2021年03月30日公開
2021年03月30日更新
『コルト一族』近親相姦で一家48人に…オーストラリアで発見される
世界を揺るがした事件が発覚したきっかけは「学校に行かない子供たちが、丘の上に住んでいる」という一本の電話からでした。警察がかけつけるとそこには一家で近親相姦を繰り返し、48人もの大所帯になったコルト一族の姿が。この一家、コルト一族の異常な近親相姦の結末とは。
目次
コルト一家事件発覚の発端
2012年7月、日本では信じられないような事件がオーストラリアはニューサウスウェールズ州で発覚し、世界に衝撃を与えました。
ニューサウスウェールズ州の州都はシドニーで、オペラハウスなどのオーストラリア内でも人気の観光名所も多数あり、多くの日本人観光客も足を運びます。
そんな州で、しかも現代に、これほどまでに異常な事件が起きるとは誰が予測できたでしょう。
その事件の発端は、一本の電話でした。「学校に行かない子供たちが、丘の上に住んでいる」という通報が寄せられ、州警察並びにコミュニティーサービスが早速現場へと急行することになりました。
州警察が目の当たりにした状況
出典: http://world-travelogue.com
事件が起きたのはシドニーの南西部。人口2000人程度の静かな田舎の町を取り囲むようにして、丘がありました。その丘の上には大きな農場と雑草地帯があり、そのちょうど中間のあたりが現場でした。
土地のスケールは日本と全く違うことを念頭においてください。その現場は町の中心地から30km、日本でいえば東京駅から横浜市内ほども離れた距離です。田舎町からそれだけ離れているので、何かあってもそうそう気づかれるような場所ではありません。
出典: https://morbidworldblog.wordpress.com
そんなうら寂しい人里離れた場所へ州警察とコミュニティサービスが到着し、目の当たりにした風景は異常なものでした。
2台のトレーラーハウスに物置、そしてテントがあり、そこに40人ほどが暮らしていたのです。大人から子供まで、年齢はバラバラでした。ただ、これだけの情報ではその異常性を語るには到底足りません。
あたりには、泥にまみれたストーブ、そして調理器具が設置されていました。電線も通っているには通っているのですが、電線自体がむき出しになっており、非常に危険です。
散らばったゴミ袋からは異臭が漂い、チェーンソーもころがっていました。そしてなぜか、子供用のベッドにはカンガルーが寝そべっていたといいます。
コルト一家の人々
出典: http://itpro.nikkeibp.co.jp
ほとんど荒野のような場所ですから、水道などは通っているわけがありません。そのため、警察がかけつけた現場にいた人々はとても汚れており、服もボロボロといったありさまです。
ここにいた子供たちは非常に内気だったようで、誰とも目を合わせようとしませんでした。また、こうして人里離れた場所に隔離されるように住んでいたためか、歯の磨き方も知らず、トイレットペーパーの使い方すらわからなかったそうです。つまり、社会的に生きていれば当然知っているであろう常識を一切知らなかったということです。
しかも、明瞭に言葉を話すことができるのは、40人のうちの数人しかいませんでした。さらに、そこにいた全員が足に何かしらの疾患をかかえていて、中には奇形児までいました。
出典: https://japaneseclass.jp
この家の主はベティー・コルトという女性で、ここにいたすべての人はコルト家の一族でした。
しかし、それがただの一族であるなら、ただ汚い状態で一族が生活しているだけのことで、そこに奇形児などがいたとしても、異常と言い切ってしまうにはまだ足りません。問題はその先にあったのです。
奇形児がいたということから科学捜査班が遺伝子検査をしたところ、この一家が何代にもわたって家族同士でまぐわっていた、つまり近親相姦の末に交配がなされた一族だということが判明したのです。
近親相姦とは
近親相姦とは一言でいうと、近い血縁にあるもの同士の性行為のことです。
近親相姦は多くの文化圏でタブーとされています。それは異性間、同性間でもおこり、年齢差も関係ありません。地域によっては法的な罰則がある文化圏もあります。
これが近親婚となると、近い血族で結婚すること、近親交配となると近い血族で子供を作るということになります。
日本における近親相姦の罰則
日本では江戸時代に兄と妹が近親相姦したことで磔になったという記録が残っています。現在では近親相姦そのものに罰則があるというよりは、親が子に性行為をした場合に、子はそれを簡単に拒否できるものではないとして、強姦罪などが適用されることになります。
また、日本では近親婚は明確に禁止されています。禁止されている近親婚の定義としては、三親等ではできないなど、きちんと範囲が定められています。
いとこ同士の結婚も近親婚といえば近親婚ですが、四親等であるため禁止される近親婚ではないため、倫理的に否定されるようなものではありません。
近親相姦の問題点
近親相姦の問題点としてまずあげられるのが、近親交配に至ってしまった場合に生まれた子供に遺伝的リスクが高まるという説です。
同じ遺伝子同士がくっついて子供が生まれるため、近親者同士が同じ悪い遺伝子も持っていた場合に、その悪い遺伝子をそのまま引き継いでしまう可能性が高いのです。そのため、奇形児などが生まれる可能性が高くなると言われています。
実際にチェコスロバキアで近親交配によって生まれた子供たちを調べた結果、半分以上の子供に奇形児であることなどのなんらかの障害があったという記録が残っています。
コルト一家の近親相姦の始まり
その始まりは、ベティーよりもさらに上の代からでした。ことの発端は20世紀前半、ジェーンという女性が両親である近親婚状態の兄妹の近親相姦の末、近親交配によって生まれたことでした。
