『表千家』と『裏千家』の違いとは?作法・点て方・道具が違うの?

表千家と裏千家という二つの流派は知っていても、具体的にどう違うのか知っている人は少ないでしょう。この記事では表千家と裏千家の歴史から使う道具やお茶の点て方の特徴などについてご紹介します。また、知っておくと便利な茶室でお茶をいただくときのマナーもお伝えします。

『表千家』と『裏千家』の違いとは?作法・点て方・道具が違うの?のイメージ

目次

  1. 1茶道の流派「表千家」と「裏千家」の違いを知っていますか?
  2. 2そもそもなぜ「表千家」と「裏千家」があるの?
  3. 3「表千家」と「裏千家」それぞれの作法の特徴
  4. 4「表千家」と「裏千家」それぞれの作法の特徴
  5. 5「表千家」と「裏千家」のお茶の点て方と回し方の違い
  6. 6「表千家」と「裏千家」は取得できる許状も違う?
  7. 7お茶室でのマナーも知っておきたい!
  8. 8お菓子とお茶のいただき方とタイミング
  9. 9「表千家」も「裏千家」も基本は同じ!

茶道の流派「表千家」と「裏千家」の違いを知っていますか?

千利休が作った茶道に、表千家と裏千家の二つの流派があることは多くの人が知っていると思います。しかし、表千家と裏千家の具体的な違いまで説明できる人は少ないのではないでしょうか。この記事では表千家と裏千家の違いからそれぞれの歴史、またお茶会でのマナーまで詳しくご紹介します。

抹茶

そもそもなぜ「表千家」と「裏千家」があるの?

そもそも表千家と裏千家はどのような歴史から生まれたのでしょうか。それは表千家と裏千家の千利休とのつながりからチェックすると、とても分かりやすいです。ここでは表千家と裏千家の簡単な歴史についてご紹介します。

茶道

初代千利休のひ孫が作った

表千家と裏千家の歴史は、千利休の孫である千宗旦(せんのそうたん)の子供達が始まりです。表千家は三男の江岑宗左(こうしんそうさ)が、裏千家は四男の仙叟宗室(せんそうそうしつ)がそれぞれの流派を立ち上げました。つまり表千家と裏千家の初代は、お互い兄弟にあたるのです。この千利休のひ孫たちが作った表千家と裏千家が現在の茶道の二大流派として伝わっていますが、実際には500ほどの茶道の流派があるといわれています。

和室

千家の「表」と「裏」とは?

それでは流派の名前になっている表と裏にはどのような意味があるのでしょうか。歴史的な由来がありそうですが、実はとても単純な理由なのです。表千家を代表する茶室は不審庵と呼ばれ、京都市上京区の通りの表に位置しています。そして裏千家を象徴する茶室である今日庵は、不審庵の敷地の裏に隣接しているのです。つまり通りの「表」にあるので表千家、「裏」にあるので裏千家と呼ばれるようになったそうです。壮大な歴史の由来から付いた名前かと思いきや、少し拍子抜けしてしまう名づけの仕方ですね。

茶道

千家には「武者小路千家」もある

表千家と裏千家ほど有名ではありませんが、茶道には武者小路千家という流派もあります。武者小路千家も宗旦の次男である一翁宗守(いちおうそうしゅ)が作った流派で、表千家、裏千家と一緒に三千家と呼ばれます。武者小路の名前の由来も、武者小路という名前の道沿いに宗家があったからだといわれているそうです。

そして茶道の歴史が流れていくうえで家元の次男や三男が独立し、たくさんの流派が生まれました。流派が分断していくことを恐れた表千家の七代目当主が、「千家を名乗るのは表千家、裏千家、武者小路千家の嫡男のみ」とした歴史があるため、現在千家を名乗る流派は三千家のみとなっています。

和室

「表千家」と「裏千家」それぞれの作法の特徴

それでは次に、表千家と裏千家の作法の特徴についてご紹介します。まずは道具をはじめとする二つの流派の特徴について詳しくチェックしていきましょう。

茶道

ふくさ

ふくさとは、お茶を点てる前に道具を拭くために使う布のことです。どちらの流派もふくさを使うのは同じですが、表千家では女性は朱色のふくさを使い、裏千家では赤色のものを使います。またふくさを畳むときに表千家では流れるような動きで畳む特徴があるのに対して、裏千家はメリハリを意識するため畳む途中に間をおく特徴があります。この点も二つの流派の作法の違いがよくわかるところです。

茶道

茶筅と菓子器

お茶を点てるときに使う茶筅も、表千家と裏千家ではそれぞれ特徴があります。表千家の茶筅は煤竹という、古い茅葺屋根の民家の屋根裏などから取れる煤がついた竹で作られています。その一方、裏千家の茶筅は真竹や孟宗竹を加工した竹で作られているのです。

またお客さんにお菓子を出す際に使われる菓子器にも違いがあります。表千家で使われる菓子器には蓋がついており、蓋を開けるまで中の菓子は見えません。それに対して裏千家の菓子器は蓋がなく、菓子が見えるようになっています。

