「滅相もない」の意味や使い方とは?「とんでもない」との違いも!
「滅相もない」。ほとんどの方がこの言葉を知っていると思います。普段何気なく使っている「滅相もない」という言葉の意味、正しい使い方を皆さんご存知でしょうか?今回は「滅相もない」の言葉の意味や語源、正しい使い方、敬語、英語表現などを詳しく説明していきます。
目次
「滅相もない」の意味とは?
「滅相もない」とは、「とんでもない」とか「あるべきことではない」という意味として使われています。また、相手の言葉を否定する場合にも使われます。よく聞く「滅相もない」は「とんでもない」という意味合いで使われていることが多いでしょう。
「滅相もない」の語源や由来は?
「滅相もない」の語源を見ていきたいと思います。
「滅相もない」の「滅相」というのは、仏教用語に由来しています。仏教では物事や生物の移り変わりを、4段階に分けて考えます。1段階目は「生相」で、事物がこの世に出現すること。2段階目は「住相」で、存在や持続すること。3段階目は「異相」で、変化すること。そして、「滅相もない」の語源となる「滅相」と続きます。滅相の業が尽きて命が終わる段階の意味から、「とんでもない」という意味の「滅相な」となり、「滅相な」どころではないという意味で「滅相もない」と使われるようになりました。
「滅相もない」の使い方を解説
次に「滅相もない」の使い方を「対等な立場」、「目上の人」、「疑いを否定」する場合の3つそれぞれ見ていきたいと思います。
対等な立場で使う場合
相手との立場が対等以下の場合の使い方では敬語表現は使いません。「勉強ができるだなんて滅相もない。」などとなりますが、対等な立場の場合は、「滅相もない」を「とんでもない」にした方が自然な言い回しになります。
目上の人に使う場合
目上の人には敬語表現をつけます。「仕事が速いなど滅相もないことです。」や「仕事が速いなど滅相もないことでございます。」となります。「滅相もないことでございます」がより丁寧な表現になります。
疑いを否定する場合
目上の人からあらぬ疑いをかけられた際、例えば取引先の担当者から手を抜いているのではないかと言われたときは、「滅相もないことでございます。誠心誠意取り組ませていただいております。」となります。
「滅相もない」の例文を3つ紹介
それでは、実際に「滅相もない」という言葉を使った例文を確認していきましょう。
①滅相もないです
「いつも仕事が早いね。」 「いえいえ滅相もないです。私なんてまだまだです。」
「先日はありがとうございました。」 「滅相もないです。私でよければいつでも手伝いますよ。」
このように「滅相もないです」は、上司や取引先の人などからかけてもらった言葉に、謙虚な気持ちを示したいときに使います。
②滅相もありません
「先日はわざわざお土産ありがとうございます。」
「滅相もありません。いつもお世話になっておりますので。」
上記のようにクライアントからのお礼の言葉を返す時のように感謝の気持ちに対して謙遜するように使います。この使い方は「滅相もないです」よりさらに丁寧な印象を与えます。
③滅相もないことであります
「今日の仕事も完璧でしたね。」
「滅相もないことであります。今後さらに精進します。」
例文のように使われますが、少し堅苦しいような印象を受けます。話し言葉で使われることはあっても文章で使われることは少ないです。
「滅相もない」の類語や言い換え表現は?