成長した後、ニュージーランドに住んでいたジェーンは、ティムという男性と1966年に結婚し、7人の子供を生みます。7人の子供はマーサ、フランク、ポーラ、ベティー、チェリー、ロンダ、チャーリーといい、二男五女で、一家は1970年代にニュージーランドからオーストラリアに移住します。
出典: http://holiday.knt.co.jp
そして、この一家は近親相姦を繰り返すようになるのです。この頃からすでに一家は移住した先でどうにもおかしいぞ、と近隣の住人に思われていたらしく、オーストラリア中を転々とすることになりました。
コルト一家の近親相姦によってできた家系図
出典: http://www.news.com.au
こちらの家系図を見ていただくと分かる通り、通常良く見られる家系図とはその形が異なることがお分かりいただけると思います。
通常の家系図であれば、血縁以外の人物がどんどん追加されていくことになりますが、こちらの家系図では外から人が入ってくることなく、この家系図の中だけで完結してしまっています。
ベティー自身、父や兄との間に13人もの子供を出産し、事実上の近親婚のような状態になっています。その子供も兄妹で近親相姦し、子供が生まれています。警察に発見された時点で成人していない子供は12人いたのですが、そのうち11人は非常に近い肉親同士の近親交配によって生まれていたことが分かっています。
この一家は、実に四代にもわたって近親相姦を繰り返し、そして近親交配を繰り返していたのです。そのことが、この異常な家系図を生んだのです。
近親相姦がコルト一家にもたらした影響
近親相姦による影響は、コルト一家においては顕著でした。ベティーの産んだ子供のうち、5人には障害がありました。それ以外の家族にも言語障害、歩行障害、知的障害、発育の不全、視覚障害、聴覚障害、乾癬、奇形児などの様々な障害があったのです。
上記したとおり、コルト一家が生活していた状況はかなり劣悪なものでした。上下水道がないため、トイレはヤブの中で済ましていたり、歯磨きを知らなかったりと衛生状態は最悪と呼べるものです。
出典: https://www.scootalks.com
その上、こういった家庭環境を悟られないためか、子供たちは学校にも通っておらず、言葉を明瞭に話すことができる子も少ないといった状況です。
近親相姦がもたらした影響は肉体的、遺伝的なものだけでなく、社会的な部分やそれ以外の部分にまでも影響していたのです。
怪しまれるコルト一家
このような異常な状況を隠していたコルト一家ですが、さすがに完全な自給自足とまではいかなかったようで、年に2、3回は町に10名ほどの子供を引き連れて買い物にやってきていたと、近隣住人は証言しています。
近隣住人はそういったコルト一族のボロボロで汚れた様子を見て、元々そういった状況の家族なのだろうとひそひそ噂をしたり、陰で笑っていたりしたようです。
出典: http://www.dailytelegraph.com.au
また、比較的コルト一家の住む場所から近くにいた農場主の時々チェーンソーの音を聞いたと証言があったり、町に焚き木を売りに来る男がいたりしたと証言がありました。そうやって、生活に必要なお金を作っていたのでしょう。
こうして、完全に世間と関係を断つことができなかったためか、州警察に通報がいくことになり、捜査の手が入ったのです。
ベティー逮捕
出典: http://www.dailytelegraph.com.au
こうして、コルト一家の状況に行政が介入することとなりました。ケースワーカーたちが何度もコルト一家に通い、そして2012年7月18日、12人の子供たちが保護されることとなったのです。
子供たちは保護された後、心理学者による調査や、精神治療のプログラムを受け、無事に里親の元に引き取られ、養子として育てられることになったのです。
しかし、事件はそれで終わりませんでした。
なんと2014年、ベティーが逮捕されることになったのです。
ベティーは養子に出されたはずの実の子である、ボビーとビリーを取り返そうと画策したためでした。ベティは周到にもボビーに自分の連絡先を渡し、密かに連絡を取り合い、そしてボビーもビリーにベティーの元へ帰ろうと説得していたのです。
しかし、これらは未遂に終わり、成功することはありませんでした。
コルト一家事件・裁判の結果
出典: https://morbidworldblog.wordpress.com
裁判の結果、ベティーは懲役12ヶ月の実刑判決を受けました。その理由は、ベティーが子供たちを不潔極まりない環境に住まわせていたことが、著しいネグレクトに当たるため、ということでした。
こうして、オーストラリアでは最悪の近親相姦事件として名高い、コルト一家の事件は幕を閉じたのでした。
オーストラリアにおける近親相姦の罰則
オーストラリアでは、近親相姦は違法とされています。当初は違法となる近親相姦は児童への性犯罪の範疇とされていましたが、現在は成人している場合でも、それが児童虐待の影響による結果の場合もあるということで違法という判断が出されています。
コルト一家の近親相姦は愛故か
ここまで複雑に関係が絡み合い、奇形児まで産んでしまうほどの近親交配を繰り返したコルト一家ですが、その理由は一体どこにあったのでしょう。
この複雑な家系図を形成する途中の段階、例えば奇形児が生まれたなど、そういったことなどが歯止めにはならなかったほど、強い理由がなければ、説明がつきません。
それは強すぎる家族愛のためか、それともただ欲望のはけ口として一番近くにいるものを利用したのか、その理由はもしかしたら本人たちにすらわからないのかもしれません。
ただ、近親相姦が繰り返されることによって、一般的な倫理観が欠如していってしまったのだということは想像に難くありません。
はじめは違和感のある行動でも、繰り返していくことでその違和感がなくなっていってしまうことは恐ろしいことです。人は内だけでなく、外に目を向けて生きていかなければいけないという、教訓になるうる事件でした。