2021年09月24日公開
2021年09月24日更新
緊縛師「一鬼のこ」に縛られた女たち。緊縛アート写真集
緊縛師の一鬼のこをご存知ですか? 緊縛というと特殊なイメージがある方も多いかもしれませんが、今や緊縛とは単にエロスやフェチズムだけでは有りません。縛りとは「つながり」だと言う緊縛師、一鬼のこさんが表現する緊縛世界の魅力をご紹介します。
目次
緊縛という歴史背景
緊縛の始まり、でも今の様な緊縛師はいなかった?
市中引き回し。これが緊縛のルーツだと言われている。
皆さんは緊縛というとどういうイメージを浮かべますか?縄や紐などで体を縛って拘束する、縛られた女性を吊るしたりする事から痛そう、苦しそうというマイナス面やマゾヒズムなどの性的嗜好を思い浮かべる方も多いのではないかと思います。
そもそも緊縛とは手錠という物が未発達だった江戸時代に罪人を死なせたり暴れさせたりしない様に捕まえておく為に開発された技術であり、市中引き回しなど刑に使うことからあくまで罪人が逃げられない様にする為の物。ですが、その時代における緊縛師とは武術的な捕縛師、責め絵や縛り絵を描く者を纏めて縄師と呼んでおり、今の様な調教などの意味では使われていませんでした。
その後、罪人の身分や性別の違いで結び方を変えたり縄の通し方にもルールが存在する様になり高度な技術発展へと至ります。明治時代以降になると女囚の縛られた姿を描いた錦絵などが出回り、それを好む者が居たことから緊縛は現在まで幅広く伝わってきました。
元々が罪人の為ですので、その時代では痛みを伴う物だったのかもしれませんが現在ではしっかりとした知識と技術を学べば痛みなどを伴うことは有りません。
それでもアダルトや性的嗜好のイメージは拭えないと思います、しかし、それを覆す様な緊縛の表現を切り拓いたのが一鬼のこという緊縛師です。
緊縛の伝統と新感覚、縛りの可能性
光る縄で縛られた女性。新しい緊縛のスタイル
今の時代における緊縛師とは
現代で緊縛師と言えば官能的なイメージが強いのではないでしょうか。現に緊縛師とはマゾヒストなどの特殊な性癖をもつ者を調教する事を生業にしている者を指します。高度な技術で女性の体を縛る事で女性特有の体のラインを強調したり、より綺麗に見せたりと緊縛の美しさと伝統を自らの考えを持ち表現し続けているのです。
伝統をより良いものに、一鬼のこの世界
緊縛の始まりは刑に使う物で現在の様にあまり美しさや作品と表する物ではありませんでしたが緊縛に性的嗜好を覚える人が増え徐々に女性を縛り美しさを表現するという今の伝統を築き上げました。
そんな伝統の表現は勿論の事、一般の方や若い人にも縛りのエロスの面だけではなく楽しさを感じてほしいと色んな縄を使い表現の幅を開拓した一鬼のこ。
その作品には「サイバーロープ」や「アートロープ」といった様々な緊縛の表現があるのです。
緊縛師、一鬼のこという人物
一鬼のこ
緊縛の新境地を開拓した人物
旧表記は一鬼のこ。基本表記はHajime Kinokoとなっている。名古屋出身で当時交際していた女性がきっかけとなり縛りを学び始める。その後自身が店長を勤めるバーにて色んな客や緊縛師などと交流する中で実力をつけるも、レッスンを受けていた緊縛師が引退を発表したのを機に緊縛という業界から去っていた時期もあるという。
