2021年10月05日公開
2021年10月05日更新
南北軍事境界線上にある「板門店」とは?緊迫の国境38度線ツアー
「板門店」と聞くと焼肉を思い出す人もいるかも知れませんね。でも板門店は、近くて遠い謎の国である北朝鮮と韓国の軍事境界線(国境)のこと。ちなみに、韓国から行ける北朝鮮との国境ってこの軍事境界線の「板門店」だけなんですよ!
目次
板門店とは
板門店(パンムンジョム)とは、南北軍事境界線(38度線)にある地区の名称で、60年以上に渡る朝鮮南北分断の象徴的場所となっています。
まさに南北朝鮮分断や東側(ソ連)西側(アメリカ)陣営衝突のランドマークが「板門店」といったところでしょうか?
そんな板門店ですが、地図を見ると意外とソウルから近い距離にあるので驚きです。(ソウルに住んでる人たちって、ちゃんと熟睡できてるのかな?)
・板門店の位置:ソウルの北約80km、平壌の南約215km、(北緯37度57分22秒東経126度40分37秒)
・板門店の施設:「軍事停戦委員会の本会議場」、「中立国停戦監視委員会」
・板門店の警備:板門店内の警備は、国連軍兵士と北朝鮮軍兵士の両軍兵士が境界線を隔てながら警備を行っています。なお国連軍とは8割が韓国軍兵士で残りの2割はほぼアメリカ軍兵士です。
・板門店の周辺施設:「宣伝村」は板門店の北朝鮮側にあり、高層アパートや工場が立ち並んでいますが(宣伝のためのもので)実際に住人はいないとされています。
・板門店での事件:「ポプラ事件」、「ソ連大学生越境事件」、「亡命事件」
ポプラ事件:ポプラ並木の剪定作業を発端に韓国軍アメリカ軍と北朝鮮軍が板門店で衝突
ソ連大学生越境事件:板門店ツアー客のソ連人大学生が軍事境界線を越えて韓国に闖入。
亡命事件:板門店で数回、北から韓国側への亡命事件が発生している。
宣伝村
南北軍事境界線とは
南北軍事境界線とは、「38度線」とも呼ばれていて、朝鮮半島における軍事境界線(Military Demarcation Line)のことを言います。
この境界線で、「大韓民国」(韓国)と「朝鮮民主主義人民共和国」(北朝鮮)が分割されていますが、国境線ではありませんので注意が必要です。
また、この境界線は(陸上だけでなく)海上にも伸びているんですが、韓国側と北朝鮮側で主張するラインが異なり、警備をする上など今でも紛争が起きています。
南北軍事境界線(38度線)の画定日
境界線画定日:1953年7月27日
南北軍事境界線(38度線)の長さ
全長距離:約248キロメートル
南北軍事境界線(38度線)の始点と終点
始点、終点:(西)漢江河口部右岸、(東)金剛山付近の海岸「海金剛」
※「38度線」は、もともとは「北緯38度線」を基準にアメリカとソ連が線引きした分割占領ラインでしたが、朝鮮戦争の結果、西側では北朝鮮が38度線の南に食い込み、東側では韓国が北に食い込む現在のラインになっています。
38度線の非武装中立地帯とは
非武装中立地帯(DMZ、demilitarized zone)とは、軍事境界線(38度線)の北側南側に、それぞれ幅約2キロ(合計約4キロ)で設定された、非武装中立地帯のことです。
38度線の民間人出入統制区域とは
民間人出入統制区域とは、非武装中立地帯に沿って南側に設定された「一般人の立入り規制区域」のことで、韓国側が警備の目的で自主的に設けたものです。
軍事境界線上の板門店を訪ねる【国境38度線ツアー】
「板門店」はツアーに参加して見学・観光することができます。
板門店をツアー見学するには、北朝鮮側から行くか、南の韓国から行くか2つの方法があります。
ちなみに、南側のツアーガイドの証言によれば、
2005年に板門店を訪問したツアー客は、
・南側 20,000人強
・北側 7,000人
というデータが残っています。
また、ツアー客は板門店の「軍事停戦委員会本会議場」の中に限り、国境38度線を越えて反対側へ「南北越境」することができます。
韓国(南)側の軍事境界線上の板門店を訪ねる【国境38度線ツアー】
南側から板門店国境38度線ツアーに行くには、指定の団体ツアーに参加する必要がります。
板門店国境38度線ツアーを行うツアー会社は下記のとおりです。
・KTB TOUR
・ICSC国際文化サービスクラブ
・中央高速観光
・板門店トラベルセンター
※(在外の場合を除き)韓国人は事前に国家情報院へ申請し、承認されることが必要とのことです。
国境38度線板門店ツアーの内容(南側)
・開催は原則として、火曜日~土曜日ですが、板門店の訓練警備などの理由で実施されない場合もあります。
・参加希望者は、事前の予約が必要です。
・ツアー行程は半日程度のものが多いが、南進トンネルなどの板門店周辺施設を組み込んだ終日の日帰りツアーもあります。