菓子器

茶碗の拝見方法

お茶会では茶碗などの道具に関しても、お客さんをもてなすために主催者側がコーディネートを考えて使っています。そのおもてなしに応えるため、招かれた側はお茶を飲み終わった茶碗を拝見(鑑賞)するという作法があるのですが、その方法に表千家と裏千家ではそこに少し違いがあります。

基本的に茶碗を拝見するときは飲み終わった茶碗を畳に置き、茶碗の両側に手をついて全体を眺めます。次に茶碗を手に取って肘を膝に乗せて茶碗を回しながら細かいところを拝見します。このときに茶碗を高く上げると、万が一茶碗を落としてしまった場合大変なことになるので、低い位置で拝見するようにします。最後にもう一度茶碗を畳に置いて両手をつき茶碗の全体を眺めます。茶碗を戻すときは茶碗を右手で取り左手に乗せ、右手で時計回りに二回茶碗を回して自分が座っている畳の外に置きます。

このときに表千家と裏千家で違うのは、表千家では自分が座っている畳の中に寄せて拝見しますが、裏千家では自分の座る畳の外で拝見するという作法になっているところになります。どちらの作法でも間違いではないので、気にせず自分の流派の作法で拝見するといいでしょう。

茶道

「表千家」と「裏千家」それぞれの作法の特徴

二つの流派で使う道具などの具体的な違いをご紹介したので、次はそれぞれの作法の全体的な特徴についてご紹介します。これにはそれぞれの流派の歴史や考え方が影響しています。そちらも併せてチェックしていきましょう。

和室

表千家の作法

表千家を作った宗左は千利休の孫である宗旦の正式な跡取りにあたるため、表千家が茶道の本家にあたります。つまり表千家は、千利休のわびさびの心を最も忠実に守り伝える流派だといえるのです。そのため、道具や仕草はほかの流派に比べて質素なものになっています。そして表千家は千家の中で唯一徳川家に仕えた歴史もあり、藩主から庶民にまで茶道を広めたとされています。

茶道

裏千家の作法

裏千家は千利休の茶道の分家にあたりますが、茶道の流派の中では最も人口の多い流派です。その理由は、裏千家の十四代目が学校教育に茶道の導入を働きかけた歴史があり、学校の茶道クラブに導入された作法の大半が裏千家であることだと考えられます。

また、海外の王族をお茶会に呼ぶときは裏千家の家元がもてなすことが多いようです。これは裏千家十六代目の奥様が皇族であることが関係しているといわれています。裏千家は道具も華やかで、正座ではなく椅子に座る茶道をつくったりと、新しいものを取り入れながら茶道の新しい歴史をつくろうとしているところが特徴だといえるでしょう。

茶道

「表千家」と「裏千家」のお茶の点て方と回し方の違い

茶道の中で一番の主役はやはりお茶です。特に違いのないようにみえるお茶の点て方ですが、この点て方にも表千家と裏千家では大きな違いがあります。ここでは表千家と裏千家のお茶の点て方の違いと、お客さんに提供する際の茶碗の回し方の違いについてご紹介します。

茶道

表千家

表千家のお茶の点て方は表面を泡で埋めてしまわず、泡のない部分が三日月状になるように仕上げます。この表千家の点て方のお茶は、抹茶の味をよく感じることができます。そして表千家では点てたお茶をお客さんに出すときは、茶碗を反時計回りに90度ずつ2回に分けて回します。これは最初、自分の正面にある茶碗の絵柄を、向かいにいるお客さんの正面に向けるために回しています。

和室

裏千家

裏千家のお茶の点て方はお茶の表面にまんべんなく泡ができるようによく泡を立てる点て方をします。この点て方のお茶はカプチーノのように口当たりがよく、まろやかになります。また裏千家ではお客さんにお茶を出すときは、時計回りに茶碗を回して出します。

茶道

「表千家」と「裏千家」は取得できる許状も違う?

表千家では一般のお弟子さんが取得できる許状は盆点という種目までとなっています。それ以上は家元伝授となり、限られた人しか取得できません。裏千家には特に制限はなく、許状を取得することができます。こういったところからも、表千家の千利休の作法を忠実に守る保守的な特徴と、裏千家の新しいものを取り入れていく革新的な特徴の違いを見ることができます。

和室

お茶室でのマナーも知っておきたい!

