2021年08月19日公開
2021年08月19日更新
『横田空域』の知られざる事実。首都圏の戦後70年空のタブー
皆さんは、羽田空港のすぐ西側に「横田空域」という目に見えない空の壁があるのをご存知でしょうか? この空域は現在横田基地の米軍が管制をしており、民間航空機はこの空域を飛べないないのです。 今回は「横田空域」が何かという事と、その現状などをご紹介していきます。
目次
- 1『横田空域』とは何?:羽田空港発着のルートの不思議!
- 2横田空域とは?:航空機発着の時間のロス!
- 3横田空域とは?:航空機に、立ちはだかる空の壁!
- 4横田空域とは?:米軍の東アジア戦略上の最重要基地!
- 5横田空域とは?:基地の上空を広く、高くカバー!
- 6横田空域とは?:遠回りのコストは、乗客が負担!
- 7横田空域とは?:この空域の飛行は可能!?
- 8横田空域とは?:東京オリンピック時には更なる増便要!
- 9横田空域とは?:羽田空港から空域通過は無理!
- 10横田空域とは?:横田空域の返還により、燃料費削減!
- 11横田空域とは?:横田空域返還後、東京~大阪20分短縮!
- 12横田空域とは?:羽田空港、新ルート!
- 13横田空域とは?:見えない空の壁の撤去に向けて!
- 14横田空域とは?:まとめ
『横田空域』とは何?:羽田空港発着のルートの不思議!
出典: https://honichi.com
上空から見る、羽田空港
羽田空港から大阪や九州などの関西や西日本へ向かう航空機は、羽田から直接西に向かわず、いったん東京湾に向かい、そこから右に大きく旋回して西に向かいます。 「なぜ滑走路から直接西に向かって飛ばないのだろう? 天候のせいかな?」と思っていました。
横田空域とは?:航空機発着の時間のロス!
出典: http://www.tenki.jp
また、西日本から羽田に向かう航空便も、東京湾上空に飛び、そこから左に旋回して滑走路に降りていきます。
西側から直接滑走路に降りれば、時間の節約になるのにと感じていました。
これらの航空便は、天候に関係なく毎回東京湾上空に飛んで、そこから旋回して西の空や、羽田行きであれば滑走路に降りていきます。
すなわち、上り下りの便いずれも、天候に関係なく遠回りして東京湾上空の同じルートを飛ぶので不思議に感じていました。
出典: http://www.royal-ahf.jp
羽田発着の航空機の全てが東京湾上を旋回する原因は、首都圏上空に存在する広大な「見えない空の壁」いわゆる「横田空域」があるからなのです。
その為、民間航空機は、この空域を避けて大きく飛び越えたり、旋回したりするために遠回りを強いられてきているのです。
そしてこの領域の空の管制権が米国に奪われたままであることにより、我々乗客が遠回りの大きなコストを支払わされてきています。
では一体、この「横田空域」とは何なのでしょうか?
横田空域とは?:航空機に、立ちはだかる空の壁!
出典: http://abhp.net
横田基地の地図
日本の首都圏、東京の都心から西に38kmの東京・福生市に、横田飛行場があります。
この飛行場は、元々日本帝国陸軍の航空部隊の基地として開設されましたが、日本の敗戦後1945年9月より米軍に接収され、米軍横田基地の飛行場として使われています。
横田空域とは?:米軍の東アジア戦略上の最重要基地!
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横田基地の上空写真
さらにこの基地には、在日米軍及び空軍の司令部が置かれており、東アジアにおける米軍の主要基地となっています。
そして極東地域全体の輸送中継ハブ空港、兵站基地としての役割も担っています。
要するにこの基地は、米軍にとって東アジアの戦略上、最も重要な基地となっているのです。
横田空域とは?:基地の上空を広く、高くカバー!
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民間航空機が飛べない、空域!?
そしてこの飛行場の上空の地図で見ると南西にある三浦半島や伊豆半島から、北側の新潟県に至るまで、一都八県にまたがる広大な空域が「横田空域」と呼ばれているのです。
この横田空域を地図で見ると、高度の低い所で約2,500メートルから最高約7,000メートルの階段状となっており、基地上空は今も米軍の管制下で、実際には日本の民間航空機などはこの空域は飛べないことになっています。
その結果、羽田空港に発着する航空機はこの空域は飛べずに、東京湾上空を旋回するルートを飛んでいるのです。言ってみれば、『見えない空の壁』となっているのです。
横田空域とは?:遠回りのコストは、乗客が負担!
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横田基地、オープンディー
この首都圏上空を覆う広大な「見えない空の壁」があるために、民間航空機はこれを迂回して、東京湾上空に飛んだり、大きく飛び越えたりしています。
そしてその結果、遠回り飛行をさせられているのが現状です。
これは戦後70年も経った現在でも、首都圏上空の管制権が米軍に奪われたままである為に、民間航空機の乗客が、その遠回りのコストを負担しているわけです。
横田空域とは?:この空域の飛行は可能!?
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羽田国際空港
この首都圏に位置する横田基地の上空を覆う空域は、現在米軍の管制管理下にあるのですが、同時に日本の領空であることも明白です。
それでは、日本の民間の航空機が横田空域を通過して飛ぶことはできないのでしょうか。
航空専門家によると、事前に航行予定表などのフライトプランを、横田基地の米軍管制に提出して、許可されれば飛行は可能との事です。
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羽田国際空港、滑走路
しかし現実には、航空会社の定期便が横田空域内を飛行するたびに申請しなくてはならず、また空軍の軍事訓練などの際には許可されないケースもあり、現実の運用として、この空域を飛行して通過することは不可能です。
そのため、各航空会社は横田空域を避けるルートを模索し、東京湾などを旋回するルートを使っているわけです。
横田空域とは?:東京オリンピック時には更なる増便要!