・英語が出来る添乗員同行のツアーの他に、日本人向けの日本語が出来る添乗員同行のツアーもあります。
※韓国側からの板門店ツアーは、「国連軍の招待客」という形式になっています。なので、国連軍より参加不可国に指定されている国(北朝鮮・アフガニスタン・パキスタン・イラン・イラク・キューバ・リビア・スーダン・シリア)の国民は見学できません。
※また、誓約書(緊急事態が起これば死亡、負傷する恐れがあるが、自己責任を承知の元訪問する)と書かれている国連軍の書類へ署名が必要です。
板門店の訪問に際には、「パスポートの持参義務」や「撮影、行動、服装などの制限」などがあるので注意が必要です。
板門店ツアー参加者は、「キャンプ・ボニファス」内で国連軍のバスに乗り換えますが、この際には
・パスポート
・カメラ(カメラ付き携帯電話、スマートフォン、タブレットもOK)
・ポケットに入るもの
以外は持参できません。
この他にも、いろんな警備上の制限があります。
・板門店内では「指を差す、手を振る、大声で笑う」などの行為は禁止で、警備兵士(国連軍兵士・朝鮮人民軍兵士問わず)に話しかけるのもNGです。
・板門店ツアー出発12時間以内の飲酒は禁止。
・100ミリ以上の望遠レンズは板門店に持ち込み不可。
・服装は作業服、半ズボン、革製品、女性のミニスカート、ジャージ、ノースリーブ、Tシャツ、コスプレ、軍服などはNG。
・ジーンズは基本的にOKですが、ダメージ加工したものや色あせたものはNG。
北朝鮮(北)側の軍事境界線上の板門店を訪ねる【国境38度線ツアー】
北朝鮮(北)側からの国境38度線板門店ツアーも可能です。
通常、外国人が北朝鮮へ観光で入国する際は「朝鮮国際旅行社」などの現地旅行社を通じて訪問するのが一般的なので、現地旅行社へ申込む際に、38度線板門店ツアーも組込むよう依頼することで、北側からの国境38度線板門店ツアーも可能になります。
一般の外国人ツアー客が板門店ツアーに参加すること対して、特に参加制限はありませんが、軍人や警察官、治安当局関係者、報道関係者、アメリカ人などについては制限が設けられています。
国境38度線板門店ツアーの内容(北側)
北朝鮮側からの国境38度線板門店ツアーは、南側からのそれに対して制限が少なく「緩い」と言われています。
南側では大変厳しい制限が課せられますが、北側のツアーでは撮影や服装などの制限はないし、誓約書への署名も必要ありません。
また、パスポートの持参義務もありません。
南側からは見学できない「停戦協定調印場」にも、北側からの板門店ツアーなら訪問できます。
カメラやビデオカメラなどでの撮影もOKで、板門店の会議場の椅子に座っての撮影もできます。
板門店訪問ツアーに際しては、南側のように服装の制限はありませんが、
そもそも北朝鮮訪問の際のマナーとして、「透ける服」や「ミニスカート」、「USAとプリントされたシャツ」、「軍服風の洋服」などは避けるべきです。
北側の38度線板門店ツアー参加者には、現地の将校から「統一」と書かれたバッジがもらえるケースもあるそうです。
軍事境界線上の板門店をつくった朝鮮戦争とは
金日成
朝鮮戦争とは、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の間で生じた戦争で、北朝鮮の金日成が毛沢東とスターリンの支援を受け38度線を越えて南に侵略を開始したことで始まりました。
軍事境界線上の板門店で締結された朝鮮戦争休戦協定とは
朝鮮戦争は3年間も続き、1953年7月27日に国連軍と中朝連合軍が「朝鮮戦争休戦協定」に署名し休戦となりました。
じつは、朝鮮戦争は(終戦ではなく)休戦状態であり、名目上は現在も戦争は終わっていないということになっています。
なので、緊張状態は続いており、「板門店」を訪れる国境38度線ツアーにはそれなりの緊張感が伴います。
南侵トンネルとは
南侵トンネルとは、北朝鮮が南北軍事境界線(38度線)を超えて韓国側まで掘ったトンネルで、複数本が発見されていて、兵士や兵器を送り込んだり撹乱を行う目的で作ったと推測されています。
一部のトンネルはツアー客向けに解放されていて、国境38度線ツアーに組み込むこともできます。
まとめ
朝鮮戦争は、まだ終わっていない続いている戦争なので、現状は単なる「休戦状態」であり、南北軍事境界線上にある「板門店」には、当然緊張感が漂っています。
その為、南側のツアー参加者は誓約書(緊急事態が起これば死亡、負傷する恐れがあるが、自己責任を承知の元訪問する)と書かれている国連軍の書類へ署名が必要です。
これって、凄く怖い気がするんですが、国境38度線ツアーの参加者は、そんな非日常的な緊張感もジェットコースターに乗るような感覚で楽しんでいるんでしょうか?