷害の被害が増えてきており、それに伴い射殺される野生の熊が多くなっています。熊が人里に下りてくるのは、人間が居住区を広げるために森林を切り崩し、熊の生活範囲を侵してしまったのが大きな原因です。人間による射殺だけではなく、山に十分な食べ物がないために寿命が短くなってしまっています。
そしてもう一つの大きな原因が狩猟です。漢方薬として知られている「熊の胆」は、熊の「胆のう」から作られています。これは現在も高い価値を持ち、高値で売買されています。すでに絶滅した熊の種類は10種類に及んでいて、レッドリストに指定されている種類もたくさんあります。熊の生態を守るために人と熊とがどのように共存するかが、近年の課題となっています。
熊と人間の関係性とは?
日本人は昔から熊を狩り生活に役立ててきました。昔の人にとっては薬にもなり食用にもなり、毛皮は暖をとる為に必要なものだったのです。しかし現在はどうでしょうか。食べ物は豊富にあり暖をとるのにも困っていません。ここでは昔から伝わる熊と人間の関係性と、これからについて考えてみます。
熊は食肉や漢方として使われる
日本人は昔から熊との関わりが強く、熊を狩って生活するマタギの文化が根付いていた程です。マタギは熊の肉を食べ、皮は防寒着として纏い、熊油は薬として使い、余すことなく生活に役立てて生きていました。
熊の胆のうは、漢方として有名で「熊の胆」と呼ばれています。これは万病に効くと言われており、鎮痛薬になったり、胃に良いことから二日酔いの薬としても使われています。他の動物の胆のうよりも、効果が格段に優れているのが熊の胆のうの特徴です。
現在では熊の数の減少にあたり、鳥獣保護法が整備されたのですが、熊の捕殺を抑えるための効果は弱く、十分に熊を守れていないというのが現状です。熊の胆の価値は、まるごと1個で20~40万円と高いため、密猟や必要以上の有害駆除がなされるケースも少なくありません。
熊と人間が共存するには?
熊と人間が共存するためには、「山村と都市を繋ぐ森林地帯(グリーンフロントゾーン)での野生動物との関わり合いを正しく理解していくことが大切だ」と、農林水産省林野庁は述べています。
昔は森林と関わるのは、山村に住む人々だけでした。しかし、現在では車の普及と共にレジャー目的で山へ入る人が増えました。また、市街地の拡大により元々森林だった場所に家を建て、人間が熊の生活範囲に進出しているのも事実です。こういったことから、熊による事件や被害は年々増えてしまっています。
また、熊による被害は人間の生活域ではなく、そのほとんどが熊の生息範囲で起こっているのが現状です。そこでグリーンフロントゾーンと呼ばれる森林地帯での、熊の生活も人間の生活も共に守れるように、人間が自然のマナーやルールを理解すること、不要な狩りをしないことが、熊と人間が共存する為に大切なことではないでしょうか。
ロシアでは、身近に熊がいることから、ペットとして一緒に過ごしている人たちも多くいます。日本では危険な動物として認知されていますが、もともとは穏やかな性質の熊と人間の共存は不可能ではないことがわかります。
熊は飼育環境下で長寿命になる傾向がある!
熊は飼育環境下で超寿命になる傾向があります。なぜなら、1番の天敵である人間に守られているからです。また、食糧不足で餓死することもなければ、病気になった際も治療を受けられるので、寿命を全うすることができます。愛媛県のとべ動物園で1999年に生まれたホッキョクグマのピースは、母親が育児放棄をしたため飼育員による人工哺育で育てられました。当時の日本には成功例はなかったのですが、2019年現在もピースは元気に生きています。