『忽ち』の意味や使い方とは?由来や古文・漢文での意味も解説!
「忽ち」この漢字、読めますか?よく聞くけど読み方が難しい「忽ち」の言い換えの言葉や漢字の由来、さまざまな意味での類語を解説します。更に古文や漢文での「忽ち」の意味や使い方も例文をまじえて解説します。番外編として広島弁での「忽ち」の意外な意味も紹介します。
目次
『忽ち』はよく聞くけど読めない言葉!
「忽ち」という言葉は日常生活の中で私達がよく耳にしている言葉です。でも「忽ち」と書いて正しい読み方ができる人はどれくらいいるでしょうか。読めない人や間違った読み方をする人は案外少なくないかもしれません。「忽ち」とはよく聞くけれども漢字にすると読み方が難しい言葉のひとつと言えるでしょう。
『忽ち』の読み方とは?
それでは「忽ち」の読み方は何と読むのでしょうか。「忽ち」の読み方は「たちまち」になります。なるほど聞いたことはある、でも漢字にすると「忽ち」って書くのか!と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
『忽ち』の読み方とは?
「忽ち」は、よく聞くけど漢字で書かれていると読み方が分からないということは、その漢字自体になじみが薄いという事でもありますよね。そこで「忽ち」の意味と「忽」の漢字の意味を確認していきましょう。
『忽ち』の意味とは
「忽ち」とは「非常に短い時間のうちに動作が行われる様子」や「思いがけなく急にある事態が発生する様子」を表している言葉です。例文を挙げると、
・うわさが忽ち広がる
・空が暗くなって忽ち雨が降り出した
このように「忽ち」とは急速に事態が変わってしまったことを表すときに使う言葉になります。
『忽』の漢字の意味とは
それでは「忽ち」の「忽」の漢字の意味について調べてみたいと思います。
『忽』コツ・たちまち・ゆるがせ
・非常に急。心がせく。にわか。たちまち。「忽焉(こつえん)忽然(こつぜん)(こつねん)」
・うっかりする。おろそかにする。ゆるがせにする。「忽諸・粗忽・軽忽(けいこつ)(きょうこつ)」
また「忽」は1の10万分の1であることを示す数の単位を示す漢字でもあり、幅広い意味を持つ漢字でもあります。
『忽ち』の古語としての意味や使い方とは?
「忽ち」は現代文においては「非常に短い時間のうちに動作が行われる様子」や「思いがけなく急にある事態が発生する様子」を表し、「急速に事態が変わってしまった状況」を表す言葉として使われています。しかし「忽ち」は古文や漢文の古語としては、少し違った使われ方もしていました。実際の古文や漢文の「忽ち」の例を挙げながらご紹介します。
古文での意味や使い方
「忽ち」は古文でも現代文と同様に「またたく間(に)」「突然(に)」「にわか(に)」などの意味で使われていましたが、その他に「現(に)」「実際(に)」と言う意味でも使われていました。「忽ち」の使われている実際の古文の例文とともにご紹介します。
「或(ある)は焔(ほのほ)にまぐれて、たちまちに死ぬ」
この古文を現代文に訳すと「ある者は炎に目がくらんで、またたく間に死んでしまう。」となります。「たちまちに」は「またたく間に」と言う極めて短い時間を表す言葉として使われています。(出典:方丈記)
「命を終ふる期(ご)、たちまちに至る」
この古文を現代文に訳すと「命を終える時期は、突然にやってくる。」となります。「たちまちに」は「突然に」と言う事態が急に起こるさまを表す言葉として使われています。(出典:徒然草)
「たちまちに今、この難(なん)に遭へり」
この古文を現代文に訳すと「現(実際)に今、この災難に遭った。」となり、上記の古文と意味合いが違って「現(実際)に」と言う現実の場において行為や現象に遭遇しているさまを表す言葉として使われています。(出典:今昔物語集)
漢文での意味や使い方
漢文の「忽ち」の「忽」は「コツ」「コチ」「たちま(ち)」「ゆるが(せ)」と読みます。漢文でもまた、日本文の「忽ち」と同じく「またたく間(に)」「突然(に)」「にわか(に)」と言った意味で使われています。
「忽逢桃花林」出典:桃花源記
この漢文は「忽ち(たちまち)桃花(とうか)の林(はやし)に逢う(あう)」と読み「突然、桃の花の林に出会った」という意味になります。
他に、「おろそか」「なおざり」「ゆるがせ」と言った「注意深くせず軽々しくいい加減に扱うさま」を表す言葉としても用いられます。「忽」に「諸」を合わせた「忽諸」(こつしょ)は「かろんじること」「ないがしろにすること」の意味になります。
『忽ち』の由来・語源とは
古文や漢文にも使われていた「忽ち」ですが言葉の由来はどこから来ているのでしょうか。「忽ち」の語源の由来は「立ち待ち月」から来ていると言われています。「忽ち」の言葉の慌ただしい印象からすると、月が由来していたとは意外ですよね。
それでは由来となった「立ち待ち月」とはどのような月のことを言っているのでしょうか。「立ち待ち月」とは満月、つまり十五夜の月から2日後の十七日目の月のことを「立ち待ち月」と言っていました。意味としては「立って待っているうちに現れる月」になります。この十七日目の月は日没後、およそ100分たってから昇って来ます。昔の人にとっては100分なら立って待っていられるので「立ち待ち月」となったわけです。
『忽ち』の言い換えは?