数年間緊縛業界から去り縛りというものに迷いが有った時期に新たな緊縛師との出会いを通し縛りの技術を学んでいった。
また、緊縛写真の現場にて手伝いをしながら自分自身も緊縛写真や作家活動を行い一般人にも緊縛という良さを分かってもらいたいという本人の思いから現在の作品やアートを生み出した。
緊縛師一鬼のこの類まれなる緊縛作品
一般の人にも受け入れ安い緊縛を
一鬼のこの緊縛には色々な種類の縛りがあり、緊縛プレイやマゾヒストさんを満足させる為の縛りやパフォーマンスを重視し客を飽きさせない為の縛り、岩や空間を縛るアート性の高いものなど縛りの種類も豊富です。
緊縛とは思えないカラフルさ。これなら若者にも受け入れられそうですし、色んなシーンでも使えそうです。
光る縄を用いて表現されるのがこの「サイバーロープ」。色とりどりの光る縄を使うことで緊縛とは思えない幻想的な世界を表現。
敬遠しがちな緊縛をポップに表すことにより一般の方にも受け入れやすい作品へと仕上がり、アート性の高さから数多くのアーティストとのコラボなども行っている。
サイバーや近未来などを模した作品が多く見られます。
サイバーとは違ったカラフルさ。元気かつ健康的なイメージが爽やかなエロスを感じさせます。
同じポップな感じでも、こちらの作品は幻想的というよりは元気がもらえそうなビタミンカラーのイメージが強いです。
あまりエロスを感じさせない美しさがあり、CDのジャッケットなどに多く見られる様に思います。こういう縛られた感じの女性なら変に緊縛と意識せずに楽しめそうです。
赤と白に拘ったアート性の高い作品。縄というより薔薇や彼岸花を見ているような美しさです。
赤縄を使い表現させるのが「アートロープ」。白い背景に赤い縄が特徴で赤い縄を使うことにより「つながり」を表している作品。
白と赤の色合いを固定することでとても耽美で神秘的な世界観を目の当たりに出来る。
こちらもエロスな緊縛というよりかは芸術的な作品としてのイメージが強く一般の方にも受け入れ易く思われます。
自然をも縛る。一鬼のこのユニーク性
人を縛るだけが緊縛師ではない
一鬼のこと言えば岩や空間など、人間だけでなく自然を縛ってしまうユニークさも魅力の1つ。
その作品性の高さからアーティストPVなどパフォーマンスに留まらず映像や写真での活動も精力的に行っている。
女性を縛ると言う固定概念を覆す作品を次々と生み出す一鬼のこ、岩や自然も人間だと思って縛っているという。
岩をも縛るユニーク性。岩についた苔も活かすような縛りです。
2013年に「Bondage Art with Kinoko Hajime」というドキュメンタリーに出演。ドキュメンタリー内で披露した岩を縛るアート性の高さが国内外問わず人気となり、動画サイトなどでの再生数は200万回を超える数字となっている。
何もない空間にさえ、あらゆる物を生み出す。
岩や空間が相手でも自分勝手に縛る事はしないという考えを持つ一鬼のこ。
岩も気持ち良くさせたいという思いから自然でも人間でも相手の反応を見ながら縛るのが大切であり、こういう意識が緊縛をアートへと昇華させている要因でもあるのではないだろうか。
世界共通の美。緊縛師、緊縛が海外で人気の理由は?