お寺に観光に行くと、お茶とお菓子を楽しめる場所も多くなってきました。また、知り合いのお茶会に招待されることがあるかもしれません。そんなときにお茶室のちょっとしたマナーを知っていると安心ですよね。

まず茶室でお茶をいただくことが予想できる日は、ジーンズを穿くのは避けましょう。お茶会はフォーマルな場所になるので、ジーンズだとカジュアル過ぎる印象になります。そもそもジーンズを穿いてると、足が締め付けられ、正座で足がしびれやすくなってしまうことがあります。それではここからお茶をいただく時の具体的なマナーについてもご紹介します。

茶道

茶室の入り方

お茶室に入るときからマナーは始まります。マナーとしては立ったまま茶室に入るのでなく、茶室の手前で正座したまま、両手を握りこぶしにして床に手をつき体を浮かせて茶室に身体を滑らせるようにします。しかし、お茶会に参加するお客さんの人数が多いと立ったまま入室するよう促されることがります。そのようなときは指示に従い、柔軟に行動しましょう。

また本格的な茶室だとにじり口と呼ばれる、約70センチ四方の小さな入り口から膝を曲げ頭を下げて入ります。にじり口は千利休が考案したもので、にじり口から入るには刀を取らなくてはならず、頭も下げなくてはいけないので、「にじり口から入ったからには、茶室の中では武士も商人も関係なくもてなされる」という千利休の考えが表されています。

和室

茶室に入ったらすべきこと

茶室に入ったらすぐに席に着くのではなく、床の間を拝見(鑑賞)しましょう。床の間に飾ってある掛け軸とお花は、主催者がお客さんのためにその日のお茶会のテーマに基づいてコーディネートしています。

花入れ(花瓶)に活けてある花は茶花(ちゃばな)と呼ばれ、千利休の教えに習い野原に咲いていたような自然に近い姿になるよう考えて活けられています。

そして掛け軸は主催者側からお客さんへのメッセージが込められているため、どんな意味があるのか考えてみましょう。詳しい知識はなくても、自分の五感で床の間の様子を楽しんでみるだけでも十分です。

花

お菓子とお茶のいただき方とタイミング

いよいよお茶会が始まると、主役のお菓子とお茶が順番に出されます。慣れていないと、どのタイミングでいただけばいいのか戸惑ってしまいますよね。どうしても作法を忘れてしまった場合は、周りに合わせて同じように行動すればいいのですが、せっかくなら堂々と余裕をもってお茶会の雰囲気を楽しみたいですよね。表千家と裏千家ではどちらもお菓子とお茶をいただくタイミングは同じなので、ここで紹介するお菓子とお茶のいただくタイミングを覚えてお茶会を楽しみましょう。

和菓子

お菓子は正客の人が食べてから

正客とはお茶室に最初に入る人のことで、その場のお客さんの代表です。本格的なお茶会では正客がお茶を点てる亭主と唯一会話ができる存在で、他のお客さんにも気を配りつつその場の雰囲気や流れを決める大変重要な役割になります。茶室のマナーとしては、その正客がお菓子に手を付けてから食べるのがマナーです。お腹が空いているからと出されてすぐに食べてしまわないようにしましょう。

和菓子

お菓子はお茶が出る前に食べきるべし

せっかくの和菓子なのでゆっくり味わいたいものですが、茶道ではお菓子は三口ほどでいただくのがマナーです。お茶と一緒にお菓子を食べたいと思うかもしれませんが、お菓子はお茶が出てくる前に先に食べきってしまいましょう。あまりゆっくりお菓子を楽しんでいると主催者側がなかなかお茶を出すことができず、お茶会の進行を妨げてしまいます。

抹茶

お茶は茶碗の正面から飲まない

普段の生活では気にしませんが、茶道では茶碗などの道具に正面というものがあります。正面とは道具の絵柄が華やかな面のことです。お茶を出すときはお客さんに綺麗な茶碗の絵柄が見えるよう正面を向けて出すマナーがあり、お客さんも正面を口紅やお茶で汚さないよう正面のまま飲まないというマナーがあります。

実際にどうすればいいのかというと、お茶を飲むときは茶碗を両手に持ち、時計回りに二回茶碗を回してから飲むようにしましょう。お茶は一気に一口で飲んだり、ちょっとずつ飲んだりするのではなく、三口半で飲み切るのが理想とされています。一口飲んだら一度口を離し、一呼吸おいて二口目に移ります。お茶を飲みきったら親指と人差し指で茶碗の飲み口をぬぐい、指を懐紙などで拭きます。茶碗を戻すときは反時計回りに茶碗を回し、茶碗の正面が自分とは逆の方に向くようにしてから戻しましょう。

抹茶

「表千家」も「裏千家」も基本は同じ!

表千家と裏千家の道具や作法の違いについてご紹介してきましたが、どちらもお客さんをもてなしお茶を楽しむ心を現代に伝える大切な文化です。これは千利休が茶道において一番大切にしてきた、人をもてなし季節や自然を愛してお茶を楽しむという考え方が受け継がれているからなのでしょう。

表千家と裏千家は、表と裏という名前から敵対する流派かと思われがちですが、兄弟同士だった表千家と裏千家の初代はそれぞれ仲が良かったともいわれています。お茶の点て方や道具の細かい特徴は違っても基本のマナーは変わらないので、表千家と裏千家のそれぞれのお茶会に参加して小さな違いを楽しんでみてもいいかもしれませんね。

茶道

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この記事のライター
すかるぴん
皆さまの日々をより良くする記事を目指して。

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