2021年09月24日公開
2021年09月24日更新
「テセウスの船」ってなに?脳を刺激する思考実験やパラドックスまとめ
皆さんは「テセウスの船」をご存知でしょうか?思考実験やパラドックスの一例として有名な話なのですが、聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか?そこで今回は「テセウスの船」を含む思考実験やパラドックスについてまとめてみました!
目次
思考実験「テセウスの船」とは?
「テセウスの船」を含むパラドックスを紹介
出典: http://kmktwo.blog95.fc2.com
皆さんは「テセウスの船」という話をご存知でしょうか?
これはいわゆる思考実験、もしくはパラドックスと呼ばれているものの一つですが、意外と知らないという人も多くいるのではないでしょうか?
そこで今回は「テセウスの船」を含む思考実験やパラドックスについてまとめてみました。
「テセウスの船」の内容
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右がテセウス
ミノタウロスを退治した王として有名です
テセウスというギリシア神話に登場する国民的な英雄が、アテネにいる若者たちと一緒にクレタ島から船で帰還しました。
その船には30本の櫂がありました。アテネの人々はそれを保存しましたが、その船は年月を経るごとに朽ちていくため、その朽ちた部分の木材は少しずつ新しいものに入れ替えられていきました。ではその船の木材が全て新しいものに入れ替えられてしまったとして、それは本当に「テセウスの船」なのでしょうか?
プルタルコスが取り上げた「テセウスの船」
出典: http://blog.goo.ne.jp
プルタルコス
このテセウスの船、哲学船は元々ギリシャの伝説として伝えられており、このパラドックスを孕んだ思考実験は特に哲学的な議論が好きなギリシャ人の間で「テセウスの船だ、いいやこれはテセウスの船ではない」など、格好の議論の的となっていました。これをギリシャ人著述家として有名なプルタルコスが取り上げたことにより有名となりました。
「テセウスの船」のもう一つのパラドックス
出典: http://mashi.dyndns.org
※ 画像はイメージです
また、プルタルコスはこの哲学船の思考実験において、全ての船の部品が入れ替えられてしまったとして、それは本当にテセウスの船なのか、という問題の他にも、そこから派生して逆に抜き取られた古い木材を集めてもう一度新しい船を作ったとして、それはテセウスの船と呼べるのか?という問題も投げかけています。
「テセウスの船」の解答への試み
出典: https://ja.wikipedia.org
アリストテレス
四原因説以外にも様々な学問を研究しており「万学の祖」とも呼ばれています
この哲学船の思考実験については、アリストテレスの四原因説で解答することが可能だと言われています。アリストテレスの四原因説とは、事象はその成り立ちを4つに分けることで説明することができるというものです。
目的や方法から「テセウスの船」を解答
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※ 画像はイメージです
四原因説によると、哲学船が何のために作られたか、また哲学船が何をするものなのかという点で考えていくのですが、この考えでは、部品が新しく入れ替えられた哲学船も、入れ替えられた古い木材で作られた哲学船にしても、人や荷物を海の上に浮かべて運ぶという目的で作られているという点は同じです。
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また、これらの哲学船を誰がどのように作ったかについて考えてみても、それは始めにテセウスの船を作った職人が同じ道具で全ての船を作る、もしくは修理したことが考えられます。よって、哲学船は部品が入れ替えられたり、古い木材で新しい船が作られたとしても、それは「テセウスの船」だと言えるという証明になるのだそうです。
「テセウスの船」以外の思考実験
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では次に「テセウスの船」以外の思考実験やパラドックスについて見ていきたいと思います。「テセウスの船」については、一つの解答例についてもご紹介しましたが、以下紹介する思考実験については明確な解答のない物もありますので、是非よく考えて脳を活性化させてみて下さい。
シュレーディンガーの猫
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シュレーディンガーの猫装置
イメージ図
蓋の付いた箱の中に1匹の猫と放射性物質であるラジウムと放射線の計測器、青酸ガスの発生装置を一緒に入れます。箱の中では、ラジウムからアルファ粒子が発生すると、放射線の計測器が動き青酸ガスの発生装置が動くような仕掛けになっています。もしも青酸ガスが発生してしまうと、猫は死んでしまいます。ではこの箱を一定時間放置すると猫は死んでしまうでしょうか?それとも生きているでしょうか?