「忽ち」を他の言葉に言い換えるとしたら、どのような言葉が当てはまるでしょうか。
急速な変化を表す「忽ち」の言い換えの言葉として「すぐに」「ただちに」があります。
「すぐに」 例文:連絡があればすぐに対応する。
「ただちに」例文:通報を受ければただちに出動する。
「忽ち」の言い換えの言葉と言える、「すぐに」「ただちに」は、このように時間をおかずに速やかに行動する様子を表す時に多く用いられます。
『忽ち』の類語を意味別に紹介
「忽ち」の類語にはさまざまな意味を持つ類語が存在します。その中で3つの意味の類語をピックアップして例文も併せてご紹介していきます。
「衝動的に行う」という意味の類語
「忽ち」の類語で「衝動的に行う」という意味を持つ「突として」「出し抜けに」「にわかに」をご紹介します。
「突として」は「急に」「突然」を表す言葉で予測できないような変化を表す言葉になります。
例文:突としてパソコンが動かなくなった
「出し抜けに」は「いきなり」「唐突」を表す言葉で、思いもしないことが急に発生する様子を意味する言葉です。
例文:彼は出し抜けに成績がトップになった
「にわかに」は漢字では「俄に」と書き、状況が突如変化することを表したり、急に何かが起こったりすることを意味します。
例文:広告を打った途端、にわかに注文が増加した
「事前の警告なしに行う」という意味の類語
次に「忽ち」の類語で「事前の警告なしに行う」という意味を持つ「突然」「やにわに」をご紹介します。
「突然」は、予期しないことが急に起こるさまを表す言葉で、日常生活での使用頻度も高く多くの方が認識されている言葉になります。
例文:突然、大音量で音楽が流れ始めた
「やにわに」は漢字で「矢庭に」と書き、ある動作を行ったその場で間をおかず一気に次の動作にとりかかるさまを表す言葉になります。意表を突かれて驚きを表す時などに用いられます。
例文:彼は起き上がるとやにわに駆け出して行った
「遅延なく行う」という意味の類語
「忽ち」の類語の最後は「遅延なく行う」という意味の類語として「早速」「透かさず」「程なく」をご紹介します。
「早速」は「さっそく」と読み、物事をすみやかに、すぐ行うさまを表す言葉として日常生活においてもよく耳にする言葉です。
例文:早速のお返事をありがとうございます
「透かさず」は、機を逸することなく直ちに行動するさまを表す言葉となります。素早い行動を行ったり目にしたりした時によく使う言葉です。
例文:言葉尻を捕らえて透かさず言い返す
「程なく」は、あまり時間が経過しないうちに物事が実現するさまを表す言葉で、「して」を加えて「程なくして」という使い方もします。
例文:程なくして戻って来た
【番外編】広島弁の『たちまち』の意味とは?
ここまで「非常に短い時間のうちに動作が行われるさま」を表す「忽ち」という言葉の使い方や言い換え、類語についてご紹介してきましたが、最後に番外編として広島県の方言「たちまち」の意味と使い方をご紹介します。
驚くことに、広島弁では「忽ち」が全く違った意味になって使われています。どのような意味かと言うと、広島弁の「たちまち」は「とりあえず」という意味で使われます。飲食店での店員と客の会話のセリフを読むと標準語としての「忽ち」の使い方とだいぶ違うのがお分かりになると思います。
例:店員「ご注文はお決まりですか」
客 「たちまち、ビールをお願いします」
(とりあえず、ビールをお願いします)
「忽ち」の言い換えや類語と違って、全く意味が異なるので広島弁の分からない店員さんだったら戸惑ってしまいそうですね。
『忽ち』の意味や使い方を理解して使いこなそう!
よく聞くけど読めない漢字だった「忽ち」という言葉の由来や使い方について紹介しました。掘り下げて調べるとさまざまな意味を持つ類語も数多く存在することが分かりました。言い換えの言葉の使い方なども理解して「忽ち」を生活の中でうまく使いこなしたいですね!