哲学者が考えた13の思考実験の面白さが異常

今回は哲学者が考案した13の面白い思考実験を紹介致します。テセウスの船など日常でも応用できる思考実験からどこでもドアをはじめとしたSFに近い科学的な思考実験など一度考えたら眠れなくなってしまうような面白い哲学の思考実験の世界へようこそ!

哲学者が考えた13の思考実験の面白さが異常のイメージ

目次

  1. 1面白い哲学思考実験:テセウスの船
  2. 2面白い哲学思考実験:ウィグナーの友人
  3. 3面白い哲学思考実験:トロッコ問題
  4. 4面白い哲学思考実験:カルネアデスの船板
  5. 5面白い哲学思考実験:メアリーの部屋
  6. 6面白い哲学思考実験:箱の中のカブトムシ
  7. 7面白い哲学思考実験:功利の怪物(Utility Monster)
  8. 8面白い哲学思考実験:スワンプマン
  9. 9面白い哲学思考実験:水槽の脳
  10. 10面白い哲学思考実験:脳分割問題
  11. 11面白い哲学思考実験:どこでもドア
  12. 12面白い哲学思考実験:エイリアス問題
  13. 13面白い哲学思考実験:トムソンのランプ
  14. 14面白い哲学思考実験:哲学的ゾンビ
  15. 15いかがでしたか?

面白い哲学思考実験:テセウスの船

テセウスの船とは?

テセウスの船(Ship of Theseus)は、「同一性(所謂アイデンティティー)」についての思考実験であり、テセウスのパラドックスとも呼ばれています。テセウスの船では、船の部品を一つ一つ交換していき、全ての部品が入れ替わったとき、その船が以前と同じテセウスの船と言えるのか?また取り替えた古い部品を使って新たに船を作った場合、どちらがテセウスの船と言えるのか?という問題です。
テセウスの船は以下のギリシャ神話に基づいて作られた問題です。


テセウスがアテネの若者と共に(クレタ島から)帰還した船には30本の櫂があり、アテネの人々はこれをファレロンのデメトリウスの時代にも保存していた。このため、朽ちた木材は徐々に新たな木材に置き換えられていき、論理的な問題から哲学者らにとって恰好の議論の的となった。すなわち、ある者はその船はもはや同じものとは言えないとし、別の者はまだ同じものだと主張したのである。
 


テセウスの船という実験

この実験は多くの哲学者に議論された実験の一つ

 


出典: http://pinterest.com
 

テセウスの船の応用


日常におけるテセウスの船の応用としてあげられるのは、企業や大学が所在地を変えたり見た目が変わった場合でもその組織の目的は変わりません。
さらに長寿番組など出演者の入れ替わりや、体内の細胞の入れ替わりもテセウスの船に応用されています。
 

まとめ:テセウスの船の考察


テセウスの船はこぞってギリシャの哲学者たちの間で議論されました。
 


哲学書によくある主張として、ヘラクレイトスの川の場合、「同じ」が2種類の意味で使われているとされる。1つは「質的(qualitatively)」な「同じ」であり、属性が一致していることを意味する。もう1つは「数的(numerically)」な「同じ」である。例えば、同じに見えるボウリングのボールが2個あるとする。それらは質的には同じだが、数的には同じではない。一方を別の色で塗り替えた場合、塗り替える前と比較して数的には同じだが、質的には同じではない。 このような主張では、ヘラクレイトスの川は質的には同じだが、数的には同じではないということになる。テセウスの船も同様である。 このような解答は、質的な同一性をさらに詳細化して考えていったとき、それが数的な同一性より範囲が狭くなるという問題をはらんでいる。例えば、ボウリングのボールの属性をその時空間における位置であるとした場合、異なる位置や時間に存在するボールは(数的には同じであっても)質的には同じであるとは言えなくなる。同様に、川も時と共に属性が変化していると見ることもでき、水面の波の状態などは一度として同じになることはない。質的に同じでないものは数的にも同じでないとされるため、異なる時点の川は数的にも異なるということになる[6]。
 


同じ川には二度と入れません。
 

面白い哲学思考実験:ウィグナーの友人

ウィグナーの友人の誕生


シュレディンガ-の猫は主に科学の領域での思考実験でした。しかし、観測ランプをウィグナーの友人に置き換えたことにより哲学の領域での思考実験に用いられるようになりました。
 

