2021年09月09日公開
2021年09月09日更新
ミニ氷河期の到来が及ぼす人類への危険性!日本はどうなる?
2030年にミニ氷河期または小氷期に入る、と聞いたことありますか?地球温暖化が叫ばれて久しい今日ですが、今では「2030年までにミニ氷河期に突入する」と予測されています。今回はあまり耳慣れないミニ氷河期について、過去のミニ氷河期や予測・危険性を説明します。
目次
2030年にミニ氷河期が来る!?2015年に英王立天文学会で発表
地球温暖化が叫ばれて久しい今日ですが、2015年7月初頭にイギリスの王立天文学会の会議において、2030年までにミニ氷河期(小氷期)が来ることが発表されました。発表者はイギリスのノーザンブリア大学のヴァレンティナ・ジャルコヴァ(Valentina Zharkova)教授。
ジャルコヴァ教授の研究チームは、数学を応用した予測モデルに太陽のデータを当てはめ、ミニ氷河期が来ることを予測しました。発表当時は一部学者や気象学者から反発を受けましたが、ジャルコヴァ教授以外にもミニ氷河期が到来や地球寒冷化という予測にたどり着く研究者は多く、今ではミニ氷河期の到来は現実的なものとなり、ミニ氷河期に突入するか否かだけでなく、いつミニ氷河期に入るかが考察されています。
ミニ氷河期とは?
ミニ氷河期とは、温暖期の間に起こる、寒冷な気候や氷河が増加する寒冷期のことです。14世紀半ばから19世紀後半にかけて起こった寒冷期などをそう呼びました。ミニ氷河期は小氷期、小氷河期とも呼ばれます。ちなみに日本でいえば江戸時代が江戸小氷期などと呼ばれミニ氷河期にあたる時代でした。
一般的にミニ氷河期が指すのは上記に挙げた14世紀半〜19世後半であり、その間は地球の平均気温が1.5度低下しました。またその期間の中でも1645年から1715年にかけてはマウンダー極小期という太陽の黒点が著しく減少する期間と一致し、寒冷化との因果関係が示唆されています。
そして、現在2030年までに再びミニ氷河期が到来すると言われており、より時期を絞り込むといつかという予測や、また今度の寒冷化は前回のミニ氷河期よりもさらに気温が低くなることが予想されています。
また今回の説ほど大きく報道されませんでしたが、2010年頃にも「2013年以降にミニ氷河期が来る」といった説が唱えられており、地球温暖化説が有力だったこの数十年間にも何度かミニ氷河期の到来や、ミニ氷河期のサイクルの存在を主張する声はあがっていました。
第四紀の最終氷期以後,山岳の氷河が急速に発達した時期。特に歴史時代に入ってからのものをさしていうことが多い。ヨーロッパのアルプス,ノルウェー,アイスランド,北アメリカのアラスカでは 16世紀の終りから 17世紀の初め頃に始った。 1650年,1750年,1850年頃の3つのピークがあり,その間に氷河が若干後退した時期をはさむ。
ミニ氷河期の原因1:太陽活動の低下?
太陽に黒点があることや黒点が出現したり消えたりを繰り返していることは有名なことだと思いますが、この太陽黒点の増減は太陽活動の1つです。
過去のミニ氷河期のある期間(1645年〜1715年)において、太陽の黒点が極端に減少、あるいは全く黒点が観測されない時期がありました。これにより、太陽黒点の減少つまり太陽活動の低下は、地球の寒冷化と結びついていると考えられています。
出典: https://www.nasa.gov
上記は2017年3月に英新聞「Daily Mail」で報道された、NASAが太陽活動の停滞を観測したものです。3月7日から22日までの15日間、連続で太陽黒点がゼロでした。これにより科学者らは、ミニ氷河期が着実に近づいていると考えています。
ミニ氷河期の原因2:火山活動?