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しかし、今後も羽田空港への、発着便は増える傾向にあり、政府は2020年の東京オリンピック時点までに、羽田の発着枠を現行の年間約45万便から、最高3.9万便を増加することを計画しています。
オリンピックでは多くの便が、羽田空港を利用予定!
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2020年に東京五輪が開催される際には、首都圏の東京には、中国や韓国などのアジア国々からの大勢の五輪の選手、スタッフ、観光客が日本にやってきます。
これらアジアの国々から来る航空便が、横田空域を避けて羽田空港に降りる方法は、横田空域の南側の海上方面を迂回するか、空域を飛び越えて滑走路に降りるかの2つの方法が考えられます
横田空域とは?:羽田空港から空域通過は無理!
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しかし航空機の通常の飛行高度は水平飛行時で約1万メートル程度ですが、地図で見ると横田空域の高度は階段状になっていて一番高いところは約7000メートルで、低い所は約2400メートルとなっています。
この空域と羽田空港は隣接しているため、羽田に降りる時はどうしてもこの空域を通過することになってしまい、空域を飛び越えて着陸するのは不可能となってしまいます。
これは離陸の時も同じで、羽田の滑走路から、そのまま西に向かうと高度を上げるための助走距離が足りずに、どうしても横田空域の壁にぶつかってしまいます。
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その為、羽田空港を利用する航空機は、東京湾上空に一度飛んでからの離着陸を行っています。
その結果、このルートを通る分、時間をロスするとともに燃料費も余計にかかることになります。
この無駄な燃料の量は毎年約11万kℓと言われています。
そしてこれらの飛行ルートの無駄は航空運賃に上乗せされ、利用客が負担することになるのです
横田空域とは?:横田空域の返還により、燃料費削減!
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横田空域、削減後の地図
これまでに日本政府は、横田空域の返還を繰り返し米国に求めきており、部分的には返還されてきました。
1992年には空域の約10%、2008年に約20%が返還されるなどしてきた経緯があります。
そしてこれまでの部分返還の結果、現状のように空域が階段状になりました。
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しかし全体的には、この空域の大部分がまだ米軍の管制下に置かれています。
それでも2008年に20%が返還された際には、西日本と羽田空港と結ぶ航空機の飛行時間は平均3分短縮されたことにより、年間約60億円の燃料費が削減されたと言われています。
横田空域とは?:横田空域返還後、東京~大阪20分短縮!
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東京、大阪間地図。この飛行ルートが20分短縮!
もし横田空域が全面的に日本に返還され管制権も日本に戻れば、大阪までなら現状50分程度かかるところ、30分近くで行くことができるようになるとのことです。
福岡や沖縄も、首都圏から今より20分程度は短縮されると見込まれています。
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そして、チケット代もその分安くなることが見込まれ、我々乗客にとっても大きなメリットとなり、是非横田空域の全面返還を達成してもらいたいものです。
横田空域とは?:羽田空港、新ルート!
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羽田空港、新ルート地図!
政府関係者によりますと、現在羽田空港への離着陸の新ルートが検討されているとの事です。
新たな着陸ルートの一つとして、首都圏の埼玉県付近から南方向に直線ルートで降下する際に、悪天候時には羽田のC滑走路を使い、好天時と悪天時のいずれもA滑走路を使用するとしています。
この新ルートは、北側から南に向けて真っすぐ降下するため、A、Cの二本の滑走路へ二機を同時に着陸させることが可能となることなどから、発着回数を増やすことができ、東京オリンピックの増便にも対応できるとされています。
この新ルートはさいたま市や首都圏の練馬区上空などの飛行ルートが横田空域を通過することになるので、米国側と鋭意交渉中とのことです。
出典: http://www.haneda.properent.com
羽田空港、A,C滑走路地図
この羽田空港の発着数を増やすための新ルート設定には、米国との調整が必要になっていますが、これは、米軍が管制権を持つ前述の「横田空域」が首都圏の空に大きく広がり、日本の民間航空機が自由に飛行できないためです。
現在民間航空機の飛行ルートは限られており、東京湾上空など一部は過密化しています。
その為運航の安全に空の自由は欠かせず、東京オリンピックなどを控え、政府は全面返還に向けて米国との交渉を強力に推し進めています。
横田空域とは?:見えない空の壁の撤去に向けて!
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ここでもう一度「横田空域」に関して、整理してみていきましょう。
この横田空域は羽田空港のすぐ西側にあるため影響は大きく、例えば羽田から西に向かう場合、直線コースではなく、いったん北上して高度を上げていき、この横田空域を飛び越える必要があります。
出典: http://yakei-fan.com
この為、飛行時間や燃料を余計に消費し、パイロットや管制官の負担も増えています。
これらは空の安全に直結する問題なので、「横田空域」全面返還に向けた、日本政府の強力な米国との交渉が期待されます。
横田空域とは?:まとめ
「横田空域」の現状や、今後の方向性などについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
羽田空港のすぐ隣に、このような目に見えない空の壁があることなど、殆どの人が知らないのではないでしょうか?
2020年の、東京オリンピックを控えて空の便は益々増加の傾向にあります。
その為にも、この壁ができるだけ早く撤去されるといいですね!