有名な思考実験
ウィグナーの友人

ウィグナーの友人とシュレディンガーの猫


箱の中に50%の確率で有毒ガスが発生する装置と生きた猫を入れます。猫が生きているか死んでいるかは、箱の外の人間には分からないという思考実験です。物理学者であったアインシュタインは「神はサイコロを振らない」として、目を閉じても世界が存在するように箱の中の猫は例え観測されなかったとしても、生きているか死んでいるかのどちらかの状態でしかないと主張しました。

 


出典: http://pinterest.com
 

ウィグナーの友人

ウィグナーの友人では、シュレディンガーの猫の生死(または有毒ガスが発生したか?)が観測者によって決定されるとした場合、観測者にウィグナーの友人を任命しました。ウィグナーの友人が箱の中の猫の生死を確認してから別室で待機しているウィグナーに結末を伝えます。
この時猫の生死はいつ決まるのでしょう?

まとめ:ウィグナーの友人の考察


ウィグナーの友人におけるコペンハーゲン解釈では、物事は観測されるまでは結末は分からないものであり、確率で結末を予想をすることはできるが観測されるまでは両方の可能性があるとしています。つまり、猫の生死は観測者のウィグナーの友人が決定するとなる。
 

ウィグナーの友人の応用


もし仮にウィグナーの友人が一時間後に猫の生死をウィグナ-に伝えた場合、猫の生死はいつ決まるでしょうか?
 

面白い哲学思考実験:トロッコ問題

哲学者フィリッパ・フット考案


トロッコ問題はイギリスの女性哲学者フィリッパ・フット氏が考案した思考実験で、ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるのか?という問題です。
トロッコ問題はアメリカの哲学者であるマイケル・サンデル(Michael J.Sandel)氏の著書である『これからの「正義」の話をしようーーいまを生き延びるための哲学』で取り上げられ、日本でも話題になりました。
 


出典: http://pinterest.com
 

暴走するトロッコ


あなたはトロッコの運転手で、路面を走っていたトロッコの制御が出来なくなってしまいました。猛スピードで疾走しているトロッコを止めることは誰にもできません。さらに前方には5人の男たちが線路上で作業をしており、トロッコがこのまま進めば5人の男たちは皆トロッコに轢かれて死んでしまいます。線路上には右側へそれる待避線がありますが、そこにも1人の男が作業をしています。トロッコを待避線に向かわせれば5人の作業員の命は助かるが、1人の作業員の命は犠牲になってしまいます。
どうすべきでしょうか?
 


出典: http://pinterest.com
 

トロッコの結末はあなた次第


意見がきっぱりと分かれるトロッコ問題。命の重さは人数なのか?多くの場合、5人の命が助かる場合は1人の犠牲が出てしまったという結末は仕方がないと捉えられるのが普通です。しかし、一人で作業していた人が自分の大切な人、家族であった場合あなたならどのような結末を選びますか?

 

面白い哲学思考実験:カルネアデスの船板

哲学者カルネアデスが提起した問題

紀元前二世紀のギリシャで一隻の船が難破し、船に乗っていた人が皆、海に放り出されました。ある一人の男が命からがら、波で壊された船の板にすがりつくことができました。ところがもう一人の男が同じ船の板切れにすがりつこうとしました。二人がつかまれば板切れが沈んでしまうと考えた男は、後から来た男を突き飛ばして死なせてしまいました。
その後、助かった男は殺人の罪で裁判にかけられたものの、罪に問われることはありませんでした。

面白い哲学思考実験:メアリーの部屋

哲学者フランク・ジャクソンが考案


白黒の部屋で生まれ育ったメアリーという聡明な科学者がいました。メアリーは白黒の部屋から一度も出たことがないので、メアリーは色を一度も見た経験がありません。メアリーは白黒の本と白黒のテレビから外の世界の情報を得ています。さらにメアリーは視覚の神経生物学に精通しているので、光の特性、眼球の構造、網膜の仕組み、視神経、視覚野のつながり、見たものを「赤い」と言葉にするときの仕組みなど、視覚についての全ての知識を網羅しています。
メアリーは視覚に対する物理的事実を全て知っています。
メアリーが白黒の部屋から出て生まれて初めて色を見たとき、彼女は何か新しいことを学ぶであろうか?という問題です。
 