過去のミニ氷河期の全期間にわたり、世界中で火山活動が記録されています。具体的には、火山の噴火によって火山灰が噴出され、それが大気上層に昇って地球の表面を覆い太陽光線を遮り、地球の気温を引き下げるのです。火山灰は噴出されてから約2年間にわたって広く日射を遮ります。
実例として1816年の「夏のない年」があり、原因は前年1815年に噴火したインドネシアのタンボラ火山は大量の火山灰でした。この実害はインドネシアのみならず北ヨーロッパやアメリカなど世界規模になり、世界的に冷夏など異常気象で農作物に壊滅的被害がありました。
ミニ氷河期の「真の原因」、未だに議論が残る
過去のミニ氷河期について、上に挙げたように太陽活動の低下と火山活動によるものが原因だとされています。しかしこのミニ氷河期の原因については未だ研究者達によって議論がなされており、依然明確な答えは出ていません。
しかし、2015年に発表されたジャルコヴァ教授による太陽のデータを算出して導き出された「ミニ氷河期到来」という予測により、これまで以上に太陽活動の低下が原因という説が強力になっています。
ミニ氷河期はマウンダー極小期とほぼ一致
出典: https://ja.wikipedia.org
マウンダー極小期とは、1645年から1715年にかけて太陽黒点の数が際立って減少した期間のことです。マウンダーは太陽黒点の研究で知られるイギリスの天文学者の名前で、太陽黒点の出現頻度や減少期間を確立したことから、彼の名がつけられました。
マウンダー極小期と呼ばれているのは1645年から1715年で、その期間は通常約4万から5万個観測できるはずの太陽黒点が50個ほどしか観測できなかったとされています。さらに黒点が全く観測できない日もありました。
今は第24太陽活動周期
出典: http://spaceweather.com
太陽活動周期は約11年周期と言われており、過去数百年に渡って観測されてきました。1755年以降、太陽を観測し黒点の数や無黒点日(黒点の全くない日)や月別の平均値など、太陽活動周期のリストが記録されています。
今日2017年は第24太陽活動周期になり、1つ前の第23周期(1996〜2008年)の無黒点日は821日で、過去80年の8周期と比較してずば抜けて多い周期でした。そして第24太陽周期は、「過去200年で最も太陽活動が弱い」周期になることが分かっています。
2030年にミニ氷河期が来るって本当?何が起こる?
「2030年までにミニ氷河期突入」、精度は97%
2030年までにミニ氷河期に突入する、という予想は97%の精度、つまり97%の確率で起こると予測されています。また一部ではもう既にミニ氷河期に突入しているという声も上がっています。これは数学を用いたモデルに太陽活動周期などの厳密なデータを当てはめて算出された予測であり、明確にいつからいつまでとまでは曖昧ながらも、かなり精度が高い予測だと考えられています。
ミニ氷河期へ「太陽活動の解析予測の実績」から97%確実だってhttps://t.co/IoJsFByp8X
— otenkimame (@osiete_tukachan) May 31, 2016
しかし南太平洋プルームは活性化しているようだし・・・太陽と地球の関係はどうなってる?pic.twitter.com/rxiBYehn45
「2030年、太陽の活動が60%に」
太陽活動のデータを分析したイギリスのノーザンブリア大学に所属するヴァレンティナ・ジャルコヴァ教授らによれば、太陽の活動は2030年までに現在の60%まで減少すること、それによって97%の確率で地球がミニ氷河期に入ることが分かったと発表されました。
これは前回(1645年〜1715年)に世界で起こったミニ氷河期に相当する規模の氷河期だと考えられています。
ミニ氷河期突入についての意見
ミニ氷河期予測発表当時は否定意見も
ジャルコヴァ教授によるこれらミニ氷河期の予測は、北半球を中心に世界的な規模で大きな影響があると考えられます。しかし一部の気象学者はイギリス王立天文学会にこの予測を否定し、公表を差し止めるよう求めました。
アメリカのペンシルベニア大で気象学を専門にするマイケル・マン名誉教授も「太陽活動が地球の気温に与える影響はほとんどなく、地球温暖化は今後何十年間も続く」と反対意見をワシントンポストに送っていました。
現在ではミニ氷河期突入が現実的に
しかしながらミニ氷河期到来に辿り着いたのはジャルコヴァ教授だけではなく、西オーストラリア大学のクリフ・オリア教授やメキシコの水技術研究所のホルヘ・サンチェス・セスマ教授など世界各地の科学者が、ジャルコヴァ教授同様にミニ氷河期の到来を予測、同じ結論に至りました。
さらにジャルコヴァ教授の発表当時(2015年)では否定意見を出していたNASA(米航空宇宙局)も、現在では太陽黒点と気温に相関関係があるとし、同様にミニ氷河期または寒冷期を予測しています。
『デイ・アフター・トゥモロー』の世界が現実になるのか。
— 力りソ㌧ (@KarintoPlus) July 13, 2015
・・・さて、図書館に逃げる準備をせねば。
「地球は15年後“ミニ氷河期”に入る」英国王立天文学会で発表 http://t.co/HocjUByVDD
江戸時代にもミニ氷河期があった
前回のミニ氷河期の時期、そのうちマウンダー極小期にあたる全期間を通して日本は江戸時代でした。江戸時代が全般的に気温が低い時代であったことは割と有名です。この江戸時代は気候学でいえば「小氷期」にあたり、江戸時代の小氷期であることから「江戸小氷期」などとも呼ばれます。
実際、江戸時代の日本は非常に寒かったという記録が残っています。そのため、江戸時代に描かれた絵では頻繁に深く積もった雪や真っ白な雪景色、雪で遊ぶ女子供などが描かれています。
現代のように電気で動く暖房器具がなかった時代ですので、火鉢が大活躍。当時の公的な気温の記録はありませんが、今と比較すると平均気温が5度から7度は低いと言われています。つまり江戸時代全体を通して気温が低く、特に冬は極寒であったことが分かります。
ミニ氷河期が来ると世界はどうなる?
