ガンジス川が汚い理由とは?宗教的な問題や沐浴する危険性も解説!
インド旅行に行くなら必ず訪れたいガンジス川。しかしガンジス川は世界有数の汚い川としても知られています。ガンジス川が汚い理由には、宗教的な問題やインドの経済発展に原因があることを知っていましたか?ガンジス川で沐浴する危険性についても詳しく解説します。
目次
ガンジス川はナゼあんなにも汚いのか?
ガンジス川を知っていますか?ガンジス川は、ヒマラヤ山脈の南、インドの北東部を流れる有名な大河です。インドの観光名所の一つとしてよく知られているガンジス川ですが、同時にとても汚い川としても知られています。ガンジス川を流れる水は茶色く濁り、ガンジス川の川岸に汚いゴミが山のように積み上がっている光景は、一度見たら忘れることはできないでしょう。
ガンジス川はナゼあんなにも汚いのでしょうか?ガンジス川が汚い理由、ヒンドゥー教徒にとってのガンジス川、その水質汚染の深刻さについて解説していきます。
抑えておこう!ガンジス川の基礎知識!
そもそもガンジス川とはどのような川なのでしょうか。インド北東部を流れるガンジス川は、全長約2,525km、流域面積は173万平方キロメートルです。この流域面積はなんと日本の国土の約5倍もあり、とても広大な川であることが分かります。
ガンジス川という日本語の呼び名は英語のthe Ganges(ザ ガンジス)からきており、地元インドではヒンドゥー教の川の女神の名からとったGan Ga(ガンガー)という呼び名が一般的です。
ガンジス川は、インドでは聖なる川として信仰の対象になっています。これは古代インドの聖典であるヴェーダにおいてガンジス川が聖なる川とされていたためです。
ガンジス川が汚い理由①生活排水
ガンジス川が汚い理由の一つは、インドで暮らす人々の汚い生活排水がそのままガンジス川に流れ込んでいるためです。
近年、飛躍的に発展し人口が増加しているインドでは、生活排水の量も増加の一途を辿っています。その量は1日に400億リットルになるとも言われていますが、発展途上国であるため下水処理が追いつかず、ほとんどの生活排水が聖なる川であるはずのガンジス川に流れ込んでいるのです。
ガンジス川が汚い理由②下水
汚い生活排水だけでなく、下水をそのままガンジス川に流していることも、ガンジス川が汚い理由の一つです。
インドでは犬、牛、豚などの家畜の糞尿や、人が排泄した大便やおしっこなどを、ほとんど処理することなく川に流しています。人が急激に増えすぎて下水処理設備が整わず、日常的に出る下水を処理しきれないのです。ガンジス川が茶色く濁っているのは、家畜や人が排泄したものが流れているせいだと考えると、本当にインドの人にとってガンジス川は聖なる川なのか疑わしく思えてきます。
ガンジス川が汚い理由③ゴミ問題
ガンジス川の映像には、川岸に積み上がる汚いゴミの様子がよく映し出されていますが、あれらのゴミもガンジス川が汚い理由といえます。
ゴミは人々が出した生活ゴミ(ペットボトル、ビニール、壊れた鍋や食器、服など)や、産業廃棄物などです。下水と同様、大量に出る汚いゴミを処理する施設もほとんどありません。そのためインドの人々はゴミを川に投棄し、それらがガンジス川を汚い川にしているのです。
ガンジス川が汚い理由④化学汚染
インドは工業を中心として近年目覚ましい発展を遂げています。しかしその代償として工業排水が増え、汚い排水に含まれる化学物質による化学汚染がガンジス川をより汚い川にしています。
日本など先進国では、汚い工業排水は適切な処理をしなければ川に流してはいけないと決まっていますが、インドはまだ発展途中のため、工業排水をどのように処理するかという対策が決まっていません。人体に悪影響のある危険な化学物質が何の対策もなしにガンジス川に流出しているのが現状です。
ガンジス川が汚い理由⑤遺体を直接流している!?
日本人にはにわかに信じられないことですが、ガンジス川に遺体を直接流していることも、ガンジス川が汚い理由と言えるでしょう。
インドの人々の大半が信仰しているヒンドゥー教には遺体を納める墓という概念がなく、ヒンドゥー教徒が死ぬとその遺体は火葬され、骨をガンジス川に流すことで弔います。聖なる川であるガンジス川に遺体を流すことで、罪が洗い流されると考えているためです。遺体を流すといっても火葬した後の骨なのですが、衛生的とは言えません。
ヒンドゥー教徒にとってのガンジス川とは?
