『無常』の意味や語源をわかりやすく!『無情』との違いも!
「無常」の意味を知っていますか?「無情」と意味を取り違えていませんか?今回は「無常」の意味、語源をわかりやすく解説していきます。「無常」と「無情」にはどんな違いがあるのかもしっかりと確認していきましょう。例文を挙げてそれぞれの使い方もご説明します。
目次
『無常』ってどういう意味?
「むじょう」という言葉をたまに使うことがあると思いますが、正確な意味はご存知でしょうか。無常、と無情もしかしたら間違えて使っていませんか?無常の意味を言葉の雰囲気から何となく読み取っていたけれど、実はよく分からないという方、意外と多いのではないでしょうか。今回はそんな無常の意味をかみ砕いて解説していきます。無常と無情の違いもしっかりと理解していきましょう。
『無常』の意味と語源を紹介!
先ほども言いましたように無常と無情を間違えて使ったり、似たような意味で捉えている方も意外と多い『無常』。しっかりと使い分けるためにも正確な意味を理解しておきたいですね。ではまずは無常の意味、そして語源についてご紹介します。
無常の意味とは
無常の意味は仏教用語で、万物が生滅変化して常住でないことを言います。また人の死という意味もあります。このまま聞くとちょっと難しいですが、要するにこの世のすべての物事は移り変わっていくということを意味しています。
例えば人は誰しも歳をとりますし、家電製品や家具も時間が経てば劣化します。この様に、「世にあるものはどんなものでも常に変化し移り変わっていくものである」ということが分かりますよね。無常とは正にそういったことを意味しているのです。
そしてもう一つの意味である「人の死」は、単に人が亡くなってしまったことを指すというよりも人生は儚いといった意味合いを強調する場合に使われます。
無常の語源は仏教用語
無常の意味でもご紹介しましたように、語源は仏教用語からきています。無常の言葉から『諸行無常』という言葉を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、実はこの諸行無常も仏教用語なのです。意味としては、諸行(この世のすべて)無常(常に変化していく)ですので諸行無常とは『この世の全ては常に変化していく』ということを表わしています。
仏教を始めたのはブッタだということは皆さんご存知ですよね。ブッタはこの諸行無常を受け入れることで、人の心の不安や悲しみが軽くなると言いました。もし大切な人が亡くなってしまったり、大切なものが壊れてしまったら悲しいですよね。辛いですが、変わらないものはありません。人はいつか歳をとり亡くなりますし、形あるものは壊れます。
人が永遠に生きていられるなら命が大切だと思う人はいないでしょう。物が壊れないなら大切に扱うひともいないでしょう。移り変わるからこそ大切にしているし、それがなくなったら辛いと思うのです。そういった移ろい、諸行無常を受け入れなさいという教えなんですね。そんな仏教が語源となりたくさんの人に影響を与え広がっていったことで仏教用語である無常の言葉が普段の生活でも使われるようになりました。
『無常』が入る言葉の意味2選!
では、無常の言葉が入る言葉を二つご紹介します。1つは皆さんがご存知の諸行無常。もう一つは無常観です。意味をせっかく覚えたなら使ってみたいですよね。諸行無常では日常での使い方も併せてご紹介します。
仏教の教え『無常観』とは
仏教は全てのものは無常であると観ずる無常観を説いています。ではこの無常観とはいったいどんな意味なのでしょうか。
無常観の観は、観ずる(ありのままに見る)という意味です。「○○観」という言葉は例えば、価値観や人生観といった言葉がありますね。価値観なら何に価値があるかという考え方ですし、人生観は人生に対しての見方です。要するに無常観は『全てのものは移り変わっていくという見方、考え方』を表わしています。
『諸行無常』の意味や使い方とは
諸行無常の意味は、無常の語源でもお伝えしたように諸行(この世全て)無常(常に変わっていく)という意味です。平家物語でも用いられたのでご存知の方が多い言葉でしょう。この世の中が移ろい変わっていくということを表わす諸行無常はどのような使い方をすればよいのでしょうか。例文をいくつかご紹介します。
・人生は諸行無常だけど、だからこそ今を一生懸命に生きたい ・人の心も諸行無常。常に変化するのだから、 いつまでもイライラしたりネガティブにならずポジティブに考えよう ・上手くいかない事が多いけど、 諸行無常というように苦しいこともいつまでも続かないよ |
諸行無常はこのような使い方ができます。意外と日常でも使える言葉ではないでしょうか。もし機会があれば会話の中で使ってみましょう。
【無常と無情の違い①】無情の意味や語源は?