20億人が死亡する可能性
専門家のシミュレーションや研究によれば、ミニ氷河期によって世界各地の穀倉地帯や漁場が変動し、世界の人口のうちおよそ20億人が飢餓や病気で死亡する可能性があると予測されています。
地球温暖化で北極や南極の氷が溶けているという情報もありましたが、NASAによれば今は溶けている氷と同じくらいかそれ以上に氷が増えていることも観測され、今後ミニ氷河期に突入すればどんどん氷が増えていくと考えられます。
夏がほとんどなくなる地域があること、冬は長くなり河川が凍りつくこと、普段は凍らないロンドンのテムズ川までも凍ることなどが予見されました。
ミニ氷河期が来ると日本はどうなる?
日本はミニ氷河期による大打撃は受けない
2030年にミニ氷河期が来る、という情報が出回って以降、根拠のない情報や尾びれや背びれまでついた噂が流れました。2030年にミニ氷河期が来て日本が終わる、生命の危機、生存の危機、というような絶望を煽るようなものなどです。では実際にミニ氷河期が来るとして、日本はどうなるのでしょうか。
まず、江戸時代にもミニ氷河期があったことを思い出しましょう。というのも、上にもあるように江戸時代には現代のような暖房器具はほとんどありません。歴史的にも寒い時期であるにも関わらず、火鉢や温石、湯たんぽくらいで当然ながらエアコンもファンヒーターも床暖房もありません。そんな江戸時代を考えたら、今の設備でミニ氷河期に突入できる現代は幸運です。
結論からいえば、現状の予測では生存の危機に陥るような「ガチな氷河期」は来ません。ご安心ください。低めに見積もっても東京の夏の最高気温が20度になるなど、暑い日が暖かいから涼しい日になる程度です。ただしもしかしたら最近の異常気象のように夏に数日雪がチラつくかもしれません。
冬の東京では氷点下を下回る日が増えるでしょうが、これも生命活動の危機になるほど低下はないと予測されています。ただし東北や北海道などもともと寒い地域はより寒くなることが予測されるので対策は必要です。
食糧難やウイルス蔓延に注意が必要
また、世界的に気温が下がるため、地球全体的に食料自給率が落ち、輸入に頼っている日本には少々痛手になることも否めません。食糧難は十分考えられるため、個人でも食料の備蓄などの備えはしておくことが必要です。
さらに平均気温が低下するため、空気の乾燥や免疫力低下などによって冬のインフルエンザや風邪の流行などウイルスが蔓延しがちになることが考えられます。
ミニ氷河期が本当の氷河期になる可能性も
また、広島大学大学院生物圏科学研究科の長沼毅教授によれば、ミニ氷河期が来ることで一番怖いのは、ミニ氷河期自体ではなく、「ミニ氷河期がトリガーとなって氷期に突入してしまうこと」だと言います。「食糧難に加えて、エネルギーが閉ざされ」、水不足になることが危惧されています。
ミニ氷河期はいつ来る?すでに始まっている?