答え:新しいことを学ぶのか


仮にメアリーが何か新しいことを知るとしたら、定義よりそれは物理的事実ではなく唯物論(物理主義)は偽である。
 

まとめ:メアリーが知らなかったこと


メアリーの部屋は哲学者フランク・ジャクソンの『メアリーが知らなかったこと』(What Mary Didn't Know)という論文のなかで紹介された哲学的思考実験です。この思考実験は、性質二元論または中立一元論の立場から物理主義(心的あるいは精神的なものを含む宇宙は全て物理的なものであるという立場)に対して展開されるもので、知識論法(Knowledge Argument)とも呼ばれます。
この思考実験が発表された後の議論などをまとめた『メアリーに首ったけ』(2004)が公刊されました。
 

面白い哲学思考実験:箱の中のカブトムシ

哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン考案

箱の中のカブトムシは私的言語論として知られています。
最初に数人のグループを作り、グループの各人にカブトムシの入った箱を渡しますが、誰もカブトムシがどのような形をしているか知りません。さらにそれぞれの箱には異なる形をしたカブトムシが入っていますが、他のグループのメンバーには自分の持っているカブトムシについてのみ話すことができます。したがってグループ内のメンバーが得たカブトムシの情報はそれぞれ違っているので、彼らにとってのカブトムシはただの箱の中に入っているものを意味します。

答え

この思考実験によるとカブトムシは人の心理に似ており、他人の考えていることは当の本人にしか分からないものであり、尚且つ他人が何を考えているかは予測できないものであるということを指摘しています。
私たちは他人が経験したことを目で見ることができても、本人が経験を通して感じていることや考えていることは全く分かりません。

面白い哲学思考実験:功利の怪物(Utility Monster)

功利の怪物まとめ

功利主義とは最大多数の最大幸福を意味する規範であり、いかにも完璧な教義の限界を表した思考実験です。
ある科学者が普通の人よりも多くの功利を物事から引き出せる功利の怪物という存在を作り出したとします。例えば普通の人がケーキを食べたとき、人はある程度の幸福感を得ることができます。しかし、功利の怪物はケーキを食べると普通の人の1000倍幸福を得ることができます。もしケーキが一つしかなかった場合、最大の幸福を得るためにはケーキを功利の怪物にあげるべきでしょう。さらにケーキが2つあった場合は2つとも功利の怪物にあげるべきでしょう。
 


出典: http://schwitzsplinters.blogspot.jp
 

答え


功利の怪物が普通の人よりも何倍もの幸福を得続ける限り、功利主義では大多数を不幸にすることになりますが、それでも世界全体で見れば最大限の幸福を得ていることになります
 

面白い哲学思考実験:スワンプマン


『自心を知ること(Knowing One ‘s Own Mind)』という論文で心身一元論を発展させました。
ある日、男が一人で沼を歩いていたところ不幸なことに雷に当たって死んでしまいました。しかし、二度目の雷でそこにあった原子が化学反応を起こし落雷で死んだ男と全く同一の構成でできた新たな生命体、沼男が誕生しました。沼男は沼から這い上がり、死んだ男が送っていた生活を送りました。結末としては沼男は自分が他の生命体であることに気付いていません。
死んだ男は不幸であったのか?死んだ男と沼男は同じと言えるのか?

 

面白い哲学思考実験:水槽の脳

哲学者ヒラリー・パトナム考案


ある科学者が人から脳を取り出し、脳が死なないような特殊な成分の液体で満たした水槽に入れます。脳の神経細胞を、電極を通して脳波を操作できるコンピューターに繋ぎます。意識とは脳の活動によって生じます。なので水槽の中の脳はコンピューターの操作によって通常の人間と同じように意識を生じさせることができる。まとめると現実に存在していると思っていた世界は、実はこのような水槽の中で見ている幻覚ではないであろうかという考え方です。
 


出典: http://occult.xxxblog.jp
 

元ネタ



水槽の脳の元ネタは17世紀の哲学者デカルトと18世紀の哲学者カントであったと言われています。
 

面白い哲学思考実験:脳分割問題

分離脳


分離脳とは、脳にある2つの大脳半球を接続している脳梁がある程度手術で切断された状態を指します。難治性のてんかんの治療としててんかんの発作を緩和させるために手術する場合があり、分離脳になった患者は左視野に呈示された画像が何か答えることができません。

 

なぜ答えることができないのか?