海外でも活動することの多い一鬼のこ。技術を学ぼうと海外からくる生徒も多い。
世界でも人気、一鬼のこの教えとは
パフォーマンスのみならず、自身も緊縛の映像や写真を手がける一鬼のこ。現在では緊縛の教室も開いているという。
生徒の3分の1はなんとヨーロッパなど海外の方が多く「緊縛(KINBAKU)」などの単語は勿論、中には「ジャパニーズボンデージ」などの呼び名も存在する位海外に浸透している緊縛。
緊縛の教室だけでなく、プライベートレッスンも行っているそうですが5時間もの時間で緊縛を学ぶ海外の方も多いそう。
アートや芸術のみならず縄での繋がりを大事する一鬼のこ。そんな緊縛への思いが海外の方にも通じているのではと思います。
海外には無い、日本ならではの美
海外の方から見ると日本の緊縛はただのエロスでは無く繊細さを兼ねた美しさが魅力の様で有り、堂々とした海外のエロスとの違いが人気の理由なのではと感じる。
着物の裾から見える脚や項など日本独自の美は同じ日本人としても男女問わず惹かれる物があり、何処か恥じらいを思わせる仕草や表情が海外の方からの人気も増したの理由ではないだろうか。
海外での様子。海内でも人気なのが見て分かります。
心と心の触れ合い。緊縛師、一鬼のこが教える「コミュニケーション縄」
繋がるという楽しさ
海外のみならず、最近では緊縛を趣味として学ぶ方も増えているという。最初は未知の世界に緊張や不安もあるだろう、SNSなどでコミュニケーションを得意としない者が多い現代に初対面の人達と非日常を過ごすのだ。
だが、知らない者同士でお互いに縛ったり縛られたりと非日常を過ごす事により自然とコミュニケーションが取れている事も多く言葉を交わす・触れるという行為が出来るようになってくる。人との関わりの楽しさを縄を通して学べるのが魅力なのかもしれない。
緊縛を学んでいる人々。こうして見ると老若男女問わず人気があるようです。
花札と緊縛。一鬼のこの侘び寂びの世界
花札をモチーフとした写真集。これぞ日本の美という感じがします。
一鬼のこに縛られた女性の中には、包まれる気持ち良さに眠くなる人もいるという
花鳥風月が詰め込まれた1冊
日本には風情という言葉があります。咲いては散る花々、始まっては終わっていく季節、12ヶ月を通し留まらず去り行く儚い美しさを心で感じる日本古来の美意識。
ですが、心で感じる物を言葉にするのは難しい事ではないかと思います。そんな風情を花札をテーマに緊縛で表現したのが写真集「花札緊縛美人」。
花札に登場する桜・菖蒲・牡丹など四季折々の花々とそれらに合わせて縛られた女性とのコラボレーションはとても美しく、言葉に出来ない趣を表現してくれている様です。
花・縄・女性のバランスを整えながら撮られた一枚一枚の写真はまさに芸術。皆さんも一鬼のこの表現する緊縛と風情に触れてみてはいかがでしょうか。
DNAでもあり血液でもある。赤縄で魅せる「つながり」
繋がりがテーマのアートな1冊
ネットでは無くリアルな繋がりを
一鬼のこの代表作に‐Red‐という作品があります。「つながり」をテーマにした作品で、家族や仲間、目には見えないDNAや運命など色んな繋がりを赤い糸と表現。
赤縄と白い背景のみを使うのは繋がりをより強固に見せ作品を見る人達に繋がりや触れ合いを思い出して欲しいという気持ちの表れでもあります。
拘り抜いた表現
人だけではなく、物や空間なども赤縄で縛ることに拘ったこの作品は話題を呼び、2015年に開いた展覧会ではおよそ3000人もの来場者を集めた。
‐Red‐は展覧会のみならず写真集としても注目を集め、彼が表現したかった繋がりを見て緊縛はアートだと思う方も大勢居たのではないだろうか。
一鬼のこ、緊縛師としてのオリジナリティ
何にでも縛りを取り入れる柔軟性
写真集やアート作品など一鬼のこの色んな緊縛の表現をご紹介してきました。ご紹介した写真集の他にも10周年記念の写真集や本格的な物から撮影などに使えそうなポップな縛り方などをレクチャーしてくれるDVD、一鬼のこ仕様の縄など作品は様々。
さらに一鬼のこの縛りを再現しプリントしたタイツやニーハイなども販売しており、こうした一鬼のこのオリジナリティにより緊縛は昔より身近になっているのかもしれません。
縛りがプリントされたタイツ。緊縛もファッションに取り入れる発想はユニークですね。
こちらが10周年のフォトエッセイ
まとめ
一鬼のこの世界、いかがでしたか?
少しでも緊縛の良さが伝わったなら幸いです。本格的な緊縛はハードルが高いと思っていた方もアートな感じなら受け入れやすいのではないでしょうか?
緊縛はアートとしても楽しめるもの。これを機に是非緊縛の世界に触れてみて下さいね。