無常と間違えて使われやすいのは同音異義語の無情です。無常と同じ読みではありますが、意味は全く違うものになります。あなたは無情の意味は正確にわかっているでしょうか。無常との違いをしっかりと理解しておきましょう。
『無情』の意味
無情の意味は、慈しむ心がないこと。また思いやりがないことやその様子を言います。そして仏教用語で精神・感情など心の働きがないことも表わしています。
無情は字の通り、情が全くない様子や心を指します。思いやりや情けを感じられない心や行動を無情と表わします。似たような言葉で薄情がありますが、こちらは情が薄いと書くように情けや思いやりが全くないわけではありません。
『無情』も仏教用語でもある
先ほどご紹介しましたように、無情も無常と同じく仏教用語の意味も持ちます。仏教用語で、感情や精神などの心の働きがないことというのは、要するに心がない物を指しています。例えば、木などの植物であったり土や海などです。
無常の意味が仏教用語からきているのに対し、無情は心がない様や、心がない物を表わしているのが分かっていただけたでしょうか。
【無常と無情の違い②】それぞれの類義語と対義語!
では更に無常と無情の違いを知るために、それぞれの類義語そして対義語を見てみましょう。近い言葉や反対の意味をを知ることでより理解も深まるでしょう。意味合いが理解できると、自分でも使いやすくなるはずです。
無常の類義語
無常の類義語をいくつかご紹介します。
この世は常に変化していくという意味合い | 万物流転・有意転変・生滅流転 |
短く儚い命を表わす | 短命 |
万物流転は古代ギリシャの哲学者、ヘラクレイトスの言葉である「万物は流転する」を四文字熟語で表した言葉です。ヘラクレイトスはこの世のものは流れ、変化していくと言いました。無常の意味合いにとても近い類義語になりますね。
また、無情の死そのものを指した意味合いの類義語として短命があります。無常が表わす死の意味合いはその儚さを意味合いを強調します。そういった意味から短命が類義語となります。
無常の対義語
無情の対義語は常住になります。常住は永遠不変を意味します。無常が常に変化していくことを表わすのに対し、常住は変化せず常にそこにあり続けることを表します。ちなみに常住も無常と同じく仏教用語です。
他に、変わらず一定の場所に住み続けることや日常的な習慣やいつもそうである様子を表わしたりもします。
無情の類義語
人の心がない様 | 冷血・酷い・不人情 |
哀れみがない様 | 無慈悲・残酷・薄情 |
情、感覚を欠く様 | 冷淡・冷酷・心無い・非情 |
無情の類義語は、上の様に様々あります。無情の意味でも近い言葉としてご紹介した薄情も類義語になります。こちらは先ほども言いましたように、情が薄いと書きますので全く情がないわけではありません。もう少し近い意味合いの類義語として、非情は「人間らしい感情や思いやりの心がない様」を表わします。無情の意味とかなり近い類義語になりますね。
無情の対義語
無情の対義語には有情があります。書いた字の通り、情・心がある様を意味します。また、人間の様に心がある動物を表わすこともあります。無情の対義語である有情も仏教用語です。
他にも無情の対義語として厚情があります。厚情は思いやりがある心や、親切な気持ちを意味します。挨拶として使われることがあります。例えば「ご厚情いただきありがとうございます。」というような使い方があります。目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
【無常と無情の違い③】使い方を例文でチェック!
では最後に無常と無情の使い方を確認してみましょう。それぞれ例文を挙げていきます。無常は今まであまり使う機会がなかったかもしれませんが、知っておくと日常でも使う機会が巡ってくるかもしれません。
無常の使い方
・寒い冬が来たと思ったらあっという間に暖かくなり、自然は無常だなと感じた ・幼いと思っていたのにいつの間にか大きくなった子を見て、人生は無常であると思った ・移り変わっていく景色を見ていると、人の心には無常観が常にあることを感じる |
無常観は、無常をありのままに見る考え方を意味します。前にもご紹介しましたね。こちらも意味を知っておくとこの様に使うことができます。
無情の使い方
・救命ボートはそれ以上人を乗せることができず、無情にも彼を置いて去っていった ・その人は何度言っても聞く耳を持たず無情にもゴミを放置して行ってしまった ・待ち望んでいた遠足だったが無情の雨が降り、中止になってしまった |
無情は心無い人に対してだけでなく、物にも使われます。この例文の場合ですと雨とボートに使われました。無情は聞くことも多い言葉ですのでイメージが掴みやすいのではないでしょうか。
無常と無情の意味を取り違えないようにしよう!
いかがでしょうか。無常の意味、そして同音異義語である無情の意味は理解できたでしょうか。無常とは、「この世のすべては常に変化していくこと」を意味します。そして無情は「情や思いやりの心がないこと」を意味します。意味を取り違えないように、それぞれ使い分けができるようにしたいですね。