次に「滅相もない」の類語を見ていきます。類語を知り、場面に応じた適切な言葉遣いができるようになりましょう。
「とんでもない」
一番よく使われる類語として「とんでもない」が挙げられるでしょう。また「滅相もない」の語源である「滅相な」が「とんでもない」という意味なのでしっくりくると思われます。少し気を許せる人から褒められた時に「とんでもない。まだまだです。」というように使います。謙遜しながらも、気安さを感じられ「滅相もない」より日常的によく使われそうな表現となります。
「決してそのようなことはありません」
上司との会話ので、君も課長の座を狙っているのではないかと聞かれたとき「いえ、決してそのようなことはありません。自分にはまだ荷が重いです。」という使い方をします。「滅相もない」よりも否定の気持ちがより直線的に伝わります。
「思ってもいません」
大学の先輩に「今年のミス・キャンパスに選ばれるでしょ」と言われた時、「いやいや、そんなこと思ってもいません。他にきれいな人はたくさんいるじゃないですか」という使い方をします。「滅相もない」の類語ですが例文のようにより日常の会話でも使いやすい表現なのではないでしょうか。
「恐れ入ります」
「恐れ入る」の語源は「相手の行為や感謝に対して恐縮する」という意味です。「恐れ入ります」は「ありがとうございます」「私はまだまだです」という謙遜や遠慮の気持ちを込めて使える敬語です。「滅相もない」との違いは感謝の意味合いが少し強いことですので注意して使い分けましょう。
「お気遣いありがとうございます」
目上の人からの言葉に対して「お気遣いありがとうございます。」と使います。例文としては「昨日は夜遅くまで残業ご苦労様でした。」 「お気遣いありがとうございます。お陰様で無事に仕事が終わりました。」となります。例文のように目上の人に褒めてもらった時や配慮の気持ちを込めた言葉をかけてもらった時に用います。
「恐縮です」
自分の立場をへりくだって表現したい時に「恐縮です」と使います。例文としては「先日は、お忙しいところサポートくださりありがとうございました。」 「こちらこそ、お心遣いいただき恐縮です。」例文のように目上の人や取引先の人に自分の立場を下げて回答する時に使用します。同僚や部下には使用しません。
「滅相もない」を敬語で使うには?
滅相もない」の正しい敬語表現とは、どのようなものがあるでしょうか?「滅相もない」の一言だけでは、あらたまった席などでは失礼にあたる場合もあります。敬語表現は大きく分けて「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」を使い、敬語の表現にしたもののことです。敬語表現を間違えて覚えてしまっていることもあるので気をつけましょう。
では「滅相もない」の敬語表現を紹介していきます。
「滅相もない」の正しい敬語表現
上司などに「滅相もない」と使うと相手や場合によっては失礼となります。その場合の正しい敬語表現は「滅相もないです」や「滅相もないことでございます」となります。
「滅相もございません」は間違い?
考え方によっては「滅相もございません」は間違いと言われます。
「滅相+も+ない」というように「も」を助詞と考える場合は間違えではありません。しかし「滅相もある」という使い方をしないことから「滅相もない」を一語と考える場合に間違いとなります。ですので「滅相もない」を丁寧に言い換える場合、先ほど説明したように「滅相もないことです」「滅相もないことでございます」が無難となります。
「滅相もない」と「とんでもない」の違いとは?
「とんでもない」は「滅相もない」の類語ですがこの2つの言葉には明確な違いがあるのでしょうか?それを詳しく見ていきたいと思います。
「滅相もない」と「とんでもない」は文法的に違う?
「滅相もない」と「とんでもない」には文法的な違いがある場合があります。「滅相もない」を分解して考える場合には形容詞とはならないので形容詞である「とんでもない」とは文法的な違いがあると言えます。「滅相もない」を一語で考える場合には形容詞となるので文法的な違いはなくなります。
「滅相もない」と「とんでもない」の使い分け方法!
「滅相もない」と「とんでもない」は類語ですが使い分けなければなりません。同僚や部下には「とんでもない」で大丈夫ですが、上司や取引先のように目上の人には「滅相もない」を使うのが良いです。
「とんでもない」の敬語表現
「とんでもない」は「滅相もない」の類語なので敬語表現をする場合「滅相もない」と同じことが言えるので、「とんでもございません」という使い方はせず、「とんでもないことです」や「とんでもないことでございます」と表現します。
「とんでもない」の敬語での例文は次のようになります「君は優秀だ。社長の座を狙ってみてはどうだ?」「平社員の私にはとんでもないことでございます。」
「滅相もない」の英語表現
「滅相もない」を英語で表現する場合は次のようになります。
・Don't be absurd(滅相もない)
・That's out of the question(滅相もない)となります。ビジネスマンには是非覚えていてもらいたい表現です。
「滅相もない」の意味や使い方を正しく理解しよう!
以上が「滅相もない」についての意味や語源、正しい使い方、例文、敬語表現、英語となります。新しい発見はありましたでしょうか。
「滅相もない」は上司や目上の人から褒められたときに自分の立場をへり下って否定できる便利な敬語表現です。「滅相もない」を正しく使えると上司や取引先の人などから信頼を得ることもできるでしょう。詳しく見てみたら意外に間違っていたという表現もあるでしょう。今まで何気なく使って間違っていた表現があると気づけた方はこの記事を参考にして正しい使い方をしていただければと思います。