通常人間の言語優位性半球は左半球です。しかし、左視野にある画像は脳の右半球のみに伝達されるからであると考えられています。左右の大脳半球の連絡が遮断されているため、患者は右半球で見ているものを答えることができませんでした。しかし、患者は左視野にあるものを左手で掴んだり、認知することは出来ます。これは左手が右大脳半球によりコントロールされているからです。
 

まとめ:右脳と左脳で異なる人格をもつ

もし右脳と左脳が分割された場合、人格は右脳と左脳どちらに、あるいはあるのでしょうか?
脳は分割した瞬間から人格が生まれ、それぞれの目標を持ち人生を歩むのか?
左脳が長い期間会っていなかった右脳と再会したとき感情を司る右脳は、左脳を懐かしいと感じるのか?という議論がなされています。

面白い哲学思考実験:どこでもドア


漫画『ドラえもん』にて登場するどこでもドア。一度はどこでもドアがあったらいいのに・・・・・・と思ったことはあるのではないでしょうか?
どこでもドアは謂わば転送装置機です。入口で物体の情報をスキャンして出口で再現する。パソコンで言うところのコピペに近いかもしれません。
 


出典: http://www.hobbystock.jp
 

ちょっと怖い結末も


入口のドアでスキャンした物体を、出口のドアで再現するという仕組みなのです。つまりどこでもドアに入ったのび太君とドアから出てきたのび太君は、完全に同じ物体でありながらも全くの別物であるということになります。
 

まとめ:どこでもドアの結末


どこでもドアを通過して行き着く先は出口ドアではなく、実はどこでもドアの向こう側は真っ暗な異次元空間なので確実に死にます。22世紀でも物体のコピーはできるが、その物体をそのまま他の場所に移すことは不可能です。移動したように見せるには一人は消えてもらう必要があるというわけです。
結末としては、消されながらものび太は自分のコピーをこの世に残しながらどこでもドアで移動し続けているわけですね。
この恐ろしい結末を知りながらもどこでもドアを使ってみたいですか?
 

面白い哲学思考実験:エイリアス問題

転送装置


転送装置とはそれそのものが移動することはしないが、物体を瞬間的に遠隔地に送り届けることのできる架空の装置です。転送装置の呼称は作品によってそれぞれですが、SF作品にしばしば登場する装置である。
 

エイリアス問題


仮に自分の脳の細部まで全てコピーして、新しい身体に移すことができたら、そこにはある哲学的な問いが出てきます。
例えば映画『スタートレック』のような転送装置のなかで物質を全てバラバラにしてから物質の情報を転送先で再構成するという仕組みです。まとめると、転送装置と転送先で同じ人物が2人いることになります。完璧な自分のコピーができたらどういう結末になるのか?という問題が生じます。
 

まとめ:エイリアス問題


まとめるとエイリアス問題とは「自我とは何か」という哲学的な問題です。
もし『スタートレック』のような世界が現実になったとしましょう。自分が転送装置を使っている最中に死んでしまったのに転送先では自分のコピーが生きているとしたら、幸せでしょうか?あるいは本当に自分だと言い切れるでしょうか?
命あるものはいずれ絶えてしまいますが、不老不死の実現を夢見たり自分のコピーを作りたいという気持ちは子孫を残すことで繁栄した人間の驕りなのかもしれません。
 

面白い哲学思考実験:トムソンのランプ

哲学者ジェームス・F・トムソン考案


読書用のランプにスイッチがついています。そのランプは消灯しているときにスイッチを押すと点灯し、点灯しているときにスイッチを押すと消灯するオルタネートスイッチ式のランプでした。当初は消灯しているとすると、奇数回で点灯し偶数回で消灯します。
もし無限回のスイッチを押したとき、ランプは点灯しているのか消灯しているのか?

 

まとめ:トムソンのランプ


どちらであることもあり得ない自己矛盾であるとトムソンは言います。つまり無限回なされた作業(task)はそれ自身矛盾した概念であるということです。
 

面白い哲学思考実験:哲学的ゾンビ

物理的科学的電気的反応としては、普通の人間とは全く同じであるが意識(クオリア)を全く持っていない人間のことを指します。
決して罪悪感の希薄な人、冷たい人、などの人格を表す言葉でも精神疾患を意味する精神医学関連の専門用語でもありません。


また意味がわかると怖い『哲学ゾンビ』という漫画がサイト上に登場し話題になりました。
 


出典: https://lineblog.me
 

いかがでしたか?

哲学の答え


日常でも応用でき様々な答えがある道徳的な思考実験をはじめ、少し怖いですが科学的な思考実験もありました。どの思考実験にも明確な答えはありません。世界中の数々の哲学者や知識人が答えを導き出そうとしています。
ただ明確な答えがないからこそ哲学なのであって人それぞれ違う答えを分かち合うのもいいかもしれません。
 

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