2021年09月09日公開
2021年09月09日更新
日本最大の甲虫「ヤンバルテナガコガネ」の生態とは?【絶滅危惧種】
沖縄県北部の山原(やんばる)地方にしか生息していない「ヤンバルテナガコガネ」は日本では最大の甲虫です。その希少さ故に密猟が横行し、自然破壊によって絶滅の危機に瀕している、そんな「ヤンバルテナガコガネ」の生態や密猟の実態についてご紹介します。
目次
ヤンバルテナガコガネとは
出典: http://www.rinya.maff.go.jp
ヤンバルテナガコガネは沖縄県の本島北部にある山原(やんばる)地方にのみ生息する固定種で、ある程度年を重ねた照葉樹の生えた森でしか生息できません。大きさは体長が40~60㎜ほどで、足の長さは体よりも大きく90㎜にもおよぶ場合があり、体長と合わせると、カブトムシよりも大きくなります。
出典: http://blog.ufugi-yambaru.com
ヤンバルテナガコガネは甲虫(昆虫の中でも全身を固い甲羅に覆われた種のグループ)としては日本で最大の大きさです。写真では見づらいかもしれませんが、頭部は緑がかった光沢があり、体には赤みがかった光沢を持った美しい昆虫です。公的な研究を目的としている、もしくは許可を得た繁殖プログラムに則った飼育以外は全て禁止されているため、生態については謎な部分が多く存在します。
ヤンバルテナガコガネの生育
出典: http://www.kahaku.go.jp
ヤンバルテナガコガネは他の昆虫が100~1000個の卵を産むのに対し、10~20個程度の卵しか産まず、しかもその孵化率は非常に低いと言います。ヤンバルテナガコガネの幼虫は湿度があり、薄暗い場所に生息しています。広葉樹などに空いたウロの中でしか生きることができず、そのウロの中でできた腐葉土を餌として成長します。
出典: http://oki64.main.jp
ヤンバルテナガコガネは例え卵から孵化できたとしても、成虫になるまで3年もの時間をかけます。そのため、森林伐採などの環境の変化の影響を受けやすく、密猟の影響もあって現在数が非常に少なく、絶滅危惧種に指定されています。
ヤンバルテナガコガネ発見の経緯
出典: https://www.jiji.com
ヤンバルテナガコガネの標本
写真はイメージです
それまでも度々存在については噂されていたようですが、ヤンバルテナガコガネが正式に世間に発表されたのは1984年で、黒澤良彦によって標本で記載されました。新種記載のタイプ標本(タイプ標本とは、学名を決めるための基準となる標本シリーズのこと)として発見されたヤンバルテナガコガネの個体は偶然の産物により発見されたものでした。
ヤンバルテナガコガネは発見されてからまだ比較的新しい昆虫であり、また発見された時点で既に絶滅危惧種であったために、現在マニアの間で密猟が盛んになっているのだそうです。
ヤンバルテナガコガネの密猟は米軍基地でも
出典: http://blog.livedoor.jp
沖縄県北部の山原(やんばる)地方に生息するヤンバルテナガコガネの密猟は現在米軍の基地内でまで行われているそうです。山原地方の森の中にある米軍の訓練場はフェンスなどによる仕切りがないため、誰でも侵入が可能で日本側が監視していることもないので、やりやすいのだといいます。
ヤンバルテナガコガネの密猟は一年中
出典: http://www.entsoc.jp
ヤンバルテナガコガネの幼虫の写真
ヤンバルテナガコガネは成虫が木から出てくるのが8~10月に限られているため、成虫を狙った密猟はこの時期がピークとなりますが、一方で飼育目的の写真のような幼虫は年中密猟の危機に晒されているといいます。密猟のやり方は非常に荒っぽく高い位置のウロに上るために木に釘を打ちつけたり、木を切り倒してしまったり、ウロを鉈などで切りつけて強引に開くのだそうです。
ヤンバルテナガコガネが取引される値段は
出典: http://kisha-poppou.com
ヤンバルテナガコガネは元々の希少価値も高く、絶滅危惧種に指定されているため、マニアの間では高額な値段で取引されているといいます。とある昆虫雑誌では少し形が歪なヤンバルテナガコガネに評価額として200万円の値段が付けられていたそうです。
出典: https://www.amazon.co.jp
ヤンバルテナガコガネの中でも珍しい物にはそれだけの値段がつきますが、それ以外のものでも数十~100万円程度の値段で取引されています。また堂々とヤンバルテナガコガネの飼育方法について掲載している雑誌も存在するそうです。それだけ飼育したい、もしくは飼育できる幼虫を持っているというマニアがいるということでしょうか。
ヤンバルテナガコガネは今どこに
出典: http://blog.ufugi-yambaru.com
沖縄の県警も現在密猟の強化を進めており、巡回の数も増加しているそうですが、それでもいまだに密猟の現場を捉えることはできていないといいます。また、環境省がヤンバルテナガコガネを発見し保護することもあるのだそうですが、これも数年に一度程度しか発見されず、最近は姿さえ見なくなっているそうです。
正確な数さえ把握されていないヤンバルテナガコガネは今も、どこかにいるのでしょうか?