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猫の死はアルファ粒子が発生するかどうかで決まるわけですが、このアルファ粒子が発生するにはラジウムのアルファ崩壊が起こるかどうかで決まります。もしも箱に入れてから1時間以内にアルファ崩壊が起こる可能性が50%だとした場合、猫が生きているか死んでいるかは観測しなければ分かりません。
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量子力学ではこの、猫が生きているか死んでいるかどうか分からないように、あいまいな状態の粒子を解明するために実験を行っています。しかし、実験結果を観測しようとすると、猫のように生きているか死んでいるかどちらかの状態を明確に確認してしまうように、明確に定まってしまった粒子を観測してしまうのだそうです。このような実験結果を観測することによる矛盾を「シュレーディンガーの猫」と表現しているのだそうです。
トロッコ問題
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ある線路を走っていたトロッコが制御不能となってしまいました。猛スピードで走るトロッコの先には線路上で作業をしている作業員が5人の人間がいて、このまま行けば5人はトロッコに轢かれて死亡してしまいます。しかしあなたはたまたま線路の分岐器のそばにいるため、線路の切り替えを行い5人の人間を救うことができます。
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しかし、分岐器でトロッコの進路を変えると、その線路の先では作業を行っている人間が1人います。分岐器でトロッコの進路を変えてしまうと、5人の人間の代わりに1人の人間がトロッコに轢かれて死亡してしまいます。このような状況に置かれたあなたは、分岐器でトロッコの進路を変えますか?
出典: https://googirl.jp
ちなみに、分岐器を変える以外の方法でこの人間たちを救う方法はなく、またどちらを選んだとしてもあなたが法的な責任を負わされることはありません。この思考実験は、5人の人間のために1人の人間を犠牲にしてもいいのかという道徳的パラドックスを問う問題になっています。
メアリーの部屋
出典: https://ja.wikipedia.org
白黒の部屋で生まれ育ち、一歩も外に出たことのないメアリーという女性がいました。メアリーは生まれてから一度も色を見たことがありませんでした。しかし、メアリーは非常に聡明な科学者で、色に関する知識や特性、目が色を認識する仕組みなど、色に関して物理的な情報は全て知っていました。
出典: https://ja.wikipedia.org
ではもし彼女がその部屋から一歩外へ踏み出したら、もしくは彼女の部屋にあるテレビがカラーになったとしたら、彼女は一体何を感じ何を学ぶのでしょうか?そしてそれは彼女にとって新しい知識になるのでしょうか?
出典: https://ja.wikipedia.org
これは哲学におけるクオリアと呼ばれる何かを見たり、感じたり、を人間が個々で受け取った時の個人差や経験の存在の証明、つまり経験は知識を得るだけでは補うことができないということの証明になっているのだそうです。
囚人のジレンマ
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とある罪で共犯だった二人の人間を逮捕しました。検事は二人に罪を自白させるために、次のような司法取引を持ちかけました。「本来ならお前たちは二人とも懲役5年の罪になるだろう。しかし、二人とも犯行に関して黙秘権を行使し、沈黙を貫くなら証拠不十分で減刑となり懲役2年になる。」
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「もしも二人の内一人が自白したら、自白した方は懲役は0年、つまりその場で釈放してやろう。その代わり自白しなかった方は二人分の罪を背負って懲役10年となる。また、もし二人とも自白するのであれば懲役は通常通り5年となる。」
出典: http://toruyonemoto.com
なお、二人は別室に隔離されており、相手の状況を把握することも、相談をすることもできません。この場合囚人たちは相手を信頼して沈黙するべきか、それとも相手を裏切って自白するべきかという社会的なジレンマに陥ります。
「テセウスの船」など思考実験まとめ
今回は「テセウスの船」の他、いくつかの思考実験やパラドックスについてご紹介しました。シュレーディンガーの猫などは、名前は知っていても実際何を証明するための実験かということを知らないという方も意外と多かったのではないでしょうか?
また、これ以外にも様々な思考実験やパラドックスが存在していますので、もし興味があれば他の思考実験やパラドックスを調べてみてはいかがでしょうか?