ガンジス川に汚い下水やゴミや遺体を流すなど、汚い理由を知るほど本当にインドでは聖なる川として信仰されているのか疑問になります。ヒンドゥー教徒にとってのガンジス川とは、どのような位置づけなのでしょうか。ヒンドゥー教徒がガンジス川をどのように利用しているのか、代表的なものを2つ紹介します。
聖なる川で沐浴する
ヒンドゥー教徒がもっとも日常的にガンジス川で行っていることは、聖なる川での沐浴です。
沐浴とは宗教儀式の一つで、水で体を清めることを指します。ヒンドゥー教徒にとってガンジス川は聖典にも記されている聖なる川であり、その水で沐浴をすることで自身の体から罪を洗い流しているのです。ガンジス川の水が排泄物や化学物質で汚染されていることは、ヒンドゥー教徒にとって聖なる川の神聖さには全く関係がないことなのでしょう。
なお、インドに行くとガンジス川での沐浴を体験することができますが、くれぐれも口に汚い水が入らないよう注意が必要です。
ガンジス川の水で調理する
ヒンドゥー教徒に限らず、インドの人々はガンジス川の汚い水を調理に利用しています。ガンジス川が聖なる川であるだけでなく、インドの人々にとっては調理など日常生活に欠かせない水資源であるためです。
ガンジス川の汚い水に耐性のない外国人がガンジス川の水で調理したものを食べると病気になってしまうというのは有名な話ですが、日常的にガンジス川の水を調理に利用しているインドの人々は平気なのでしょうか。実はインドの人々にも健康被害は出ています。インド政府が人への健康被害を抑えるため、ガンジス川の水質改善のために世界に募金を呼びかけているほどです。
沐浴しても大丈夫なの?ガンジス川の危険性!
調理した水を使うことで健康被害が出るほど汚染が進んでいるガンジス川で、日常的に沐浴をしているヒンドゥー教徒。果たして彼らの体は大丈夫なのでしょうか。聖なる川・ガンジス川の恐るべき危険性について紹介します。
破傷風になるリスク
ガンジス川の危険性の一つに、破傷風になるリスクがあります。破傷風とは破傷風菌により罹患する大変死亡率の高い病気です。破傷風菌は主に家畜や人の糞尿や土壌といった汚い環境に生息し、人から人へ感染することはありません。
ガンジス川には、破傷風菌が好む糞尿や汚い土が大量に流れ込んでいます。沐浴でガンジス川の水に体をつけることで、体の小さな傷口などから破傷風菌に感染し、破傷風になってしまう危険性があるのです。
コレラ・赤痢になるリスク
ガンジス川の危険性には、コレラ・赤痢になるリスクもあります。コレラはコレラ菌を病原体とした経口感染症で、赤痢は赤痢菌を病原体とした大腸感染症です。どちらも発症すると下痢や高熱といった症状が現れ、悪化すると死に至る危険性もあります。
コレラと赤痢は不衛生な環境ほど感染しやすい病気です。ガンジス川のような汚い川には、コレラ・赤痢の原因となる病原体が大量に存在しているため、沐浴のときは絶対にガンジス川の水が口に入らないようにしてください。調理に使うのはもってのほかです。
ガンジス川の水質汚染が改善しない理由2選!
インド政府はガンジス川の水質汚染や、それによる人への健康被害を把握していますが、一向に水質汚染は改善しません。その大きな理由を2つ紹介します。
①下水処理設備が整わない
なんといっても大きな理由は、発展のスピードが早すぎてガンジス川に流れ込む水の下水処理設備が整わないことです。
インドの経済は年々成長しています。2015年から毎年7~8%もの経済成長率を記録しており、日本の経済成長率が1~2%であることを考えると、どれだけのスピードで発展しているかは明らかです。しかし発展して工場が増えるほど水質汚染は進みます。いくら下水処理設備を整えて水質汚染を改善しようとしても、下水処理施設より工場が優先されてしまうため、なかなか整備は進みません。
②都市部人口の増加
インド経済の発展に伴い、都市部人口の増加も進みました。インドの各地から仕事を求めて都市部に人が集まってくるのです。人が集まるということはそれだけ生活排水が増えるということですが、やはりこちらも処理施設の整備は進んでいません。また、人が増えればゴミも増えます。ガンジス川にはゴミも投棄されているため、二つの要素が合わさり、水質汚染は改善されるどころか年々酷くなっていく一方です。
ガンジス川の水質汚染は深刻化している!
下水、生活排水、ゴミ、遺体など様々なものが流出し、投棄され、ガンジス川の水質汚染は深刻化しています。しかし、ガンジス川はヒンドゥー教徒が沐浴をしたり、水を調理などの日常生活に使うなど、インドの人にとって欠かせない水資源です。インドの有名な観光地であり、ヒンドゥー教徒にとって聖なる川であるガンジス川にはらむ危険性を知り、世界で力を合わせてガンジス川の水質汚染の改善を進めていかなければいけません。