ミニ氷河期に既に突入しているという説も
2030年までに来ると言われているミニ氷河期。しかし「2030年まで」という広い括りであり、「2030年」ピンポイントではありません。ではいつミニ氷河期が来るのでしょうか。
一説には、2015年後半から既にミニ氷河期に突入していると主張している学者もいます。それ以前にも2013年以降ミニ氷河期が来ると主張した研究者も存在しました。昨今は異常気象も多く、夏でも雪が降ったり例年にない天気が世界各地で起こり、一部の研究者はこれらもミニ氷河期の影響と考えています。
また2030年から2040年に来るという説もあり、やはり現時点では明確に「いつからいつまで」とは言えず、現状一番信憑性があるのは「2013年以降」であり「2030年までに来る」くらいでしょう。
ミニ氷河期はすでに始まっています。2050年までには氷河期が悲惨です:マウンダー・ミニマム(太陽黒点の延長としても知られている)は、約1645年から約1715年にかけて使用された名前で、太陽光観測所では非常にまれであ / “Mi…” https://t.co/S8rarx69LW
— Nurumizu (@atsugi1) October 19, 2017
8月に雪が降る異常気象
異常気象が度々起こる中、2017年夏にも雪が降った地域が世界各地で見られました。ミニ氷河期は2030年までに突入することが97%と予測されていますが、上でも言ったように既にミニ氷河期に入っているという見方もあります。今後も夏に降雪が増えたり氷が張ったり、さらに夏なのに寒い日が続くことも考えられます。
また日本でもここ数年は異常気象という文字をよく見かけ、2017年夏には観測史上最大の大雨が降ったり、6月に降雪があったと思えば一転して猛暑など、天気も荒れました。
「2013年以降ミニ氷河期が来る」という説もあった
ここ数年では2015年に発表された「2030年までにミニ氷河期」という説が有力ですが、これより前にも地球ミニ氷河期説がありました。最近では2010年頃に発表された、「2013年以降にミニ氷河期が来る」という説です。
現在でも2015年後半に既にミニ氷河期に入った、と主張する研究者もおり、これや2030年突入にしても「2013年以降」であり、当時の説も正しかったということになります。実際2013年には通常では雪が降らない中東地域でも数百年ぶりの降雪が見られたり、2013年までに溶けると言われていた北極の氷が増加したりなどしました。
温暖化ではなかったのか?
数年前から世界的に問題として取り上げられる地球温暖化。温室効果ガスを原因とする温暖化は、話題になっている当時から温暖化を否定する説はありましたが。しかしミニ氷河期の到来が予測されている今、少しずつなりを潜めているように感じられます。
まだまだ温暖化が続いている、深刻化しているという説もあれば、既に寒冷化に移行している、あるいは今後数年内に移行するという考えや、これまでの温暖化でさえミニ氷河期とミニ氷河期の間の温暖期に過ぎないという説まで、温暖化と寒冷化を主張する意見は真っ二つに割れています。
「地球は15年後に【ミニ氷河期】に入る」英国王立天文学会で発表!https://t.co/k3ffQEcsjF
— otenkimame (@osiete_tukachan) October 19, 2017
これは太陽を専門に研究する学会員の一致した意見で「97%確実」とのこと★温暖化はどこいった~pic.twitter.com/c1tuQ32V9V
地球温暖化説が優勢だった2013年、それまで「2013年夏までに北極の氷が溶ける」「2013年夏までに北極の氷は姿を消す」という温暖化派の説がありました。しかし実際の2013年にはその予測を裏切り、北極の氷は60%増加するという現象を見せました。
ただし当時北極の氷は増加し海氷面積(海の凍っている部分)が広がりましたが、南極では海氷面積は減少していました。こちらばかりが取り上げられ、海氷面積の減少が問題になりましたが、全体としてはほんの少ししか減少しておらず、現在ではむしろ増加していると言われています。
温暖化ではなく寒冷化対策が必要?
これまで有名な京都議定書をはじめ、国家レベルのものから個人でできるものまで、様々な温暖化対策が打ち出されてきました。しかし、ここ数年になってミニ氷河期に突入するという予測が打ち出され、温暖化対策とは反対の寒冷化対策をどうしたら良いか考えている人もいるかもしれません。
しかし今回予測されている寒冷化はあくまでミニ氷河期であり、日本においては、「少し寒くなる」程度でそこほど深刻な寒冷化ではないと予想されています。よって対策も災害時と同程度か少し多めくらいの水や食料の備蓄や、多少の防寒対策で十分でしょう。
おわりに:ミニ氷河期に対策はできるのか
いかがでしたでしょうか。ここ数年で瞬く間に話題になったミニ氷河期、地球寒冷化ですが、ミニ氷河期が来ることはほぼ確定とはいえ、厳密にいつどの程度のミニ氷河期がやって来るのかは分かりません。
この状態で取れる対策としては、まず災害時の対策と同じように食料の備蓄です。上でも挙げたように、食糧を輸入に頼っている日本は、世界的な寒冷化によって各地の食糧難の煽りをくらう可能性があります。数年前の大地震によって災害対策をしている方も多いと思いますので、多少の水と食糧は備蓄しておきましょう。
もともと寒い地域に在住の方はもちろん、他の地域の方も多少の防寒対策を取っておくと安心です。ミニ氷河期に限らず、いつどこで何があるかは誰にも分かりませんので、いつミニ氷河期に突入しても良いように、無いのが一番ですがいつ災害があっても慌てないよう、備えあれば憂いなしを実践することが重要です!